賛同企業代表者 文化人 対談シリーズ
経済面コラム

共に変える、共に創る、未来へ

Let’s change our behavior. And create our future.

- 2023元日 文化人メッセージ -

中村多伽

全体最適の中で生まれた歪み
未来を変えるアクションを起こす

中村多伽
社会起業家

私は「社会問題を解決する起業家(=社会起業家)を育て、投資をする」会社を経営しています。ところで「社会問題」ってなんでしょう?SDGs(持続可能な開発目標)とか地球環境とか貧困問題とか、具体例が挙がる方もいるかもしれません。はたまた昔は普通だったものが今は社会問題と言われることもあります。例えば、昔の人類は、士農工商とか、家父長制とか、不平等が当たり前でした。そこから時が流れ、人が平等でないことは社会問題だと言われるようになりました。以上のように、社会問題とは単に善悪や正義で決まるものではありません。お気づきのように、この社会問題という言葉には共通の定義がないのです。
ただそれだと困るので、私なりに定義してみました。この世界は、多くの人にとって都合の良い前提をもとに進みます。例えば、技術発展で人類が便利になるとか、企業が労働量を増やしたら経済が発展するとか、そういう前提です。ただ、これは多くの人にとって(もしくは力の強い人にとって)都合がいい、もしくは多くの人というくくりにしたら都合がいい、というだけです。つまり「全ての人」や「一人一人」にとってではないので、例えば環境汚染とか、過労死とか、必ずどこかに歪みが生まれます。この歪みを、私は「社会問題」としています。
つまり、「社会問題=人類による全体最適の中で生まれた歪み」であり、〝多くの人”にとって都合がいいので、それを変えたい意志や人が少ない。だから放っておかれて、気づいた時には〝多くの人”にとっても不都合な状況になります。気候変動がその最たる例ですね。そのため、歪みにはすぐ注目して解決のためのアクションを取らねばならないのです。
そんな難しいことどうやってやるかって?そこは、私が応援する社会起業家の腕の見せ所です。例えば、「環境問題のために寄付してください」と言われても状況によっては難しいですよね。でも「このおいしい野菜いかがですか?」と言われ、買ってみたらおいしかったし、実は環境負荷の低い農法で作られていた、となったら野菜は日々食べるものですし続けられそうです。そういった「自分にメリットがある上に実は社会問題の解決につながっていた」という工夫を作り出すのが社会起業家の仕事です。思いと同時に続けられる仕組みを設計することによって、人々が手を取り合って未来を変えるスピードが上がっていくと信じて、今日もさまざまな起業家と奮闘しています。

◉なかむら・たか
1995年生まれ。taliki代表取締役CEO/talikiファンド代表パートナー。京都大卒。カンボジアに2校の学校建設を行った後、ニューヨークへ留学。現地報道局に勤務し2016年大統領選や国連総会の取材に携わる。「社会課題を解決するプレイヤーの支援」の必要性を感じ、帰国後、talikiを設立。事業開発を支援しながら、20年に投資ファンドを設立し投資活動にも従事。