京都府認知症応援大使
9人が就任

 
委嘱状交付の様子
 
 
9人の京都府認知症応援大使

◆前を向いて暮らす姿
本人が積極的に発信

「京都府認知症応援大使」は、京都府が認知症の人を対象に募集。府および市町村などが行う普及啓発活動で、認知症になっても希望を持ち、前を向いて暮らす姿を積極的に発信し活動していく。2022年度に初めて任命され今回は2期目。再任4人を含む9人が委嘱式に臨み、古川博規副知事から委嘱状を受け取った。
 古川副知事は「認知症は誰もがなり得る。大使一人一人が個性を生かし生活を続ける姿が皆の励みになる」と期待を寄せた。
 22年から大使を務め再任された若年性認知症の下坂厚さん(51歳、京都市)は「講演や研修を通じ認知症のイメージが変わったという声をもらった。今後は若い世代や子どもたちにも経験を伝えたい」と抱負を語った。

  

 新たに委嘱された藤田佳児さん(宇治市、65歳)は、同市でもの作りの場「作業工房ほうおう」を立ち上げ活動。ピアサポーターとして認知症の人への本人支援も行う。藤田さんは「診断当初は恥ずかしいという思いもあったが、今は全くない。認知症になってもできることがあり、応援してくれる人がいることを力強く感じる。活動を知ってもらい、輪を広げたい」と話した。

◆つながり広げ
支えてくれた人たちへ恩返し

 委嘱を受けた大使と家族・支援者らによる交流会で、大使に就任した吉田哲久さん(64歳、京都市)の妻・富代さんは「大使というと荷が重いが、つらい時期に支えてもらった方への恩返しになれば」と話し、藤田さん、吉田さんと共にピアサポートに取り組む河田正裕さん(62歳、宇治市)は「自分たちが前に出て、まだつながれていない方とつながりたい」と就任の思いを語った。下坂さんは「〝支援される〟ではなく〝支援する〟側として認知症の人が活躍できる仕組みにつなげたい」とまとめた。
 大使の任期は2年。イベントなどでの講演、広報誌・映像などへの寄稿・出演、研修会への参加を通じ、府民の理解を深めるとともに、既に認知症と向き合っている人の社会参加を支援することを目指す。

認知症の人と共にできることを考える
令和6年度認知症フォーラム
認知症とともに2024

 京都市では、認知症を正しく理解し、認知症の人やその家族にとって身近な存在となる認知症サポーターが、本人と共に活動し地域づくりを目指す取り組みを推進している。9月26日、「ひと・まち交流館 京都」(下京区)で開かれたフォーラムに、認知症の人と家族、支援者が登壇し、市民ら130人が取り組みを聞いた。市社会福祉協議会、市長寿すこやかセンターが主催した。

◆本人起点の取り組み、広がる


サロンの仲間と登壇した下坂さん(右)


活動の喜びを語る宇野田さん(中央)

 ひと・まち交流館 京都で月2回開かれる「おれんじサロン ひと・まち」は、若年性認知症の人とその家族が対象。認知症のある人同士の「本人ミーティング」は、認知症本人の下坂厚さんが進行を務める。仲間と登壇した下坂さんは、初めてサロンを訪れた印象を「(専門職によって)用意され過ぎていた」とし、「本人がやりたいことを気軽に話せる場所に」との思いを強くしたという。サロンでは若者の認知症感を変えるため、大学と連携し「出張オレンジサロン」の取り組みも始めた。

 昨年秋、四条大宮で誕生した「チーム宇野田サロン」はグループホームを利用する宇野田祥子(84歳)さんの「施設に入居する認知症の人同士で、症状や暮らしについて話せる場所があれば」との思いがきっかけ。本人の思いを聞いた支援者らは市内の高齢者施設の協力を得て、宇野田さんらとの交流会を開催。宇野田さんは「出会いやつながりを生み、仲間も喜んでいる」と話した。その後、宇野田さん発案の企画や他のチームオレンジとの交流も始まった。支援者は「二つの取り組みを通して、これまで認知症サポーターなど周りの人が本人のできることや行動を決めつけてしまっていたのでは」と、本人起点での活動の在り方を訴えた。  
 認知症の人の家族として、父と活動する幸暁子さんは「家族も一緒に楽しい事探しを」とし、夫と活動する吉田富代さんは「家族だからこそ、適度な距離を保つことも必要」と話した。

◆〝新しい認知症感〟捉え直しを
 会の冒頭、今年施行された「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」について解説した鈴木森夫さん(認知症の人と家族の会・前代表)は「迷ったら、まず当事者の声を聞くこと」とし、北山病院・相談員の井上基さんは「『認知症になっても楽しむ』という〝新しい認知症感〟が本人起点で発信されつつある。(認知症の人の)仕事や社会参加をその中で捉え直すべき」とまとめた。
会場展示「認知症の人と共にできること」市社会福祉協議会の職員など約1,200人がメッセージを寄せた

9月は「認知症月間」
府内各地で認知症啓発イベント

 今年施行された「認知症基本法」において、9月は「認知症月間」、9月21日は「認知症の日」と定められ、認知症への理解を呼びかける啓発活動や関連行事が行われる。地域で活動する人との出会いや交流の場にぜひ参加してみては。府内で行われる9月の関連行事を紹介する。

◆9月の主な関連事業

◉「意思決定支援について」
【日時】21日13時30分〜15時30分
【内容】京都府立医科大大学院教授 成本迅氏の講演。パネルディスカッション「続けたいことをあきらめない工夫」も行う
【会場】京都経済センター
☎050・5358・6577

◉「認知症を正しく知ろう~認知症を身近に考える~」
【日時】17日13時30分〜16時ごろ
①講演(13時30分〜15時30分)②個別相談(15時30分〜16時ごろ)
【内容】認知症疾患医療センター 西山病院 医師 西村幸秀氏による講演会。講演後、西村医師との個別相談を実施する(申し込み時に希望した人で先着5人まで) ※対象:向日市民
【会場】向日市福祉会館3階 大会議室
☎075・932・1990

◉若年性認知症支援研修
【日時】19日14時〜16時
【内容】①講演「支援に活かそう、社会保障制度とサービス」〜障害福祉を重点的に〜②講演「支援の実際」
【講師】①NPO法人ワンハート 理事長 徳永一樹氏 ②府こころのケアセンター・若年性認知症支援コーディネーター 木村葉子氏、当事者 樋口聖典氏
【会場】山城広域振興局宇治総合庁舎大会議室
☎0774・21・2199

◉若年性認知症研修会
【日時】26日13時30分〜15時15分
①講演「若年性認知症の新たな治療とケアの選択〜早期発見と早期支援を目指すために〜」②「〜私のこれまでのこと、これから『やってみたい』こと〜」
【内容】山城総合医療センター 医師 大島洋一氏による講演。第2部では、若年性認知症当事者の声を聴き、私達にできること、一緒に行動できることを探る
【会場】京都山城総合医療センター9階
☎0774・72・0981

◉令和6年度若年性認知症支援研修会(丹後圏域支援者向け研修会)
【日時】12日15時30分〜17時30分
【内容】①実践報告②意見交流会
【出演者】①小規模多機能型居宅介護事業所おきなぎの家管理者 塚原直樹氏、認知症疾患医療センター相談員 大江八千代氏②京都府立医科大大学院教授 成本迅氏、府こころのケアセンター・ 若年性認知症支援コーディネーター 木村葉子氏
【会場】アグリセンター大宮 多目的ホール
☎0772・62・4312

◆9月は府内各地ランドマーク・名所が
認知症のシンボルカラー“オレンジ”に
ライトアップ!

【京都市内】京都府庁旧本館(18日〜19日、21日〜25日)、京都市京セラ美術館(21日)
【八幡市】さくらであい館展望塔(13日〜30日)

【向日市】向日市上植野浄水場配水塔(19日〜21日)
【久御山町】くみやま夢タワー137(17日〜23日)
【亀岡市】平和台公園平和塔、亀岡運動公園の噴水(いずれも17日〜23日)、亀岡駅北口噴水(17日〜20日)、保津大橋(11日〜21日)
【南丹市】南丹市国際交流会館(20日〜22日)
【福知山市】福知山城(13日〜27日)
【舞鶴市】五老スカイタワー(1日〜22日)、田辺城、赤レンガパーク2号棟(いずれも8月30日〜9月30日)、京都府中丹東保健所(19日〜30日)
【宮津市】天橋立(21日、22日)

ひと足先に若年性認知症になった私たちから
令和6年度若年性認知症支援基礎研修


吉田さん夫妻と支援者ら

 若年性認知症について理解を深め、本人や家族の思いを知り、支援について考える研修会(京都市主催)が5月30日に京都府医師会館(中京区)で開かれ、福祉の専門職や行政職員ら89人が参加した。

◆認知症「ケア」ではなく、
「サポート」へ

 若年性認知症は65歳未満で発症する認知症。若くして発症するため、本人が家庭や社会で重要な役割を担っているケースが多く、生活課題も多岐に渡るとされる。

 研修会の冒頭、府医師会で認知症担当理事を務める認知症サポート医・西村幸秀さんは、早期発見、早期治療の重要性とともに、若年性認知症を取り巻く府内の支援体制・事例を解説した。西村さんは「認知症『ケア』は、『サポート』に言い換えるべき」とし、その人らしくいられる支援、自己決定の尊重、生活環境・精神面、家族や支援者への配慮、社会復帰から終末期まで認知症のある人に寄り添う「サポート」の必要性を指摘した。



◆診断直後に必要な情報、冊子に
 京都市は今年、若年性認知症と診断された直後に、本人・家族にとって必要な情報をまとめた冊子「あなたに伝えたいこと〜ひと足先に若年性認知症になった私たちから〜」を発行した。編集に関わった若年性認知症の本人・家族による座談会で、認知症本人の下坂厚さんは「診断直後の孤独・孤立から一歩踏み出せる内容やデザインを心がけた」とし、2021年に診断を受けた吉田哲久さん(伏見区)の妻・富代さんは「(本人・家族が)信頼する人から、この冊子が届けられることを願っている」と思いを話した。

 後半は、吉田さん夫妻の支援に関わってきた伏見区初期集中支援チーム員・増本敬子さん、京都府若年性認知症支援コーディネーター・木村葉子さん、夫妻が複数の交流プログラムに参加する宇治市の常設型カフェ「カフェほうおう」の相談員・田中まりさんが登壇し、それぞれの関わりや役割を発表した。
 哲久さんは先月、カフェほうおうの非常勤職員にも採用された。哲久さんは「(多様な支援に恵まれ)疾病感への恐れが和らぎ、楽観的になれた」と話し、富代さんは「支援者の方々が分野を超えて連携し、チームで本人・家族を支えてほしい」と呼び掛けた。

冊子は下記URLから閲覧できます
https://www.city.kyoto.lg.jp/hokenfukushi/cmsfiles/contents/0000324/324054/anatani-tsutaetaikoto.pdf

きょうと認知症あんしんナビ

 

 認知症と向き合うために必要な情報とはどんなものだろうか。「もしも」に備えた情報や地域の認知症関連の取り組みを府民に向け発信するサイト「きょうと認知症あんしんナビ」を紹介する。
 きょうと認知症あんしんナビは、京都府や京都市、医療・介護・福祉団体でつくる京都地域包括ケア推進機構が認知症に関する医療・介護・福祉の情報を一体的に集約・発信することを目的に2014年にオープンした。

 サイトでは、認知症についての基礎知識や資料の閲覧、コールセンター、地域包括支援センターなどの相談窓口や地域の認知症カフェの検索、医療機関(専門外来、認知症疾患医療センター、認知症サポート医など)、介護サービスの検索など、認知症の人と家族向けの情報がテーマごとにまとめられ、このほど改定された、京都の認知症対策計画「第3次京都式オレンジプラン」も公開されている。
 また、認知症ケアの事例集や研修ツール、研修会情報など、関係者(行政担当者や専門職、事業所など)の利用も想定している。
 サイトを所管する京都地域包括ケア推進機構によると、閲覧数でみると医療機関検索と認知症カフェ検索の利用が特に多いという。
 「お知らせ」やブログでイベントや地域の活動も取り上げ、府内の市町村や保健所など公的機関のほか、認知症カフェにも積極的に発信を呼び掛けている。事務局の担当者は「もっと多くの府民や関係者に知っていただき、利用してもらいたい。府民向けのイベントも掲載しているので、実際に参加して認知症への理解を深めてもらえれば」と話す。

電話/075・822・3562(京都地域包括ケア推進機構)

きょうと認知症あんしんナビ
https://www.kyoto-ninchisho.org/

共生社会の実現に向けて
第3次京都式オレンジプランキックオフイベント

 
オレンジプランについて語り合う参加者

 
京都府認知症応援大使のトークセッション

 京都府の認知症総合対策推進計画「第3次京都式オレンジプラン」がこのほどまとまり、キックオフイベント「共生社会の実現に向けたきょうと認知症まちづくりフォーラム」が3月10日、京都府医師会館(中京区)で開かれ、会場とオンラインで市民ら190人が参加した。

◆本人の意思を尊重
地域で暮らし続けられる社会を
 府や京都市、医療・介護団体などでつくる京都地域包括ケア推進機構は、2013年に全国初となる認知症総合対策推進計画(京都式オレンジプラン)を策定。18年に改定し、今年度第3次プランをスタートさせた。

 計画では、望む社会の姿を「本人の意思が尊重され、住み慣れた地域で暮らし続けられる社会」とし、「10のアイメッセージ」を掲げる。改定にあたり、本人、家族、支援者がメッセージの達成状況を評価し、府内12カ所で本人、家族ミーティングを行い、声を反映した。

◆本人の声を起点に
地域とのつながりを

 改定の座長を務めた府医師会の認知症対策担当理事・西村幸秀さんがポイントを解説。検討時に設けた三つのテーマについて、認知症の本人・家族、専門職や支援者、企業らが意見を交わした。
 若年性認知症の本人として講演やSNSで発信する京都府認知症応援大使の下坂厚さんは、普及啓発と本人発信について「(発信によって)つながりが生まれる」とし、岩倉地域包括支援センターの松本惠生さんは「認知症サポーター養成講座などで本人の声を聞く機会を設けることが正しい理解につながる」と訴えた。認知症バリアフリー社会の実現に向けてというテーマでは、セブンイレブン・京都山科百々町店の清水美奈子さんが「お客さんの困り事に寄り添い、地域で愛されることが企業のロイヤリティ向上につながる」と利点を強調。京都市老人福祉施設協議会の河本歩美さんは「本人の〝やりたい〟を実現するため、地域でつながりを持つことが必要」と呼び掛けた。医療・介護サービスに望むことでは、認知症本人の幸陶一さんの娘・暁子さんが「本人のやりたいことに耳を傾け、行き届いたサービスを」と話した。
 フォーラムでは、地域包括支援センターが地元住民を巻き込む取り組みや「認知症の人と家族の会」の活動、デイサービスでの世代を超えた交流や高齢化が進む地域でコンビニエンスストアが取り組む買い物支援、府若年性認知症支援コーディネーターによる本人交流活動などの事例も発表された。

認知症の人と大学生が
「eスポーツ」交流大会

 
学生らとプレイする参加者

 
感想を語る参加者

 若年性認知症のある人やその家族が大学生とゲームを楽しみながら交流する「ENJOY!eスポーツ」の交流大会(府こころのケアセンター、佛教大主催)が、昨年12月、サンガスタジアム京セラ(亀岡市)で開かれ、認知症の本人とその家族、佛教大の学生ら70人が参加し、熱戦が繰り広げられた。

◆本人の「やってみたい」を
かたちに

 「eスポーツをやってみたい」―きっかけは本人の声だった。イベントは、府内の若年性認知症の人を支援する府こころのケアセンターが佛教大に呼び掛け、認知症の人とその家族が共に外出する機会を提供し、社会参加を支援しようと企画された。同大で理学療法や作業療法、看護を学ぶ1〜4回生37人が参加し、8月から準備会を重ねた。どんなゲームがよいか、チーム編成や運営方法をどうするか、認知症の人やその家族と一緒にプレイし、話し合いで決めた。「初めてでも分かりやすく、チーム戦で一体感が生まれる」として、大会では「ロケットカー」を操作し、チームで競うサッカーゲームが採用された。

◆交流から生まれる縁
大きな動きに

 大会当日、認知症の人と学生で4、5人のチームをつくり、まずはチーム名を決めた。練習が始まると、操作方法に戸惑う声も聞かれたが、コツをつかんだ学生らがサポートし、次第に笑顔と一体感が生まれた。
 交流大会は9チームが2つに分かれ、総当たりで対戦。勝率の高かった2チームが決勝を戦った。試合模様はモニターに映し出され、家族や支援者らが声援を送り、得点のたびに歓声と拍手で会場が沸いた。
 参加した若年性認知症の伏見区の女性(56歳)は「ゲームは学生以来。学生さんが丁寧に教えてくれて楽しい」と語り、付き添った親族の女性(54歳)も「はじめは(ゲームに)抵抗があったようだが、楽しんでくれてよかった」と見守った。
 試合後は全チームに賞状が授与され、参加者らが感想を語り合った。準備から関わった学生は「交流から今後のきっかけができたら」と笑顔。学生の指導に当たった同大保健医療技術学部の奥山紘平助教は「医療・福祉の専門職を目指す学生が当事者の方たちと接する機会にと企画したが、ゲーム好きが集まり、楽しんでくれたのが一番。この縁がもっと大きな動きにつながれば」と話した。

地域の中で先人の経験をつなぐ
認知症とまちづくりを考える


吉田哲久さん(中央)と
妻・富代さん(左)


 認知症の本人や家族の経験から、まちづくりを考える講座「認知症とともに生きる」が12月10日、京都文教大で開かれ市民、学生ら約150人が参加した。

◆多様な支援とつながり
道を開く

 宇治市は2016年、地域ぐるみの支援ネットワーク・認知症アクションアライアンス「れもねいど」を立ち上げ、行政、地域企業・団体が参画し「認知症にやさしいまち・うじ」の実現に向け取り組んでいる。講座は市と協定を結ぶ同大が毎年開催、認知症の診断を受けた吉田哲久(63)さんと妻・富代さんらが講演した。

 家電製品の技術職だった哲久さんは在職中の21年、突然同僚の名前が思い出せなくなるなどから、もの忘れ外来を受診し、若年性のアルツハイマー型認知症と診断された。仕事は続けたが次第に精神的に不安定となり入院を余儀なくされた。富代さんは「日常に支障がなく、(初期症状を)甘く見ていた。えらいことになった」と当時を振り返り、「すべて自分で解決しなければ」と思い悩んだという。
 夫妻の道が開けたのは「いろんな機関とつながれたこと」と、支援者として登壇した京都認知症総合センター・カフェほうおうの桝村雅文相談員は話す。 夫妻はまず主治医の紹介で「初期集中支援チーム」とつながり、介護保険や休職手続きの支援を受け、訪問看護の利用もはじめた。哲久さんは京都市の若年性認知症本人交流会「おれんじサロンひと・まち」にも出向き、認知症当事者で写真家の下坂厚さんから刺激を受けた。府の「若年性認知症コーディネーター」による特化したサポートにもつながり、住まいは京都市内だが、宇治のカフェほうおうにも二人で訪れ、「れもねいど」事業を通じ、さまざまな立場の人とも交流が始まった。




大学れもんカフェの様子

◆カフェは「絶妙な場所」
つながれる場、あり続けて

 哲久さんは「はじめカフェの意義が理解できなかったが、それぞれの個性で自分らしく頑張る皆の姿に触発され、自信を取り戻せた。カフェという場は『絶妙な場所』。感謝している」と話し、富代さんは「(カフェで)初めて同じ思いの家族と出会い、助かったと思った。いつでも、だれでも、どこでもつながれる場があり続けてほしい」と語った。
 「れもねいど」事業に関わる同大の平尾和之教授は「つながる場が重要。大事なのは、地域の中で経験をつないでいくこと」と意義を強調した。
 この日、学内では当事者・家族と支援者らが、学生とつくる「大学れもんカフェ」も開催され、幅広い世代の来場者らが交流を深めた。

 

「世界アルツハイマーデー」30年
認知症を楽しく、正しく知って

 
応援大使らのリレートーク


取り組み紹介

 
意見交換


 
企業・団体のブース

 「世界アルツハイマーデー」が制定されて今年で30年目を迎えた。認知症になっても安心して暮らせる社会を目指すため、自治体・企業・団体・市民が共に認知症を楽しく・正しく知る機会にしようと「第30回世界アルツハイマーデー2023 in KYOTO」が9月9日に開催された。

◆「認知症基本法」成立
本人の考え、尊重する社会を

 9月21日の「世界アルツハイマーデー」は、1994年に「国際アルツハイマー病協会」が制定。毎年、この日を中心に世界中で認知症の啓発活動が実施されている。今年6月に「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が成立し、9月21日は「認知症の日」、9月を「認知症月間」と法的にも定められた。
 9月9日に行われたイベントは認知症の人と家族の会、同京都府支部、実行委員企業、京都府、京都市が企画、京都市役所前広場と交流拠点クエスチョン(京都市中京区)を会場に、認知症の本人、家族らによるトークイベントや音楽ステージ、認知症や福祉に関わる団体・企業によるブース展示などが行われた。
 京都府認知症応援大使や介護家族によるリレートークでは、大使の下坂厚さんら5人が登壇、診断後の心境の変化や生活、家族・地域とのつながりについて語った。下坂さんは「診断されて突然何かが変わるわけではない。本人の考えを尊重し、やりたいことができる環境を整えて」と呼び掛けた。認知症がある夫を支える松井かよさんは「本人も家族も同じ立場の人とつながり、支え合えることが大事。一人で抱え込まないで」と話した。



◆企業内で認知症への正しい理解を
 取り組み紹介では、府、京都市の施策紹介に続き、異業種の企業が認知症にやさしいモノやサービスを検討し実践する「認知症にやさしい異業種連携協議会」参画企業らが自社の取り組みを説明した。
 認知症と共にあるまちづくりを考える意見交換会では、企業ができることとして「認知症サポーター養成講座などを活用し、企業内での認知症への正しい理解が大前提」「寛容さと包容力のある街づくりを目指さなければ支え合うことはできない。私たちの地域が全国の先例になれれば」といった意見が参加者から出された。

9月は「世界アルツハイマー月間」
府内各地で認知症啓発イベント


 「世界アルツハイマーデー」が制定されてから、今年で30年目を迎える。例年、9月21日の「世界アルツハイマーデー」を中心に、世界中で認知症の啓発活動が実施される。府内で予定されている関連行事を紹介する。

◆9月の主な関連事業
◉「第30回世界アルツハイマーデー2023inKYOTO」
【日時】9日10時〜15時30分
【内容】「認知症にやさしいまち」づくりに取り組んでいる自治体・企業・団体が連携して、楽しく・正しく認知症を知ってもらうためのイベントを開催
【会場】京都市役所前広場、京都信用金庫QUESTION
◎京都市役所前広場/見て聴いて楽しんで「警察音楽隊演奏」・「フルートとピアノによるアンサンブル演奏」、行政や企業による認知症関連の取り組み紹介、ちょっとひと休み「キッチンカー」など
◎QUESTION/認知症まちづくりワークショップ、京都府認知症応援大使のメッセージ、認知症こどもサイト~ストーリーを体験して認知症を学ぼう!〜、認知症にやさしい企業ブース、スタンプラリーなど
☎050・5358・6580


◉講演会「認知症と共に生きる~認知症の原因と予防~」
【日時】14日13時30分~15時30分
【講師】認知症疾患医療センター 医師 才村泰生氏
【会場】向日市福祉会館 3階大会議室
☎075・932・1990

◉「Live! ライトアップ2023」
【日時】21日19時〜20時
【内容】京都を中心に全国各地のオレンジライトアップスポットを、Zoomで中継、その様子をYou Tubeでライブ配信
☎050・5358・6580
https://www.youtube.com/live/-6XK612IpNk?feature=share

◉若年性認知症研修会
【日時】27日14時〜16時
【第1部】講演会「若年性認知症支援と認知症治療薬のこれから」
【第2部】当事者の「やってみたい」を聴いてみる
【会場】京都府山城南保健所 2階講堂
☎0774・72・0981

◉講座「地域で支える認知症~正しく知ろう!認知症のこと~」
【日時】30日13時30分~15時30分
【内容】西垣内科医院 院長 西垣哲哉氏による講話「支えたい!ひとり暮らしの認知症」、本人・家族・主治医の先生による座談会、落語(六代桂文枝門下 桂三扇氏)
【会場】ハピネスふくちやま4階市民ホール
☎0773・22・6381

◆9月は府内各地ランドマーク・名所が
認知症のシンボルカラー“オレンジ”に
ライトアップ!

【京都市内】京都タワー、京都市京セラ美術館(いずれも21日)
【八幡市】さくらであい館展望塔(11日〜25日)
【向日市】向日市福祉会館(21日)

【京田辺市】市役所庁舎内、出先機関、SOSネットワーク協力機関(いずれも1日〜30日)
【久御山町】くみやま夢タワー137(17日~23日)
【亀岡市】平和台公園平和塔、亀岡駅北口噴水、運動公園の噴水(いずれも15日~21日)、保津大橋(11日~21日)
【南丹市】南丹市国際交流会館(20日~22日)
【福知山市】福知山城(8日~22日)
【舞鶴市】五老スカイタワー(1日~22日)、田辺城、赤レンガパーク5号棟、#MAIZURU(いずれも1日〜30日)、京都府中丹東保健所(19日~28日)
【宮津市】天橋立(21日、22日)

  

本紙認知症連載、書籍に
「700万人時代─」を再構成

 

 認知症のある人とそうでない人が「ともに生きる」社会がテーマの京都新聞連載を再構成した書籍「認知症700万人時代―ともに生きる社会へ」(かもがわ出版)がこの度出版された。
 連載は、認知症の人が700万人を超えるとされる2025年を前に、20年3月から23年2月まで掲載した「700万人時代 認知症とともに生きる」で、22年に「第29回坂田記念ジャーナリズム賞」を受賞した。書籍は全6章。認知症の本人の言葉と実践を手掛かりに、誰もが安心して暮らせる社会の実現に何が求められるかを考え、写真グラフで本人たちが感じている世界などを視覚的に紹介する。

 今春に京都市で開催された京都国際写真祭「KYOTOGRAPHIE」出展作で、連載を再編した「心の糸」も「Photo Story」として収録されている。四六判、24 0ページ。2200円。

 

仲間とのつながり持って 連続講座
「家族が学ぶ認知症のこと」

 
自身の経験を語る河合雅美代表

 
交流会で語り合う参加者

 誰もが認知症や認知症の人の家族になり得る時代。認知症について正しく理解することが、希望を持って、穏やかに生活する助けになるかもしれない。連続講座「家族が学ぶ認知症のこと」は、京都光華女子大と認知症の人と家族の会・京都府支部が初めて共催。初期から中期の認知症の人を在宅で介護している人や認知症のことに関心がある人が対象だ。6月12日の第1回講座では「仲間と繋がりましょう」と題し、同会・京都府支部代表の河合雅美さんが講演した。

◆本人支援と家族支援は車の両輪
 河合さんは、2010年にアルツハイマー型認知症と診断された母親を20年にみとった。自身の経験を振り返り、「本人支援と家族支援は車の両輪」と話す。診断当初、「(自分自身に)認知症に対する理解が足りなかった」ため、「(心配のあまり)母ができることややりたいことに制限をかけた」という。母との衝突が絶えず一人で悩む中、偶然つながった「認知症の人と家族の会」の活動に参加する中で、自分も母親も同じ立場の人たちと出会い、母の思いに向き合うことや「母のやりたいことを手伝う」役割に気づくことができたという。

 河合さんは認知症の初期の段階で家族ができることとして、「症状は、病気から起こるものと理解する」「認知症を持つ人のことを想像し、理解する」「認知症を持つ人もその家族も同じ立場の友達を作る」「相談できる場所を持つ」「認知症を持つ人と一緒に楽しめる活動をする」の五つを挙げ、人とつながることで、二人は穏やかな日常を取り戻すことができたと語った。

◆交流会で悩み打ち明けて
 講座の後半は介護家族らの交流会が開かれた。参加した介護家族は「認知症と言っても個々で症状や状況が異なる。相談できる相手が欲しい」と訴え、互いの経験や悩みを熱心に語り合った。介護職の参加者は「普段仕事で接するのとは違う視点で、介護家族の声が聞けて貴重な機会」と感想を話した。
 連続講座は、京都光華女子大(右京区)で10月まで毎月1回・全5回の日程(各回とも13時〜15時)で開かれ、参加は無料。専門医や地域包括支援センターの職員らが交代で講演し、介護家族らの交流会も行う。申し込みは電話、FAX、メールで、認知症の人と家族の会・京都府支部まで。

  

きょうと認知症あんしんナビ

 
「きょうと認知症あんしんナビ」
トップページ

 高齢者の5人に一人が認知症になるといわれる時代、認知症と向き合うために必要な情報とはどんなものだろうか。「もしも」に備えた情報や地域の認知症関連の取り組みなどを関係機関が連携し、府民に向け発信するポータルサイト「きょうと認知症あんしんナビ」を紹介する。
 きょうと認知症あんしんナビは、京都府や京都市、医療・介護・福祉団体でつくる京都地域包括ケア推進機構が認知症に関する医療・介護・福祉の情報を一体的に集約・発信することを目的に2014年にオープンした。

 サイトでは、認知症についての基礎知識や資料の閲覧、コールセンター、地域包括支援センターなどの相談窓口や地域の認知症カフェの検索、医療機関(専門外来、認知症疾患医療センター、認知症サポート医など)、介護サービスの検索など、認知症の人と家族向けの情報がテーマごとにまとめられている。
 また、認知症ケアの事例集や研修ツール、研修会情報など、関係者(行政担当者や専門職、事業所など)の利用も想定している。
 サイトを所管する京都地域包括ケア推進機構によると、閲覧数でみると医療機関検索と認知症カフェ検索の利用が特に多いという。
 「お知らせ」やブログでイベントや地域の活動も取り上げ、府内の市町村や保健所など公的機関のほか、認知症カフェにも積極的に発信を呼び掛けている。事務局の担当者は「もっと多くの府民や関係者に知っていただき、利用してもらいたい。府民向けのイベントも掲載しているので、実際に参加して認知症への理解を深めてもらえれば」と話す。

認知症の「旅」、共に歩むために
宇治でフォーラム

 
来場者は当事者の話に
熱心に耳を傾けた
 
 
自らの体験を語る伊藤さん

 宇治市の認知症への取り組みについて考える「認知症フォーラムin宇治」が3月21日、同市生涯学習センターで開かれ、市民ら150人が参加した。2012年に始まった市の認知症相談支援事業に草創期から関わる当事者の伊藤俊彦さんと妻・元子さん、行政の立場で伴走してきた元宇治市職員の藤田佳也さん、医師の森俊夫さんによるてい談では、伊藤さん夫妻の10年に及ぶ認知症の「旅」を振り返り、認知症と共にあるまちの未来を語り合った。

◆当事者たちの力行政を動かす
 俊彦さんが認知症と診断されたのは2012年、当時の心境を「(積もった雪の中に)屋根の上から後ろ向きに飛び降りる」感覚と話す。先が見えない不安、夫妻の世界を変えたのは当事者・家族が集うテニス教室だ。定期的に本人・家族同士が交流する「ピアサポート」の場が笑顔や希望を生み、後に「れもんカフェ」という集いにつながった。

 当事者たちの力は行政も動かした。15年、市は全国に先駆け「認知症の人にやさしいまち・うじ」を宣言。行政、企業・団体、大学によるネットワーク・認知症アクションアライアンス「れもねいど」を立ち上げ、「茶摘み」など地域産業と連携した場づくりや就労支援、京都文教大の学生との対話を通じた認知症研究などを推進してきた。現在、「れもねいど」に参画する企業・団体は84件、「人のつながりが支援の輪を広げた」と藤田さんは振り返る。

◆「後に続く人」につなぐ
 18年、市内にクリニックと常設カフェを併設する「京都認知症総合センター」が完成。伊藤さん夫妻は当事者による相談窓口「オレンジドア・ノックノックれもん」を施設内で開設し、「後に続く人たち」に希望をつなぐ活動を続ける。
 「認知症の旅」には「個として認知症と向き合う」「仲間、支援者との出会いによる人生の再構築」「地域の中で生きていく」の3つの段階がある。森さんは「診断から出会いまでの短縮、いつでも、だれでも、どこでも支援を受けられる体制づくりが重要。そのために『れもねいど』のPDCAサイクルの確立を」と訴えた。

認知症応援大使ら講演
オレンジトーク開催

 
来場者は当事者の話に
熱心に耳を傾けた
 
 
自らの体験を語る下坂さん

 認知症の人やその家族、専門家らとともに認知症への理解を深め、認知症になっても安心して暮らすことのできる社会について考えるイベント「認知症とともに生きる 『オレンジトーク』」(京都新聞主催)が昨年12月、京都府立京都学・歴彩館(京都市左京区)で開催され市民ら250人が参加した。

◆まずは本人の声を聞くことから
 第1部のトークセッションでは、府が任命し、認知症の人本人の立場で啓発活動や発信を行う「京都府認知症応援大使」を代表して下坂厚さん(49)、鈴木貴美江さん(83)が出演。自身の経験をもとに、認知症と診断されてから前向きに生活を送れるようになったきっかけや、地域の活動を通じた支援者との交流、今後やってみたいことなどを語り合った。
 下坂さんは「(診断後、以前の仕事を辞めたが)支援者の勧めで介護の仕事と出会い、できることが見つかったことが前を向くきっかけ」と語った。貴美江さんは医師の勧めをきっかけに福祉施設でカフェの手伝いをはじめ、昨年は自転車やボウリングにも挑戦した。

 家族の立場で登壇した貴美江さんの長女、祐三子さんは「本人ができることはやってもらう。役割や居場所があれば、前を向けるのでは」と話した。
 下坂さん、鈴木さん母娘と交流があり、司会を務めた京都市岩倉地域包括支援センターの松本恵生さんは、社会に求められる認知症の人への支援について「一緒になって体験することを通じ、“認知症の人に”ではなく、“認知症の人と”何ができるかという視点が大切では」と結んだ。

◆地域の支援体制、関心を持つことが備えに
 専門家らを交えたパネル討論では、府内の行政・医療・介護・福祉の団体が一体で取り組む「新・京都式オレンジプラン」の解説に続き、ケアマネジャー、府内に126カ所ある高齢者相談窓口・地域包括支援センターの役割などが紹介され、認知症に関する来場者の疑問に答えるコーナーも設けられた。
 登壇した府医師会認知症対策理事の西村幸秀医師は「不安があれば一人で悩まず、身近な人や窓口、かかりつけ医に相談し適切な支援を」と呼び掛け、府介護支援専門員会会長の井上基さんは認知症への備えについて「まずは身の周りの支援や窓口を知り、地域にいる認知症の人に関心を持つことが第一歩」と話した。

京都府認知症応援大使
7人が就任

 
委嘱状交付の様子
 
 
委嘱式に参加した6人の
京都府認知症応援大使

 認知症への関心や正しい理解を深めるため、府内で普及啓発活動を行う「京都府認知症応援大使」がこのほど決定し、京都府による委嘱式が12月7日、府庁で行われた。府内在住の認知症当事者、男性6人、女性1人が就任した。

◆全国各地で取り組む
本人発信の啓発活動

 「京都府認知症応援大使」は、京都府が認知症当事者を対象に募集。府および市町村などが行う普及啓発活動で、認知症になっても希望を持ち、前を向いて暮らす姿を積極的に発信し活動していく。府内では初の試みとなる。
 普及啓発・本人発信支援は、2019年6月に厚生労働省が取りまとめた認知症施策推進大綱で、認知症施策の柱の一つとして掲げられている。大使の任命は厚労省が、各地域で暮らす認知症当事者と共に普及啓発を進める体制を整備し、発信の機会を拡大するため全国に呼び掛けた。現在では京都府のほかに、13都県で同様の取り組みが実施されており、約40人の大使が活動している。

  


◆思いや経験を本人の言葉で
 委嘱式で、西脇隆俊知事は「地域のなるべく多くの方に、自分事として考えてもらいたい。京都府認知症応援大使の方には、ご自分の言葉で思いを発信してほしい」と話した。
 委嘱を受けた下坂厚さんは「誰でもなり得るのに、いまだに正しく理解されず、悪いイメージを持つ方が多い。今後、自分の言葉で発信し、皆さんと力を合わせて普及啓発に努めていきたい」と語った。幸陶一さんは「私は認知症について悲観的に考えていない。認知症になっても周りの人に支えてもらいながら、やりたい事をやって楽しい人生を送っている」と笑顔で話した。
 任期の2年間は、イベントや講演、広報誌などへの寄稿、出演、研修会への参加が想定されている。府民の理解を深めるとともに、既に認知症と向き合っている他の当事者が、社会参加することを目指す。

認知症とともに生きる 「オレンジトーク」
*** 受付終了 ***

 認知症の人やその家族、専門家、地域の人たちとともに認知症への理解を深め、認知症になっても安心して暮らすことのできる社会について考えます。
お席に若干の空席がございますので当日申し込みを受け付けます。ぜひ会場にお越しください。(参加無料、定員480人)

【概要】
日 時:12月24日(土) 13時半~15時(開場13時)
会 場:京都府立京都学・歴彩館(京都市左京区下鴨半木町1−29)
◉京都市営地下鉄烏丸線「北山駅」1番出口から南へ徒歩4分
◉京都市バス4系統・北8系統「北山駅前」下車、南へ徒歩4分
※公共交通機関でご来場いただきますようお願いいたします。

内 容:
1、京都府認知症応援大使記念トークセッション
「認知症について知ろう~本人・家族の視点から~」
下坂 厚さん、鈴木貴美江さん・祐三子さん ほか
コーディネーター:松本恵生さん(京都市岩倉地域包括支援センター センター長)

2、パネルディスカッション
「備え、ともに生きるために~知っておきたい!認知症のギモン~」
西村 幸秀さん(医師、京都府医師会 認知症対策担当理事)
井上 基さん(ケアマネジャー、京都府介護支援専門員会 会長)
下坂 厚さん、松本 恵生さん(予定)

先の自分に、不安をもたない

 『認知症の人と家族の会』が今年発行した冊子の巻頭に寄せた伊藤俊彦さん(宇治市)の文章です。俊彦さんは2012年にアルツハイマー型認知症と診断されました。ページをめくると、「難しい時期」を乗り越えられたのは、「同じ病気の本人・家族の方々と出会ったこと」と振り返る妻・元子さんの文章。現在、俊彦さんは元子さんとともに、診断間もない本人や家族の相談に乗る「ピアサポート」活動を行っています。私たちの「前を歩む人」として。

 私は、アルツハイマー型認知症と診断されてから十年が経過しましたが、今もそれ程の不自由を感じることはなく、穏やかな日常生活を送ることができています。
 それは、この病気と上手く付き合うために、先の自分に不安をもたないことが、この病気の進行抑制につながるのではないかと思っているからです。そして、私がこの思いに辿り着いたのは、認知症の診断を受けた病院の「テニス教室」で出会うことができた、同じ病気を持つ「仲間」(先人たち)が教えてくれたからです。前を歩む彼らは、私に様々な姿で、多くのことを遺してくれました。
それと、妻には自分が思う事や、感じていることなどを、その都度、話をして来ています。その理由は、 この病の進行状態に変化が生じた時に、妻には早期に気づいて貰えるのではとの思いもあってのことです。
 そして、診断されてからの早い段階から、認知症であることを周囲に伝えていることで、見守って貰っているという安心感を得ていることもあるかと思っています。
お陰様で、病状にもあまり変化はないように感じられて、穏やかに夫婦で過ごすことができていることを、私は大変有難く思っています。
 この穏やかな生活が、 一日でも長く続くことを私は願っています。

伊藤俊彦

 

認知症とともに希望がもてる社会へ
京で講演会開催

 「認知症の人から見える世界」を考え、認知症への理解を深める世界アルツハイマーデー記念講演会2022「認知症とともに希望がもてる社会へ」(認知症の人と家族の会、同京都支部主催)が9月25日、京都市内で開かれ、会場とオンラインでおよそ300人が参加した。

 

◆「認知症の人から見える世界」考えて
 講演「認知症の人から見える世界」では、若年性認知症の当事者で、福祉施設で働きながら認知症に関する講演やピアサポート活動を続け、写真家としても活躍する下坂厚さんと、「認知症未来共創ハブ」リーダーで、認知症の人へのインタビューを重ねる慶応義塾大大学院教授の堀田聰子さんが対談。下坂さんがアルツハイマー型認知症と診断され、現在に至るまでの心境を、日々撮り続けてきた写真とともに解説。認知症の人特有の困り事や認知症の人から見える世界について話し合った。

◆新しいことに挑戦、生活の再構築を

 シンポジウム「『認知症を知ろう』〜知って備える〜」では、認知症や加齢による認知機能の低下に備えることに焦点を当て、認知症の人や介護家族、支援者らが話し合った。
 大学病院で老年内科医として勤務し、12年前に認知症と診断された奈倉道隆さんは、診断後も教鞭をとり、介護福祉士の資格も取得した。奈倉さんは「たとえ認知症があっても、本人次第で新しいことに挑戦し自らを再開発できる」とし、自身で作成した講演メモを手に「忘れない努力より、忘れても困らない努力を」と訴えた。奈倉さんの診断を担当した神経内科医の中村重信さんは、当時のやり取りを振り返り、認知症は発症年齢・症状・程度・本人の生活状況などに多様性があるため「個人個人に合わせた対応を」と指摘した。
 地域で暮らす高齢者の相談窓口である地域包括支援センターの役割・活動を紹介した東九条地域包括支援センター長の出口むつみさんは「認知症に関わらず、困り事は地域でも解決できる。普段から地域とのつながりを持って」と語った。
 コメンテーターとして参加した下坂さんは「診断後も前向きに生きるため、生活の再構築は重要。本人の意向にもっと耳を傾けて」と感想を述べた。

9月は世界アルツハイマー月間
認知症啓発イベント各地で


 9月は「世界アルツハイマー月間」。中でも、21日は世界アルツハイマーデーに制定されており、認知症への理解を呼びかける啓発活動や関連行事が行われる。認知症は他人事ではない。地域で活動する人との出会いや交流の場にぜひ参加してみては。府内で行われる関連行事をまとめた。


9月の主な関連行事
◉講演会「認知症にそなえる~この街で、笑顔で生きる」
【日時】9月6日 14〜16時
【講師】認知症疾患医療センター 医師 才村泰生氏
【会場】向日市福祉会館 3階 大会議室
☎︎075・932・1990

◉「図書館を起点とした認知症とともに生きる地域づくり ひとあし先に認知症になった私からあなたへ」
【日時】9月16日 14〜15時15分
【講師】下坂厚氏(若年性認知症当事者)、下坂佳子氏
【会場】いわくら病院本館大会議室
☎︎075・702・8510

◉認知症フォーラム「認知症の人の思いを聴くことからはじめよう」
【日時】9月21日 13時30分〜16時
【第1部】ともに活動する認知症サポーターの活動紹介
【第2部】ともにできることを考える
【対象】京都市内在住・在勤の方
【定員】先着200人 オンライン
☎︎075・354・8741
https://kyoto-np.jp/_EEJxcxg

◉「Live! ライトアップ2022」
【日時】9月21日 19〜20時
京都を中心に全国各地のオレンジライトアップスポットを、Zoomで中継、その様子をYouTubeライブ配信
☎︎050・5358・6580
https://www.alzheimer.or.jp/?p=48902

◉世界アルツハイマーデー記念講演会2022/京都府地域包括ケア府民講座「認知症とともに希望がもてる社会へ」
【日時】9月25日 13〜16時30分
【講演】「認知症の人から見える世界~堀田聰子氏と下坂厚氏による対談~」ほか
【会場】京都JAビル&オンライン
☎︎050・5358・6580
https://www.alzheimer.or.jp/?p=49532 

9月は府内各地のランドマーク・名所が認知症のシンボルカラー“オレンジ”にライトアップ!
【京都市内】京都府庁旧本館(9月15〜21日)、京都タワー、京都市京セラ美術館、京都市庁舎(いずれも9月21日)
【八幡市】さくらであい館展望塔(9月20〜26日)
【京田辺市】市役所庁舎内、出先機関、SOSネットワーク協力機関(いずれも9月1〜30日)
【久御山町】くみやま夢タワー137(9月17〜23日)
【亀岡市】平和台公園平和塔、亀岡駅北口噴水(いずれも9月15〜21日)
【南丹市】国際交流会館(9月21、22日)
【福知山市】福知山城(9月20〜22日)
【舞鶴市】舞鶴赤れんがパーク5号棟、田辺城城門、五老スカイタワー(いずれも9月1日〜30日)、中丹東保健所(9月20日〜22日)
【宮津市】天橋立ライトアップ『光のアトリエ』(9月21〜23日)

「記憶とつなぐある写真家の物語」下坂厚さんの写真巡回展を開催
※いずれも入場無料・申込不要
◉京都市役所西庁舎展示スペース
【日時】開催中〜9月1日

◉舞鶴赤れんがパーク4号棟
【日時】9月3日 10〜16時
◆下坂厚さんトークショー
【日時】9月3日14~15時 
定員:60人 
申込:8月25日 9時から電話にて受付(先着順)
☎︎0773・66・1018

◉宇治市役所1階市民交流ロビー
【日時】9月5〜9日8時30分〜17時15分(初日は13時から、最終日は正午まで)

◉亀岡市役所市民ホール
【日時】9月8日 10〜16時

◉府山城広域振興局木津総合庁舎府民ホール
【日時】9月12〜16日9〜16時

◉精華町役場図書館前スペース
【日時】9月12〜16日8時半〜17時15分

◉大津市立図書館 本館 3階
【日時】9月15・22日10〜16時
◆下坂厚さんによるギャラリートーク
【日時】9月22日14~15時
定員:30人
申込:9月5日10時から電話にて受付(先着順)
☎︎077・528・2741

◉弥栄ゆう薬局
【日時】9月29日〜10月5日 月木:8時45分〜19時、火・水・金:8時45分〜18時、日:9時〜13時

~若年性認知症の人の暮らしを「まるごと」支える~
専門職対象の研修をオンラインで開催 
*** 受付終了 ***

 京都市では専門職を対象に、若年性認知症の基本的な知識を学んだ上で、若年性認知症の支援について考える「令和4年度若年性認知症支援基礎研修~若年性認知症の人の暮らしを「まるごと」支える~」を6月2日にオンラインで開催する。
 研修では、若年性認知症の支援に特化した専門職である「若年性認知症支援コーディネーター」から、若年性認知症の人が利用できる「労働」に関する制度・サービスを中心に講義が行われる。また、若年性認知症の人への支援や若年性認知症支援コーディネーターとの連携について、若年性認知症支援コーディネーターと支援を受けた若年性認知症本人との対談も実施する。

○日 時:令和2022年6月2日(木)13時30分~16時(13時10分~受付開始)
○場 所:オンライン(ZOOM)開催
○対象者:若年性認知症の人の支援に携わる方

○内容:
・講話「若年性認知症を取りまく状況」
 講師:京都府医師会認知症担当理事 認知症サポート医 西村幸秀先生
・対談「知っているようで知らない制度と、若年性認知症支援コーディネーターのこと」
 講師:京都府こころのケアセンター 若年性認知症支援コーディネーター 木村葉子氏
 若年性認知症本人 田代徳子氏
・グループディスカッション「若年性認知症の人の暮らしを「まるごと」支えるために」
○参加費:無料
○定員:80人
○申込方法:「お申込みフォーム」に必要事項をご記入し応募。
https://sc.city.kyoto.lg.jp/multiform/multiform.php?form_id=5437
申込締切日:2022年5月27日(金)

〝認知症にやさしい〟モノやサービスを
企業の役割に注目

 認知症になっても安心して暮らし続けられる社会を実現するため、企業が果たす役割に注目が集まる。府内外の企業が参加する「認知症にやさしい異業種連携協議会」の報告会がこのほど開かれ、会場とオンラインで230人が参加した。


◆府内外71社が参加連携を深める

 協議会(事務局・京都府)は2019年に設立。職種の垣根を超え、府内外から71社(22年3月現在)が参加する。“認知症にやさしい”モノやサービスを検討することがねらいだ。昨年から取り組む「ビジネスアイデアワークショップ」では、認知症と診断された人や行政、医療・福祉関係者らと企業が3グループに分かれ、「認知症にやさしいマッチング掲示板」「認知症の人の就労支援」「QOL(生活の質)・セキュリティ向上に資するサービス・機器導入支援」の3テーマで活動した。


◆当事者・支援者の声を聞きだれかが無理をしないサービスを
 「マッチング掲示板」は、当事者、支援者、企業をオンラインでつなぎ、専門家らの助言の下、当事者のニーズに企業が答えるという構想だ。しかし、実験で思うような成果が得られなかった。そこで、対話の機会をつくるイベントを実施したところ、参加者に笑顔があふれ、交流が生まれた。担当者は「交流の“場”づくりこそ、当事者のニーズ」と結論付けた。
 「就労支援」では関係者への調査から、就労支援は当事者側では世代間で、支援する側も企業・福祉事業者間で、求められるものの違いが浮き彫りとなった。支援方法では「企業による業務委託」に着目。充実させるには企業と、当事者を知る支援者をつなぐ相談窓口が不可欠と語った。
 ICT(情報通信技術)などで生活の質やセキュリティー向上を目指す「サービス・機器導入支援」は参加者が遠方に住む両親への機器導入の経験から着想した。地域包括支援センターへの調査でICT活用が進まない実態と連携先として、当事者・支援者に近い自治会への期待が高いこともわかった。潜在的な需要を見込み、今後、実証実験を重ねる方針だ。
 協議会座長を務める府立医科大・成本迅教授は「医療・福祉関係者だけでは思いつかない事が多い。持続的なサービスはだれもが無理せず続けられることが大事」と取り組みの意義を話した。

受診の際は、近況を記したメモの持参を

初診の際に持参された1枚のA4用紙がある。
“夫は、もしかすると認知症かもしれない”
そう感じるまでの気になった様子が記されている。
「先生の前だと、言いたいことが伝えられないかもしれない」
「あの時これを伝えておけばよかった、と後悔したくない」
そして何よりも
「本人を前に、自分の口から日々の様子を説明するのはつらい」
だから、注意して細かくメモを取ったという。

介護から学んだ大切なこと
安藤和津さん 京で講演

 認知症の人と家族の暮らしの支援について考える「世界アルツハイマーデー記念講演会(認知症の人と家族の会、同京都支部主催)」が京都市内で開かれた。エッセイスト・コメンテーターの安藤和津さんが認知症の母との約12年におよぶ壮絶な介護体験を語った。会場とオンラインでおよそ350人が参加した。


◆初期の症状、見逃さないで

 「認知症初期の黄色信号」―安藤さんは母の異変をこう振り返った。母の生活が突然乱れ、妄言・妄想、ヒステリーが続いた。何が起こっているか分からず、母への違和感と戸惑いは、症状が進むにつれ、憎悪、不信の情に変わってしまったと声を詰まらせた。
 当時「認知症」という言葉はまだ一般的ではなかった。主治医に相談しても取り合ってもらえず、母もまた検査を拒んだ。数年が過ぎ、検査入院で脳腫瘍が危険な状態と分かると、在宅介護を選択した。この腫瘍が原因で認知症を発症していたと知るのは、後に心療内科を受診してから。「よく今日までご一緒にお暮らしになられましたね」。医師の言葉に救われる思いだった。


◆抱え込まず、苦しみ、辛さを共有できる人を
 安藤さんは介護後半から母をみとった後も「介護うつ」「介護後うつ」に苦しんだ。「今はネットで同じ境遇の人とつながれる時代」「抱え込まず、苦しみ、辛さを共有できる人が必要」と話す。さらに、自らが「介護うつ」と自覚したときは「ほっとした」そうで、すぐ病院を受診、「診断を受けることも大事」と話した。
 回復の兆しは孫の誕生だった。「人生の入口、出口はオムツのお世話にならなきゃいけないのが、人間なんだな」。孫に亡き母を重ね、「見送った喪失感が満たされていった」という。偶然見たお笑い番組で大笑いした瞬間「黒い塊」が口から飛び出て、周囲の彩りがよみがえるのを感じた。
 2025年、高齢者の5人に1人は認知症の可能性があるとされている。安藤さんは「認知症は神様からのプレゼント。生活力(=人間力)を高め、『一日一笑』をモットーに楽しい日々を過ごして」と結んだ。

【オンライン】「認知症とともに生きる」安藤和津氏講演会1月29日開催
*** 受付終了 ***

認知症の人と家族の会と同会京都府支部は、2022年1月29日(土)13時から、世界アルツハイマーデー記念講演会2021/京都地域包括ケア府民講座「認知症とともに生きる」~認知症と向きあうあなたへ~(共催:京都府)をオンラインで開催します。エッセイスト・コメンテーターとして活躍する安藤和津氏が、認知症の母親と過ごした自身の経験などを語る講演のほか、シンポジウムなども行われます。申し込み(オンライン配信のみ)は、チケットサイト「Peatix」(https://wad2021-kyoto.peatix.com/)から。
参加費:1,000円(税込)(事前申込必要)。
※新型コロナウイルス感染症の感染状況によっては、開催が変更となる場合があります。

下坂 厚 氏 写真展 & トークショー「記憶とつなぐ」
*** 受付終了 ***

認知症の人と家族の会は、2022年1月30日(日)10時から、認知症ご本人の下坂厚氏がInstagramで発信している、認知症の人から見た日常の風景の写真展とトークショーをゼスト御池 御幸町広場(京都市中京区)にて開催します。
 下坂氏は、2019年、46歳で若年性アルツハイマー病と診断。介護職として働きながら当事者として講演などを行っています。来場者には記念品プレゼント有(なくなり次第終了)。