京都 福寿園

KYOTO FUKUJUEN

受け継ぐ伝統の「茶の心」と技

取締役会長 福井正憲

日本茶は文化とともに

 日本に数ある茶どころの中でも、宇治は日本最古の歴史と最高峰の品質・技を誇る。創業から220年、福寿園は宇治茶とともに歩んできた。

 「日本茶は、その味わう空間や時間までを演出します。喉をうるおすだけでなく、香りや味わいで対話を生み出す。かつて茶は生活文化であり、社交文化でもありました。日本へ伝わってきてから今日まで、いつも茶は文化とともにあり、数々の物語と一緒に味わってほしい飲み物なんです」と、福井氏は語る。

 日本茶は独特の旨(うま)みを持つ。茶を飲む国は世界中にあるが、紅茶やウーロン茶などの発酵茶、半発酵茶にはない、旨みに渋み・苦みのバランスがとれ、美しい色を見せる緑茶を生産できる国は日本が随一といえる。この爽やかな味わいが世界中で評価され、70数カ国に輸出されている。

 宇治には、朝霧が立つ。寒暖の差が激しい気候が香りを生み出し、豊沃な土壌がすがすがしい味わいをつくる。そして長い歴史にはぐくまれた製茶の技術も卓越している。特に玉露は大切に覆いをかぶせて茶葉を育て、きめ細やかに管理して摘み取り、蒸して揉んで仕上げられる。そこには一貫して卓抜な技が息づき、風味と品質の高さ、とりまく文化的環境も他の追随を許さない。

茶舗としての使命

 「日本茶は嗜好品だから、『この味が好き』と飲む人が決めるものです。しかし、基本のおいしいお茶をつくるのは、茶舗の使命。福寿園ではどうしたらもっとおいしい茶葉を飲んでもらえるかを常に考えており、造りたて茶葉の鮮度を保つ冷蔵や保存の技術も研究してきました。卸はせずに自社で元詰めし、直販しかしないのも、生粋の鮮度の良い香り豊かな宇治茶を味わってほしいからです」と、福井氏は言う。

 京都・四条の本店には、自分で茶葉をブレンドして好みの味を見つけられる工房があり、茶を使ったスイーツやフランス料理を味わえるフロアもある。これらは国や老若男女を問わず、日本茶の味や楽しさをわかってほしいという願いのもとに運営されている。

 茶はCHA=Culture(文化)・Health(健康)・Amenity(快適)に通じ、これらを創り出す新しいティーライフのために、福寿園は今後も茶一筋に探究の手を休めることはない。

京都 福寿園

〒600-8005 京都市下京区四条通富小路角
Tel.075-221-2920

◉寛政2(1790)年、山城国上狛(現在の京都府木津川市山城町)に福井伊右衛門が興した茶商が発祥で、木津川の船着き場から大阪・神戸へ、そしてはるか海外にまで氏の茶を送り出してきた産地問屋である。明治末期からは国内への宇治茶普及に力を入れ、同時に茶を中心としたくつろぎの創出を多角的に探究。関西文化学術研究都市に「福寿園CHA研究センター」を設け、茶の研究や試作実験、茶にまつわる展示公開などを行っている。

京都 福寿園 本社外観の写真

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