日本茶は文化とともに
日本に数ある茶どころの中でも、宇治は日本最古の歴史と最高峰の品質・技を誇る。創業から220年、福寿園は宇治茶とともに歩んできた。
「日本茶は、その味わう空間や時間までを演出します。喉をうるおすだけでなく、香りや味わいで対話を生み出す。かつて茶は生活文化であり、社交文化でもありました。日本へ伝わってきてから今日まで、いつも茶は文化とともにあり、数々の物語と一緒に味わってほしい飲み物なんです」と、福井氏は語る。
日本茶は独特の旨(うま)みを持つ。茶を飲む国は世界中にあるが、紅茶やウーロン茶などの発酵茶、半発酵茶にはない、旨みに渋み・苦みのバランスがとれ、美しい色を見せる緑茶を生産できる国は日本が随一といえる。この爽やかな味わいが世界中で評価され、70数カ国に輸出されている。
宇治には、朝霧が立つ。寒暖の差が激しい気候が香りを生み出し、豊沃な土壌がすがすがしい味わいをつくる。そして長い歴史にはぐくまれた製茶の技術も卓越している。特に玉露は大切に覆いをかぶせて茶葉を育て、きめ細やかに管理して摘み取り、蒸して揉んで仕上げられる。そこには一貫して卓抜な技が息づき、風味と品質の高さ、とりまく文化的環境も他の追随を許さない。