日々是好日

千　宗室
裏千家家元

この3年間、ウィズコロナの中で多くの方が不自由な思いや苦い経験をしてこられたことでしょう。私たちも不安を抱えながら、新しい時代にかなう姿を模索し、皆が安心して茶の湯を楽しめるよう試行錯誤をしてまいりました。
もとより茶の湯はその長い歴史の中で少しずつ形を変え、今日まで続いてきております。先人たちはさまざまな工夫を重ね、移りゆく季節に寄り添い、寒さや暑さともうまく折り合いをつけてきました。そのような中で、5月の初風炉や茶人の正月とも言われる炉開き、そして冬から春へと向かう「一陽来復」の時季には、殊更いろいろな思いを持って一つの節目を越えていくものです。厳しく長い冬があるからこそ、穏やかな春がいっそう生きてくるように、隣り合う季節は互いに持ちつ持たれつの関係にあります。あるとき瞬時にすべてが切り替わるというものではありません。
一日一日も同じことです。人はたくさんの昨日に支えられて今日を生きています。そして今日という日はすぐ昨日になり、明日やあさってと呼んだ未来の一日もまた今日に変わっていきます。だからこそ、積み重ねてきた過去を大切にし、どんな一日もしっかりと生きていく。「日々是好日」の繰り返し。そのような気持ちで、また新しい年を過ごしてまいりたいと存じます。