経済面コラム
京都の未来企業・団体
メッセージ2026

京都から学び、
未来をひらく
佐藤 卓
京都芸術大学 学長
グラフィックデザイナーとして仕事を重ねる中で、私は日本各地の伝統技術や作品、地域に息づく文化に幾度も出会ってきました。そこには長い時間をかけて育まれた確かな力と、現代にも通じる新たな可能性があります。そうした価値に光を当て、人々に伝わる形へと編み直すことも、デザインの大切な役割だと感じています。
京都には、伝統を過去のものにとどめず、その背景にある美意識や思想、営みから未来に必要なことを学び、新たな価値へと結び直していく気風が息づいています。本学が京都市、京都新聞と共に取り組む市民講座「京都学」も、その実践の一つです。私自身も京都から学び、次代へどう生かしていけるかを考えていきたいと思います。
京都芸術大では、通学課程・通信教育課程を合わせて、18歳から90代までの2万3千人が、全国、さらには海外から集い、異なる経験や感性を持ち寄りながら学んでいます。世代や地域を越えて多様な価値観が出会うことが、本学ならではの豊かな創造の土壌です。文化と産業、地域と未来をつなぐ創造の力を育んでまいります。

だし文化と
未来への責任
志村紘之
京都鰹節株式会社 代表取締役社長
当社は健康経営を軸に、社員一人一人が安心して長く働ける環境づくりを進めています。
働きやすさを高めることは単なる福利厚生ではなく、生産性や創造性を高め、お客さまへの提案力の向上につながる重要な経営戦略です。人手不足や原価高騰に直面する飲食業界に対し、だしの価値を再定義し、省人化や付加価値向上につながる提案を行ってまいります。新規のお客さまにも味と品質をお確かめいただける機会を提供しています。
さらに、削り節や昆布などのだし素材の原料不足が進む中でも、高品質な商品を安定供給するとともに、メニュー提案や小回りの利く対応を徹底し、お客さまから信頼され続ける存在でありたいと考えています。
また未来世代への責任として、一人一人の社員が主体的に考え、会社の未来をともに創っていく組織づくりにも取り組んでいます。
京都の食文化の根幹である「だし」を守りながら進化させ、地域社会とともに持続的な発展を目指してまいります。今後ともご愛顧を賜りますよう、社員一同、心よりお願い申し上げます。

「動き、学び、世界と創る。」
北 寿郎
京都外国語大学 学長
京都外国語大は来年、創立80周年を迎えます。「言語で世界をつなぐ」という志とともに本学は産声を上げました。その志は変わりません。しかし、世界との向き合い方は変えなければなりません。
AI(人工知能)の急速な進化、地政学リスクの高まり、人口動態の変化――。昨日の「正解」が今日に通用しない時代、綿密な計画への過信は変化の足かせになります。私たちが大切にするのは「見て、判断し、動く」サイクルを組織として回し続ける姿勢と、「いま持っている強みを生かして踏み出す」という発想です。
国際交流の刷新もその延長にあります。「行って帰ってくる」留学を超え、現地の企業・団体と協働し課題解決に挑む「越境体験」へ。帰国後もネットワークを生かし、京都から世界へ発信し続ける往復運動を学びの基本に据えます。
地域・産業との連携も深化させます。学生が語学力を武器に地域課題の解決に参加し、伝統産業の海外展開を支え、産学の実践現場が教育を更新していく――「語学を学ぶ場」から「語学で動かす場」へ。80年の節目に向け、京都外国語大はもう一度、動き始めます。

「人生の器」が紡ぐ物語
篠田 潤
アーキテクチャーリンクライフ(ALL)株式会社 代表取締役
私たちはお客さまとの信頼関係を大切にしながら、本物の素材にこだわり、伝統的な美に現代的な感性を加え、職人の技を駆使して、本格的な注文住宅を設計し建築する会社です。完全に自由なスタイルで設計し、自社で現場の管理も行い、アフターメンテナンスまで責任をもって対応しています。
家づくりには一つとして同じものはなく、それぞれに物語があります。これまでたくさんのお施主さまや社員のみんな、職人さんたちと共に時間をかけて紡いできたその物語こそが誇りであり財産となっています。
Architecture(建築) Link(つなぐ) Life(人生・生活・命)という社名の通り、お客さまの人生や暮らしと住宅建築をつなぐのが私たちの使命だと考えています。自然を感じ、美を発見し、住むほどに愛着の増す「人生の器」といえる住宅をつくりたいと思っています。また、街並みの中で何十年も美しく、景観の一部として愛される建築を目指し、新しい素材や技術を柔軟に取り入れて、これからも住宅づくりを通じて豊かな物語を紡いでいきたいと思います。

創業50周年を越えて
京都から世界へ
立木康之
株式会社京進 代表取締役社長
昨年、京進は創業50周年という節目を迎えました。創業以来、「教育・文化の向上、社会の進歩と善良化への貢献」という理念の下、京都から社会に価値を届け、現在は日本国内に加え、米国、ドイツ、オーストラリア、中国、ネパール、ミャンマーでも事業を展開しています。また、学習塾、保育、介護、日本語教育など幅広い領域に取り組み、運営する語学学校では世界40カ国から生徒を迎えています。
私たちは、教育を通じて人の成長を支えるだけでなく、多様な文化や価値観が出会い、互いに理解し合える社会をつくることも大切な使命だと考えています。子どもたちの学びはもちろん、日本で学ぶ若者の挑戦を支え、高齢者福祉の分野にも取り組みながら、人の一生に関わる事業を通じて、人の成長と歩みに寄り添ってきました。
これからの50年は、教育事業で培った経験を生かし、学びや成長を支える取り組みを通じて、福祉や文化の分野に加え、海外における社会貢献にも歩みを広げ、「ステキな大人が増える未来をつくる」企業として、京都から世界へ歩みを進めてまいります。

デジタルを超え、
創造力の翼を育む
大垣守弘
株式会社大垣書店 代表取締役会長
指先一つで答えが見つかるスマートフォンは、私たちの生活を劇的に変えました。しかし、便利な情報に即座に触れられる一方で、自ら考え、悩み、未知の世界を空想する「創造力の余白」が失われつつあることに、私たちは強い危機感を抱いています。
世界に目を向ければ、ウクライナで続く戦争や中東情勢の緊張など、不安定な国際情勢が日々報じられています。分断や対立が深まる時代だからこそ、他者の立場を想像し、異なる価値観に思いを巡らせる力が、これまで以上に求められているのです。
効率が優先される現代、読書や芸術鑑賞は決して最短ルートではありません。しかし、行間に流れる空気を感じ、絵画や音楽から人の感情を追体験する時間は、スマートフォンの画面からは得られない「心の深耕」をもたらします。未来を担う子どもたちへ、私たちは何を手渡すことができるのか。それは、正解のない問いに向き合い、自らの感性で物語を紡ぎ出す力です。書店とは、本を売る場所である以前に、人が想像力と出合う場所です。これからも、本や芸術との出合いを通して、創造力の翼を育む場を社会に届け続けてまいります。

AI時代における
人間の知力
橘 重十九
北野天満宮 宮司
情報化社会においてAI(人工知能)の発達は、私たちの生活を飛躍的に便利にさせています。テレビでも、AIによる自動音声でニュースが読み上げられるのですから驚くばかりです。このまま技術が進めばAIは人間の知能を上回るのだから「全判断はAI任せでいい」と言う人までおり「では人間とは何?」と、首をかしげざるを得ません。
先日、本紙で食文化の将来を考えるセミナーが京都で開かれたとのニュースに接しました。職人不足によってAI導入は広がっており、食を作る職人のあり方が変わることに心配があるのです。「AIは、職人とほぼ遜色ないものを作れるが、言葉で書かれていない職人の技能を人間のように学ぶことは難しい」とあり、AIと職人の協業が提起され「人間が自ら考え、意思決定することがさらに大切」とした結論に、わが意を得たような気がしました。
人間の心には、相手を気遣ったり勝ち負けだけではないさまざまな思いがこもっています。AIを活用しながらも、決断はやはり人間であり、その決断する心の基準となるものは、菅公(菅原道真公)の精神にも通じる物事の本質を踏み外さない「誠の心」であると思います。

「京都の未来企業」
としての責任
山﨑雅司
三井不動産株式会社 京都支店 支店長
歴史と文化が息づく千年の都・京都においては「残しながら、蘇(よみがえ)らせながら、創っていく」という当社の街づくりコンセプトの体現こそが重要だと考えます。町家や歴史的景観に配慮した開発を徹底するとともに、地域事業者や大学との連携による新産業創出の支援、交流拠点の整備など、着実に進めていくことが肝要です。あわせて、観光都市・京都が直面するオーバーツーリズムの課題にも真摯(しんし)に向き合う必要があります。滞在の質を高める施設整備やエリアマネジメントの推進、地域との対話を通じ観光と市民生活のバランスを図り、持続可能なにぎわいを創出することが重要です。
これらの取り組みを、オフィスビル事業、レジデンス事業、ホテル事業、商業施設事業、物流事業、ライフサイエンス事業など、当社の全事業領域で可能な限り実践し、京都ならではの価値の高いプロジェクトを進めていきたいと考えています。多様な人々が学び、働き、住い、集い、挑戦できる場を創出し、伝統の継承と革新の両立を通じて将来世代に誇れる都市基盤を築くこと。それが「京都の未来企業」としての私たちの責任だと考えています。

交易通じ、
世界の人々と相互理解を
金子直樹
オーシャン貿易株式会社 代表取締役社長
世界は今、衝撃的な出来事で揺れ動いています。トランプ米大統領はベネズエラへの軍事攻撃に続き、イスラエルと共にイラン攻撃に踏み切りました。生鮮食品や花卉(かき)類の輸出入を主軸に据える貿易商社にとって、緊迫度を増す国際情勢は事業展開に大きく影響します。多難な時代ゆえ、為替相場の動向や各国政策の変化への柔軟な対応とリスクヘッジが欠かせません。
ただ昨今の円安基調は、海外からみると日本産の物品が買いやすく、優れた国産食材を世界各地に届ける好機です。日本食ニーズは高まっており、輸出事業はまだまだ伸びるとみています。東南アジア市場をさらに強化し、他地域での事業展開も急ぎます。単に輸出するだけでなく、奥深い和食文化の魅力を世界へ発信したいと考えています。
歴史観も宗教観も違い、文化や暮らしも異なる海外の人々と心を通わせ価値観を分かち合えることこそ、貿易ビジネスの真の醍醐味(だいごみ)です。世界中においしいもの、美しいものを届けることを使命に、交易を通じて相互理解を深めていくことが世界の平和と安定につながると確信しています。

お菓子屋さんは
お世話好き
七代 津田佐兵衞
株式会社井筒八ッ橋本舗 代表取締役会長
まだ子どもだった頃、私が住む嵯峨野地域は町内会活動が活発で、運動会や映画会、地蔵盆などが行われ、地域住民の交流も盛んでした。今でも、京都の多くの町内では、そんなお付き合いが続いています。各町内には、必ずと言っていいほどお菓子屋さんがあり、そのかいわいの方々の結婚、出産、葬儀、法事などに必要なお菓子を用意するお世話をされてきました。お菓子屋さんは住民の潤滑油としても機能し、さまざまなお世話をする役目もあったのです。これは、京都の文化、習慣が守られ、受け継がれてゆく根っこを支える大切な役割を持っていると言えるでしょう。
今、スーパー、コンビニの時代となり、町のお菓子屋さんの役割も変化しつつあります。それでも、お正月にはお餅をつき、お彼岸にはおはぎ、6月には「みな月」など季節に応じた対応を続けていらっしゃいます。そのような町のお菓子屋さんが、菓子業界のルーツとなり、名産菓子、名物菓子として育ってきたものが京都のお土産菓子ともなっています。
私はこれからもおいしくて、人を幸せにできるお菓子づくりに励んでまいります。

常若の心の
継承
田中恆清
石清水八幡宮 宮司
昨年は国家の重儀であります第63回神宮(伊勢神宮)式年遷宮の始まる奉祝の年でありました。遷宮の最初の祭祀(さいし)であります山口祭と木本(このもと)祭が5月2日に神宮にて斎行され、また翌月3日には長野県にて御杣始(みそまはじめ)祭が古式にのっとり、厳粛かつ盛大に斎行されました。
式年遷宮の歴史は古代にまでさかのぼり、平安時代の法令集「延喜式」にも「凡(およ)そ大神宮は二十年に一度、正殿・宝殿および外幣殿を造り替えよ」と記され、第1回式年遷宮が690年(持統天皇4年)に斎行されて以来、日本国の一大事業として今日に至るまで行われてきたのであります。
伝統ある神宮式年遷宮に内包されている神道の心こそが、常若(とこわか)と呼ばれる心であります。それは、全てのものを常に若く清らかな状態に保ち、物ごとを一カ所で止めず、心もよどませずに、永遠に循環させていく心の持ちようであります。
常若の心とは、まさに日本の四季折々の自然の循環の体現でもあり、神々の御心そのものでもあります。
自然に宿る神々と共に美しく生きる常若の心を後世へと伝えていくことが、誇りある「日本人の心」の継承でありましょう。

