認知症のこれから
本人と家族で考える、〝幸せ〟
NHK厚生文化事業団

 
パネルディスカッションの様子

 2023年、新薬承認や認知症基本法の成立で、認知症を取り巻く環境が変わってきている。認知症の本人と家族、医療者らが展望を語るフォーラムが3月3日、みやこめっせ(左京区)で開かれ約300人が参加した。NHK厚生文化事業団などが主催した。
 基調講演では、京都大の木下彩栄教授が代表的な症状や治療の現状、早期発見に向けた生活での心掛けを解説した。

 パネルディスカッションでは、精神科医の松本一生さんと「認知症の人と家族の会」代表理事・鎌田松代さんが出演。松本さんは、新薬に過度な期待を持つべきではないとしつつ、「(薬の開発など)今後の可能性につながる。これがスタート」と語った。鎌田さんは「(基本法成立は)認知症への理解が進む追い風。〝認知症観〟を変え自分事と捉え備えてほしい」と呼び掛けた。府内在住の認知症の本人・家族らも登壇し、宇治市の伊藤俊彦さんは「一人で考えず、対話が重要」と話した。

認知症とともに生きるまち大賞受賞
「Team Fcいわくら」

 
組み立て作業を行う参加者

 京都市岩倉地域包括支援センターが認知症の本人や地域住民らと農園、カフェ、作業工房、キッチンなどに取り組む「Team Fcいわくら」の活動が第7回「認知症とともに生きるまち大賞」(主催:NHK、NHK厚生文化事業団)の本賞を受賞した。当事者を中心に地域での社会参加の場を提供していることが評価された。

 活動の一環で企画した「男たちの作業工房」では、地域の高齢男性らが集い、元大工の地域住民や福祉用具事業者らの指導の下、譲り受けた廃材を活用してパソコンのモニター台の組み立てなどに1時間ほど汗を流した。製品は1台500円で地域の企業・団体などに販売され、参加者の作業費に当てられる。作業後は、コーヒーとお菓子が振る舞われ、参加者は談笑しながら午後のひとときを楽しんだ。参加した男性は「普段、日曜大工はやらないが、思ったより上手にできた」とほほ笑んだ。作業工房は月2回程度開催予定。

京都市岩倉地域包括支援センター
電話/075・723・0800

コロナ禍乗り越え再び出会い、
語り合い、笑い合う
オレンジコモンズフォーラム

 
カフェの活動を語る
山田さん(左)と河合さん(右)

 認知症カフェについて考える「オレンジコモンズフォーラム」が2月4日、ウイングス京都(中京区)で開かれ、市民ら20人が参加した。認知症カフェの運営などに取り組む「オレンジコモンズ」(上京区)が主催した。

 講演した認知症の人と家族の会・元代表理事の鈴木森夫さんは、1月1日に施行された認知症基本法の成立経過と課題に触れ、「本人や家族など当事者の声を生かした取り組みが重要。「予防」ではなく、認知症になっても本人と社会の共生を実現することが目的。法成立はスタート地点」と話した。
 オレンジカフェコモンズは2012年からカフェ事業を開始。現在は第2、4日曜に京都市内で開き、専門職や市民・学生ボランティアらが運営する。同法人の山田裕子副理事長と河合雅美副理事長による報告では、コロナ禍を乗り越え「再び出会い、語り合い、笑い合う場」となったカフェの意義を強調、カフェに参加した認知症の人や支援者らも交え語り合った。

まちとのつながり、孤立を癒やす薬に
地域共生社会推進フォーラム

 
寄せられたエピソードについて語り合う
福富教授(中央)と西さん(右)

 地域共生社会推進フォーラム(京都福祉サービス協会主催)が12月15日、京都市左京区の府立京都学・歴彩館で開かれ、市民らおよそ100人が参加し、地域共生社会のあり方について考えた。
 川崎市の緩和ケア・腫瘍内科医で地域活動に取り組む医師・西智弘さんが講演し、社会的孤独・孤立に対する処方箋として、地域とのつながりを利用し、孤立した人を元気にする仕組み「社会的処方」の意義と実践について解説した。西さんは「要は、医療とコミュニティーをつなぐリンクワーカーの存在。多職種の人が横でつながり、地域の文化に」と呼び掛けた。

 後半は「小さな思いからはじまる ものがたり」と題し、京都市内で多数の高齢者福祉施設や訪問介護事業所、児童館などを運営する同協会の職員から寄せられたエピソードを、ラジオの深夜番組風に紹介、花園大社会福祉学部の福富昌城教授と西さんが、福祉現場で起こるさまざまなケースについて語り合った。

「eスポーツ」 交流大会を目指して
京都府こころのケアセンター

 
イベントの様子

 若年性認知症のある人やその家族と大学生がゲームを楽しみながら交流を深めるイベント「EN JOY!eスポーツ」(府こころのケアセンター、佛教大学主催)の準備会が8月にサンガスタジアム京セラ(亀岡市)で開かれ、当事者とその家族、佛教大保健医療技術学部の学生ら27人が参加した。
 近年、若年性認知症と診断された人の中には、TVゲームに親しむ層も多く、福祉施設などでレクリエーションへの活用が注目されている。

 参加者は実際にパズルゲームや格闘ゲームをプレイしながら、今年12月に開催する交流大会に向け、使用するゲームタイトルや競技方法などについて話し合った、「作品の使用許諾はどうするか」「初めての人でもプレイできるシンプルなゲームが良い」「多くの参加者が学生と交流できるようチーム編成を工夫したい」などの意見が出た。11月に2回目の準備会を開き、交流大会は12月17日、府内の若年性認知症のある人を招いて開かれる。

詳細はこちら
https://kyoto-kokoro-care.com/news/ps2023_1217.html

認知症について知り、備える
─世界アルツハイマーデー記念講演会─
認知症の人と家族の会京都府支部

 
講演する長谷川美智子さん

 9月21日の世界アルツハイマーデーを記念した講演会「知って備える認知症~認知症とともに自分らしい暮らしをするために~」(認知症の人と家族の会京都府支部主催)が7月30日、イオンモール京都桂川(京都市南区)で開かれ85人が参加した。
 京都民医連中央病院で老人看護に関わる看護師の長谷川美智子さんの講演では、患者とのやり取りで得た気づきや自身の体験を紹介し「人生10 0年時代、高齢になることに備えることが重要」と話し、支援にあたって「人それぞれ異なるQO L(生活の質)を大切にしたケアを」と呼び掛けた。

 京都府認知症応援大使の幸陶一さんと長女の暁子さんが登壇したシンポジウムでは、陶一さんが「認知症の診断を受けてから、長生きしたいと本気で思えるようになった。今はとても幸せ」と心境を語り、暁子さんは「本人が得意なこと、好きなことを見つけ、周囲のサポートをうまく受けることで、家族が無理し過ぎないことも大切」と、家族の日常を紹介しながら話した。

多機関が連携し、本人の「やりたい」をサポート
若年性認知症支援基礎研修

 
自身の経験を語る樋口さんと支援者

 若年性認知症の支援について考える「若年性認知症支援基礎研修」(京都市主催)が5月29日に府医師会館で行われ、福祉関係者ら70人が参加した。
 本研修は、住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けられる社会の実現を目的に、平成26年度から継続的に実施。

 若年性認知症本人で、京都府認知症応援大使の樋口聖典さんと樋口さんを支援する地域包括支援センター、府若年性認知症コーディネーター、訪問看護ステーション、認知症カフェの担当者が登壇。「各地で仲間が活動していることを知り、私も目標を持って頑張りたいと思った。最終的には仕事に就きたい」と再就職を希望する樋口さんの思いやニーズに応えるための支援者の活動が紹介された。府医師会認知症担当理事の西村幸秀医師は「若年性認知症支援の事例は少ない。樋口さんの事例では心のこもった支援と連携ができた。他の地域でもつなげてほしい」と話した。

認知症の人とともに
生きるためのフォーラム

 
経験や思いを語る幸陶一さん

 京都府認知症応援大使とその家族や支援者が思いを発信し、認知症の人と「ともに」できることを考えるフォーラム(京都府・京都市共催)が、3月16日に府医師会館(中京区)とオンラインで開催された。自治体や企業から88人が参加した。
 応援大使の幸陶一さんとその家族の暁子さん、高齢サポート・境谷の木寺弘美さんによる座談会では、それぞれの視点で認知症と向き合ってきた経験や心情を語った。

 家族や支援者と一緒に不安を乗り越えながら、日々楽しいことを探す陶一さん。「認知症になって、本当の人生の楽しさに気付いた」と笑顔で語った。暁子さんは「オレンジカフェなどに参加し、共感できる人や本人のやりたいことができる環境に出会えた」と当時を振り返りながら話した。
 応援大使5人を交えた参加者とのディスカッションでは、「応援大使を私の町にも呼びたい」「居場所づくりを継続的に行いたい」と意見が交わされた。フォーラムの一部を動画で公開している。
視聴はこちら:https://www.kyoto-ninchisho.org/?page_id=1609&id=1100

当事者起点のアイデアで生まれる商品開発

 
試食会の様子

 京都市の精肉店ミートショップヒロが、福祉施設の入所者や職員の意見を取り入れ、認知症の人や高齢者向けのお弁当を開発。3月25日に中京区の交流拠点「QUESTION」で試食会が開かれ、招かれた認知症の当事者や高齢者、その家族、福祉関係者およそ60人が参加した。
 催しは、「認知症にやさしい異業種連携協議会」(事務局:京都府)が2022年度から進める、認知症当事者の意見を起点とした商品開発のためのワークショップから生まれた取り組み。

 同社の西田一弘社長は「幅広い世代に、いつまでもおいしいお肉を食べてもらいたい。みなさんの意見を取り入れ、より良いものを開発したい」と語った。会場では弁当と同じ食材を使用した「きざみ食」「ペースト食」の試作品もふるまわれ、参加者が感想を語り合った。
 試食会には、認知症の人が接客や配膳を担い、客と触れ合う催しを企画する市民グループ「まあいいかlaboきょうと」も参画し、「キャスト」と呼ばれるスタッフがそろいのエプロン姿で配膳を行った。

「認知症にやさしいまち・宇治」を考える
れもねいどグループミーティング

 
課題を話し合う参加者

 宇治市で暮らす認知症の人やその家族が支援者、企業、学生らとともに、認知症になっても安心して暮らし続けられる地域について考える「れもねいどグループミーティング」。今年度の取り組みを振り返る第6回ミーティングが、1月に京都文教大で開催され、1年間の評価や課題が話し合われた。
 同市が2016年から進める施策「れもねいど」の一環。認知症の人やその家族の視点に立った「認知症の正しい理解」「地域の見守り」「自発的なアクション」の実践を地域ぐるみで目指す。

 参加者は「世代を超えた対話の場自体が、当事者が前を向くきっかけとなり、活動の幅を広げていく」と意義を語る。年間を通じ活動に参加した京都文教大の学生は「ともに活動する中で認知症に対するイメージが変わった。つながる場や共通の目標があれば、もっと交流が深まる」と振り返った。活動の成果は同市の認知症施策への提言としてまとめられる予定だ。

前を向くため、
不安な時は立ち止まることも

 
河田さん夫婦の話に耳を傾ける参加者

 認知症について理解を深める講座「認知症とともに生きる」が12月11日、京都文教大で開かれ市民、学生らが参加した。
 全国に先駆け「認知症の人にやさしいまち・うじ」を宣言した宇治市では2016年に地域ぐるみの支援ネットワーク・認知症アクションアライアンス「れもねいど」を立ち上げた。講座は市と協定を結ぶ同大学が毎年開催。「れもねいど」に参画する平尾和之教授が取り組みを報告した。

 認知症当事者として講演した河田正裕さんと妻・智子さんは、19年に正裕さんが認知機能に違和感を覚えてから病と向き合ってきた過程と心の葛藤を語った。智子さんは、地域で同じ病気を持つ人やその家族との出会いで「前を向くきっかけをもらった」と振り返り、正裕さんは「(以前は)周りを遮断したかった。他の当事者との交流の中で(認知症があることは)違う世界の話ではないと感じ、少しずつ前を向けた。不安な時は立ち止まってもいい」と語りかけた。

本人視点の居場所づくりを
地域の活動を紹介

 認知症の人と地域の支援者らの活動を紹介する「認知症フォーラム 認知症の人の思いを聴くことからはじめよう」が9月21日、中京区の交流拠点「QUESTION」(市長寿すこやかセンター主催)で開かれ、オンラインで75人が参加した。

 認知症の当事者が自宅の駐車場を地域交流の場として開放し住民とまちづくりに取り組む「チーム上京!」の活動や京都光華女子大生が中心となり地域の高齢者が集う拠点づくりを進める町家キャンパスの事例、当事者の声を取り入れた認知症・若年性認知症の本人同士が交流する「さんげつ会」「おれんじサロン ひと・まち」、宇治市の「カフェほうおう」の取り組みが紹介された。
 当事者、認知症サポーター(市民、企業)などが加わったパネルディスカッションでは「認知症の初期段階で地域とつながること、本人の視点に立った居場所づくりが重要」「知識だけでなく、ともに活動・体験し、楽しみを見つけることが大事」などの意見が出された。

注文をまちがえても「まあいいか」
まあいいかcafé


 認知症の人が接客や配膳を担い、客と触れ合うイベント「まあいいかcafé」が7月31日、京都市国際交流会館(左京区)で開催され、市民60人が来店した。市民グループ「まあいいかlaboきょうと」が、2018年から府内各地で催している。認知症を抱える参加者は「キャスト」と呼ばれ、働くことを通じ、人と接し、社会とつながることが目的。客は注文がまちがっていても「まあいいか」と受け入れ、会場は笑顔が絶えない。キャストとして初参加のAさん(88歳、男性)は「たくさん来てくれてうれしい。また参加したい」と満足気、2年ぶりに参加したTさん(81歳、女性)も「接客は無我夢中ですが、ワクワクします」と目を輝かせた。カフェを主宰する平井万紀子さんは「コロナ禍で難しさはあるが、熱意あるスタッフに助けられている」「今後は(企業との共催など)認知症に関心のない層との接点を増やしたい」と語った。今後の予定などの詳細はサイトから。
詳細:https://kyoto-np.jp/_ZTYQIDA

使う人思い浮かべものづくり楽しむ
「作業工房ほうおう」で働く宇治市Fさん(63歳・男性)

製作したオーダーメイドの本棚

 京都認知症総合センター(宇治市)に併設する「カフェほうおう」で毎月4回開催される「作業工房ほうおう」。木工作品製作などを通じ、認知症当事者の社会参加を支援するプログラムだ。
 参加者の作業をリードするFさん(63歳)は、2019年のプログラム立ち上げ時からのメンバー。同じ年、若年性認知症と診断され、医師の勧めで「カフェほうおう」に通った。そこで出会った認知症の「先輩」たちの前向きな姿勢に刺激を受け、プログラム立ち上げに関わった。長年、電気機器メーカーで勤め、ものづくりや設計が好きだった。
 現在、福祉施設や行政からの発注を受け、作品を製作して対価を得るなど、工房の活動は徐々に広がっている。今後、企業からの受注など、事業を持続させるシステムづくりを目指す。「やりたいことはたくさんある。使う人を思い浮かべ、作業することがとにかく楽しい」Fさんは笑った。

街の「腰かけやすさ」考えてみませんか
チーム上京!のイベントから(京都市上京区)

町内に設置された「置きベンチ」の説明を聞く参加者(3月26日、京都市上京区)

 京都市上京区で認知症の安達春雄さん(69)を中心にまちづくりに取り組むグループ「チーム上京!」が3月に開いたイベント「ベンチを探せ! 西陣ご近所さんぽ」に同行した。

細い道が入り組む西陣。バス停や商店街のある大通りに出るまでに一息つけるベンチがあれば…という安達さんの声から、「置きベンチ」が道中2カ所に設置された。この取り組みを機に企画された「ご近所散歩」では、20人の参加者がまちなかを歩き、ベンチが置けそうな場所やベンチ代わりになりそうなスポットなど、街の「腰かけやすさ」を調べた。参加者は「座れそうな場所が思ったより多い。普段と視点を変えることで発見がある」「(私有地などで)座っていいよ、と家主が意思表示できる目印があると気軽に利用できる」など、感想を語り合った。

認知症=記憶障害だけではない
木津川市 Tさん(56歳・女性)

【テプラLite LR30(キングジム)】
スマホと同期してラベル出力ができる
【ヘルプマーク】
各行政窓口などで申請できる

 Tさんは3年前にアルツハイマー型認知症と診断された。書字障害で読み書きが難しい。「明朝体は分かるが、丸文字や手書きは分かりづらい」という。スマホで操作し手軽にラベルを出力できる「テプラ」を愛用し、カレンダーや手帳にメモ代わりに貼るようにしている。ネットやテレビで見つけた新製品はなるべくチェックし、生活に取り入れるか試すそうだ。
 外見では分からなくても周囲に配慮や援助を必要としていることを示す「ヘルプマーク」も「助ける人も助けられる人も知ってほしい」と話す。Tさんは空間認知にも障害があり、バスを降車する際、ふと降車ボタンの位置が分からなくなるため、優先席を選ぶ。「(見た目で分からない)障害で不便を感じている方は多い」「認知症=記憶障害だけではないことも理解してもらえれば」と話した。