経済面コラム
【未来との約束2025】
~京都の未来企業・団体~
仕事と美
北尾和彦
京都薬品工業株式会社 代表取締役会長
千年の古都・京都には美しい庭園や寺院などが多くあり、京都で働ける人は「徳がある」と言われています。特に平安神宮の神苑に咲く紅しだれの桜は川端康成の「古都」や谷崎潤一郎の「細雪」でも描かれ、「ここの花をおいて、京洛の春を代表するものはないと言ってよい。」と「古都」の作中で言われるほど見事な桜です。
「国家の品格」を著した数学者の藤原正彦氏は、天才が出る風土の第一条件として美の存在を挙げ、「美の存在しない土地には天才は生まれない」と述べています。また、神経美学が専門の関西大・石津智大教授は、視覚的な美、聴覚的な美、道徳的な美や数理的な美に対する脳の反応は内側眼窩(がんか)前頭皮質という同じ脳の部分で行われることを明らかにしました。
当社では美しいものに触れるという情操教育を重要視しており、新入社員教育でも毎年平安神宮で開催される「桜音夜~紅しだれコンサート~」に行っています。会社が京都にある利点を生かし、美しいものを見たり良い音楽を聴いたりして、社員の感受性を高めて自分で考える力を培い、新薬の発見につないでいきたいと考えています。
日本遺産
オフィシャルパートナー
奥村浩二
株式会社京都東急ホテル 専務取締役
東急ホテルズ&リゾーツは2024年、文化庁が推進する「日本遺産オフィシャルパートナーシップ」を締結しました。日本遺産とは、日本の文化・伝統や地域の歴史的な魅力を一つのまとまったストーリーの形で認定する文化庁による事業です。魅力ある文化財群を国内外に発信することにより、地域の活性化・観光振興を図ることを目的としています。そして日本遺産オフィシャルパートナーシップとは、文化庁と企業または団体が相互に協力し、日本各地の日本遺産地域の活性化につなげるためのプログラムです。
現時点での弊社の取り組みとしては、京都を含めた日本で、日本遺産ストーリーをテーマに学ぶ留学生に対する地方視察、研究発表などの支援や、日本遺産ストーリーと弊社運営ホテルを掛け合わせた旅行商品の企画販売などを実施しています。まだまだ力不足ですが、このプログラムへの参加は、伝統文化や風土に根差し、世代を超えて受け継がれている体験を取り上げて、その魅力を伝えることで国内外の誘客を促進するだけではなく、未来のために、次世代の地域の魅力の担い手を育てる大きな意義も有していると考えています。
京都生協の歩みと
未来へのビジョン
髙倉通孝
京都生活協同組合 専務理事
京都生協は1964年、物価の高騰などで暮らしに不安が募る中、「お互いに頼もしき隣人となりましょう」との呼び掛けで誕生しました。そして、市民の助け合いの組織として、食の安全・安心の追求、誰もが安心して暮らせる地域社会の実現に向けて取り組んできました。
今や、食や暮らしの安全・安心は社会のスタンダードとなりました。持続可能な社会が求められる現在、人への優しさや寄り添う心、人とのつながり、そして地球に対する安全・安心がこれからのスタンダードになると確信しています。2025年度は、「京都生協ファンづくり ~せいきょうの利用を続ける、協同の価値に共感~」をテーマに、地域経済の活性化に貢献する商品開発やサービスの提供に努め、子育て世代や高齢者に対する支援を強化し、地域のつながりを深めることで、コミュニティー全体をより強固にする取り組みを進めたいと考えます。また、被爆・戦後80年として京都生協「平和への願い」を広げる活動をさらに強めます。
未来へと続く世代へ安全・安心を手渡していけるように、関係する人々と力を合わせ、2030年ビジョン「京都生協は新たな希望をつくる」を実現していきます。
記憶と伝承
澤田昌人
京都精華大学 学長
世界的な将来構想とも言うべきSDGs(持続可能な開発目標)をはじめさまざまな未来像が喧伝(けんでん)され、成果を上げています。しかし過去のものとなったはずのジェノサイド(大量虐殺)や戦争が続々と生起しているさまを目のあたりにすると、これらの「古い」「過去の」問題はその重大さと解決の困難さを減じていないことを思い知らされます。
「遠野物語」で有名な柳田國男による「山の人生」では、「今では記憶している者が、私の外には一人もあるまい」という文で始まります。続いて、山中で起きた何十年も前の悲劇が簡潔に記されるのですが、この著書で柳田はこのような現実の記録が「今後の社会改造の準備には(中略)痛切に必要である」と主張しています。
欲望を実現してくれる未来を創造するよりも、過去から現在まで続いてきた深刻な悲劇から目をそらさずにいたいと思います。それらをすぐには解決できなくとも、「記憶して」伝えていくことはできるかもしれません。2021年には「平家物語」がアニメにもなっています。この物語は800年後の現在も、来るべき社会について深く考えさせてくれます。本学もこのような「記憶と伝承」に貢献したいと思っています。
日本の「食」と
「農」を未来へ
内田 隆
京都青果合同株式会社 代表取締役社長
農水省によると、全国で将来の後継者が未定の農地は32.8%とされています。日本では、生産コストの上昇で今までの値段では農業が成り立たない局面に直面しています。気候変動や国際情勢の不安定化で海外からの供給も不透明な今、「食」と「農」の安定は差し迫った国家的課題です。キャベツが500円を超えた時、高くて買えないと言われましたが、今のままでは10年後には1000円でも買えなくなるかもしれません。食料自給率が38%(令和5年度)しかないわが国は兵糧攻めに遭ったら終わりです。
人の命は、食べ物の命をいただくことでつながります。将来のこと、子どもや孫のことを考えて私たちの世代が、安全・安心な日本の「食」と「農」について真剣に考え行動し、日本の農業を守り育てなければなりません。青果物の安定供給を担う卸売会社の当社では、国内産地のご協力を得て京都市内の小学校を中心に農育・食育活動を22年間続けており、子どもたちと共に学ぶ努力を重ねてきています。輝く命の源である日本の「食」と「農」を、みんなで力を合わせて、未来へつないでいきましょう。
領域横断教育と
先端研究で社会貢献
在間敬子
京都産業大学 学長
本学は学祖・荒木俊馬により「将来の社会を担って立つ人材の育成」を大学の使命とし1965年に創設されました。その使命達成のため「建学の精神」に基づき、思考力、幅広い教養、主体性、発信力、協働性・協調性、倫理性、創造性、専門知識・技能という8つの資質・能力を定め、文系・理系10学部18学科および10研究科全てで、これらを修得できるように正課の教育プログラムを設けています。
また、1万5千人全ての学生が同じキャンパスに集うという特色を生かして、学問領域の垣根を超えて学び活動できる場も用意しています。例えば、文部科学省に認定された数理・データサイエンス・AI(人工知能)教育プログラムや、起業家のマインドと行動様式を身に付けるアントレプレナー育成プログラム、地域や企業との協働による実践的学びなどがあります。さらに、私立大学最大規模の望遠鏡を有する天文台があり、タンパク質の高度な構造解析を可能にするクライオ電子顕微鏡の導入を私立大学で初めて決定。幅広い分野で最先端の研究を行っています。
これからも、垣根を超える学びと先端分野の研究で社会に貢献します。
社会のインフラであり続ける
栗和田榮一
SGホールディングス株式会社 代表取締役会長
私たちは、1957年に京都-大阪間で、お客さまの一つのお荷物をお届けするところから始まりました。創業当時から「飛脚の精神」を大切に、事業を拡大し続けています。「飛脚の精神」とは、お客さまのために何ができるかを常に考え、誠心誠意尽くすことです。
当社は、宅配便を中核に、お客さまの必要なモノを、必要な時に必要な場所に届けるトータルロジスティクスグループですが、ただモノを運んでいるだけではありません。当社グループが持ち得る多彩なソリューションを組み合わせて、お客さまごとに最適な物流の仕組みを作り、持続可能な方法で新しい物流を提供しています。
物流は、社会・経済活動を支える重要な「社会インフラ」であり、求められるサービスは高度化し、重要性もますます高まっています。平時はもちろん災害時においても、物流サービスを安定的、持続的に提供することは、私たちにとって責務だと考えます。
私たちは今後も、物流を通してお客さまの課題や社会課題を解決し、毎日の暮らしに欠かすことのできない「社会インフラ」であり続けたいと思います。
欧州医療から学ぶ
かかりつけ医制度
中野博美
京都きづ川病院 理事長
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は大変でした。感染症治療体制の整備は進まず、緊急事態宣言を発出して国民の生活・経済活動を制限するなど政府も混乱しました。その後の医療界と財政当局の対峙(たいじ)もありました。
財務省は患者が自由に医療機関を選ぶ「フリーアクセス」を制限するために「かかりつけ医制度」の創設を主張していました。日本医師会は制度としてのかかりつけ医ではなく、患者が自主的に選ぶかかりつけ医を養成してきました。財務省の財政制度審議会(財政審)は、「日本に英国の家庭医制度があればパンデミック初期から機動的に対応でき、治療成績も良かったはず。かかりつけ医制度を創設すべき」としました。その後、病院団体による欧州医療制度の視察で、英国、フランス、ドイツを回りました。三カ国で最も活発に対応したドイツでは、家庭医制度はなくフリーアクセスが保証されていました。逆に英国では、パンデミック初期から家庭医は新型コロナ診療には関与していなかったようです。フランスに家庭医制度はありますが、日本と似た状況でした。財政審をはじめとする人たちの主張と現実は真逆のように感じています。
「DEI」の
公平性を考える
小野隆啓
京都外国語大学・京都外国語短期大学 学長
近年、「DEI」という言葉を見かけられることがないでしょうか。「D」は「多様性(Diversity)」、「E」は「公平性(Equity)」、「I」は「包括性(Inclusion)」を指します。企業経営においては、単に指示に従うだけでなく、社員一人一人の個性を生かすことが重要とされています。
ここで「公平性(Equity)」について考えてみましょう。「平等性(Equality)」という言葉を思い浮かべるかもしれませんが、両者は異なるものです。平等性は、個々の違いを考慮せず、全員に同じ条件を提供する概念です。一方、公平性は、一人一人の状況に応じた支援を行う考え方です。例えば、異なる身長の3人が2mの壁の前に立っているとします。全員に同じ高さの台を渡すと、背の高い人は壁の向こうが見えますが、中くらいの背の高さの人はギリギリで壁の向こう側が見えないかもしれません。そして、背の低い人は見えません。これが「平等性」です。一方、「公平性」に基づくと、それぞれの身長に応じた台を提供し、全員が壁の向こうを見えるようになります。
社会においては、単なる平等だけでなく、個々の違いを考慮した「公平性」も必要なのです。
情報化社会と
菅公の教え
橘 重十九
北野天満宮 宮司
困った時代になってきたと思っています。ネット社会の話です。真偽定かでない情報が拡散し多方面に影響を与えているからです。故意に流された虚偽の情報が世の中を動かすならば、恐ろしい時代といえます。ネットの発達は生活を便利にし、その恩恵は大きいといえます。しかし、その恩恵と引き換えに私たちから思考する心を奪っているような気がしてなりません。
菅原道真公(菅公)は、「和魂漢才」の精神を示された人です。外国の進んだ文明を取り入れることは歓迎だが、日本人の魂を失ってはならないとの教えです。怒濤(どとう)のごとく中国・唐から入ってくる先進文明への対応に苦慮される1100年前の学者・政治家の姿がそこにあります。やみくもに取り入れれば日本人の魂や心が失われることを危惧されたのです。ネットの世界では、偽物が横行しています。その情報が正しいのかどうか、一人一人の識見がより求められる時代といえます。菅公精神の根幹は「誠の心」であり、物事の本質を踏み外さない生き方です。その教えや精神は、このような時代こそ肝要であり、未来を担う若人に受け継ぐ大切な考えだと思っています。
京都駅ビル開発の
挑戦
若菜真丈
京都駅ビル開発株式会社 代表取締役社長
京都駅ビルは2027年の30周年を目前にし、今年をさらなる飛躍の年と位置付けています。
社会環境が急速に変化する中ではありますが、大阪・関西万博が開催され、京都の文化を世界に発信するまたとない機会に、京都の旅の玄関口として、これまで以上に文化・芸術の発信拠点としての役割を強化し、持続可能な未来を見据えた取り組みを推進してまいります。
京都駅ビル、それは、あらゆるものの交差点でもあります。今年は、さまざまな「つなげる」をテーマに、行政、神社仏閣、企業や団体、学生、地域の皆さまと連携し、伝統とテクノロジーが融合する新たな文化の形を生み出します。さらにはスポーツと伝統文化のコラボレーション、未来のアーティストが活躍できる場を創出し、京都駅ビルを舞台に多様な文化の魅力をより多くの方々に届けてまいります。
京都駅ビル開発は、これからも地域とのつながりを深め、京都を訪れる全ての人々が京都の魅力を感じ、心に残る体験を持ち帰っていただけるよう、未来への約束を果たしてまいります。
「ステキな大人が増える
未来をつくる」
立木康之
株式会社京進 代表取締役社長
2025年、京進グループは創業50周年を迎えます。長きにわたり皆さまからいただいた信頼とご愛顧に深く感謝いたします。50年前に学習塾としてスタートした当社グループは、時代の変化やニーズとともに、学習塾事業のみならず保育、介護、日本語教育や海外での語学学校、キャリア支援といった人の一生に関わる事業を展開し、成長してまいりました。
当社グループのグループビジョンは「ステキな大人が増える未来をつくる」です。2000年より取り組み始めた「経営品質向上プログラム」では、これまでに「関西経営品質賞」優秀賞と「京都経営品質賞」優秀賞を受賞してまいりましたが、それに加え24年には日本語教育事業部において「関西経営品質賞」ブロンズをいただくことができました。
国際化が進む現代において、日本語教育や外国人との共生も社会的に大きな課題となっております。日本の良さを未来に引き継ぎ、より良い社会をつくるため、「ステキな大人が増える未来をつくる」企業として、人の一生に寄り添い、社会に貢献できる企業を目指してまいります。
「三方良し」の精神で
世界へ
金子直樹
オーシャン貿易株式会社 代表取締役社長
2025年は自由貿易の時代の終わりになるのでしょうか。「タリフマン(関税男)」を自称する米大統領の復権により、保護主義が世界を覆いはじめています。自国第一の身勝手な関税政策と見る向きもあり、世界経済に深刻な影響を及ぼしかねません。
生鮮食品や花卉(かき)類の輸出入に特化した商社のわが社にとって、こうした国際情勢が商機を左右します。刻一刻と状況が変わる中、知恵を絞って新しいビジネスの「種」をまき、優れた商品を見いだして調達するのが貿易ビジネスの醍醐味(だいごみ)と言えます。
商談のため、昨年も南米や欧州をはじめ多くの国々を訪ねました。行く先々で国際社会の分断や物価高騰、気候変動などが経済や人々の暮らしに影を落としていることを実感しました。歴史観も宗教観も違い、文化や暮らしの在り方も異なる海外の人々とビジネスを通して互いにコミュニケーションを深めていくことも私たち商社パーソンの使命です。小さな力かもしれませんが、「三方良し」(売り手良し、買い手良し、世間良し)の精神で、地道に交流を積み重ねていくことが世界の平和と安定につながると確信しています。
バトンタッチは
始まっている
大垣守弘
大垣書店グループ 代表取締役
「地域に必要とされる書店であり続けよう」これが弊社の社是です。「必要とされる」とは具体的な項目ではなく、時代や店舗の立地によってその内容も変わってきます。
私たちはその見えざる要望に応えようと日々努力を続けています。最近では「KYOTOZINE」という京都のタウン誌を作り始めました。ネットに最新の情報があふれる時代だからこそ、なかなか目にすることのない京都での取り組みや思想を広く知ってもらうこと、将来的にそれが京都の財産となり次世代の学びの糧になること、高品質な内容やデザインにより本そのものの楽しみを増やすことなどが狙いです。最終的にはそうしたメディアとリアル書店を通じて、京都での暮らしが豊かで元気になるのが理想です。
移り変わりの激しい時代だからこそ、私たちはリアルな場所・物を通じて流行やマーケティングだけでは捉えきれない本質的な価値を見つけ出し、育てることで次世代がより活躍できる環境を整えていかなければなりません。書店も消費的に本を売る以上のことをしなければならない時代です。それを楽しみながら新しい書店を作っていきたいと思います。
世界で一番
ワクワクするビール会社へ
市野周平
アサヒビール株式会社 近畿圏京滋支社 支社長
アサヒビールは、今年も既存市場の活性化と現在着手しつつある新価値の創造で100年後も愛され続ける「未来のビール会社」になるために、挑戦してまいります。五つの重点領域として①ビール強化②High-Value(高付加価値商材)③スマートドリンキング④業務用市場⑤ニッカウヰスキーは変わらず、特にビール強化を推進します。
原点に立ち返り、お客さまが一番「うまい」と思うビールとは何かということを徹底的に調査し「冷え」に着目し、「スーパードライ」の「辛口」のうまさをさらに引き立てることに注力します。2026年の酒税改正の機会や、27年の発売40周年に向けてキンキンに冷えた「スーパードライ」のおいしさを伝えることに取り組みます。
また4月15日には7年ぶりのスタンダードビールの新商品として、苦みにこだわった「アサヒ ザ・ビタリスト」を発売し、ビール好きのお客さまに新たな選択肢をご提案します。スマートドリンキングの分野においても、ノンアルコール商品も続々と投入し、飲める人も飲めない人も楽しめる社会の実現を目指してまいります。「もっともっと、面白くなる。アサヒビール」にぜひご期待ください。
景観に美を添える、
人生の器
篠田 潤
アーキテクチャーリンクライフ(ALL)株式会社 代表取締役
Architecture(建築) Link(つなぐ) Life(人生・生活・命)。「お客さまの人生や命と建築をつなぐことが私たちの使命」という思いを込めた社名です。住宅は家族の暮らしを育む人生の器であり、街並みの一部として存在しています。住むほどに愛着が増し、暮らしが豊かに熟成されますように。景観に美しさを添え、京都の街並みになじみますように。そんな願いが私たちの家づくりの軸になっています。
完全に自由なスタイルで設計し、自社で現場の管理を行い、保証やアフターメンテナンスまで責任を持つのがALLの家づくりです。本物の素材にこだわり、伝統的な美に現代的な感性を加え、職人の技を駆使して、こだわりの詰まった住宅を建築しています。営業スタッフはおらず、広告宣伝もあまり行わない、少数精鋭の会社です。だからこそ無駄な経費を削り、建物にコストを投入して、適正価格で上質な住宅を提供できると自負しています。
これまで150組を超えるお客さま、そしてスタッフや職人たちと共に物語を紡いできました。それら全てが私たちの誇りであり財産です。これからも研さんを重ね、新たな物語を生み出していきたいと思います。
堅忍不抜の心で、
危機を乗り越える
田中恆清
石清水八幡宮 宮司
昨年は世界各地で数多の自然災害、終わらない戦争や紛争、未曽有の凶悪事件が多発し、われわれはその度に心を痛めてきました。国内だけでも、豪雨災害や地震が頻発し、8月には初めて発表された南海トラフ地震臨時情報によって、新幹線をはじめとする基幹交通網にも影響を与え、改めて大地震災害に対する恐怖を、国民全員が身をもって体感し、防災意識がより高まった1年でもありました。
そしてわれわれが乗り越えなければならない危機は自然災害以外にも国内外で山積しております。経済面では止まらない物価高が家計を圧迫し、また外交面では他国からの領海、領空侵犯への対応など、数え上げればきりがなく、まさに本年も内憂外患の1年となるやも知れません。
古来日本人はあらゆる災害や国難から、何度打ちのめされても忍耐強く、粘り強く耐え抜き、皆で力を合わせ、歴史的な復興を何度も遂げてきた民族であります。本年は戦後80年の節目の年であります。今こそ日本人に受け継がれてきた何事にも諦めない堅忍不抜の精神を思い起こして、この時代を共に乗り越え、輝かしい未来に向けて活動していく秋でありましょう。