2024.12.21
認知症の人と学生ら 共につくり、楽しむ
佛教大学
若年性認知症の人同士が交流を深め、認知症の人と佛教大の学生らが共につくり、楽しむイベント「ORANGE FES(若年性認知症当事者交流会)」が12月1日、同大二条キャンパス(京都市中京区)で開かれ、認知症の人とその家族25人を含む、およそ120人が参加し、会場は熱気に包まれた。
◆「集まって楽しいことを」
1日限りの学園祭
「ORANGE FES」は、若年性認知症の人を支援する京都府こころのケアセンターと佛教大、同大の学生サークル「二条ともいき倶楽部みやcone」が主催した。認知症の人がやりたいことを起点に、本人と家族の社会参加を支援することが目的。同大で理学療法、作業療法、看護を学ぶ学生49人と認知症の本人とその家族らが、今春から準備会を重ねてきた。
準備会で提案された「縁日」のアイデアは「1日限りの学園祭」として実を結んだ。会場には射的、ボッチャ、わなげ、ボウリングなどのコーナーが設けられ、参加者らの歓声が響く。会場設営と装飾、運営、参加者の補助は学生たちが担い、だれもが楽しめるようルールも工夫した。サークルの学生代表・理学療法学科4回生の藤原舜正さんは医療機関で実習を経験、若年性認知症について「関わり方が難しい」イメージがあった。準備を重ねる中で交流が「普通の事」になり「日常生活の中で埋もれている人がもっといるのでは」という思いになったという。「学生も就活や勉強で忙しい中、できる事を考え取り組めた。皆で一つのものを作れてよかった」と振り返った。
◆つながり大事に、取り組み広げて
学生指導に当たった同大保健医療技術学部の奥山紘平助教は「実習では〝患者さん〟として接する。その感覚を取っ払いたかった」と話す。一つの目標に向け、立場を超えて向き合い、認知症の人の困り事に「自然と」寄り添う学生の姿に手応えを感じた。
支援者の呼び掛けで福祉施設や若年性認知症の人が通う就労継続支援B型事業所も参画。野菜などの販売、手芸などのワークショップに運営側として関わる認知症の人の姿もあった。認知症の人や家族が運営するカフェでは、淹れ立てのコーヒーで交流の輪が広がった。
奥山助教は「行政や支援団体とつながりができたことが大きい」とし、「いろんな立場の人が参加できるよう間口を広げたい」と先を見据える。藤原さんは「大学全体を巻き込んで、地域や高校生に佛教大学の活動を知ってもらえればうれしい」と笑顔で語った。
2024.10.21
買い物の困り事「何とかしたい」
おかいものサポートカー
京都生活協同組合
地域住民の買い物に関する困り事に寄り添うサービスが注目されている。今年創立60周年を迎える京都生活協同組合(以下、京都生協)は、近隣住民を自宅から店舗まで無料送迎する「おかいものサポートカー」を府内11店舗で展開。地域の高齢化が進む中、今年運行を始めたコープ宇治神明(宇治市)で利用者の声を聞いた。
◆買い物の「困り事」、「楽しみ」に
「交通が不便」「重い物の持ち運びが大変」「足が痛くてお店に行けない」など、買い物の困り事を「何とかしたい」との思いから、「おかいものサポートカー」は始まった。住み慣れた地域で安心して買い物を楽しんでもらおうと、店舗から車で15〜20分圏内の組合員を対象に週に1回、 同じ曜日・時間に自宅から店舗まで無料送迎を行うサービスだ(府内11店舗・事前登録制)。
コープ宇治神明では現在、毎週水、木、金曜に運行。1度に6人が専用車に乗り合わせ、1日数便運行する。半年で、開始当初の3倍となる70人が登録し、増便も検討中だ。
利用者は店舗到着後、45分ほど思い思いに買い物を楽しむ。介助なしに買い物できることが利用の条件。友人の勧めで利用を始めた80代の女性は、生鮮食品など毎週決まったものを買い求める。自宅から徒歩で20分かかるため、「とても通えない。助かっている」と話す。「実際に目で見て買い物できるのがうれしい」と語る90代の女性は、買い物代行や宅配も併用するが、買い物後の待ち合いや車内でのおしゃべりが「楽しみの一つ」とほほ笑む。利用者同士の交流も自然と生まれる。
◆利用者に寄り添って、
買い物の楽しみ支える
ドライバーを務める松本純子さんは「車内がワイワイしていてうれしくなる。自分の親と重なる世代、お役に立てたら」と話す。苦労を聞くと「道を覚えることですね」と笑った。同店で立ち上げから関わる髙廣稔之さんは「まずは安全が大事」と強調。サービス開始前、希望した高齢者宅を個別訪問し、送迎コースにも気を配った。毎週の送迎が「利用者の見守りにもつながれば」とし、「買い物を通して1日1日を楽しんでほしい」とやりがいを語った。
京都生協では、店舗での買い物に関する困り事は「サービスカウンターに相談を」としている。「おかいものサポートカー」実施店舗はホームページでも確認できる。
京都市南区吉祥院石原上川原町1-2
電話/0120・11・2800
https://www.kyoto.coop/
2024.8.21
職員同士つながる
京都福祉サービス協会
京都市内で高齢者福祉施設、訪問介護等事業所、児童館などを運営する京都福祉サービス協会は、多職種の職員同士がつながり、地域共生社会の実現を目指す「よこ糸カフェ」に取り組む。7月23日、高齢者福祉施設・小川(上京区)で開かれたワークショップに職員ら40人が参加した。
◆共生社会の実現目指す
~よこ糸カフェ~
国内人口の3割を65歳以上が占める超高齢化社会。孤独死などに象徴される「社会的孤立」が問題となっている。ワークショップでは、超高齢化社会を模したボードゲームに取り組み、参加者は「世話好きのおばさん」「商店主」「医大生」など地域の多様なプレイヤーを選択。福祉、法律、金融の専門家らとつながり、相続、介護、認知症といった問題を抱える住民の課題を解決していく。
順に「コーピング(悩みを聞く)」「(専門職の)つながりを増やす」「処方(課題解決)」を選び、一巡すると1年が経過。毎年、悩みを抱えた人が増え、同じ地区に4人以上、年の最後に残ると、地域体制が崩壊、ゲームオーバーとなる。
◆対話が生む共感・信頼を
まちづくりに生かす
講師を務めた「まごころサポート」の鈴木孝英さんは、高齢者の困り事に寄り添うコンシェルジュ事業を展開する傍ら、こうしたワークショップを開いている。カフェを企画した同協会の中島慶行さんは2年前、このワークショップに参加。「コロナ禍で絶たれた地域とのつながりの重要性を再認識できた」として開催を提案した。
終了後の意見交換では、地域コミュニティーの維持には「多様な立場の人の連携が重要」「お互いの得意分野を知り、役割分担を明確にすべき」などの意見が出され、「普段職場で感じる課題を皆で考えることができた」と振り返った。
鈴木さんは「世代・組織を超えた対話から、共感・信頼が生まれ〝幸せなまちづくり〟につながる。感じたことをそれぞれの職場に持ち帰って」と呼び掛けた。
※「コミュニティコーピング」は、(一社)コレカラ・サポートが開発した、人と地域資源をつなげることで「社会的孤立」を解消する協力型ゲームです。
公式HP https://comcop.jp/
ファシリテーター 原由紀子(認定ファシリテーター)
法人本部:京都市中京区壬生御所ノ内町39番5 電話/075・406・6330
https://www.kyoto-fukushi.org/
2024.8.21
成年後見制度 相談会も実施
京都司法書士会
「成年後見制度」は、認知症などで判断能力が低下した人の財産や権利を守り支援する制度。京都司法書士会では、会員自らが後見人となるだけでなく、成年後見相談の開催など、制度の利用促進にも関わる。同会の上田具美子さんに取り組みを聞いた。
◆「本人が安心できる」支援
まずは相談を
私たち司法書士は、自ら後見人となり、成年被後見人の財産管理や身上保護、後見人の監督などを行っています。また、1999年に「成年後見センター・リーガルサポート」を設立し、20年以上にわたり制度への積極的な関与を続けています。
主な取り組みは、認知症の方などを対象とした支援活動、一定の研修を受け名簿登載された成年後見人の推薦や指導監督、講師の派遣・調査研究など。最近は国の「成年後見制度利用促進基本計画」に基づき、自治体が設置し地域連携ネットワークづくりを担う「中核機関」に委員を派遣しており、私も亀岡市などで委員として、地域の権利擁護支援に取り組んでいます。
当会では、相談業務に積極的に取り組んでいます。成年後見制度全般についてはもちろん、生前贈与など不動産に関する手続き、相続・遺言に関する事、家族信託など、認知症になる前にしておくべきとされる手続きについても相談に応じます。認知症の方やそのご家族をサポートする専門家として、自治体や関連機関、各専門家と連携しながら地域共生社会の実現に向け、良質な法的サービスを提供していきます。
◆相続登記の申請義務化
今年度から相続登記の申請が義務化され、相続(遺言含む)によって不動産を取得した相続人は、取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならず、義務に違反した場合は10万円以下の過料の適用対象となりました。
相続人の中に認知症などで判断能力が不十分な方がおられる場合、どのように手続きを進めたら良いのかとの相談が増えています。私たちは相続登記の専門家でもありますので、最適な答えを見つけるお手伝いができます。ぜひご相談いただければと思います。
◆専門家によるサポート まずは相談を
本会では、相談業務に特に積極的に取り組んでおり、成年後見制度全般についてはもちろん、生前贈与などの不動産に関する手続き、相続・遺言に関すること、家族信託など、認知症になる前にしておくべきとされる手続きについても総合的に相談に応じています。
私たち司法書士は、これからも認知症の方やそのご家族をサポートしていく専門家として、自治体や関連機関、各専門家と連携しながら地域共生社会の実現に向けて良質な法的サービスを提供していきます。まずはどうぞお気軽にご相談ください。
◉登記・法律相談
予約電話/075・255・2566
毎週月~金曜 15~17時・毎週土曜 10〜12時
◉夜間相談
予約電話/075・255・2566
毎週木曜 19~21時
◉成年後見相談
予約電話/075・255・2578
毎週土曜 10〜12時(8月の土曜は除く)
下記URLからも相談会ウェブ予約ができる(24時間受付)
https://siho-syosi.jp/sodan/souzokutouki
相続登記申請義務化の対策は下記URLの「縁でぃんぐノート」で確認できる
https://siho-syosi.jp/wp/wp-content/uploads/2023/03/ending-note.pdf
2024.4.21
本人に合わせた制度利用 まずは専門職に相談を
成年後見センター・リーガルサポート京都支部
認知症などで判断能力の低下した方の権利を守り、より自分らしく生きることを支援する成年後見制度。国内最大の専門職後見人団体・リーガルサポート京都支部の⻆倉弘高さんに取り組みを聞いた。
◆国内最大の
専門職後見人団体
公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートは、1999年に全国の司法書士による社団法人として設立されました。高齢者、障害者等が自らの意思に基づき安心して日常生活を送ることができるよう支援し、高齢者や障害者等の権利の擁護および福祉の増進に寄与することを目的にしています。
リーガルサポートは国内最大の専門職後見人団体です。所定の研修を修了した会員を候補者名簿に登載し、この名簿から成年後見人候補者の推薦を行っています。京都では213人が登録しており、地域に精通した会員が多いことも特長です。後見業務を行う会員に対しては、家庭裁判所より厳しい頻度で、定期的な業務報告を当団体独自で義務付け、報告の精査などを通じて会員を指導監督しています。
◆本人に合わせた制度利用
まずは専門職に相談を
成年後見制度には大きく分けて、判断能力が衰えてから利用する「法定後見制度」と、将来の判断能力が衰えた時に備える「任意後見制度」があります。支援内容は画一的でなく十人十色。私たちは、法定後見制度にあっては、制度を利用するご本人の残存能力やご意思によって支援内容を細かく検討しますし、任意後見制度ではかなり自由に支援内容を決められるため、利用者一人一人の希望やライフプランを叶えることができるよう、きめ細かく契約書に盛り込むよう心掛けています。
成年後見人の就任に資格等は求められませんが、事前にご注意いただきたい点もあります。利用を開始すると後見人の変更や取消しをすることは難しい制度なので、利用開始前に一度専門職へご相談し、ご本人にあった制度利用を検討するとよいでしょう。
私たちは相談業務にも積極的に取り組んでおり、成年後見制度全般についてお聞きする無料相談事業を行っています。まずはお気軽にご相談ください。
2023.12.21
「頼もしき隣人たらん」地域で実践
京都生活協同組合
「頼もしき隣人たらん」を理念に、宅配、店舗、共済、福祉などの事業を通じ、暮らしに寄り添う京都生活協同組合(以下、京都生協)。だれもが住み慣れた地域で安心して暮らすために福祉・介護サービスに取り組む京都生協醍醐山科ホームヘルプサービス所長の山田真奈美さんに地域課題と向き合う現状を聞いた。
◆組合員の困り事に寄り添う
京都生協の介護・福祉事業は介護保険制度が始まった2000年にスタート。現在、府内6拠点で居宅介護支援、訪問介護、小規模多機能型居宅介護サービスを展開しています。醍醐山科では08年に事業所を開設、地域包括支援センター(以下、地域包括)単位で「醍醐北部・南部」「東宇治北・南」などのエリアを管轄し、利用者は1 07人(介護保険利用者、11月現在)。ケアマネジャー3人で主に居宅介護支援事業を行っています。
福祉・介護の課題はエリアごとに多岐にわたります。京都生協は宅配や店舗など、組合員を見守るネットワークがあります。「宅配で同じものばかり注文する方がいる」「店から帰れないお客さまがいる」など、組合員の〝困り事〟に寄り添うことがサービスの出発点です。
◆地域との連携深め
安心届けたい
例えば、店舗ではご自宅近くからお店までを送迎する「お買い物サポートカー」を行っており、ある時、いつも利用する高齢の方が「お迎えに行ってもおられないことが増えてきた」と店舗から私に相談がありました。すぐに地域包括と連絡を取り一緒にご自宅を訪問、軽度の認知症があり、その後、見守り支援につないだという事例があります。地域に寄り添う上で、地域包括との日頃からの連携は欠かせません。
また、切れ目ないサポート体制は1事業所ではつくれません。近隣の同業者と研修会を主催し、地域の情報交換や悩みを共有するなど、事業者同士の連携にも率先して取り組んでいます。
京都生協の介護・福祉サービスをご存じない方もまだまだいらっしゃるでしょう。当事業所では、コープの店舗で年に1回「介護相談会」を開催し、さまざまな相談に応じるほか、福祉用具の展示も行っています。「コープさんなら」と安心してもらえるならうれしい。地域を見守り、段階的にサポートできるネットワークは京都生協の強み。良いサービスを組合員さんにお届けしたいですね。
2023.10.21
成年後見制度 役割果たす司法書士
京都司法書士会
認知症などで判断能力の低下した人の財産や権利を守る制度として2000年にスタートした「成年後見制度」。京都司法書士会では、会員自らが後見人となるだけでなく、成年後見相談の開催など、制度の利用促進にも関わっている。同会の田中真由美さんに取り組みの現状を聞いた。
成年後見制度は、家族などが家庭裁判所に利用を申し立てる「法定後見」と、本人自ら後見人を選ぶ「任意後見」に大別され、利用者は全国で24万人を超えます。22年の報告では、後見人のおよそ8割を親族以外が務め、そのうち約4割を占めているのが司法書士です。司法書士は自ら後見人となり本人の財産管理や身上保護を行うほか、後見人の監督なども行っています。
また、1999年には「成年後見センター・リーガルサポート」を設立し、20年以上にわたり成年後見制度に積極的に関与してきました。主なものとしては、認知症の方などを対象とした支援活動、一定の研修等を受けて名簿に登載された成年後見人の推薦や指導監督、講師の派遣・調査研究などがあります。
地域包括支援センターや社会福祉協議会とも密に連携し、会員による出張相談なども行っています。
◆専門家によるサポート まずは相談を
本会では、相談業務に特に積極的に取り組んでおり、成年後見制度全般についてはもちろん、生前贈与などの不動産に関する手続き、相続・遺言に関すること、家族信託など、認知症になる前にしておくべきとされる手続きについても総合的に相談に応じています。
私たち司法書士は、これからも認知症の方やそのご家族をサポートしていく専門家として、自治体や関連機関、各専門家と連携しながら地域共生社会の実現に向けて良質な法的サービスを提供していきます。まずはどうぞお気軽にご相談ください。
◉登記・法律相談(予約制、電話予約)
電話/075・255・2566
毎週月~金曜 15~17時
毎週土曜 10〜12時
◉夜間相談(予約制、電話予約)
電話/075・255・2566
毎週木曜 19~21時
◉成年後見相談(予約制、電話予約)
電話/075・255・2578
毎週土曜 10〜12時
2023.8.21
山科・西野山団地「共生のまちづくりプロジェクト」
京都福祉サービス協会
京都市内で多数の高齢者福祉施設や訪問介護事業所、児童館などを運営している京都福祉サービス協会(以下協会)。社会福祉法人の公益的な活動の一環で、市営住宅を活用した「地域共生社会」の実現を目指し、山科区の西野山市営住宅(西野山団地)の住民らとともに「共生のまちづくりプロジェクト」に取り組んでいる。
◆住民とともに共生のまちづくりを
西野山団地は昭和40年代に建設され、住民の高齢化とともに介護課題や孤立が深刻化している。西野山団地自治連合会会長の松尾治男さんは「全体の7割超が高齢者を含む世帯。コロナ禍で他地域から移り住む高齢の単身者も増えた。一方、若い世代の入居が少なく、空室は増えている」と話す。
22年5月、自治会の要望を受け、市の担当者が仲介し、京都福祉サービス協会と自治会のプロジェクトが立ち上がった。協会が持つ福祉関連の専門ノウハウや関係機関とのネットワークを生かし、住民主体の「共生のまちづくり」を後押しするねらいだ。市や区役所、社会福祉協議会、地域包括支援センターなども連携し、定期的な話し合いの場が設けられた。
◆多彩な企画で地域を巻き込む
まず始めたのは住民の買い物支援。近隣のスーパーに週2回の移動販売を依頼し、交流の場を作った。販売日に合わせ集会所を開放したカフェも始め、毎回20人ほどでにぎわう。さらに、手作りの焼き芋や豚汁、たこ焼きを味わいながら住民同士が団地や地域のこれからについて考える「タウンミーティング」も企画した。
運営主体はあくまで住民。そこに協会がハブとなって大学生、ボランティア、企業らを巻き込み、協会の各施設からスタッフやヘルパーも参加する。
プロジェクトを推進する同協会・地域共生社会推進センター副代表の森賢一さんは「地域住民との話し合いの中から新たな発想が生まれるのがおもしろい」と語る。
近く団地内の空室を活用し協会の活動拠点として多様な年代の人が集い交流できる場を開設、今後の展開に生かす方針だ。
自治会の松尾さんは「安心して住み続けられるよう地域医療との連携も不可欠」と先を見据える。「いつか住民の食堂ができたら。1日1食ぐらい温かいもんを食べてもらいたいね」と笑った。
2023.2.21
地域とつながる薬剤師の思い
ゆう薬局グループ
地域の健康を支える保険薬局として京都府内で98店舗を展開するゆう薬局グループ。いま、薬剤師が地域と連携する事例が各地で生まれているという。まつばらゆう薬局の平井佑規さん、六地蔵ゆう薬局の陣野芙美子さんにその取り組みを聞いた。
◆「見守りの輪」を広げる
平井 私の担当エリアにある粟田地域包括支援センター(京都市中京区)の事業と連携して華頂女子高の1年生を対象に認知症サポーター養成講座を行いました。認知症とお薬、早期受診の大切さ、予防を意識した食事の話題を中心に、生徒の家族、特におじいちゃん・おばあちゃんを想像してもらえるよう心掛けました。終了後のアンケートの反応が予想以上で、伝わった手応えがありましたね。
元々、地域包括さんともっと連携したいとの思いから、地域の集まりで、他地域でのゆう薬局の連携事例をお話したところ、お声掛けをいただきました。今後、大学などでも実施予定です。
外来でできることには限界があり、周囲の方々の理解や協力は不可欠です。薬剤師が積極的に地域と連携し、当事者の周囲にいる世代に接点を持つことは「見守りの輪」を広げることにつながります。理想を言えば、日常のさまざまな場面で、自然な交流の中で輪を広げていきたい。地域に開かれた薬局がそのチャンネルの一つになれたら素敵ですね。
◆ピアサポートの場とつながる
陣野 私は宇治市の認知症介護家族の集い「鈴音会」でお話しさせていただきました。市の認知症家族支援プログラムを修了した方々の交流会に出向いて、医師などの専門職が講演するものです。テーマは薬剤師の役割やお薬手帳の使い方、服薬に関する悩み相談など。
お薬手帳を例に取ると、薬の飲み合わせや、同じような効果の薬を重ねて服用するなどで、認知症の周辺症状が悪化してしまうことがあります。これを防ぐために、医療機関に行く際は常にお薬手帳を持参したり、薬をもらう薬局を一つにしてもらうなど、気になることがあればいつでも相談してほしいといったお話をしました。
実際に介護をされている方々なので、質疑応答にじっくり時間を取りました。最近では薬についてよく勉強されているご家族も多く、不安も多い。普段の外来と違い、当事者と専門職のみの環境で悩みを聞き、安心していただけたので、貴重な経験でした。
薬局にとって、こうした地域のピアサポート事業とつながることの意義は大きいと感じます。困っている人の声を聞き、課題解決に導く架け橋になれたら、そんな思いで今後も継続していきたいと考えています。
2022.12.21
福祉関係者、円滑に連携
京都福祉サービス協会
京都市内で幅広い分野の福祉サービスを展開する京都福祉サービス協会。11月に同協会が催した「ファシリテーション研修」は、多様な分野で活躍する職員が連携を深め、職員が地域で課題解決の担い手となるための「ファシリテーション力」を養おうと開かれた。講座では福祉に関わる活発な議論が展開された。
◆福祉サービスをけん引
協会の前身は、1986年に発足した「京都ホームヘルプサービス協議会」。増加する福祉ニーズに応え、93年に「社会福祉法人京都福祉サービス協会」として認可を受けた。
現在、京都市内で訪問介護等事業所16カ所、訪問看護ステーション1カ所、特別養護老人ホームやデイサービスセンターなど高齢者福祉施設11カ所、 児童館4カ所の運営を行い、職員は2500人を超える。全国有数の事業規模で、京都市における福祉サービスをけん引する存在だ。
「ファシリテーション研修」では、協会の多様な職種の職員で構成する3つのグループが「問い」を立て、職員が普段接点を持つ外部のメンバーによる視点も交え議論した。
◆福祉の仕事はAIやロボットがやるべき?
一つ目の問いは「バズるサービス協会とは」。世間の福祉に対するイメージと実際のギャップを埋め、魅力をアピールする手法を探った。「仕事がきつそう」「給料が安い」といった“一般的な”福祉のマイナスイメージが上がる一方、「仕事に誇りが持てる」「人との関わりが成長につながる」などプラス面の意見には拍手も起こった。参加者は「福祉の仕事を選ぶ人や経験の浅い若手職員に、現場のやりがいや楽しさを伝えたい」と、SNS(会員制交流サイト)などで効果的な情報発信を提案した。
「福祉の仕事はロボットやAIがしたらよいか」との問いではさらに議論が白熱。ロボットやAI(人工知能)の活用は、人ができない作業を担ったり、同じ品質で作業がぶれないといったメリットがある一方、「失敗することで利用者とのコミュニケーションが深まる」という現場ならではの声も。「人間は喜怒哀楽があり、メリットもデメリットもあるが、人間同士だからこそという部分は福祉の本質」との意見が出た。
同協会地域共生社会推進センターの森賢一さんは、「多様な施設で働く職員がいる。横の連携や外部とのつながりで仕事の視野が広がる。協会の職員が地域課題に寄り添い地域と共に向き合っていく存在になってほしい」と講座のねらいを語った。
2022.11.21
京都生協の移動店舗
「おかいもの便」
◆頼もしき隣人たらん
58年目を迎えた京都生協地域とともに
高度経済成長による物価高騰が暮らしを直撃し、不安が高まる時代であった1964年、京都生協は設立されました。発足当初は組合員宅を1軒1軒回って注文を聞き商品を配達していましたが、後に共同で牛乳を購入する「班」が誕生し、現在のコープの宅配(共同購入)が広がりました。
現在、組合員数はおよそ56万人。宅配、店舗、福祉を含めた“くらしサポート”の3つを事業の柱として、普段の食生活を中心に、さまざまなシーンで暮らしをサポートしています。
◆理念に込める思い
京都生協は今日、SDGs(持続可能な開発目標)を事業活動に位置づけ、持続可能で安心して暮らせる地域社会づくりを目指し、私たちの「頼もしき隣人」であり続けています。
◆京都生協の取り組み
移動店舗「おかいもの便」
食料品などの日常の買い物が困難または不便な状況にある「買い物弱者」は全国で800万人ともいわれています。京都生協が地域の買い物支援事業として2015年に開始した移動店舗「おかいもの便」は、現在3台の専用車両で1週間に府内90カ所を巡回、650人ほどが利用しています。
◆地域の「困った」に寄り添う
毎週木曜に巡回する嵐山東学区(西京区)では、16年6月、地域唯一のショッピングセンターが閉店。住民の「困った」の声を受け、地域ケア会議の場で「おかいもの便」を提案したのは西京区社会福祉協議会でした。巡回の停留所は地元の協力により住民や寺院の駐車場が無償提供され、近隣住民がボランティアで無理なく立ち会うことも決まりました。初日には約80人が訪れ大盛況。その後6年間、コロナ禍の外出自粛時も巡回され、地域になくてはならない存在となりました。
◆自然と交流が生まれる
16年からボランティアの代表を務める倉橋精一郎さんは準備や片付けを手伝い、雨の日には雨除けシートも用意するとのこと。「車のない人や一人暮らしの高齢者は本当に助かっている。常連が多く、自然と交流も生まれる」と話してくれました。
売れ筋はお刺身などの生鮮食品。総菜や日用品もそろいます。買い物客の女性は「どれも新鮮で、毎週楽しみ」と笑顔。
「心掛けていることは一人一人との会話と心配り」と話すのは移動店舗巡回担当の田中亜弥さん。利用者の名前といつも購入する商品や好みを把握して、品ぞろえに生かしているそうで、「いつも来てくださる皆さんには感謝しかありません」と力を込めました。
◆住民が主人公
みなが資源を持ち寄る
地域の課題は、住民を主人公としつつ、さまざまな団体や組織が個々の資源を持ち寄って取り組むことが重要です。
移動店舗チーフの中山義秋さんは、「『おかいもの便』は地域包括ケアシステムの一員として、その役割を発揮できる存在。まさに京都生協の理念『頼もしき隣人たらん』を体現しています。今後も必要とされる地域があれば新たに展開していきたいです」と語りました。
2022.10.21
【インタビュー】QOL向上を目指し、安心を届けたい
第一生命保険 京都総合支社
人生100年時代と言われる今、長い人生を「健康で過ごせること」や「お金の不安がないこと」の重要性が高まっている。地域の皆さまの「一生涯のパートナー」として、もしもへの備えを提案する第一生命保険では、保険による「保障」だけでなく、人と地域や社会の新たな「つながり」のあり方の探求を通じ、地域の皆さまのQOL(生活の質)向上を目指している。同社の吉野充宏京都総合支社長に府内での取り組みを聞いた。
◆地域の皆さまのQOL向上を目指して
近年、地域の皆さまとの関わりの中で、生涯設計デザイナーの認知症に対する理解促進も重要性を増しており、19年に支社の内勤職および近隣オフィスの生涯設計デザイナーを中心に認知症サポーター養成講座を受講し、意識向上に努めています。
◆地域の実情に寄り添って安心を届けたい
地域の皆さまとの活動を通じ、保険の商品、サービスの力だけではなく、第一生命がここにあることでの安心を感じてもらいたい、そんな思いで今後も取り組みを続けていきたいと考えています。
2022.8.21
【インタビュー】本人の権利を守る成年後見制度
京都司法書士会
認知症などで判断能力が低下した人の財産や権利を守る「成年後見制度」。近年、後見人には弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職が選定されるケースが増えている。京都司法書士会では、会員が後見人となるだけでなく、成年後見相談の開催など、制度の利用促進に長年関わってきた。同会の西脇正博副会長に取り組みの現状を聞いた。
成年後見制度は、認知症などで判断能力の低下した方の権利を守り、より自分らしく生きることを支援する制度で、全国でおよそ24万人が選定されています。制度は、家族などが家庭裁判所に利用を申し立てる「法定後見」と、本人が自ら後見人を選ぶ「任意後見」に大別されます。
最高裁の報告では2021年の案件で、後見人のおよそ8割を親族以外が務め、中でも司法書士は全体の4割に上ります。司法書士は自ら後見人となり、本人の財産管理や身上保護を行うほか、後見人の監督なども行っています。
また、1999(平成11)年に「成年後見センター・リーガルサポート」を設立し、20年以上にわたり成年後見制度に積極的に関与しています。主なものとしては、認知症の方などを対象とした支援活動、一定の研修等を受けて名簿に登載された成年後見人の推薦や指導監督、講師の派遣・調査研究などがあり、また最近は自治体などの設置した中核機関などに委員を派遣することも増えています。
京都司法書士会では、相談業務に特に積極的に取り組んでおり、成年後見制度全般についてはもちろん、生前贈与などの不動産に関する手続き、相続・遺言に関すること、家族信託など、認知症になる前にしておくべきとされる手続きについても総合的に相談に応じています。私たち司法書士は、これからも認知症の方やそのご家族をサポートしていく専門家として、自治体や関連機関、各専門家と連携しながら地域共生社会の実現に向けて良質な法的サービスを提供していきます。まずはどうぞお気軽にご相談ください。
◉登記・法律相談(予約制、電話予約)
電話/075・255・2566
毎週月~金曜 15~17時
毎週土曜 10〜12時
◉夜間相談(予約制、電話予約)
電話/075・255・2566
毎週木曜 19~21時
◉成年後見相談(予約制、電話予約)
電話/075・255・2578
毎週土曜 10〜12時(8月の土曜は除く)
2022.6.21
【インタビュー】見守り活動で地域と連携 京都生活協同組合
暮らしに寄り添い、宅配、店舗、共済、福祉などの事業を展開する京都生活協同組合(以下、京都生協)は、過疎・高齢化が進む地域の実情を踏まえ、府内23の自治体と「地域の見守り協定」を結んでいる。毎日の夕食を個別宅配する「夕食サポート」事業を担当する宅配事業企画部・大西高雄さんに宅配現場での見守り活動について話を聞いた。
◆毎日の「夕食サポート」を通じた見守り
「夕食サポート」事業は2012年に開始。栄養バランスを考えた日替わりの食事を毎日個別宅配するもので、現在、府内で1日4600食以上をお届けしています。幅広い世代の利用がある中、特に高齢の方、お一人暮らし世帯の需要が高く、今後も増加が見込まれます。
夕食はコロナ対策もあり「置き配」のかたちでお届けし、配送員が前日の利用状況を確認しています。「弁当がそのままで様子がおかしい」など、配送員から報告される件数は1日に数件、1カ月で80件ほどあります。
私は常駐する職員と、利用者に異常があった場合の対応も担っています。ご本人などへ連絡し、安否がわからない場合は、自治体ごとの協定に基づき、社会福祉協議会や行政に対応を依頼します。大事に至らないケースがほとんどですが、配送員と状況を確認し合い、慎重に対応に当たっています。
◆地域との連携
できる限りのことを
あるお一人暮らしの方の事案で、前日のお弁当がそのままで、本人への連絡もつかず、他府県に住む息子さんに連絡を取ると「宅配を利用している事自体、知らなかった」と。翌日、ご本人は亡くなっておられたそうです。後日、息子さんから「宅配がなければ、もっと発見が遅れていた」と感謝の言葉をいただきました。やりきれない思いですが、取り組みの意義も痛感する出来事でした。
京都生協は見守り活動において、安否確認に関する法的義務や責任を負うわけではありません。しかし、地域のコミュニティーと連携し、できる限りの役割を担い、暮らしの安心に貢献したいと、取り組みを進めています。
2022.4.21
【インタビュー】当事者や家族の手助けになる存在でありたい 三笑堂
認知症の人へのサポートは長期にわたることが多く、求められる支援もさまざまだ。本人がこれまで通りの生活をできるだけ長く続けられるよう、また、支援者の心身面の負担を軽くできるよう、多様な製品やサービスの存在が欠かせない。京都を拠点に創業93年、医療介護用品商社の三笑堂・ライフケア事業部の吾郷耕平さんに、認知症に活用できる福祉用具が実際に活用されている事例を聞いた。
◆家族からの相談を機に製品の導入・運用を支援
Aさんは認知症と診断されているものの、身体はお元気で自転車に乗ることを趣味とされていました。最近、「家に帰る道が分からない」という症状が何度も見られ、家族総出で捜索されることも。このままでは、真夏や真冬には命を脅かすのではないか、と心配されたご家族より相談を頂きました。
そこで「お散歩コール」というGPSと徘徊感知機器(介護保険レンタル対象)を用いた商品をお試しいただくことになりました。
導入後、ご家族と連絡を取り合い運用したところ、「2週間で7度」家に帰れない状況が発生。幸い、7度とも「お散歩コール」を活用したことで早期発見につながり、家族総出での捜索までには至りませんでした。中には、雨宿りしていて動けない状況や10㌖離れたところで発見されたケースもありました。
導入当初は、ご家族でも予想できない行動が多々あったそうです。GPSの履歴を小まめに確認し、少しずつ行動パターンが把握できてきたことで、早期発見につながり、ご家族の不安解消にもつながったと非常に喜んでいただけました。
◆「商品」の存在や「相談できる窓口」の役割を発信
このケースのように、相談があった場合に提案できる商品があるものの、世間一般にはあまり知られていないのが現状です。また、納品後の継続した連携がいかに重要かも実感できました。
今以上に「商品」の存在や「相談できる窓口」として当社のような企業もあるという情報を発信し、認知症の当事者やそのご家族のお手伝いができる存在でありたいと思っています。
同社の本社に隣接するショールーム笑顔(京都市南区)は、「シルバー世代をより快適にお過ごしいただくための、アイテムの探し場」を目指し約1000点の介護用品を展示。一人一人の日常生活や介護の場を容易に想像できるよう、展示が工夫され、商品を実際に手に取り、試すことができる。
2022.2.21
【対談】認知症に関わる薬剤師の役割とは ゆう薬局グループ
ゆう薬局グループは京都府内に95店舗を展開。近隣の地域包括支援センター(以下:地域包括)と連携した認知症サポーター養成講座を開くなど認知症に関わる取り組みを続ける。薬剤師の船戸一晴さん、片岡礼奈さんに薬剤師の役割について語ってもらった。
◆薬剤師は認知症の知識や対応力不可欠
片岡 「認知症」という呼称が浸透し、認知症はだれもがなり得る病気、みんなで助け合って、という流れがようやくできつつありますね。以前より隠す方が減り、悩みや不安を打ち明けられるケースも増えました。
船戸 初期診断に至ってない方や介護度が上がる前の方に症状が現れ、地域包括やご家族から相談を受けて、薬剤師が初期集中支援チームやかかりつけ医につなぐ事例もあります。
片岡 外来に来られる女性の家族からの連絡で訪問すると、押し入れに宝(薬)の山…。医師に相談し、ヘルパーや配食センター員など関わる職種が連携して毎日訪問し服薬フォローをしました。その方の健康を守り、その街で望むように暮らしていただくのが在宅支援。そのバックアップも薬剤師の使命です。
船戸 私たちの業務は認知症の知識や対応力が不可欠です。スタッフは社内研修、在宅医療や認知症ケアを受け入れる店舗でのOJTなどで経験を積みます。在宅、外来、地域対応を通じお客さまを見守る環境を大切にしています。
◆地域包括単位で異業種の連携を
片岡 私が担当する中京区では、認知症連携の会といって行政、医療、介護、地域包括、社会福祉協議会、家族の会、オレンジカフェなど、認知症を取り巻く職種が一緒になって活動しています。昨年、元小学校区の自治会長の協力で、集会場でサテライト研修を行い、盛況でした。
船戸 ゆう薬局は行政区ごとの担当がトライ&エラーを繰り返し、その事例共有も活発です。
片岡 地域の活動を本部が知るのは事後なんてことも(笑)。とにかく地域へ出なさいという社風です。
船戸 昔から地域の声を聴けと言われてきました。薬剤師は相談されると喜ぶ職種、どんどん使ってほしい。地域包括と実施しているサポーター養成講座を医療、介護、福祉以外の職種向けにもっと広げたいですね。地域包括単位で互いに「何かあったらこの人に相談」という関係性を構築したいです。
片岡 薬剤師は国家資格ですが相談は無料です(笑)。いろいろ声を掛けてもらえるとうれしいですね。