改革が次の伝統を築く
開いたときに先へ向かって広がることから「末広」とも言い、縁起物として重宝される扇子。中でも、千年余の都、京都で創作され豊かな風土と文化に育まれた「京扇子」は、国産の素材にこだわり、すべての作業工程を京都の扇職人によって仕上げられる、他地方では見られない繊細さと優美な美しさを併せ持つ京都の伝統工芸品である。
創業以来290年余りにわたり「京扇子」を作り続ける白竹堂の十代目当主、山岡憲之氏は言う。
「伝統にあぐらをかかず、現在の生活に密着しながら常に新しい創意と工夫に取り組んでいます。変えていくことが時代をつくり、改革が次の伝統を築くのですから。白竹堂では伝承の技を駆使した京扇子、古典的な扇から、洋の感覚を取り入れた意匠や京染めなどの異業種アーティストとのコラボレーション品まで幅広く揃えております」。言葉のとおり、熟練の絵師が手描きした風流な絵があるかと思えば、クスッと笑えるような文言を書いたものや漫画を描いたもの。また、素材も京都名産の黒谷和紙から友禅技法を活かしたシルクスクリーン製、絹張りにラインストーンやファーをあしらったものまで多彩である。