賛同企業代表者 文化人 特集・未来へ受け継ぐ
経済面コラム

経済面コラム
【未来との約束2024】~京都の未来企業・団体~

Promise for the future

続木 創

京都産小麦でフランスのパン文化を

続木 創
株式会社進々堂 代表取締役社長

進々堂創業者の続木斉が日本のパン屋として初めて渡仏したのが1924年。それから100周年の今年、私どもが始めた取り組みは、京都産小麦を使ったパンのおいしさ探求と商品開発でした。
フランスの伝統的なパン文化は農業と一体化した地産地消。つまり地元で取れた小麦を地元の製粉屋さんが製粉し、その小麦粉を使って地元のパン屋さんが焼いたパンが、その土地の人々の主食になるという図式です。なぜ日本でこのようなパン文化が育たなかったかというと、日本の気候がパン用小麦の栽培に不向きで、国内産小麦のほぼ全てが麺用の品種だったこと。結果、日本のパン業界は長らく北米産輸入小麦に頼ってパンを焼き続けてきたのです。
ここ数年、農業者の皆さんの品種改良努力が実を結び、国内産小麦を使ったパン作りが全国で広がりはじめました。北海道産の年産60万トンと比べると、京都産は年産300トンとまだ少量ですが、私どものような京都の小麦需要者が京都産小麦のおいしさ探求にコミットし続けることで、生産者の皆さんが安心して作付面積を増やし、京都ならではの豊かなパン文化が育つ。そんな未来を夢見ています。

川中光敎

浄土宗からの発信

川中光敎
浄土宗 宗務総長

2024年は、宗祖法然上人(1133〜1212年)が浄土宗を開いて850年となるメモリアルイヤーです。本年、浄土宗では京都や東京の大寺院をはじめ、多くの寺院でこの記念すべき年を祝して大法要を実施し、また東京と京都と九州の国立博物館で「法然と極楽浄土」展を企画しています。これらは全て浄土宗から日本、そして世界に向けて、法然上人の信仰を伝えることを目的とした事業でもあります。
お釈迦(しゃか)様の最期の言葉が「比丘(びく)たちよ、今こそそなたたちに告げよう。諸行は滅びゆく。怠ることなく努めよ」であったといいます。私たちの法然上人の最後の言葉も、「ただ一向に念仏すべし」です。浄土宗には法然上人の「ただ一向に念仏すべし」という言葉こそが、お釈迦様の真実なる教えであるということを世界に伝えていく使命があります。
「私たちは、今、ここで、何をすべきか?」「正しい生き方とは何か?」という問いに、なかなか答えを見つけにくいこの時代だからこそ、浄土宗は法然上人の「ただ一向に念仏すべし」という言葉こそが唯一の正しい生き方であるということを発信し続けていきます。

畑 正高

次の一歩

畑 正高
株式会社松栄堂 代表取締役

私の立っている位置は、どのような場所なのでしょうか? 確かめるには周りをよく見てとか、俯瞰(ふかん)をしてとかいろいろな手立てがあります。鳥の目のように高い位置から全体を眺める俯瞰によって、認識を広げることができます。手に入れた地図と展望台の眺めから、オーストラリアでは太陽が北にあることに気づき驚愕(きょうがく)した思い出があります。日中、太陽を見ていると右から左へ動いていくのです。
若い人々に呼び掛ける私のメッセージは「歴史に学ぼう」です。必死で「温故」しませんか? 私たちが当たり前にしている多くの社会システムは、驚くほど多くの人々が世代を超えて発見・工夫・探究・挑戦・失敗・感激を積み重ねてきたのものです。このことを知ると、簡単に「もうできない」とか、「これは無理だ」とか、クオリティーを下げてしまうことが許されないことは一目瞭然です。
それらの社会システムのデジタル化を進める中で、私たちは甘くなっていないでしょうか? 過去に学び続けることで、次の一歩のあり方を、責任・自信・自負にあふれたものにできると感じるのです。過去に立ち返って自分の位置を見ると、次の一歩のあるべき姿が見えてきます。

小山要次

「よろこびがつなぐ世界」を目指して

小山要次
キリンビール株式会社 京滋支社 支社長

1907年の創業以来「お客様本位」「品質本位」の基本姿勢に基づき、お客さまへの新しい価値のご提供を目的にさまざまなチャレンジを行ってまいりました。
また多様性を力に変えて、情熱とたゆまぬ努力を忘れることなく、常に成長していくことが私たちの目指す姿でもあります。
ブランド力を高める「人財」を磨き、「よろこびがつなぐ世界」を目指していく中で、京都・滋賀のお客さまとの「絆」を育み深めていきたいと考えております。
「キリン一番搾り生ビール」「本麒麟」「スプリングバレー豊潤〈496〉」などお客さまにご支持いただける商品を販売し続けるとともに、今年は17年ぶりにビールの新商品である「晴れ風」を発売し、お客さまに喜んでいただける場面をご提供することで「ビール文化の魅力化・創造」を推進してまいります。
社会と共有できる価値創造「CSV(Creating Shared Value)」を実践することにより、社会課題の解決と持続的成長を実現し、お客さまから信頼される企業となるよう取り組みを続けます。

山本靖則

真のトータルソリューション企業へ

山本靖則
株式会社島津製作所 代表取締役社長

島津製作所は、1875年に京都木屋町二条で創業し、来年3月に創業150周年を迎えます。仏具職人の島津源蔵が興した当社の歩みは、「ナンバーワン・オンリーワンの製品・技術を開発して社会に実装する」という挑戦の歴史でした。「科学技術で社会に貢献する」を社是に、経営理念「『人と地球の健康』への願いを実現する」ために、私たちは挑戦を続けています。
2024年度からは、中期経営計画で掲げる「お客様中心」志向へと営業体制を変革します。営業担当者が部署や地域の垣根を越えて連携して、「ヘルスケア」「グリーン」「マテリアル」「インダストリー」という4つの分野のお客さまにワンストップサービスの提供を実現します。私たちが理想と掲げる姿は、「お客様の未来に寄り添うトータルソリューション提供企業」です。トータルソリューションの実現には製品だけでなく、ソフトウェアやサービス、オーダーメイド品などの全てが必要です。これからも独自の技術を磨きながら、世界のパートナーと共同して、お客さまに「島津があって良かった」と言っていただけることを目指して、引き続き努力してまいります。

上山裕之

感動のそばに、いつも。

上山裕之
株式会社JTB 京都支店長

JTBグループは、事業ドメイン(領域)を「交流創造事業」と定め、JTBならではのソリューションの提供により、地球を舞台にあらゆる交流を創造し、お客さまの感動・共感を呼び起こすことを目指しています。そして、私たち京都支店は主体的に地域の多様な関係者と連携し、交流の「チカラ」により、地域の課題解決や新たな魅力を創造し、地域住民や旅行者にとっての「感動」を生み出すことを通じて、持続可能な地域づくりに貢献したいと考えています。
例えば、文化財を会議やイベントの会場として活用する取り組みは、文化財の価値継承、イベント誘致、経済消費増の好循環を創出しています。また、京都の大学生が京都の魅力を修学旅行生に案内する「B&S(ブラザー&シスター)プログラム」は、伝統文化の理解促進、継承に加え、未来の京都府民づくりにも寄与しています。人・場所・コトなどをつなぎ、地域・旅行者・社会にとっての「三方良し」を実現します。JTBグループのブランドスローガンは「感動のそばに、いつも。」これからも京都が京都であり続けるために、私たちは交流を通じて「感動」を生み出すことで貢献してまいります。

吉川左紀子

22世紀の芸術大学に向かって

吉川左紀子
京都芸術大学 学長

今から51年前、1973年に私は京都で学生生活を始めた。当時の大学はまだ学生紛争の名残があり、入学式は中止。授業をボイコットする学生ストライキも頻繁にあって、どの大学も騒然としていた。今の大学からは想像もつかない学生時代だった。
京都芸術大学の母体である瓜生山学園は77年に創設された。2027年に50周年の節目を迎えるので、創設時から今までの映像記録を整理し、アーカイブに残す準備が始まっている。大学の周年事業は記憶をたどりながらの作業も多く、頭を悩ますこともあるが、大学のあり方を検討し直す良い機会でもある。何よりも、創設当初の映像には新しい学園を創り出すエネルギーがあふれていて、今見てもわくわくするような活気が感じられる。
21世紀になって四半世紀。今日、大学で学んでいる学生たちの多くは、22世紀の世界を見るだろう。より良い社会の実現を目指し、芸術の持つ力を活用できる人を育てることが本学のミッションである。創業100年を超える企業も少なくない京都では、50年後、100年後はそれほど遠い先の話ではない。改めて、芸術と大学教育の未来を考える日々である。

小野隆啓

セレンディピティ

小野隆啓
京都外国語大学・京都外国語短期大学 学長

「セレンディピティ(serendipity)」という言葉は、イギリスの政治家であり、小説家でもあるホレス・ウォルポールが生み出したもので、「思わぬものを偶然に発見する才能や、幸運な偶然を手に入れる力」のことです。
いつの時代にも、「自分は人やものとのめぐり会いに恵まれていない」と嘆く人は少なからずいると思いますが、新しい世界に進めば、セレンディピティに遭遇する可能性が高まります。
しかし、世界が新しくなったら、必ずセレンディピティが現れるというわけではありません。
何かが生まれる、あるいは、何かに遭遇するには、それを誘発するものが、その過去のどこかにあります。忘れているかもしれませんが、過去のどこかで何か意味のあることをしているのです。
何もないところからは何も生まれません。
セレンディピティにはそのきっかけが過去にあり、そのために意味のある出来事や良き人にめぐり会うのです。
未来との約束は、今という現実の自分との間に実現するものなのです。

木下宗昭

創業55年目に新たな事業拡大を

木下宗昭
佐川印刷株式会社 代表取締役会長

弊社は今年の11月に創業55年目を迎えます。これまで総合印刷企業として、印刷物を通じて情報発信をお手伝いしてまいりました。その新たな進化系として、来年1月に埼玉県越谷市に新工場・BPOセンターを竣工(しゅんこう)いたします。
このBPOセンターは、最高レベルのセキュリティー状態でお客さまの大切な情報をお預かりし、エンドユーザーへ送付する書類、例えばダイレクトメールや請求書などを、データ加工から、印刷、後加工、封入・封緘(ふうかん)、仕分け、発送まで一貫して対応いたします。またさらに前段となる委託業務事務局としての窓口対応業務やコールセンター業務など、アウトソーシング(外部委託)に関連する業務一式をまとめてお引き受けできる新工場でもあります。これによりお客さまの負担軽減と業務効率化に貢献し、本業への経営資源の注力が可能となります。
われわれがこれまで総合印刷業として積み上げてきた実績とノウハウを生かしながら、「佐川印刷に全てまとめて任せておけば安心」といったご信頼をいただくことで、新たな分野へ事業を拡大いたします。佐川印刷創業55年目の新たな挑戦の始まりです。

松井 雄

地球市民として 温かい手によって

松井 雄
株式会社公益社 代表取締役社長

近年、グローバル化が加速し新たな多文化社会と一般的に言われるようになりました。時代の変化に触れていると思うのです。これほどまでに多様性を尊重し包摂的な社会を目指す地球市民としての意識が必要な時代はあっただろうかと。
人の生き方が多様化しています。だからこそ、人の終わり方も多様化して当然です。ITの活用により組織やビジネスプロセスは変革され、業務の効率化や競争力が強化されます。公益社で何が変革できるのか。組織やお葬式の一部分では新しい技術が活用されるでしょう。しかし、本質的な部分はデジタルではなくアナログ的な人が中心であることは揺らぎません。お葬式にはさまざまなプロセスがあります。臨終後の準備、ご納棺、室礼、儀礼など終了するまでの各プロセスでは作法と共に人の感性と気遣いにより執り行われます。
人の誕生も終わりも、その時その場で心の込もった温かい手によって大切に迎え送られるさまは今後も変わらないと思います。その一つ一つの行いは人間味あふれる思いやりの全ての表れです。人に寄り添うのは人しかいない、その心を未来につなげたいと存じます。

辻 嘉明

電気を灯(とも)して社会を支える

辻 嘉明
株式会社きんでん 常務執行役員 京都支店長

能登半島地震から5ヶ月が経ちますが、被災地の復興は端緒についたところです。地震発生直後の状況は、科学技術の進展する現代においても、自然の大きな脅威に十分な防災のすべを持ち得ない、文明社会の限界を見せつけられました。一方で、甚大な被害に果敢に立ち向かい、助け合い、早期復旧に挑むのも人間の力です。英知を集めて対処する人と社会が持つポテンシャルといえるでしょう。
当社も出動要請に基づき地震直後から電力復旧に珠洲エリアに入りました。ライフラインが途絶えた過酷な中で昼夜まい進する最前線の復旧部隊を支えるのは、一刻も早く電気を送らなければという使命感、自分たちがやらなければ誰がやる、という自負心です。災害現場は道路や家屋の損壊など、平時とは大きく異なり、臨機に、速やかに、安全に作業に当たらなければなりません。非常時に発揮される技術力、安全力、チームワークは、平時から地道に培ってきた当社の現場力そのものです。これからも、さまざまな状況で最適な技術技能を提供できるよう、常より現場力を研さんし、総合設備エンジニアリング企業として社会のインフラを支える役割と使命を果たしてまいります。

北尾和彦

「和の精神を仕事で実践する」

北尾和彦
京都薬品工業株式会社 代表取締役会長

日本では7月に新紙幣が発行されます。昔はお札に聖徳太子が描かれていて、誰でも聖徳太子を知って親しんできました。日本の根幹をなす「和の精神=Harmonize」は日本のみならず世界でも大切な考え方です。
京都薬品工業の社是は「和親協力 誠実報恩」です。「和」するということは簡単そうで実は大変難しいのです。聖徳太子は十七条憲法で「和を以て貴しとなす」と仰っていますが、第2条で「和」するには「篤(あつ)く三宝を敬え」と教えられています。三宝とは身近なところで言えば、ご先祖や両親です。ですから、親に孝行し、先祖を大事にする心を大切にすれば人生に間違いはないと思います。
立派な社会人になるには「和親協力 誠実報恩」を仕事を通じて実践すると同時に、道徳心や企業人としての行動規範を守り、また、常に謙虚に自分自身を省み、そして製薬会社の一員として、病気に苦しむ人々に新薬を届けるという尊い「志」を持つことが大切です。一所懸命(自分が居る場所で)、コツコツ努力を積み重ねていくことで、やがてそれが大きな仕事になって社会に報恩できるようになるのです。

奥村浩二

能登半島地震と東急グループ

奥村浩二
株式会社京都東急ホテル 専務取締役

元日に発生した「令和6年能登半島地震」で被災された皆さまには心よりお見舞い申し上げますとともに一日も早い復興をお祈り申し上げます。東急グループでも、金沢、富山のホテルで一部物的被害がありましたが、おかげさまで現在は無事に営業を再開しております。東急グループによる被災地への支援状況は、翌日1月2日に石川県知事に支援を表明し、被害に遭われた方の支援および被災地の復旧、復興に役立てていただくため、義援金や物資の支援を行いました。また災害救助法を適用された地域の学生の学費減免、受験生の検定料免除(東京都市大、亜細亜大で実施)、2次避難者受け入れなどさまざまな形で支援に携わって来ました。
現在東急ホテルズでは「能登のために、石川のために応援消費おねがいプロジェクト」に賛同し、京都東急ホテルを含めた全国37ホテルで石川県の食材を取り入れた「美味しく応援!石川・能登レストランフェア」を開催しています。東急グループは、これからも微力ながら石川県を応援するとともに、また予測できない災害発生に対して、迅速に行動して地域社会と共に未来への一歩を踏み出していきます。

髙倉通孝

京都生協は創立60周年を迎えます

髙倉通孝
京都生活協同組合 専務理事

京都生協は1964年、物価の高騰などで暮らしに不安が募る中、「お互いに頼もしき隣人となりましょう」との呼び掛けで誕生しました。
創立以来、助け合いの組織として、食の安全・安心の追求、誰もが安心して暮らせる地域社会の実現に向けて取り組んできました。
そして、食や暮らしの「安全・安心」は今日のスタンダードになりました。持続可能な社会が求められる今、食や暮らしだけでなく、人への優しさや寄り添う心、人とのつながり、そして地球に対する「安全・安心」がこれからのスタンダードになると確信しています。
次の世代、そしてさらに次の世代へ「安全・安心」な地球環境を手渡していけるように、関係する全ての人々と力を合わせ、「新たな希望」をつくります。
今年は創立60周年を迎えます。創立時から続く京都生協の理念「頼もしき隣人たらん」の精神で、組合員の暮らしを総合的に支え、さらに社会的な役割を発揮できるようにしたいと考えています。

澤田昌人

「人間尊重」の理念を掲げて

澤田昌人
京都精華大学 学長

アップルコンピュータ(現アップル)は、スティーブ・ジョブズの家のガレージで創業したという伝説があります。ささやかな一隅から世界を変える製品を作ろうとしていたのでした。私立大学にはそれぞれの出発において、志、すなわち理想があり理念があります。本学においても「人間尊重」という理念があります。しかし、住民を巻き込むことを躊躇しない悲惨な紛争が各地で勃発している今日、「人間尊重」は今後も意味ある理念として掲げ続けることができるのか、深刻な問いが突き付けられていると感じています。
昨年の「未来との約束」では、「『グローバルな大学』を目指します」と申し上げました。それは学生たちが地球規模での経験をもとに成長してほしいという願いを込めたものでしたが、もう一つの願いも込めておりました。紛争では敵があたかも「人間」ではないかのように表現され、それは殺し合いの中でますます強調されていきます。現在も未来も本学は、国籍、民族、宗教、ジェンダーなどを問わず、同じ「人間」として「尊重」されるという経験を若者たちに伝えたいと願っています。「一隅の灯」をともし続ける所存です。

黒坂 光

新たな社会創造に向けた挑戦

黒坂 光
京都産業大学 学長

京都産業大学は、1965年に設立された。当時の日本は安全保障を巡る激しい対立や学園紛争などにより国内情勢が不安定であり、大学教育も荒廃していた。本学の設立者である荒木俊馬博士は、国家と大学教育の未来を深く憂い、「将来の社会を担って立つ人材の育成」を建学の精神に掲げて、文化と歴史の中心である京都に理想の大学を設立することを決意し、京都産業大学を開設した。
本学は「未来との約束」である建学の精神を具現化するため、改革に着手している。将来の多様性、デジタル化、専門化が進む社会を見据えて、さまざまな属性を持つ学生たちが互いを認め合い、デジタルを駆使した効率的で豊かな生活を追求し、輝かしい未来社会の創造に情熱を傾ける―それが、私たちが見ている未来の風景である。本学は一拠点型総合大学の特性を生かし、ダイバーシティー・エクイティ&インクルージョン(多様性・公平性・包括性)環境、最先端のデジタル技術を活用した「スマートキャンパス」の実現、起業家精神に富んだ人材育成などの教育改革を推進している。京都産業大学は、新たな社会創造に向けてさらに挑戦し続ける。

中野博美

スペシャルオリンピックスの歴史

中野博美
京都きづ川病院 理事長

スペシャルオリンピックス(SO)は、1962年頃米国人のユニス・ケネディ・シュライバー氏が始めたもので、知的障害がある姉がいたことから考案したと言われています。SOは、知的障害がある人々にスポーツの機会を提供し、参加者が自己成長や自信を深め社会参加を図ることのできるプログラムです。ファミリー、ボランティア、コーチや支援者が参加し、コミュニティー全体が一体となって、この特別なオリンピックの成功に寄与しています。
1968年から現在のようなスポーツプログラムが行われています。日本では94年、熊本で細川佳代子氏が中心になって始まりました。現在はオリンピアンである有森裕子理事長の下、日本全国に支部があり、さまざまなスポーツプログラムを開催しています。SOは早くよりインクルージョン(包摂)を提唱し、多様な個性を公平に包摂的に認め合うことの先駆けとなりました。SO日本・京都は2008年、裏千家家元夫人である千容子氏が理事長を務められ大きく発展してきました。現在は元京都府知事の山田啓二氏が就任して、スポーツプログラムの発展に指導力を発揮しておられます。

栗和田榮一

「生産と消費をつなぐインフラとして」

栗和田榮一
SGホールディングス株式会社 代表取締役会長

当社グループは、1957年に創業して以来、社会インフラの一端である物流事業を担わせていただき、これまで途切れることなくサービスを展開してまいりました。しかしながら、現下の社会経済状況は、世界的な地政学リスクの表出や急激な物価上昇、また、物流業界における2024年問題への対応など、非常に厳しいものがございます。さらには、頻発する災害の支援活動など、私ども物流業界への期待、関心が高まっています。
社会インフラである物流を担う私たちの重要な役割は、物流を維持し社会経済の発展に寄与することです。近い将来における労働力不足など課題はありますが、一緒に仕事をしていただいている企業さまとの連携強化や各種の自動化・省人化などにより、ネットワークの強靭(きょうじん)化に取り組みます。持続可能な社会の実現に向けては、環境対策などにとどまらず、社会課題解決につながるソリューション創出を通じて貢献します。これらを成し遂げるには未来を担う人材の育成は不可欠です。挑戦できる企業文化の醸成やさまざまな感性・視点を持つ人材が能力を発揮し一層活躍できる取り組みを継続します。

志村雅之

「京の出会い」

志村雅之
京都鰹節株式会社 代表取締役会長

弊社は1877年に個人創業し、おかげさまで法人改組して今年75周年を迎えます。和食が2013年にユネスコ無形文化遺産に登録され「京の和食文化」がしっかりと根付いて、市場は順調に推移しています。国内市場はもとよりインバウンド(訪日客)の影響と「健康志向」「グルメ志向」も加わり需要は旺盛です。
10年前から発祥の地、中京区で毎月24日を「節(24)の日」として、即売会を開催しています。全国からのお客さまに加え、東南アジア、北米、続いてフランスやイタリア、スペインなど海外のお客さまの増加が顕著です。販売会では「京の出会い」をモチーフにして「京の食文化」を紹介、提供しています。月1回の行事でどんな「出会い」があるか毎回心をときめかせています。国内のお客さまには「アイデア」をお教えいただき、その結果23年9月「ジャパンフードセレクショングランプリ」を受賞しました。また海外のお客さまには元気さや陽気さを頂き楽しい時間を共有しています。
削りがつおは良質なタンパク質を豊富に含んでおり、健康寿命に貢献していると自負しております。今後も食文化の発展に貢献したく思っています。

若菜真丈

京都の玄関口としての未来

若菜真丈
京都駅ビル開発株式会社 代表取締役社長

3年にわたるコロナ禍が終焉し、ようやく以前の日常が戻ってまいりました。この間、行動変容などにより、私たちを取り巻く環境は大きく変化しましたが、コロナ禍を経験し世の中が変わっても、人と人とのつながりの重要性やありがたみを痛感しているのは私だけではないと思います。
京都駅ビルは京都の旅の玄関口。来年には万博も開催され、国内外から多くの方々が新たにこの玄関をお通りになるでしょう。これまで脈々と受け継がれてきた世界に誇れる素晴らしい京都の文化を多くの方に知ってもらう絶好のチャンスです。
「文化の香りのする躍動する街のメディアとしての駅」、これが京都駅ビルのコンセプトです。行政、神社仏閣、企業や団体、地域の方々と連携し、文化を発信するだけでなく体験していただく機会を提供できたらと考えています。そして、一人でも多くの京都ファンを増やしていきたいと考えています。
私たちは、将来にわたり地域とのつながりを深め、京都の玄関口として地域とともに文化都市京都の発展のために尽力してまいります。

立木康之

「ステキな大人が増える未来をつくる」

立木康之
株式会社京進 代表取締役社長

京進グループは、1975年に学習塾として創業して以来、約半世紀にわたり小中学生、高校生を対象とした学習塾を展開してきました。現在は、事業領域を広げ、英会話、日本語教育、保育、介護、キャリア支援、フードサービスなどの人の一生に関わる事業を展開し、事業拠点は国内外で500を超えています。
2020年には、グループビジョンとして「ステキな大人が増える未来をつくる」を定め、人の一生に関わる分野で社会に貢献できる企業を目指しています。
当社グループは2000年より「経営品質向上プログラム」に取り組み、13年「関西経営品質賞」優秀賞、17年「京都経営品質賞」優秀賞(英会話事業部)をいただきましたが、さらにこの先もお客さまに提供できるより良い価値を追求し、組織の成長と改革を図っていきたいと考えています。
25年、京進グループは創業50周年を迎えます。働く従業員がワクワクするような企業となり、新たな時代に応える新しい事業を行うことで、この先も「ステキな大人が増える未来をつくる」企業を目指してまいります。

橘 重十九

外国人参拝者にも天神信仰の一端を

橘 重十九
北野天満宮 宮司

コロナ禍が明け、境内は外国人の姿が目立って多くなったような気がします。「外国からの観光客にも天神信仰の一端を」と、英語のパンフレットを作り、ネットでも発信しています。
「一神教の国の人たちに天神信仰など分かるものか」という人がいますが、私はそうは思いません。10年ほど前、米国・ハーバード大で天神信仰に造詣の深い医師の田邉親男先生(親友会グループ会長)の講演に立ち合いました。怨霊神として祀られた菅原道真公(菅公)は、天神さまとなって学問・文芸・芸術などの神として崇敬され、日本の近代化に寄与したとの話を英語でされました。分かってもらえるかどうか不安でしたが、反応は上々で、心配など杞憂に終わりました。
あと3年で菅公没後1125年の半萬燈祭です。和魂漢才の人、誠の人、偉大な学者で詩歌人など、外国の方にも菅公の人となりや精神、天神信仰の素晴らしさを知ってもらうよう努めるのも、天満宮に奉職する神職の務めです。それにはあらゆる機会を捉えて発信しなければならず、英語で信仰を伝えられる神職も必要になってきたと思っています。

川村明緒

選ばれる企業になるために

川村明緒
医療法人仁愛会 川村産婦人科 副院長

産婦人科において妊娠出産と並ぶ大きな役割として「女性ヘルスケア」が挙げられます。いま、社会でこの「女性ヘルスケア」が注目を浴びており、企業でも新しい取り組みが始まっています。これまで月経痛や更年期症状による女性特有の身体の不調は病気ではなく、我慢するものだと世間からは認識されていました。
しかし、これらの症状は、最近はホルモン療法や漢方薬の処方などで随分と良くなるのです。治療せず放置することにより、女性のモチベーションが下がり経済的にも大きな損失になることに気づく企業が増えてきました。ある企業では婦人科検診の費用を福利厚生の一環とする仕組みを導入し、その効果として女性のパフォーマンスが上がるだけではなく、人材募集の面でも選ばれる企業となってきています。女性の能力を十分に発揮できる環境を整えることがこれからの企業の重要なミッションと言えるでしょう。
当院では「女性ヘルスケア」専門の外来を設け、出産、女性ヘルスケア、それぞれの専門医が女性のホームドクターとして診療しています。そして、女性が活躍しやすい社会がますます広がることを願います。

金子直樹

交流こそが平和をつくる

金子直樹
オーシャン貿易株式会社 代表取締役社長

生鮮食品や花卉(かき)類の輸出入に特化した商社のわが社にとって、戦争や自然災害はビジネスに大きく影響します。サーモンの加工を委託していたウクライナの水産会社は戦禍に巻き込まれました。トルコにも水産関係の取引先があり、わが社は両社に支援金や寄付金を送り、復興を支援しました。
昨年は、東南アジア、欧米など8カ国を訪れ、新規顧客の開拓に奔走。ビジネスは順調でしたが、行く先々で紛争や災害が人々の暮らしに黒い影を落としていることを実感しました。わが社は、福島第1原発の処理水問題の影響で輸出がやや減少したものの、インバウンド効果などから国内需要が堅調で、結果的に好成績を収めることができました。今年も紛争や地球温暖化の影響などが予測されます。文化も歴史も、暮らしの在り方も異なる海外の人々とビジネスを通じて交流を積み重ねていくことが世界平和につながると確信します。創業者の米田多智夫会長の経営理念である「三方良し」(売り手良し、買い手良し、世間良し)を引き継ぎながら、新しいビジネスの種子をまき、地域社会に貢献したいと考えております。

大垣守弘

「京都文学賞」という夢

大垣守弘
大垣書店グループ 代表取締役

人それぞれに夢があり、夢を抱く方を応援することは企業にとっても使命の一つと考えています。書店に並ぶ多くの本から、読書を通して夢を見つけ、気づきや知識を得られる方も多いです。私たちは本を売るだけではなく、その本を書く方々の応援もしたいと思っています。
日本の文学賞の最高峰には芥川賞と直木賞がありますが、私たちの京都にも「京都文学賞」があり、京都を題材とした「小説」の応募が数百作品に上ります。弊社も社を挙げて協力をしており、私も選考委員の1人として応募作品を読ませていただいています。
今回第4回の最終選考は13作品に絞られたとはいえ、すべてを読むのは覚悟が必要です。よく調べ書き上げられた京都愛あふれる作品の数々、中高生部門や海外部門もあり、これまでにない展開のストーリーに夢中になり、時間を忘れて没頭してしまいます。
一般部門の最優秀作品は、毎回大手出版社から商業出版されており、そのレベルの高さがうかがえます。作者の夢がかなうお手伝いができることは最高の経験です。次回も応募作品を読み、寝不足の日々が来ることを今から楽しみにしています。

𠮷本幸男

義のあるビジネスで進化・真価・進化

𠮷本幸男
エフビットコミュニケーションズ株式会社 代表取締役社長

当社は、経営理念である「私たちは常に義のある商品を創造し、豊かな未来を提供します」を実践するため一昨年、バイオマス発電所とその隣接地に、次世代型園芸施設を整備し温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルを超える環境配慮型の発電事業を立ち上げました。バイオマス発電の主燃料となる、PKS(パームヤシ殻)や木質チップなどの原料は年々高騰し、需要と供給のバランスが乱れ、物量確保も困難になっているのが現状です。
そこで60年にわたり稀有(けう)な都「京都」で義のある商品を創造し続け、時代の変化に敏感に対応しながら、お客さまと社会に貢献する商品を提供してきた当社としては、バイオマス燃料問題の解決に向けた取り組みが重要な使命であると位置付けました。試行錯誤を繰り返し、農業残渣(ざんさ)や竹害などの問題材料を半炭化し燃料として使用することで、高カロリーでエコロジカルなバイオマス燃料の供給が目指せると、この4月に炭化燃料の工場をいよいよ稼働開始させます。今までも、そしてこれからも、社会貢献する商品を提供し続けることが、当社の存続と成長の鍵であると信じております。

市野周平

「もっともっと、面白くなる。」

市野周平
アサヒビール株式会社 京滋統括支社 支社長

本年アサヒビールは「もっともっと、面白くなる。アサヒビール」を事業方針として掲げています。2022年のフルリニューアル以降好調な「スーパードライ」は、スマート缶の発売やコンセプトショップを東京・銀座に開設し、若年層を中心としたブランド体験機会の創出に取り組みます。「マルエフ」の愛称で親しまれる「アサヒ生ビール」は、日本全国を巡る「出張マルエフ横丁」や各種サンプリングなどを通じて1千万人のブランド体験機会の創出に取り組みます。
また、お客さまにさらなる驚きやワクワク、感動を提供していくために、アサヒビールならではの「High-Valueカテゴリー」に注力します。「High-Value」とは、当社独自の価値を持ち、価格に左右されることなく、お客さまに選択され続ける高付加価値商材です。独自の「フルオープン缶」を活用した「アサヒ食彩」や「未来のレモンサワー」、歴史ある「ニッカウヰスキー」ブランドなど、当社ならではの技術や強みを生かしたブランドの育成に取り組んでまいります。「最近のアサヒビール、 面白いね」と言ってもらえるよう、驚きとワクワクにあふれた提案を続々と送り出していきますので、ぜひご期待ください。

篠田 潤

暮らしの質を高める家を適正価格で

篠田 潤
アーキテクチャーリンクライフ(ALL)株式会社 代表取締役

快適で健康的な住まいは、明日への活力を養います。窓に広がる緑や空の眺めは感性を育み、お施主さまに合わせて練り上げたプランは、暮らしのストレスを軽減して日々のパフォーマンスを高めます。さらに住まいは景観の一部として、街並みに美を提供し続ける存在でもあります。
私たちはそのような住まいを、完全に自由なスタイルで自社設計し、現場の管理を行い、建築、アフターメンテナンスまで責任を持って対応しています。本物の素材にこだわり、職人の技を駆使して、伝統美に現代的な感性を加えるのが私たちのスタイルです。
営業スタッフはおらず、広告宣伝もあまり行わない、少数精鋭の会社です。だからこそ無駄な経費を削り、建物にコストを投入して、適正価格で上質な住宅を提供できると自負しています。また職人は長年付き合いのある人たちがほとんどなので、人件費が高騰する昨今においても 影響を抑えることができています。
地に足をつけた体制で、お施主さまとの関係を大切にし、暮らしの質を高める住まいを適正価格でお届けいたします。

田中恆清

他者に寄り添い、共に行動していく

田中恆清
石清水八幡宮 宮司

本年1月1日に発生した石川県能登半島地震の強烈な揺れと津波によって被災され、今もなお避難生活を余儀なくされている多くの方々に心からお見舞いを申し上げますとともに、尊い命を失われた犠牲者の方々の御霊(みたま)安らかならんことを衷心よりお祈り申し上げます。
わが国は、古来自然災害の大変多い国であり、先人たちは自然の恵みに日々感謝するとともに畏れも抱き、自然の中に神を感じて祭祀を行い、畏怖の心をもってつつましく生活を営んできた民族であります。
日本人は、地震をはじめ、数多くの自然災害に幾度となく直面しながらも、他者を思いやる助け合いの精神をもって、何度も危機を乗り越えてきました。
他者のために自分のでき得る最善のことを考え全力で尽くしてきた日本人の永い歴史と精神があるからこそ、その行いと心は今に伝えられてきたのだと思います。
私たちは今回の大震災における被災者の心に寄り添い、つながりをより深め、力を合わせて、人と人とを結ぶ心の大切さを皆で発信し、共に行動していくことが重要な役割であると強く信じております。