賛同企業代表者 文化人 対談シリーズ
経済面コラム

共に変える、共に創る、未来へ

Let’s change our behavior. And create our future.

- 2023元日 文化人メッセージ -

木村幾次郎

未来につなぐため、
今何をすべきか、考え、行動する

木村幾次郎
祇園祭山鉾連合会理事長

昨年春、祇園祭山鉾巡行を催行するか、前年、前々年のように中止するか、各山鉾保存会の代表と協議を重ねました。新型コロナウイルスは感染拡大か、終息か、予断を許さない状況でしたが、結果、催行を決め、報道各社に発表。以後、不安な日々が続きました。お会いする方々から「祇園祭を楽しみにしています。頑張って」とお声掛けをいただき、力強く感じました。
6月、社会が、そして人々が前向きに動き出したことで「これならできる」と確信し、行政などのコロナ対策関係部署と協議し、各保存会へ指導、行事を進めました。
前祭、後祭とも晴天の下、まぶしく輝く山鉾を大勢の人に見ていただき良いお祭りとなりました。事故なく無事に催行できたこと、山鉾関係者の方々に感謝・感謝でした。
振り返れば、20年春はコロナの感染拡大が進み、東京五輪は延期を決定。各地の祭礼行事中止の報を受け、祇園祭も中止を決断しました。八坂神社は「神輿は出さないが、榊の枝を依代として御旅所への神幸は行います」とし、当連合会も山鉾名を記した榊の枝を奉持し、前祭は四条通を、後祭は三条~寺町を歩きました。疫病退散の祇園祭山鉾行事の本義は町々の清めであると、改めて実感しました。
21年は難しい選択を迫られました。コロナウイルスは変異しながら終息に至らず、残念ながら山鉾巡行は中止に。多くの保存会から「祇園祭は神事と共に文化の継承が主たる目的であり、2年続けて山鉾建てができないと3年目に完全な姿にできるか不安。山鉾建ては実施したい」との声が上がり、協議の結果、十分な感染対策をしての山鉾建てを了解しました。山鉾関係者から「1年のブランクで山鉾建てにこんなに時間がかかるとは」との感想を聞き、技術伝承の難しさを思い知りました。
山鉾巡行は大船鉾、鷹山が復興し、江戸時代の姿に戻りました。しかし、継承に課題が見えたのも事実。200年以上も使ってきた部材や装飾品は劣化により修理・復元が必要で、木部、染色品、金属工芸品、囃子道具などの材料の入手先、それを加工する人々の技術の伝承、化学製品などの新素材に頼るべきか、そして行事にかかる経費の捻出など、続けることの難しさは次世代の大きな課題となるでしょう。
応仁の乱以後500有余年、この間、われわれには想像できない困難があったと思います。それを乗り越えてきた祇園祭山鉾行事を今後100年、200年つなげるには今何をすべきか、それを考え、未来に向かって行動していきたいと思っています。

◉きむら・いくじろう
1948年生まれ。生祥小(現在は高倉小に統合)2年の時、長刀鉾の囃子方として初めて祇園祭の行事に参加。長刀鉾囃子方副代表、祇園祭山鉾連合会理事、副理事長を経て2019年から現職。コロナ禍での祭り実施に尽力を続ける。