高齢者や認知症の人の「住まい」を考える
◉認知症にやさしい異業種連携協議会
 京都高齢者あんしんサポート企業合同研修会

取り組み発表の様子

 地域で高齢者や認知症の人への対応に取り組む「京都高齢者あんしんサポート企業」・「認知症にやさしい異業種連携協議会」参画企業向け合同研修会が1月17日にオンラインで開かれ、77人が参加した。

 高齢者や認知症の人にとっての「住まい」をテーマに、京都府立医科大・成本迅教授が講演。認知症の人が抱える暮らしの中での課題に触れ、それぞれの職場で対応をシミュレーションすることが大切と呼び掛けた。
 不動産会社代表の取り組み発表では、高齢者の賃貸住宅需要が高まる中、平均年齢70歳のスタッフが同じ目線で応対する店舗の開設や、空き家をリノベーションし、高齢者や子どもが交流できる居場所づくりを行う事例の紹介があり、誰もが役割を持ちおせっかいをし合える地域社会になればと語った。
 その後のトークセッションでは、高齢者の住まいで関心の高い住み替えや見守りについて意見が交わされた。

誰もが利用し続けられる図書館へ
手引きを公開


 全国に約3300館ある公共図書館において、住民が認知症になっても引き続き利用できるよう配慮し、認知症の人が安心して社会生活を送ることを目的に「認知症バリアフリー社会実現のための手引き(図書館編)」が昨年刊行され、公開されている。
 手引きでは、図書館に期待される役割や取り組みの考え方を紹介。職員が認知症の人と接する際の心構え、館の環境づくりや対応のポイント、地域の関係機関と連携したシニア向けのカフェや講演会の開催などの実践を呼び掛けている。日本図書館協会の委員として作成に関わった京都市岩倉図書館の井上典子館長は「認知症バリアフリーの実践が継続的な取り組みとなるよう、手引きを参考に各図書館が業務に即したマニュアルを作成することも期待されている」と話した。

 冊子は、官と民の約100団体が立ち上げた「日本認知症官民協議会」が業種ごとに委員会を設け、取りまとめた。「金融編」「小売編」「住宅編」など8つの業界の手引きがホームページで公開されている。

 冊子は以下URLから閲覧できる。https://kyoto-np.jp/_GZBRBZU

認知症の人にやさしい意思決定支援を考える
◉意思決定支援研究大会

講演する筧裕介さん

 医療、福祉、金融、法律の現場から認知症の人にやさしい意思決定支援を考える第5回意思決定支援研究大会(日本意思決定支援推進機構主催)が11月11日、キャンパスプラザ京都(下京区)で開かれ、会場・オンラインで約200人が参加した。
 ベストセラー「認知症世界の歩き方」の著者、筧裕介さんが講演し、認知症のある人の視点で、暮らしで起こるトラブルを視覚的に解説。筧さんは「認知症のある人との対話を通じ、生活や行動の困り事を想像し仮説・推論を駆使すれば、解決できることはもっとある」と語った。参加者は「認知機能低下に伴うトラブルは認知症のない人にも当てはまる。他人事ではない」と感想を話した。

 後半のシンポジウムは2部構成で、在宅医療、不妊治療、介護・福祉の現場で生かす意思決定支援のあり方や金融・法律の現場で意思決定能力評価や認知機能検査をどう生かすかについて、医師や専門家らが意見を交わした。

認知症になってもお客さんでいてもらうために 
◉令和5年度認知症にやさしい異業種連携協議会

講演する成本迅教授

 認知症にやさしい異業種連携協議会は、今年6月に成立した「認知症基本法」が掲げる「認知症の人の生活におけるバリアフリー化の推進」を受け、認知症の人が安心して買い物などの経済活動ができる社会を目指している。同会は事業者が認知症の人への対応を考えるための勉強会を8月30日に実施し、府内の事業者や福祉関係者など約100人が参加した。
 同会座長の府立医科大・成本迅教授は、消費者庁から発信された「認知症の人にやさしい対応のためのガイド」を紹介し、消費者トラブルに関連する事例を中心に、認知症特有の症状について説明した。成本教授自身もガイドの作成に関わっており、「顧客対応のマニュアルなど作成される際に活用してほしい」と話した。

 「認知症の人にやさしい対応のためのガイド」は以下URLから閲覧できる。https://kyoto-np.jp/_FGU1WWI

家族が学ぶ認知症のこと~連続講座~(南丹市編)
◉認知症の人と家族の会 京都府支部

交流会の様子(イメージ)

 ゆう薬局と「認知症の人と家族の会」京都府支部は、人生100年時代と言われる中、認知症になっても希望を失わず、明るく穏やかに生活するために、認知症について正しく理解することを目的に連続講座「家族が学ぶ認知症のこと(南丹市編)」を、6月28日から11月22日まで全6回の日程で開催する。講座では認知症に関わる専門家やデイケア・訪問介護に携わる福祉関係者、薬剤師らが交代で講演、講演後に毎回家族交流会も実施する。

【日程】〈第1回〉6/28、〈第2回〉7/27、〈第3回〉8/23、〈第4回〉9/27、〈第5回〉10/25、〈第6回〉11/22
【時間】14時~16時
【場所】日吉ゆう薬局(JR山陰本線 鍼灸大学前駅 徒歩1分)
【受講料】無料
【対象】初期から中期の認知症の人を在宅で介護している人、認知症のことに関心がある人
【申し込み】
電話:050・ 5358・6577
FAX:075・205・5 104
メール:kyoto@alzhei mer.or.jp
【詳細】https://alzheimer-kyoto.org/index.php

認知症にやさしい異業種連携協議会
◉令和4年度取組報告会

オンライン報告会の様子

 高齢者や認知症の人のためのモノやサービスのアイデアを検討し、開発、実証・実践する「認知症にやさしい異業種連携協議会」の報告会が3月10日に実施され、約180人が参加した。
 協議会は、2021年度から2つのワークショップを実践。一つは異業種がチームを結成し、ビジネスアイデアを検討するワークショップ。

 もう一つは、「買い物・小売」をテーマに、企業と認知症当事者が意見交換をしながら商品・サービスの開発を目指すものだ。
 参加した企業から、認知症本人の思いを応援する活動や就労支援に向けた調査、認知症本人を配慮した商品・サービス開発、環境づくりなど、それぞれの活動が報告された。ワークショップのほかにも、ICTやITを活用したサービス開発など、企業の取り組みについても発表があった。
 報告会に参加した企業は「協議会が当事者や福祉と連携できる場になっている。各々のできることを明らかにすることで、暮らしやすい社会の実現に近づける」と話した。

認知症本人の日々や移ろいを写真作品に
写真展「心の糸」開催中
◉八竹庵(京都市中京区)

「心の糸」の展示会場

 本紙連載中の「700万人時代 認知症とともに生きる」を再編集した写真展「心の糸」が、「K YOTOGRAPHIE京都国際写真祭」のメインプログラムの一つとして、八竹庵(京都市中京区)で開催されている。

 出品するのは本紙写真記者の松村和彦さん。「心の糸」は昨年、同写真祭のサテライトイベントとして実施された「KG+SELECT 20 22」に選定されグランプリを受賞した。写真展では、松村さんがこれまで取材した認知症の本人・家族・周囲の人々の日々や移ろいを表現した作品を通して認知症の世界を体験できる。入場無料。
【期間】5月14日(日)まで
【時間】10時〜19時 ※入場は閉館の30分前まで
【場所】八竹庵(旧川崎家住宅)京都市中京区三条町340
 4月23日(日)に松村さんとキュレーターの後藤由美さんによるアーティストトーク、4月29日(土)、5月6日(土)にアーティストツアー、5月7日(日)にパネルディスカッションを開催予定。
詳細:https://www.kyotographie.jp/programs/2023/kazuhiko-matsumura/

成年後見制度
支援者の理解促進を図る
◉令和4年度 認知症の人の意思決定支援研修

任意後見制度の説明をする司法書士

 「認知症の人の意思決定支援研修」は、認知症の人に関わる関係者がさまざまな生活場面で本人の意思を尊重し、その人らしい生活を送るためのサポートができるように、2018年度から開始された京都府独自の取り組み。主催は京都府で日本意思決定支援推進機構が運営し、年4回、異なるテーマで行われている。

 今年度の最後の研修が、2月4日、キャンパスプラザ京都(京都市下京区)とオンラインで実施され、地域包括支援センター職員や看護師など、定員以上の申し込みがあった。テーマは「意思決定支援に関わる制度・法律を知る」。任意後見制度の基礎知識とともに、利用場面を想定したワークを通して、参加者は後見制度の活用を検討した。
 府の担当者は「医療、福祉関係者だけでなく、企業の方など幅広い層に研修を受けてもらいたい」と話した。研修は、来年度以降も実施される予定。

「オレンジ」キャンペーン
シニア世代イベントに出展
◉SKY人生100年フェスタ 2022

パネル展示の様子

 本紙認知症啓発キャンペーン「オレンジ 認知症とともに生きる」は、12月3日、4日にみやこめっせ(左京区)で開催された「SKY人生100年フェスタ 2022」(京都府・京都SKYセンター主催)の会場でパネル展を開催した。

 同イベントは「暮らしの情報提供(企業展)」「世代交流(高校生横丁)」「スマホ相談」「サークル活動の紹介」の4つのコーナーを通して、人生100年時代の到来とともに、シニアの人たちが心豊かに過ごすためのヒントを紹介。4日には、笑福亭晃瓶さんと中村薫さんのトークショーも行われ、シニア世代を中心に多くの来場者でにぎわった。
 パネル展では、今年1月から毎月掲載したシリーズ紙面を展示。来場者は興味深くパネルを読み、認知症に関する理解を深めていた。

だれもが利用しやすい図書館を目指して
岩倉図書館

岩倉図書館の認知症にやさしい本棚

 全国に約3300館ある公共図書館は、地域住民から日常的に利用される施設として、地域の課題解決支援にも取り組む。近年では、認知症との関わり方についても模索しながら、さまざまな試みが進められている。
 岩倉図書館(左京区)館長の井上典子さんは、2015年から市内の図書館で、認知症に関する展示やイベントなどを通して、利用者に情報提供と啓発を行ってきた。
 昨年、同館では「認知症にやさしい図書館」企画として、新聞を活用した認知症の人と地域の人が交流するワークショップを実施した。

また、児童向けの認知症サポーター養成講座を児童館等と協力して行うなど、認知症への理解を深める活動を続けている。この他にも、医療機関や大学など多職種と連携しながら、だれもが利用しやすい図書館を目指してサービスを提供している。井上さんは「認知症になっても住み慣れた地域で自分らしい生活を送ることができるように、図書館の役割を考え取り組み続けていきたい」と語る。

地域の企業、事業所ができることを学ぶ
京都高齢者あんしんサポート企業養成研修

6月29日京府医師会館での様子

  
認定ステッカー

 京都府、京都地域包括ケア推進機構は、「京都高齢者あんしんサポート企業養成研修」を6月29日に府医師会館(中京区)で開催。府内の事業所や企業から29人が参加した。「京都高齢者あんしんサポート企業」は、府独自の制度。高齢者や認知症の人が安心して暮らせる地域づくりのため、声掛けや買い物支援のほか、必要に応じた相談窓口の紹介や地域における情報発信などを行う。
 研修では、認知症の理解を深める「認知症サポーター養成講座」が実施された後、高齢者や認知症の人への対応のポイントを専門家が解説、府内の認知症相談窓口や制度なども紹介された。受講した事業所は、「京都高齢者あんしんサポート企業」の目印となるステッカーなどを掲示できる。次回は府医師会館で9月12日14時から。
詳細:https://kyoto-np.jp/_JFg3FFM

認知症の人と家族が安心して集う場
京都認知症カフェ連絡会/川北雄一郎さん

 認知症の人とその家族、地域住民、専門職など、誰もが参加できる「認知症カフェ」。京都府内で約170カ所が開設され、参加者が互いの気持ちや情報を共有し、社会との関わりを持てる場となっている。
 認知症カフェ有志でつくる京都認知症カフェ連絡会・事務局長の川北雄一郎さんは、自身も宇治市でカフェの運営に携わりながら、府内の認知症カフェの交流と活性化にも尽力する。「不安を抱える人が、同じ境遇の仲間を見つけ自分らしく生きられる居場所にしてほしい。いつか『認知症カフェ』がなくても安心して暮らせる社会を目指したい」と語る。

コロナ禍以後、交流が途絶えているカフェも多く、オンラインの活用など試行錯誤が続く。「大事なのは交流やつながりを途絶えさせないこと」と力を込めた。
 連絡会では、地域でのカフェ再開の後押しになればと「令和4年度京都認知症カフェセミナー」を7月9日にオンライン配信で実施する。
詳細:https://www.kyoto-ninchisho.org/?p=3646

府内のサポーター30万人以上 地域や職場で受講
認知症サポーター養成講座

 認知症を理解し、認知症の人や家族を支援する人を養成する「認知症サポーター養成講座」は、国が推進し、自治体または企業・職域団体(従業員を対象)が実施する。講座(90分)は専門の研修を受けた「キャラバン・メイト」が講師を務める。

府内の開催数は累計9千回以上、サポーター数は30万人を超えた(21年12月末時点)。 講座回数が府内最多の京都市で開催を受託する市長寿すこやかセンターの谷郁子さんは「認知症の人の目線を講座内容に反映し、認知症になっても安心して暮らせることが参加者に伝われば。今後はサポーターと当事者をつなげ、地域づくりに生かしたい」と語った。

認知症の世界を表現「心の糸」作品展示
*** 展示終了 ***

 認知症に関する取材を続ける写真記者の松村和彦さん(京都新聞社編集局写真部)の作品展がくろちく万蔵ビル(京都市中京区)で開催されている。松村さんが取材を通して出会った人々に焦点を当て、認知症を取り巻く環境や本人の心情などを表現したもので、社会課題の解決を目指す展示空間となっている。5月8日まで。入場無料。


 作品展は京都国際写真祭「KYOTOGRAPHIE」のサテライトイベントとして開催。写真家やキュレーターの発掘と支援を目的とした公募型アートフェスティバル「KG+」内のプログラム「KG+SELECT」に選定されたもので、松村さんも含め、国際的に活躍する審査委員によって選出された8組のアーティストの展示で構成されている。
詳細:https://www.kyotographie.jp/kgplus/

下坂厚さん 写真展を開催
「記憶とつなぐ ある写真家の物語」
*** 受付終了 ***


 若年性認知症当事者で写真家としても活動する下坂厚さんの写真展「記憶とつなぐ ある写真家の物語」(京都府主催)が京都市京セラ美術館で3月15日から20日まで開催される。下坂さんの表現や活動の変遷などを通じて一人の若年性認知症の当事者の生き方を紹介する。会場では若年性認知症啓発コーナーも設置、認知症の人の就労イベントも開かれる。
 また、下坂さんとゲストによるギャラリートークも開催。 ①3月18日 松村和彦氏(本紙編集局写真部 記者) ②3月19日 南博史氏(京都外国語大 教授)、各日14〜15時まで。定員30人。いずれも参加無料。詳細:(http://www.pref.kyoto.jp/kourei-engo/news/03kioku.html/