思い描く、未来
- 2026元日 文化人メッセージ -

人間の感性、日本の感性を持って
描かれるもの
山田 伸
日本画家
芸術作品に触れることによって感動したり意識を変えたりできるのであれば、それは何と素晴らしいことだろう。また、そのような作品を生みだせる者はどのように育まれるのか。制作する者は目にしたものや事柄に感動し、その時の感情や想いをまとめ、素晴らしい完成予想図に思いをはせる。高揚感と熱意によって作品を導いて行くのだが常に思い通りにいくわけではない。いや実際はうまくいかない事が普通だと言ってよい。だからこそ必要となるのが思考能力や問題解決能力ではと考える。それらは思い通りにならない時ほど創造性や独創性を引き出すきっかけを生み出し、常に行使することで感性と技術を磨くと思っている。感性は磨けば磨くほど敏感になり、享受する世界が広がってゆく。これらは美術に限らず全ての分野、あらゆるシーンで新たな展開を可能にする基本的なものと言えよう。
日本は大陸との文化交流により発展してきた歴史がある。特に絵画の分野では全ての事柄をそのまま取り込んだわけではなく、常に日本人の感性に合うように変化させ定着させてきた。また、交流が途絶えた時には独自に生み出す力も備えていた。それらの積み重ねが歴史となり現在につながっているのだが実際にその今をどのように創造するのか。生成AI(人工知能)の存在は今後ますます発展しまた重要視されていくだろうし、そのこと自体は素晴らしいと思う。しかしそれに伴い人間自身はより「人間的」部分の追求に真剣になって根源的なところに立ち帰ると同時にその能力を発揮する必要を感じるだろう。そしてその一つに絵を描く事が必然的に入ってくるのではと考える。作家にならずとも、絵は老若男女いついかなる時でも描くことができる。思考し、順調にいかない事を解決していく過程で感性は豊かに育まれる。それを踏まえると「観て触れる」だけではなく、美術を「創造する」意味・役割は人間形成であると言えるのではないだろうか。
この京都または日本という地域に生活していく人間にとって、「文化」とは人間を人間たらしめるかけがえのないものであり、そこならではの自然環境や人々の営みの歴史の中で育まれる感性は、まさに文化を生み出す上で必要不可欠なものであろう。都市としてはあり得ないほどの恵まれた自然と時間の経過がもたらした物事が京都には身近にあるという事実をわれわれは一層意識してよいだろう。日本画とはそのような日本の感性を持って描かれるものだと私は考える。
◉やまだ・しん
1960年宮城県生まれ。日本美術院同人、京都日本画家協会会員。京都芸術大教授。東京藝術大卒、同大学院修士課程修了。安土城天主障壁画再現事業などにも携わる。2024年、再興第109回院展で文部科学大臣賞受賞。25年、再興第110回院展で内閣総理大臣賞受賞。


