賛同企業代表者 文化人 対談シリーズ
経済面コラム

共に変える、共に創る、未来へ

Let’s change our behavior. And create our future.

- 2023元日 文化人メッセージ -

天野弘堂

ご縁に導かれ
役割を果たし、支え合う

天野弘堂
林丘寺副住職

私は、北海道の大自然の中で生まれ育った。まさか京都の歴史あるお寺に私が来るとは夢にも思っていなかった。
しかし、これも仏門のご縁によるもの。歴史ある修学院離宮の傍ら、林丘寺に入寺させていただき24年が過ぎ、感謝申し上げている。
林丘寺は、三百余年の昔、仏教に帰依した第108代後水尾天皇勅願寺で、帝の第8皇女・光子内親王(法号を照山元揺)が、1680年、父帝の崩御により出家し修学院離宮内にあった楽只軒を含む自らの山荘を寺に改めた。
照山元揺尼は、優れた画家であった黄檗禅僧の卓峰道秀から絵を学び、その長い生涯において何千、何百という書・仏画・和歌を制作した。
ここは仏教儀式を行うだけではなく、文学・芸術および制作を自ら立ち触る場でもあったのだ。
長年にわたり創作された数々の作品は、何百年が経過しても色あせることはなく、次の世代へ最新の技術と古くからの技法を使い修復され、引き継がれていく。
京都では、毎日のようにどこかで社寺の修復作業が行われていると思われる。
社寺の修復をするためにはたくさんの人々の協力が必要不可欠だ。
それには、それぞれの役割分担があり、修復をする人、それを支える人、それを広報し世の中に紹介する人、次の未来へ引き継ぐ人、未来で継承する人、さまざまである。それらを全て、次の世代へバトンタッチできた時、初めてお役目を果たすことができる。
全てのものは、働くべき場所を得れば、なくてはならぬ役割を果たすもの。仏教の精神を表しており、皆にそれぞれの役割があり、支え合っている。
私は、自分の役割を、次の世代へ何を残していかなければならないかを、自分に問い掛けている。
自分の役割は、お寺に古くから続く儀式や習わしを伝え継ぎ、そして祈りを捧げること。これこそ、私のあるべき姿ではないか。初心に戻り何も特別なことではなく、脈々と続いてきた法灯を守り続けていくことが役割であると考えている。
京都は歴史ある場所や文化・芸術など素晴らしい景色を見せてくれる。また、忘れていたことを思い出させてくれるのも京都である。

◉あまの・こうどう
1959年北海道生まれ。96年林丘寺に入寺。愛知学院大大学院修了後、岐阜県美濃加茂市の正眼寺で仏道修行を経て、2007年から同寺副住職。