前を向くため、
不安な時は立ち止まることも

 
河田さん夫婦の話に耳を傾ける参加者

 認知症について理解を深める講座「認知症とともに生きる」が12月11日、京都文教大で開かれ市民、学生らが参加した。
 全国に先駆け「認知症の人にやさしいまち・うじ」を宣言した宇治市では2016年に地域ぐるみの支援ネットワーク・認知症アクションアライアンス「れもねいど」を立ち上げた。講座は市と協定を結ぶ同大学が毎年開催。「れもねいど」に参画する平尾和之教授が取り組みを報告した。

 認知症当事者として講演した河田正裕さんと妻・智子さんは、19年に正裕さんが認知機能に違和感を覚えてから病と向き合ってきた過程と心の葛藤を語った。智子さんは、地域で同じ病気を持つ人やその家族との出会いで「前を向くきっかけをもらった」と振り返り、正裕さんは「(以前は)周りを遮断したかった。他の当事者との交流の中で(認知症があることは)違う世界の話ではないと感じ、少しずつ前を向けた。不安な時は立ち止まってもいい」と語りかけた。

本人視点の居場所づくりを
地域の活動を紹介

 認知症の人と地域の支援者らの活動を紹介する「認知症フォーラム 認知症の人の思いを聴くことからはじめよう」が9月21日、中京区の交流拠点「QUESTION」(市長寿すこやかセンター主催)で開かれ、オンラインで75人が参加した。

 認知症の当事者が自宅の駐車場を地域交流の場として開放し住民とまちづくりに取り組む「チーム上京!」の活動や京都光華女子大生が中心となり地域の高齢者が集う拠点づくりを進める町家キャンパスの事例、当事者の声を取り入れた認知症・若年性認知症の本人同士が交流する「さんげつ会」「おれんじサロン ひと・まち」、宇治市の「カフェほうおう」の取り組みが紹介された。
 当事者、認知症サポーター(市民、企業)などが加わったパネルディスカッションでは「認知症の初期段階で地域とつながること、本人の視点に立った居場所づくりが重要」「知識だけでなく、ともに活動・体験し、楽しみを見つけることが大事」などの意見が出された。

注文をまちがえても「まあいいか」
まあいいかcafé


 認知症の人が接客や配膳を担い、客と触れ合うイベント「まあいいかcafé」が7月31日、京都市国際交流会館(左京区)で開催され、市民60人が来店した。市民グループ「まあいいかlaboきょうと」が、2018年から府内各地で催している。認知症を抱える参加者は「キャスト」と呼ばれ、働くことを通じ、人と接し、社会とつながることが目的。客は注文がまちがっていても「まあいいか」と受け入れ、会場は笑顔が絶えない。キャストとして初参加のAさん(88歳、男性)は「たくさん来てくれてうれしい。また参加したい」と満足気、2年ぶりに参加したTさん(81歳、女性)も「接客は無我夢中ですが、ワクワクします」と目を輝かせた。カフェを主宰する平井万紀子さんは「コロナ禍で難しさはあるが、熱意あるスタッフに助けられている」「今後は(企業との共催など)認知症に関心のない層との接点を増やしたい」と語った。今後の予定などの詳細はサイトから。
詳細:https://kyoto-np.jp/_ZTYQIDA

使う人思い浮かべものづくり楽しむ
「作業工房ほうおう」で働く宇治市Fさん(63歳・男性)

製作したオーダーメイドの本棚

 京都認知症総合センター(宇治市)に併設する「カフェほうおう」で毎月4回開催される「作業工房ほうおう」。木工作品製作などを通じ、認知症当事者の社会参加を支援するプログラムだ。
 参加者の作業をリードするFさん(63歳)は、2019年のプログラム立ち上げ時からのメンバー。同じ年、若年性認知症と診断され、医師の勧めで「カフェほうおう」に通った。そこで出会った認知症の「先輩」たちの前向きな姿勢に刺激を受け、プログラム立ち上げに関わった。長年、電気機器メーカーで勤め、ものづくりや設計が好きだった。
 現在、福祉施設や行政からの発注を受け、作品を製作して対価を得るなど、工房の活動は徐々に広がっている。今後、企業からの受注など、事業を持続させるシステムづくりを目指す。「やりたいことはたくさんある。使う人を思い浮かべ、作業することがとにかく楽しい」Fさんは笑った。

街の「腰かけやすさ」考えてみませんか
チーム上京!のイベントから(京都市上京区)

町内に設置された「置きベンチ」の説明を聞く参加者(3月26日、京都市上京区)

 京都市上京区で認知症の安達春雄さん(69)を中心にまちづくりに取り組むグループ「チーム上京!」が3月に開いたイベント「ベンチを探せ! 西陣ご近所さんぽ」に同行した。

細い道が入り組む西陣。バス停や商店街のある大通りに出るまでに一息つけるベンチがあれば…という安達さんの声から、「置きベンチ」が道中2カ所に設置された。この取り組みを機に企画された「ご近所散歩」では、20人の参加者がまちなかを歩き、ベンチが置けそうな場所やベンチ代わりになりそうなスポットなど、街の「腰かけやすさ」を調べた。参加者は「座れそうな場所が思ったより多い。普段と視点を変えることで発見がある」「(私有地などで)座っていいよ、と家主が意思表示できる目印があると気軽に利用できる」など、感想を語り合った。

認知症=記憶障害だけではない
木津川市 Tさん(56歳・女性)

【テプラLite LR30(キングジム)】
スマホと同期してラベル出力ができる
【ヘルプマーク】
各行政窓口などで申請できる

 Tさんは3年前にアルツハイマー型認知症と診断された。書字障害で読み書きが難しい。「明朝体は分かるが、丸文字や手書きは分かりづらい」という。スマホで操作し手軽にラベルを出力できる「テプラ」を愛用し、カレンダーや手帳にメモ代わりに貼るようにしている。ネットやテレビで見つけた新製品はなるべくチェックし、生活に取り入れるか試すそうだ。
 外見では分からなくても周囲に配慮や援助を必要としていることを示す「ヘルプマーク」も「助ける人も助けられる人も知ってほしい」と話す。Tさんは空間認知にも障害があり、バスを降車する際、ふと降車ボタンの位置が分からなくなるため、優先席を選ぶ。「(見た目で分からない)障害で不便を感じている方は多い」「認知症=記憶障害だけではないことも理解してもらえれば」と話した。