賛同企業代表者 文化人 対談シリーズ
経済面コラム

共に変える、共に創る、未来へ

Let’s change our behavior. And create our future.

- 2023元日 文化人メッセージ -

仲田順和

命のつながりに
思いを寄せる「心」を持つ

仲田順和
総本山醍醐寺座主

心新たに2023(令和5)年の新春を迎えますことを寿ぎ申し上げます。不安の多い世情ではございますが、新年を迎える楽しみは、過去から未来へと続く命のつながりにときめきを感じるひとときではないかと存じます。
本年は、弘法大師空海上人のご誕生1250年にあたり、さらには真言宗の立教開宗1200年の記念の年となります。醍醐寺の初代座主観賢僧正は醍醐天皇に大師号の下賜を願い出ました。天皇は空海上人のご業績を称え、「弘法利生」という言葉の中から「弘法」の二字を取り、大師号を下賜されました。この故事から醍醐寺は「弘法利生」の言葉を大切にしてまいりました。
空海上人は他の命を重んじ、「心の営み」に重きを置き、人が人を思う心を大切にされました。密教の教えを広めるだけでなく、多くの人々の暮らしに役立つことを実際になされたことからも、「弘法利生」の言葉の重みを感じることができます。
そして、空海上人を思慕したのが醍醐寺の開山、聖宝理源大師であり、聖宝理源大師のお心をそのままに、わかりやすく説いたのが観賢僧正でした。
「観賢僧正は諡号下賜ご報告のため、お大師様の休まれているお廟へと入って行かれました。そこでお大師様のお姿を見ると、髪とひげが伸びていたので剃って差し上げ、新しい衣にお着替えいただいた」とのお話が残っています。これはまさに、「人が人に対して祈る心」を表しています。多くの人々にとって祈りの原点となっているのは、「人が人に対して祈り、命が命に対して祈る」という行為です。「大師いまだおわします」の本質はここにあります。過去の命に対しても、生きているままにお仕えするのです。自然の中で生きる私たちは多くの命とつながり、1人だけでは生きていけません。過ぎ去った命がなければ今の私たちの命もありません。この命のつながりに思いを寄せることができる「心」を持つことが、人が生きる意義なのではないでしょうか。
どうぞ、そのような心を忘れず、今起きている社会の大きなうねりの中にあっても、ぜひ、優しい言葉で、優しい心を伝えるよう努力していきたいものです。そして、私たちは共に「国境を超えてアジア社会に、アフリカ社会に、南米社会に、ヨーロッパ社会に、アメリカ社会に、そして日本の社会の中にも、グローバルな多様性を持った人間観や宗教観の根本的な問い直しが存在する」、これをきちっと理解する必要があることを自覚していただきたいと思います。

◉なかだ・じゅんな
1934年東京都生まれ。大正大大学院にて仏教原典を中心に研究を進める。57年、品川寺に入山、出家。68年、品川寺住職となり、85年、総本山醍醐寺執行長、2010年、総本山醍醐寺座主に就任。16年、真言宗長者を務める。

醍醐天皇の菩提(ぼだい)を弔うため、951年に建立された五重塔(国宝)