福祉関係者、円滑に連携
京都福祉サービス協会



ゲーム性を取り入れ
活発に議論する参加者

 京都市内で幅広い分野の福祉サービスを展開する京都福祉サービス協会。11月に同協会が催した「ファシリテーション研修」は、多様な分野で活躍する職員が連携を深め、職員が地域で課題解決の担い手となるための「ファシリテーション力」を養おうと開かれた。講座では福祉に関わる活発な議論が展開された。

◆福祉サービスをけん引
 協会の前身は、1986年に発足した「京都ホームヘルプサービス協議会」。増加する福祉ニーズに応え、93年に「社会福祉法人京都福祉サービス協会」として認可を受けた。
 現在、京都市内で訪問介護等事業所16カ所、訪問看護ステーション1カ所、特別養護老人ホームやデイサービスセンターなど高齢者福祉施設11カ所、 児童館4カ所の運営を行い、職員は2500人を超える。全国有数の事業規模で、京都市における福祉サービスをけん引する存在だ。
 「ファシリテーション研修」では、協会の多様な職種の職員で構成する3つのグループが「問い」を立て、職員が普段接点を持つ外部のメンバーによる視点も交え議論した。



◆福祉の仕事はAIやロボットがやるべき?
 一つ目の問いは「バズるサービス協会とは」。世間の福祉に対するイメージと実際のギャップを埋め、魅力をアピールする手法を探った。「仕事がきつそう」「給料が安い」といった“一般的な”福祉のマイナスイメージが上がる一方、「仕事に誇りが持てる」「人との関わりが成長につながる」などプラス面の意見には拍手も起こった。参加者は「福祉の仕事を選ぶ人や経験の浅い若手職員に、現場のやりがいや楽しさを伝えたい」と、SNS(会員制交流サイト)などで効果的な情報発信を提案した。
 「福祉の仕事はロボットやAIがしたらよいか」との問いではさらに議論が白熱。ロボットやAI(人工知能)の活用は、人ができない作業を担ったり、同じ品質で作業がぶれないといったメリットがある一方、「失敗することで利用者とのコミュニケーションが深まる」という現場ならではの声も。「人間は喜怒哀楽があり、メリットもデメリットもあるが、人間同士だからこそという部分は福祉の本質」との意見が出た。
 同協会地域共生社会推進センターの森賢一さんは、「多様な施設で働く職員がいる。横の連携や外部とのつながりで仕事の視野が広がる。協会の職員が地域課題に寄り添い地域と共に向き合っていく存在になってほしい」と講座のねらいを語った。

京都生協の移動店舗
「おかいもの便」

「京都生協のお店」第一号店として
開設した下鴨店(現コープ下鴨、1968年)

牛乳の共同購入の配達風景(1973年)

◆頼もしき隣人たらん
58年目を迎えた京都生協地域とともに

 高度経済成長による物価高騰が暮らしを直撃し、不安が高まる時代であった1964年、京都生協は設立されました。発足当初は組合員宅を1軒1軒回って注文を聞き商品を配達していましたが、後に共同で牛乳を購入する「班」が誕生し、現在のコープの宅配(共同購入)が広がりました。
 現在、組合員数はおよそ56万人。宅配、店舗、福祉を含めた“くらしサポート”の3つを事業の柱として、普段の食生活を中心に、さまざまなシーンで暮らしをサポートしています。 

◆理念に込める思い

 京都生協の理念「頼もしき隣人たらん」には「私たちは、相手を気にかけ、困っていることはともに考え行動し、暮らしに寄り添い、支え合っていく『頼もしき存在』であり続けます」との決意が込められています。
 京都生協は今日、SDGs(持続可能な開発目標)を事業活動に位置づけ、持続可能で安心して暮らせる地域社会づくりを目指し、私たちの「頼もしき隣人」であり続けています。


◆京都生協の取り組み
 移動店舗「おかいもの便」

 食料品などの日常の買い物が困難または不便な状況にある「買い物弱者」は全国で800万人ともいわれています。京都生協が地域の買い物支援事業として2015年に開始した移動店舗「おかいもの便」は、現在3台の専用車両で1週間に府内90カ所を巡回、650人ほどが利用しています。

嵐山東学区での巡回の様子
(22年10月20日撮影)

移動店舗「おかいもの便」のトラック

◆地域の「困った」に寄り添う
 毎週木曜に巡回する嵐山東学区(西京区)では、16年6月、地域唯一のショッピングセンターが閉店。住民の「困った」の声を受け、地域ケア会議の場で「おかいもの便」を提案したのは西京区社会福祉協議会でした。巡回の停留所は地元の協力により住民や寺院の駐車場が無償提供され、近隣住民がボランティアで無理なく立ち会うことも決まりました。初日には約80人が訪れ大盛況。その後6年間、コロナ禍の外出自粛時も巡回され、地域になくてはならない存在となりました。

◆自然と交流が生まれる
 16年からボランティアの代表を務める倉橋精一郎さんは準備や片付けを手伝い、雨の日には雨除けシートも用意するとのこと。「車のない人や一人暮らしの高齢者は本当に助かっている。常連が多く、自然と交流も生まれる」と話してくれました。
 売れ筋はお刺身などの生鮮食品。総菜や日用品もそろいます。買い物客の女性は「どれも新鮮で、毎週楽しみ」と笑顔。

 「心掛けていることは一人一人との会話と心配り」と話すのは移動店舗巡回担当の田中亜弥さん。利用者の名前といつも購入する商品や好みを把握して、品ぞろえに生かしているそうで、「いつも来てくださる皆さんには感謝しかありません」と力を込めました。

◆住民が主人公
 みなが資源を持ち寄る

 地域の課題は、住民を主人公としつつ、さまざまな団体や組織が個々の資源を持ち寄って取り組むことが重要です。
 移動店舗チーフの中山義秋さんは、「『おかいもの便』は地域包括ケアシステムの一員として、その役割を発揮できる存在。まさに京都生協の理念『頼もしき隣人たらん』を体現しています。今後も必要とされる地域があれば新たに展開していきたいです」と語りました。

【インタビュー】QOL向上を目指し、安心を届けたい
第一生命保険 京都総合支社

吉野充宏
京都総合支社長

 人生100年時代と言われる今、長い人生を「健康で過ごせること」や「お金の不安がないこと」の重要性が高まっている。地域の皆さまの「一生涯のパートナー」として、もしもへの備えを提案する第一生命保険では、保険による「保障」だけでなく、人と地域や社会の新たな「つながり」のあり方の探求を通じ、地域の皆さまのQOL(生活の質)向上を目指している。同社の吉野充宏京都総合支社長に府内での取り組みを聞いた。

◆地域の皆さまのQOL向上を目指して

 当社では、2018年に京都府と包括連携協定を締結、府内の自治体では21年に宮津市、22年に京都市とも締結し、がん検診受診率向上に向けた啓発活動など、健康増進分野を中心とした地域課題解決に向けた取り組みを推進し、府民の皆さまのQOL向上に資する活動を展開しています。
 近年、地域の皆さまとの関わりの中で、生涯設計デザイナーの認知症に対する理解促進も重要性を増しており、19年に支社の内勤職および近隣オフィスの生涯設計デザイナーを中心に認知症サポーター養成講座を受講し、意識向上に努めています。


◆地域の実情に寄り添って安心を届けたい

 例えば峰山オフィスでは京丹後市と密接に連携し「京都高齢者あんしんサポート企業」として、お客さま訪問時に認知症に関する情報提供に努めるほか、認知症サポーター養成講座の講師役を務める「キャラバン・メイト」として5人の生涯設計デザイナーが活躍、京都府が結成し、認知症の正しい理解と支援を推進するボランティアの啓発部隊「オレンジロードつなげ隊」の活動にも参加し、地域での見守り活動や啓発活動を行っています。活動の一環で、オフィスの横にご近所さんが集えるベンチも設置しました。また、京丹後市が力を入れている「互助」をICTでサポートする「みまもりあいアプリ」の普及活動も推進し、最新技術を駆使した新しいまちづくりの可能性も地域の皆さまと一緒になって考えています。ほかにも、社会福祉協議会が取り組む単身高齢者の見守り事業に生涯設計デザイナーがボランティアで参加するなど、地域ごとに活動内容はさまざま。地域の実情に寄り添った取り組みとなるよう努めています。
 地域の皆さまとの活動を通じ、保険の商品、サービスの力だけではなく、第一生命がここにあることでの安心を感じてもらいたい、そんな思いで今後も取り組みを続けていきたいと考えています。

【インタビュー】本人の権利を守る成年後見制度
京都司法書士会

西脇正博副会長

 認知症などで判断能力が低下した人の財産や権利を守る「成年後見制度」。近年、後見人には弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職が選定されるケースが増えている。京都司法書士会では、会員が後見人となるだけでなく、成年後見相談の開催など、制度の利用促進に長年関わってきた。同会の西脇正博副会長に取り組みの現状を聞いた。 
 成年後見制度は、認知症などで判断能力の低下した方の権利を守り、より自分らしく生きることを支援する制度で、全国でおよそ24万人が選定されています。制度は、家族などが家庭裁判所に利用を申し立てる「法定後見」と、本人が自ら後見人を選ぶ「任意後見」に大別されます。
 最高裁の報告では2021年の案件で、後見人のおよそ8割を親族以外が務め、中でも司法書士は全体の4割に上ります。司法書士は自ら後見人となり、本人の財産管理や身上保護を行うほか、後見人の監督なども行っています。

 また、1999(平成11)年に「成年後見センター・リーガルサポート」を設立し、20年以上にわたり成年後見制度に積極的に関与しています。主なものとしては、認知症の方などを対象とした支援活動、一定の研修等を受けて名簿に登載された成年後見人の推薦や指導監督、講師の派遣・調査研究などがあり、また最近は自治体などの設置した中核機関などに委員を派遣することも増えています。
 京都司法書士会では、相談業務に特に積極的に取り組んでおり、成年後見制度全般についてはもちろん、生前贈与などの不動産に関する手続き、相続・遺言に関すること、家族信託など、認知症になる前にしておくべきとされる手続きについても総合的に相談に応じています。私たち司法書士は、これからも認知症の方やそのご家族をサポートしていく専門家として、自治体や関連機関、各専門家と連携しながら地域共生社会の実現に向けて良質な法的サービスを提供していきます。まずはどうぞお気軽にご相談ください。

【インタビュー】見守り活動で地域と連携 京都生活協同組合

宅配事業企画部 夕食サポート
大西高雄リーダー
夕食サポート おかずコースの一例

 暮らしに寄り添い、宅配、店舗、共済、福祉などの事業を展開する京都生活協同組合(以下、京都生協)は、過疎・高齢化が進む地域の実情を踏まえ、府内23の自治体と「地域の見守り協定」を結んでいる。毎日の夕食を個別宅配する「夕食サポート」事業を担当する宅配事業企画部・大西高雄さんに宅配現場での見守り活動について話を聞いた。

◆毎日の「夕食サポート」を通じた見守り
「夕食サポート」事業は2012年に開始。栄養バランスを考えた日替わりの食事を毎日個別宅配するもので、現在、府内で1日4600食以上をお届けしています。幅広い世代の利用がある中、特に高齢の方、お一人暮らし世帯の需要が高く、今後も増加が見込まれます。

 夕食はコロナ対策もあり「置き配」のかたちでお届けし、配送員が前日の利用状況を確認しています。「弁当がそのままで様子がおかしい」など、配送員から報告される件数は1日に数件、1カ月で80件ほどあります。
 私は常駐する職員と、利用者に異常があった場合の対応も担っています。ご本人などへ連絡し、安否がわからない場合は、自治体ごとの協定に基づき、社会福祉協議会や行政に対応を依頼します。大事に至らないケースがほとんどですが、配送員と状況を確認し合い、慎重に対応に当たっています。

◆地域との連携
 できる限りのことを
 あるお一人暮らしの方の事案で、前日のお弁当がそのままで、本人への連絡もつかず、他府県に住む息子さんに連絡を取ると「宅配を利用している事自体、知らなかった」と。翌日、ご本人は亡くなっておられたそうです。後日、息子さんから「宅配がなければ、もっと発見が遅れていた」と感謝の言葉をいただきました。やりきれない思いですが、取り組みの意義も痛感する出来事でした。
 京都生協は見守り活動において、安否確認に関する法的義務や責任を負うわけではありません。しかし、地域のコミュニティーと連携し、できる限りの役割を担い、暮らしの安心に貢献したいと、取り組みを進めています。

【インタビュー】当事者や家族の手助けになる存在でありたい 三笑堂

吾郷耕平さん
ショールーム笑顔(京都市南区)

 認知症の人へのサポートは長期にわたることが多く、求められる支援もさまざまだ。本人がこれまで通りの生活をできるだけ長く続けられるよう、また、支援者の心身面の負担を軽くできるよう、多様な製品やサービスの存在が欠かせない。京都を拠点に創業93年、医療介護用品商社の三笑堂・ライフケア事業部の吾郷耕平さんに、認知症に活用できる福祉用具が実際に活用されている事例を聞いた。

◆家族からの相談を機に製品の導入・運用を支援
 Aさんは認知症と診断されているものの、身体はお元気で自転車に乗ることを趣味とされていました。最近、「家に帰る道が分からない」という症状が何度も見られ、家族総出で捜索されることも。このままでは、真夏や真冬には命を脅かすのではないか、と心配されたご家族より相談を頂きました。
 そこで「お散歩コール」というGPSと徘徊感知機器(介護保険レンタル対象)を用いた商品をお試しいただくことになりました。

 導入後、ご家族と連絡を取り合い運用したところ、「2週間で7度」家に帰れない状況が発生。幸い、7度とも「お散歩コール」を活用したことで早期発見につながり、家族総出での捜索までには至りませんでした。中には、雨宿りしていて動けない状況や10㌖離れたところで発見されたケースもありました。
 導入当初は、ご家族でも予想できない行動が多々あったそうです。GPSの履歴を小まめに確認し、少しずつ行動パターンが把握できてきたことで、早期発見につながり、ご家族の不安解消にもつながったと非常に喜んでいただけました。


◆「商品」の存在や「相談できる窓口」の役割を発信
 このケースのように、相談があった場合に提案できる商品があるものの、世間一般にはあまり知られていないのが現状です。また、納品後の継続した連携がいかに重要かも実感できました。
 今以上に「商品」の存在や「相談できる窓口」として当社のような企業もあるという情報を発信し、認知症の当事者やそのご家族のお手伝いができる存在でありたいと思っています。
 同社の本社に隣接するショールーム笑顔(京都市南区)は、「シルバー世代をより快適にお過ごしいただくための、アイテムの探し場」を目指し約1000点の介護用品を展示。一人一人の日常生活や介護の場を容易に想像できるよう、展示が工夫され、商品を実際に手に取り、試すことができる。

【対談】認知症に関わる薬剤師の役割とは ゆう薬局グループ

 ゆう薬局グループは京都府内に95店舗を展開。近隣の地域包括支援センター(以下:地域包括)と連携した認知症サポーター養成講座を開くなど認知症に関わる取り組みを続ける。薬剤師の船戸一晴さん、片岡礼奈さんに薬剤師の役割について語ってもらった。

◆薬剤師は認知症の知識や対応力不可欠
片岡 「認知症」という呼称が浸透し、認知症はだれもがなり得る病気、みんなで助け合って、という流れがようやくできつつありますね。以前より隠す方が減り、悩みや不安を打ち明けられるケースも増えました。
船戸 初期診断に至ってない方や介護度が上がる前の方に症状が現れ、地域包括やご家族から相談を受けて、薬剤師が初期集中支援チームやかかりつけ医につなぐ事例もあります。
片岡 外来に来られる女性の家族からの連絡で訪問すると、押し入れに宝(薬)の山…。医師に相談し、ヘルパーや配食センター員など関わる職種が連携して毎日訪問し服薬フォローをしました。その方の健康を守り、その街で望むように暮らしていただくのが在宅支援。そのバックアップも薬剤師の使命です。
船戸 私たちの業務は認知症の知識や対応力が不可欠です。スタッフは社内研修、在宅医療や認知症ケアを受け入れる店舗でのOJTなどで経験を積みます。在宅、外来、地域対応を通じお客さまを見守る環境を大切にしています。


◆地域包括単位で異業種の連携を
片岡 私が担当する中京区では、認知症連携の会といって行政、医療、介護、地域包括、社会福祉協議会、家族の会、オレンジカフェなど、認知症を取り巻く職種が一緒になって活動しています。昨年、元小学校区の自治会長の協力で、集会場でサテライト研修を行い、盛況でした。

船戸 ゆう薬局は行政区ごとの担当がトライ&エラーを繰り返し、その事例共有も活発です。

片岡 地域の活動を本部が知るのは事後なんてことも(笑)。とにかく地域へ出なさいという社風です。
船戸 昔から地域の声を聴けと言われてきました。薬剤師は相談されると喜ぶ職種、どんどん使ってほしい。地域包括と実施しているサポーター養成講座を医療、介護、福祉以外の職種向けにもっと広げたいですね。地域包括単位で互いに「何かあったらこの人に相談」という関係性を構築したいです。
片岡 薬剤師は国家資格ですが相談は無料です(笑)。いろいろ声を掛けてもらえるとうれしいですね。