京扇子 白竹堂

KYOSENSU HAKUCHIKUDO

「和」のイメージを伝統と革新の両輪で発信

十代目当主 山岡憲之

改革が次の伝統を築く

 開いたときに先へ向かって広がることから「末広」とも言い、縁起物として重宝される扇子。中でも、千年余の都、京都で創作され豊かな風土と文化に育まれた「京扇子」は、国産の素材にこだわり、すべての作業工程を京都の扇職人によって仕上げられる、他地方では見られない繊細さと優美な美しさを併せ持つ京都の伝統工芸品である。

 創業以来290年余りにわたり「京扇子」を作り続ける白竹堂の十代目当主、山岡憲之氏は言う。

 「伝統にあぐらをかかず、現在の生活に密着しながら常に新しい創意と工夫に取り組んでいます。変えていくことが時代をつくり、改革が次の伝統を築くのですから。白竹堂では伝承の技を駆使した京扇子、古典的な扇から、洋の感覚を取り入れた意匠や京染めなどの異業種アーティストとのコラボレーション品まで幅広く揃えております」。言葉のとおり、熟練の絵師が手描きした風流な絵があるかと思えば、クスッと笑えるような文言を書いたものや漫画を描いたもの。また、素材も京都名産の黒谷和紙から友禅技法を活かしたシルクスクリーン製、絹張りにラインストーンやファーをあしらったものまで多彩である。

伝統を継承しつつ現代の逸品を

 扇づくりの工程は80近くにのぼり、扇骨(せんこつ)作りから要(かなめ)を打ち、扇形に裁断した紙に絵を施して折り、扇骨に入れて仕上げるまで大変な手間暇のかかる作業を必要とする。「全ての工程を京の職人で仕上げる京扇子は、より専門に特化した高度な技術が求められるため信頼のおける職人が不可欠なんです。最高の技術を持つ扇職人との昔からの結びつきが、白竹堂の看板を支えています」。培われた技術を基本に、新しいアイデアを取り入れ実用的で装身具としても美しく、“楽しい場”を生み出すのが白竹堂扇子の特徴であり、長年愛される所以(ゆえん)である。

 また、江戸時代からの伝統的な遊びのひとつである「投扇興(とうせんきょう)」や、オリジナル扇子が作れる絵付けの体験を実施するなど、扇子普及のために尽力している。

 たためばコンパクトになる扇子は、持ち運びにも便利で誰でもどこででも使える。その上、環境に負荷をかけないで涼をとれる。実は現代にこそふさわしい、環境にやさしい商品なのだ。さらに、使い勝手だけでなく数々の職人技を活(い)かした意匠性の高い逸品でもある。

 「伝統や技術の継承はもちろんですが、古いのれんに縛られることなく、常に使っていただけるお客様のことを考えて、今の時代に輝いていきたい」と、山岡氏は語った。

京扇子 白竹堂

〒604-8075京都市中京区麩屋町通六角上ル白壁町448
Tel.075-221-1206

◉享保3(1718)年、「金屋孫兵衛」の屋号で西本願寺前に寺院用扇子の店を創業。明治時代から、一般利用や贈答用の京扇子を製造販売するようになり、近代きっての文人画家・富岡鉄斎に「白竹堂」の屋号をいただいた。以来300年近い歴史をもとに、確かな技が活(い)きる京扇子を販売。さらに漫画家やアーティストとのコラボレーションをはじめ、現代的な意匠を取り入れた斬新な扇子を開発。ヘアアクセサリーや小物類なども続々と送り出している。

京扇子 白竹堂 本社外観の写真

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