賛同企業代表者 文化人 対談シリーズ
経済面コラム

共に変える、共に創る、未来へ

Let’s change our behavior. And create our future.

- 2023元日 文化人メッセージ -

窪田好男

若者と創る地域の未来

窪田好男
公共政策学者

「公共政策学」という比較的新しい学問は、国や地域社会のビジョンとそれを実現する公共政策や制度を考え、ツールを開発し、担い手を育てようとするものだ。社会科学に立脚するものの、現象の説明や法則の発見にとどまらず、静態的な観察者ではなく、経済や政治のアクティブなプレイヤー、国や地域の未来を創る人材を育てようとしている。
国や地域社会のビジョンとしては「地方創生」や「Society5.0」が重要で、地域における実践が問われるし、担い手として大学生や高校生といった若者が注目されている。地方創生は全国各地に、安全・安心で人々の生活・職業上の夢がかなえられる都市や連携による都市圏を創ろうとするもの、いわば東京に行かなくても夢がかなう地方を創ろうとするものである。Society5.0は、サイバー空間と現実空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会課題の解決を両立する、人間中心の社会とされ、地方創生にサイバー空間という広がりをもたらすものである。
京都府立大は「府内全域をキャンパスに」という方針を掲げ、サテライトオフィスを舞鶴と宮津に設置している。特に舞鶴赤れんがパークに設置された「まいづる赤れんがオフィス」には筆者らが毎週3日間滞在して勤務し、全ての授業を公開実施しながら地域連携や高大連携に取り組んでおり、ミニキャンパスの役割と府立大の展開拠点の役割を府北部で担っている。ここでの勤務は新しい出会いと発見の日々であり、驚きに満ちている。
西舞鶴高と東舞鶴高では、舞鶴市選挙管理委員会の協力を得て、本格的な模擬投票を中心とする主権者教育プログラムを実施した。昨年2月に実施した西舞鶴高では筆者らが模擬候補を務めたが、12月に実施した東舞鶴高では筆者の研究室の学生がオンラインで模擬候補を務め、参加した生徒たちにより身近に感じてもらうことができた。さらに西舞鶴高の生徒とは、昨年7月に実施された第26回参議院議員通常選挙に向けた投票呼び掛け活動を舞鶴サテライトオフィス周辺で実施することができた。山城高(京都市北区)では、舞鶴からオンラインで18歳成人を意識した主権者教育プログラムと消費者教育プログラムを実施した。
高校生の生活は授業、部活、受験勉強と高校内でこれまで完結してきたが、部活の見直しも行われる今、未来の社会を主体的に創る活動にも目を向けてほしい。そして、地域の側も高校や大学の取り組みに可能性を感じ、連携してほしいと考えている。

◉くぼた・よしお
1971年京都府生まれ、京都府立大公共政策学部教授・学長特別補佐・まいづる赤れんがオフィス長。京都大大学院博士後期課程修了。著書に「日本型政策評価としての事務事業評価」など。京都府内の地方自治体を中心に、総合計画や地方創生の総合戦略の策定と評価、地域連携・高大連携、ケースメソッドやゲームを用いた人材育成などに取り組んでいる。