本人・家族の声を生かし、
認知症にやさしい地域へ
京都文教大臨床心理学部教授 平尾和之先生

 今年1月より施行された認知症基本法においては、認知症施策の策定にあたり本人・家族の意見を聞くことが求められています。京都府では、昨年度、第3次京都式オレンジプランの策定にあたり、「本人・家族の声を反映させるための本人・家族ミーティング」が12の地域で開催されました。まさに先駆的な試みです。
 「認知症にやさしいまち」づくりを宣言している宇治市でも、この本人・家族ミーティングを開催しました。その結果、第2次京都式オレンジプランの6年間に、認知症とともに生きる人生の再構築が可能となるような、さまざまな場と出会いが生まれてきたことが明らかになりました。

 一方、①そのような場に「だれでも・どこでも」つながれるようにしていくこと②診断後、本人や家族のプロセスに寄り添って支援をしていく「リンクワーカー的機能の充実」③よりステージが進んだ際の介護サービスへのつながり(「第三の入口問題」)―といった、今後の課題が挙げられました。
 このように本人・家族の声を活動や施策に生かすことが大切になっているいま、みなさんの地域でも本人・家族ミーティングを始めてみませんか? 本人・家族の声を生かした認知症にやさしい地域の輪がつながり、京都府に広がっていくことを願っています。

「若年性認知症」
京都府認知症サポート医連絡会 幹事 澤田 親男先生

 65歳未満で発症する認知症を「若年性認知症」と言います。高齢者の認知症と同様にアルツハイマー病や脳梗塞、脳出血などさまざまな脳の病気で起きる場合があり、中には脳腫瘍や脳炎など内科的治療や外科的治療によって改善する「治る認知症」と言われるものもあります。いずれにしても早期診断や対応は重要です。若年性認知症の場合、子育てや仕事をはじめとした社会活動が盛んな年代で発症するので、本人や家族、周囲の人の不安や戸惑いが大きくなることが少なくありません。

 だからこそ、認知症疾患医療センターや初期集中支援チーム、かかりつけ医や保健所などの専門職が本人や家族を孤立させず、障害年金、通院医療費の助成など、使える制度を知ってもらい、就労を続けたり、新たな社会参加の場所を探す支援をすることが重要になります。
 京都市では「あなたに伝えたいこと〜ひと足先に若年性認知症になった私たちから〜」という冊子を、若年性認知症のご本人・ご家族と一緒に作成しました。市の公式ウェブサイトからどなたでもご覧いただけます。利用できる制度・サービスの一覧や相談窓口も記載されています。若年性認知症と診断された人や家族をはじめとした周囲の人、介護や医療関係の人にもぜひご一読いただければと思います。

「認知症基本法」と企業に求められる役割
京都府認知症にやさしい異業種連携協議会座長 成本 迅先生

 本年1月1日から「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が施行されました。現在、基本計画立案のために認知症施策推進関係者会議が開催されており、私も委員として参加しています。
 基本法とは、国政上重要な分野について国の制度、政策に関する基本方針を明示するものですが、認知症基本法では、認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすことができる共生社会の実現を推進するという基本方針が示されています。認知機能が低下しても地域社会で安全に自律的に暮らしていくには、さまざまな面から生活を支えている民間企業の役割が重要です。認知症の人にとって利用しやすい製品およびサービスの開発、適切な対応のための事業者向け指針の策定、民間における自主的な取り組みの推進が法律にも記載されています。

 京都府では、一足先に2018年から「認知症にやさしい異業種連携協議会」を立ち上げて、企業の方々と行政、医療福祉関係者が一体となってこの課題に取り組んでおり、国の基本計画立案にもそこで得られた知見を提供しています。京都府で活動されている企業の方には、ぜひ協議会にご参加いただき、それぞれの業界の立場から共生社会の実現に向けたアイデアを出していただき、一緒に活動していただけたらと思います。

第3次京都式オレンジプランがスタート
京都府医師会 認知症対策担当理事 西村幸秀先生

 「新京都式オレンジプラン」が2024年3月に改定され、「第3次京都式オレンジプラン」がスタートしました。認知症の人とその家族が望む「10のアイメッセージ」をかなえるためのオレンジロードをつなげ、「認知症とともに歩む本人の意思が尊重され、住み慣れた地域で暮らし続けられる社会」を目指しています。
 初代プランが策定されたのは13年9月ですから、私も10年以上プランとともに歩んできたことに感慨深いです。

さて、当初は国の施策に先駆けて、「認知症の人とその家族の視点を重視する」ことを京都独自のプランで明文化し、さまざまな取り組みを進めていました。ところが、わが国において20年1月に新型コロナウイルス感染者が確認され、いわゆる「コロナ禍」によって、認知症を持つご本人とその家族の生活が一変しました。感染拡大や重症化、また外出禁止などで、ストレス過多や環境の変化で症状が悪化したり、と世界的な想定外の状況に医療・介護・福祉の現場も混乱しました。
 本プランでは、重点的に推進すべき施策を三つの部会で検討し、認知症のご本人・ご家族にも参加いただきました。今後も「10のアイメッセージ」を含めたプランをさらに発展させるために取り組んでいきたいと思います。

ご本人が活躍できる共生社会へ
京都市岩倉地域包括支援センター 松本恵生さん

 京都府認知症応援大使の鈴木貴美江さんらとともに「Team Fcいわくら」として活動しています。廃棄される消防ホースで作った小物入れに色や柄を描いたり、木材工房をやったり、農園活動で収獲した野菜を使ってキッチンをしたり。「Fc」は「ファクトリー」の意味で、さまざまな仕事を生み出す工場に、と名付けました。しかし、最近は、認知症の人が地域で活躍することを応援する「ファンクラブ」でもいいのではと思っています。

 これまで私たち支援者は、ご本人の地域とのつながりを断ち切り、医療・介護サービスへつなぐことを優先してきました。その結果、診断後の「空白の期間」(認知症の疑いから介護保険サービスにつながるまでの期間)を生じさせてしまう一因となっていた気がします。
 必要なのは社会参加活動を増やすこと。自然体で、すでにある地域資源を生かし、例えば、行きつけの図書館でカフェを開きおしゃべりする。コーヒーを入れるのが上手な方に、お祭りなどで出張カフェの店員を担ってもらう。大工仕事が好きな方に工房でものづくりをしてもらうなどです。
 認知症の人に何ができるかではなく、認知症の人と何ができるか。ご本人の声を起点に認知症の人が暮らしやすい地域をどう一緒につくり出せるかが、新たな挑戦課題です。

求めるのは伴走してくれるパートナー
京都府認知症応援大使 下坂厚さん

 私は、2019年に46歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断を受けました。
 仕事を退職し、「もう死んだ方がマシかな」とさえ思いました。家族やいろんな人の支え、当事者との出会いがあり、前を向いて歩き出すことができたのです。
 現在、緩やかではありますが症状の進行を感じながらも、いろいろな工夫をし、自分らしく暮らせています。「何に困っていて、どう支えればいいですか?」と尋ねられることもあります。この病気は複雑で、症状は人によって違い、波もあります。私の場合も困り事は24時間発生しているわけでありません。

 「できないこと=困り事」とは限りません。当事者が本当に困っているのは、認知症への偏見であり、過剰な心配や待ってもらえない先回りのサポートではないかと思います。
 私たちが求めているのは、認知症とともに生き生きと暮らせる街であり、横並びで同じ方向を見て伴走してくれるパートナーなのです。
 認知症になってから、人と人がつながり支え合い生きることの素晴らしさに気付かされました。この病は勇気と生きる力を蘇らせ、人生に新たな意味と価値を持たせてくれたのです。
 いろいろな工夫やサポートで、自分らしく生きていくことができると知ってほしいと思います。

認知症について正しく知りましょう
認知症の人と家族の会京都府支部代表 河合雅美さん

 長寿社会の進行と医療の発達により、症状が軽い段階で認知症と診断されるケースが増えています。認知症のイメージは、以前とはずいぶん異なっていると言えるでしょう。認知症と診断されたご本人も家族も認知症について正しく知ることが大事です。
 認知症をもつ人は暮らしの中でなんとなく今までとは違うと感じることがあるようです。また、家族も認知症をもつ人との暮らしに慣れていないため、どうしてよいか分からないことが多くあります。

認知症をもつ人もその家族も診断されて間もないうちは生活がうまくいかず、悩みや困り事が多くなります。インターネットで一通りの情報は得ることができますが、頭では理解できても気持ちが追い付かないということはよくあることです。家族が認知症について正しく理解することで、認知症をもつご本人も家族も自分らしく生き生きとした暮らしを継続できるのです。
 当会では、毎月「つどい」(家族が集まってお話する場)を実施しています。先輩介護者からの経験談を聞くことで、不安が解消されたり、悩み事がちょっとした工夫で解決したりします。一人で悩まずに、認知症の人と家族の会にご相談ください。

ウィズ認知症社会へ
京都府認知症サポート医連絡会幹事 林理之先生

 認知症は何もできない人になる。今でもそう思う人は多いかもしれません。しかし、それはアルツハイマー型認知症の高度進行期の症状だけを強調しているに過ぎません。多くの認知症の人々は、多少は生活の不自由があるが、サポートを受けながらもその人らしく暮らしていくことが可能です。修道女研究というアメリカの認知症研究があります。修道女は修道院に入ってから死ぬまでの記録が詳しく残っているのでアルツハイマー型のような長期にわたる疾患の経過を知ることができ、剖検で脳の病理を確かめています。

104歳で亡くなったシスター・マシアの脳はアルツハイマー型でしたが、死ぬまで認知症の兆候はなかったそうです。われわれの脳は病気に負けない力があります。
 本年6月に「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が国会で可決、成立しました。認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすことができるよう、認知症施策の充実を図ることを目的とするとされています。一般社団法人日本認知症本人ワーキングループからは「認知症とともに生きる希望宣言」が発表されています。認知症の人を含む国民が、互いに人格と個性を尊重しつつ支え合いながら共生する社会、ウィズ認知症社会をつくりあげていきましょう。

認知症の備え~いわゆる認知症予防の考え方~
京都府医師会 認知症対策担当理事 西村幸秀先生

 「最近、もの忘れがでてきた」と地域にお住いの方やそのご家族から相談を受けることが増えています。軽度認知障害(MCI)と呼ばれる状態は放っておくと認知症に移行することが多く、適切な備えによって、健常な状態への回復や認知症への移行を遅らせることが期待できます。
 「認知症の備え(いわゆる認知症予防の考え方)」で大切なのは①バランスの良い食事②適切な運動③社会的交流です。また、ご自身の健康について身近に相談できる「かかりつけ医」を持ち、生活習慣病の予防や治療を行うことも重要です。

 安心して地域での生活を続けるには、困った時に相談できる人、地域で活動されている多職種(医療・介護・福祉などに関わる人)とつながることが大事です。悩みを本人や家族だけで抱えずに、お住まいの市町村の相談窓口、地域包括支援センターに相談してみるとよいでしょう。
 昨年のコラムでお話した「新・京都式オレンジプラン」が今年度改定される予定です。認知症の人とその家族が望む「10のアイメッセージ」を含めたプランをさらに発展させるために取り組んでいきます。

認知症の人の行方不明を防ぐための備え
京都府認知症サポート医連絡会 幹事 澤田 親男先生

 認知症の人の行方不明者は年々増加し、2021年の発表では1年間に全国で1万7636人でした。このような中、認知症の人が安全に外出を続けてもらえる工夫が重要です。
 家庭内や身近に行方不明になる可能性がある方がいる場合は①本人の顔写真や全身写真を準備する②名前や連絡先を書いた紙を財布などに入れておく③地域で運営されている見守りサービスや事前相談・登録制度の活用④衛星利用測位システム(GPS)を持ってもらう、など事前に備えておける工夫があります。

 ③に関しては、各地域で地域包括支援センター、役所および警察署などが連携し、リスクのある高齢者について事前に家族などから相談を受けて把握し、行方不明となった場合に地域ネットワークで早期対応する仕組みがあります。
 ④に関しては、認知症の方が携帯電話を持って外出する場合はGPSを活用できます。しかし、携帯電話を持たずに一人で外出する方もいます。京都市では小型GPS端末機を貸与し、位置情報を知らせる「高齢者あんしんお出かけサービス事業」があります。このサービス事業には、万一、本人が損害賠償責任を負った場合に、補償が受けられる日常生活賠償保険も付いています。詳しくは「京都市情報館」や「きょうと認知症あんしんナビ」といったWEBサイトの情報をご確認ください。

認知症の人の意思決定を支援する
一般社団法人日本意思決定支援推進機構理事長 成本 迅先生

 今日の夜何を食べようかといった日常的なことから、手術を受けるか受けないかといった重大なことまで、さまざまなことについて意思決定しながら私たちは日々暮らしています。
 認知症になると、どんなことを決めないといけないのか理解できなかったり、自分にとってどの選択がよいのか判断できなかったりするようになることがあります。

かと言ってすべてのことが自分で決められなくなるわけではないので、それぞれの意思決定について、対話を通して意向を確認したり、元々どんな希望をお持ちだったかを考慮したりして周囲の人がご本人の意思決定を支援することが必要です。また、自分が認知症になったときに備えて普段から周囲の人に自分の希望や好みを伝えておくことも、より良い意思決定に役立ちます。
 日本意思決定支援推進機構では、医療関係者、法律関係者、福祉関係者と病院、介護施設、企業の方が一緒になって、さまざまな場面における意思決定支援の方法や仕組みについて検討し、研修や教育資材の提供などの普及啓発活動を行っています。ぜひホームページをご覧になってみてください。
HP:https://www.dmsoj.com/

認知症専門医療機関におけるBPSDへの対応
京都府医師会理事・京都精神科病院協会会長 三木 秀樹先生

 認知症中核症状に加え、夜間の不眠・大声・徘徊、介護抵抗(暴言を吐く、つねる・たたくなどの暴力)、被害的幻覚・妄想などのBPSD(行動心理学的症状)が出現する認知症の人がいます。
 このような人が精神科医療に紹介されてきます。先ず診察・検査などで認知症の重症度、BPSDの種類・程度を把握します。そして、受診されるまでの認知症・BPSDへの対応とその結果、身体合併症の治療歴を確認します。

これは、BPSDの原因として、間違った対応がされていないか、身体合併症が隠れていないかを見過ごさないためです。この二つの原因は、よく観られるもので、適切な対応、身体疾患の治療で、BPSDは良くなります。
 この二つが原因でないBPSDに対しては、抗精神病薬も使用します。認知症の人に抗精神病薬を使用すると悪影響があり、使用は極力控えるようにと注意がされています。しかし、幻覚妄想、暴言暴力などの不穏が著しく介護者へ危害が及ぶ場合、必要な身体的治療を拒絶し生命の危険がある場合などでは、少量から抗精神病薬を使用して、BPSDの改善を図ります。特にBPSDが激しい場合、副作用が出やすくて薬剤調整が難しい場合は入院医療を選択します。

認知症の早期発見・早期診断とかかりつけ医の役割
京都府認知症サポート医連絡会幹事 林 理之先生

  近年、認知症は早期発見・早期診断が大切であるとされています。まず、認知症の原因疾患の中には、早期の慢性硬膜下血腫のように手術で軽快する場合やビタミンB1欠乏症のように早期にビタミンを補充すれば治る病気もあります。次に、根治療法がないアルツハイマー型認知症でもドネペジルなどの抗認知症薬で進行を遅らせるなど、認知機能をある程度保つこともできます。

さらに、早期に診断できれば、本人が病気について理解することが容易になり、本人・家族にとって将来の生活や人生に備える時間が得られ、自己決定が生かせます。また、早期発見によって、本人・家族が介護方法や支援サービスを適切に選択して、日常生活の質を維持しやすくなります。その結果、不安も軽減できて、認知症から派生する興奮、妄想、抑うつなどの行動・心理症状が生じにくくなります。早期発見・早期診断するためには、認知症を疑ったら、かかりつけ医がいる方はかかりつけ医に相談してください。診断のために専門医療機関に紹介してもらうこともできます。診断後も本人の基礎疾患や人となりを知るかかりつけ医が早期に支援することで医療のみならず、介護、薬局、行政などの地域支援につながることが可能です。かかりつけ医のない方は認知症初期集中支援チームに相談することもできます。

  

地域における認知症医療サポート体制
京都府認知症サポート医連絡会 幹事 澤田 親男先生

 地域で暮らす認知症の患者さんの多くは身近に「かかりつけ医」がいると思います。「認知症サポート医」とは、この「かかりつけ医」に対して認知症の鑑別診断や対応のサポートを行い、地域包括支援センターや専門医療機関との連携のサポートをするという役割を持つ医師です。京都府内には200人以上の認知症サポート医がおり、医療サポートの他にも認知症の啓発活動などにも取り組んでいます。

 認知症はその原因疾患によって治療方法も異なってきますので早期診断・早期対応が大切です。その一方、認知症を持ちながらいまだに診断されていない人や適切な医療や介護サービスを受けていない人も少なくありません。認知症サポート医を含む医療・介護専門職らで構成される「認知症初期集中支援チーム」という専門チームが府内に32チームあり、府内すべての地域をカバーしています。このチーム員が認知症のある方の自宅を訪問し、心配事や困っていることを聴き、今後の対応について本人や家族と一緒に考え、必要に応じ認知症対応の医療機関の受診や介護保険サービスの利用へのサポートをします。身近な人が「認知症ではないか」と思ったときに相談してみてはいかがでしょう。
 ウェブサイト「きょうと認知症あんしんナビ」にも「サポート医」や「初期集中支援チーム」の情報が掲載されていますので、一度ご覧いただければと思います。

認知症の鑑別診断と認知症疾患医療センターの役割
認知症サポート医連絡会幹事 成本 迅先生

 認知症の人が地域で孤立せず、適切な支援を受けて生活できるようにするためには、症状が軽いうちに診断を受けることが重要です。認知症の原因となる病気は70種類以上ありますが、病気によって治療法が違います。特に、慢性硬膜下血腫や甲状腺機能低下症といった病気は、治療により症状が改善する可能性があり、見逃さないことが重要です。また、アルツハイマー型認知症などの現時点で根本的な治療薬がない病気でも、進行を遅らせたり、地域の支援者とつないで孤立を防いだりすることができます。

 当院は基幹型認知症疾患医療センターとして、府内に8カ所ある地域型認知症疾患医療センターと連携して診療の質向上に取り組んでいます。かかりつけ医や認知症サポート医からの紹介を受けて、詳しい認知機能検査や画像検査を行って診断したり、検査結果や診断を踏まえて生活について助言をしたりしています。また、地域医療の支援のため、北部を中心に7病院で当院の医師が外来を行っています。適切な診断と治療、そして地域との連携ができるようになるには一定の経験とトレーニングが必要であり、専門医の育成も重要な役割の一つです。

新・京都式オレンジプランの推進
京都府医師会 認知症対策担当理事 西村幸秀先生

 京都では、2013年に「京都式オレンジプラン」が策定されました。認知症の人とその家族が望む「10のアイメッセージ」をかなえるための道(オレンジロード)をつなげ、「認知症とともに歩む本人の意思が尊重され、住み慣れた地域で暮らし続けられる社会」を目指しています。その背景としては、1980年に京都で結成された家族の会が、全国に支部を持つ「認知症の人と家族の会」へと発展し、当事者同士の語り合いの場として、現在もさまざまな集いを開催しています。

そういった歴史を持つ京都が全国に先駆けて、「認知症の人とその家族の視点を重視する」ことを京都独自のプランで明文化しました。
 2018年には、「新・京都式オレンジプラン」と改定し、認知症の啓発活動、多様な相談窓口の設置や見守り人材の養成、途切れない医療介護の体制づくりを推進しています。しかし、認知症のご本人が認知症であることを周囲に明かすことができず、家から出られなくなり孤立した、という声が多く寄せられています。
 新・京都式オレンジプランを推進するには「認知症の疾病観を変える」必要があります。認知症の人の社会参加を支援し、認知症に関するポジティブな情報を発信すること、多世代への啓発などを通して、認知症に対する社会のイメージを変えていくことが重要です。