経済面コラム
京都の未来企業・団体
メッセージ2026

ヒトの暮らしを支える
コンクリート
荒川 崇
ケイコン株式会社 代表取締役社長
当社は、京都を中心に一般土木工事業とコンクリートを素材とするプレキャストコンクリート製品を、全国の道路や建築といったインフラストラクチャーの建設に提供している、創業90年の会社です。
建設業界では、2040年までに生産年齢人口が20%減少すると予測されており、そのため建設現場では、少なくとも省人化を30%実現することが求められています。こうした課題に対応するため、当社ではプレキャストコンクリート製品や建設用3Dプリンターといった先進の建設技術の普及に努めているほか、CO₂(二酸化炭素)排出量の多い従来型コンクリートの脱炭素化にも取り組んでおります。これらの技術は、省人化や環境保護に対しても有効な技術として期待されており、現在は産学官の連携を通じて、建設現場への積極的な導入が進められているところです。
創業100年を目指すにあたり、私たちは先人への感謝の気持ちを大切にしつつ、「心」と「経済」の豊かさを探求し、ご縁のある方々の幸せの実現、そして先進の建設技術を通じて、これからも人々の暮らしを支える豊かな社会づくりに努めてまいります。

自分の色で
光る
北尾和彦
京都薬品工業株式会社 代表取締役会長
今年もわが社には10人の新入社員が入社しました。新入社員にいつもお話しするのは社是の「和親協力・誠実報恩」についてです。阿弥陀経に「池中蓮華 大如車輪 青色青光 黄色黄光 赤色赤光 白色白光 微妙香潔」とあります。これは「池の泥に咲く蓮華は車輪のように大きく、青色は青い光を、黄色は黄色い光を、赤色は赤い光を、白色は白い光を放ち、香りがよく清らかである」ということです。泥田は煩悩にまみれた自分の姿ですが、仏の教えを信じれば、そこに咲くハスの花のように自分の色で光り、誰と比較されることもなく、自分の人生を生きることができるのです。
この教えは仕事をする上でも大切ではないかと思っています。特に新薬研究では、おのおのが自分の色で光って初めて独創的な研究ができます。しかしどれだけ素晴らしい研究でも、それがバラバラでは成果が上がりません。一人一人が自立し、同じ方向にベクトルを合わせ調和することで初めて新薬が誕生するのです。
新薬研究は難しい仕事ですが、待ち望んでおられる患者さんのために全身全霊で「薬づくり」を通じ、社会に報恩すべく日々努力しています。

GSTCへの加盟
奥村浩二
株式会社京都東急ホテル 専務取締役
東急ホテルズ社は、2026年2月17日に日本のホテルチェーンとして初めて全店舗で、持続可能な観光の国際基準を定めるGSTC(グローバル・サステナブル・ツーリズム協議会)へ加盟いたしました。
今回の加盟は、現状に満足することなく、国際的な視点のもとで自社の取り組みを継続的に見直し、発展させていく覚悟の表明であると考えております。
弊社は、「地域とともに歩むホテル運営」を理念に掲げ、環境負荷の低減に加え、人権や労働環境への配慮、ガバナンス(組織統治)の透明性向上など、より包括的なサステナビリティー推進に取り組んでおります。グリーンコイン制度や連泊時のリネン交換削減などを通じ、資源使用量や廃棄物削減にも継続的に取り組んでおります。さらに、従業員一人一人の意識向上を図りながら、地域社会やお客さまとともに持続可能な未来づくりを進めております。今後はGSTC基準を参考に、人材育成や各ホテルでの取り組みの可視化・高度化を進めるとともに、自治体やパートナー企業との連携を強化し、観光産業全体の持続可能性向上に貢献してまいります。

百年の歩み
未来への約束
魚嶋伸彦
京都第二赤十字病院 院長
1926年の開設以来、京都第二赤十字病院は地域の皆さまに支えられ、本年、創立100周年を迎えます。東福寺近くへの統合計画の際、地域住民の皆さまの強いご要望によりこの地にとどまった歴史こそが、私たちの原点です。「地域と共に生きる」という使命は、今も変わらぬ私たちの誇りであり、救急・高度急性期医療・災害救護を通じて、京都の医療を支え続けてまいりました。赤十字の「人道・博愛」の精神の下、「歩み入る人にやすらぎを、帰りゆく人に幸せを」という理念を胸に、一人一人の患者さんに真摯に寄り添い、安心と希望をお届けすることが私たちの何よりの願いです。
現在、私たちは次なる100年を見据え、新たな挑戦を加速させています。2028年着工予定の新病院建設をはじめ、デジタル技術の活用による医療の高度化、持続可能な医療を支える人材育成や働き方改革など、未来への基盤づくりに注力しています。
100年の歩みへの感謝を胸に、先進的な医療と人のぬくもりが共存する「地域から最も信頼される病院」であり続けることを約束し、職員一同、心を一つに新たな歴史を築いてまいります。

協同で育む
京都生協ファンづくり
瀧本剛満
京都生活協同組合 専務理事
京都生活協同組合は、「頼もしき隣人たらん」という理念の下、組合員の皆さまと共に、食や暮らしの安全・安心を追求し続けてきました。地域に根差し、多世代とつながりながら、持続可能な社会の実現を目指して活動を進めています。
2026年度は、「京都生協ファンづくり〜せいきょうの利用を続ける、協同の価値に共感〜」をテーマに掲げ、地域経済や環境への配慮、そして暮らしに寄り添う商品開発や普及に取り組み、さらに、子育て世代や高齢者への支援を、より一層充実させていきます。
特に、「エシカル消費対応商品」の普及や、買い物が不便な地域を支援する「おかいもの便」を通じて、暮らしの課題解決に積極的に貢献していきたいと考えています。また、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて、地球環境に優しい取り組みを進め、次世代にその価値をしっかりとつないでいきます。京都生協は、地域に寄り添いながら、協同の力で「新たな希望」を生み出せる存在へと進化を目指します。京都の未来を明るく照らすため、これからも協同と助け合いの価値を分かち合いながら、一歩ずつ歩みを重ねてまいります。

形に頼らずとも、
型は伝承する
姜 竣
京都精華大学 学長
京都精華大が校章も校歌も正門も持たないのは、「1968」という世界規模の抵抗の時代に「自由自治」という理念の下で草の根運動のようにして開学したからです。世の大学は、校歌に大学名を連呼し、校内にモニュメントが立ち並びますが、本学は人間を型にはめるべからず、形にはこだわらないというこだわりがあります。その校風は今の学生にも継がれるらしく、昨年の新入生にアンケートで大学のイメージを聞いたところ、留学生、個性的、多様性、教員、尊重、グローバルと並んで、「自由」を挙げた者が圧倒的に多かったです。形に頼らずとも、型はしっかり伝承されているのです。
伝承という言葉は、柳田國男がフランス語のtradition populaireを民間伝承と訳したことに端を発します。それは、民たちの生活の歴史を「イイツタエ」から調べるため、la littérature oraleを口承文芸と訳したことと対になっています。過去志向に捉えやすい「伝統」とは違って、「伝承」の視点は継承しつつある動きにも力点が置かれます。京都は型にはまったようでその実、常に新しい方へ動く伝承の街です。それが世界中を魅了する秘訣であり、本学が目指す手本です。

領域横断教育と
先端研究で社会貢献
在間敬子
京都産業大学 学長
本学は学祖・荒木俊馬の掲げた「将来の社会を担って立つ人材の育成」を使命として、1965年に創設されました。文系・理系10学部19学科1学環、10研究科を擁し、約1万6千人が一つのキャンパスで学ぶ文理総合大学です。
2026年4月には文化学部を再編し、京都文化学科に加え、文化観光学科と文化構想学科を新設しました。人文学とデジタルを掛け合わせ、新たな価値を創出する教育を展開します。また、アントレプレナーシップ学環を開設しました。経営・法律・現代社会などの学びを横断しながら、起業家の思考と行動を実践的に修得します。これまで全学で進めてきた教育の成果を基盤に、さらに発展させていきます。さらに、生成AI(人工知能)やデータサイエンス教育を初年次から導入し、全学的に推進しています。企業との協働による実践的な学びも特徴の一つです。研究面では、私立大学最大規模の望遠鏡を備えた天文台に加え、関西の私立大学で初めてクライオ電子顕微鏡を導入するなど、先端研究環境を整えています。
これからも、分野の枠を超えた教育と先端研究を通じて、社会に貢献していきます。

京都から学び、
未来をひらく
佐藤 卓
京都芸術大学 学長
グラフィックデザイナーとして仕事を重ねる中で、私は日本各地の伝統技術や作品、地域に息づく文化に幾度も出会ってきました。そこには長い時間をかけて育まれた確かな力と、現代にも通じる新たな可能性があります。そうした価値に光を当て、人々に伝わる形へと編み直すことも、デザインの大切な役割だと感じています。
京都には、伝統を過去のものにとどめず、その背景にある美意識や思想、営みから未来に必要なことを学び、新たな価値へと結び直していく気風が息づいています。本学が京都市、京都新聞と共に取り組む市民講座「京都学」も、その実践の一つです。私自身も京都から学び、次代へどう生かしていけるかを考えていきたいと思います。
京都芸術大では、通学課程・通信教育課程を合わせて、18歳から90代までの2万3千人が、全国、さらには海外から集い、異なる経験や感性を持ち寄りながら学んでいます。世代や地域を越えて多様な価値観が出会うことが、本学ならではの豊かな創造の土壌です。文化と産業、地域と未来をつなぐ創造の力を育んでまいります。

だし文化と
未来への責任
志村紘之
京都鰹節株式会社 代表取締役社長
当社は健康経営を軸に、社員一人一人が安心して長く働ける環境づくりを進めています。
働きやすさを高めることは単なる福利厚生ではなく、生産性や創造性を高め、お客さまへの提案力の向上につながる重要な経営戦略です。人手不足や原価高騰に直面する飲食業界に対し、だしの価値を再定義し、省人化や付加価値向上につながる提案を行ってまいります。新規のお客さまにも味と品質をお確かめいただける機会を提供しています。
さらに、削り節や昆布などのだし素材の原料不足が進む中でも、高品質な商品を安定供給するとともに、メニュー提案や小回りの利く対応を徹底し、お客さまから信頼され続ける存在でありたいと考えています。
また未来世代への責任として、一人一人の社員が主体的に考え、会社の未来をともに創っていく組織づくりにも取り組んでいます。
京都の食文化の根幹である「だし」を守りながら進化させ、地域社会とともに持続的な発展を目指してまいります。今後ともご愛顧を賜りますよう、社員一同、心よりお願い申し上げます。

「動き、学び、世界と創る。」
北 寿郎
京都外国語大学 学長
京都外国語大は来年、創立80周年を迎えます。「言語で世界をつなぐ」という志とともに本学は産声を上げました。その志は変わりません。しかし、世界との向き合い方は変えなければなりません。
AI(人工知能)の急速な進化、地政学リスクの高まり、人口動態の変化――。昨日の「正解」が今日に通用しない時代、綿密な計画への過信は変化の足かせになります。私たちが大切にするのは「見て、判断し、動く」サイクルを組織として回し続ける姿勢と、「いま持っている強みを生かして踏み出す」という発想です。
国際交流の刷新もその延長にあります。「行って帰ってくる」留学を超え、現地の企業・団体と協働し課題解決に挑む「越境体験」へ。帰国後もネットワークを生かし、京都から世界へ発信し続ける往復運動を学びの基本に据えます。
地域・産業との連携も深化させます。学生が語学力を武器に地域課題の解決に参加し、伝統産業の海外展開を支え、産学の実践現場が教育を更新していく――「語学を学ぶ場」から「語学で動かす場」へ。80年の節目に向け、京都外国語大はもう一度、動き始めます。

「人生の器」が紡ぐ物語
篠田 潤
アーキテクチャーリンクライフ(ALL)株式会社 代表取締役
私たちはお客さまとの信頼関係を大切にしながら、本物の素材にこだわり、伝統的な美に現代的な感性を加え、職人の技を駆使して、本格的な注文住宅を設計し建築する会社です。完全に自由なスタイルで設計し、自社で現場の管理も行い、アフターメンテナンスまで責任をもって対応しています。
家づくりには一つとして同じものはなく、それぞれに物語があります。これまでたくさんのお施主さまや社員のみんな、職人さんたちと共に時間をかけて紡いできたその物語こそが誇りであり財産となっています。
Architecture(建築) Link(つなぐ) Life(人生・生活・命)という社名の通り、お客さまの人生や暮らしと住宅建築をつなぐのが私たちの使命だと考えています。自然を感じ、美を発見し、住むほどに愛着の増す「人生の器」といえる住宅をつくりたいと思っています。また、街並みの中で何十年も美しく、景観の一部として愛される建築を目指し、新しい素材や技術を柔軟に取り入れて、これからも住宅づくりを通じて豊かな物語を紡いでいきたいと思います。

創業50周年を越えて
京都から世界へ
立木康之
株式会社京進 代表取締役社長
昨年、京進は創業50周年という節目を迎えました。創業以来、「教育・文化の向上、社会の進歩と善良化への貢献」という理念の下、京都から社会に価値を届け、現在は日本国内に加え、米国、ドイツ、オーストラリア、中国、ネパール、ミャンマーでも事業を展開しています。また、学習塾、保育、介護、日本語教育など幅広い領域に取り組み、運営する語学学校では世界40カ国から生徒を迎えています。
私たちは、教育を通じて人の成長を支えるだけでなく、多様な文化や価値観が出会い、互いに理解し合える社会をつくることも大切な使命だと考えています。子どもたちの学びはもちろん、日本で学ぶ若者の挑戦を支え、高齢者福祉の分野にも取り組みながら、人の一生に関わる事業を通じて、人の成長と歩みに寄り添ってきました。
これからの50年は、教育事業で培った経験を生かし、学びや成長を支える取り組みを通じて、福祉や文化の分野に加え、海外における社会貢献にも歩みを広げ、「ステキな大人が増える未来をつくる」企業として、京都から世界へ歩みを進めてまいります。

デジタルを超え、
創造力の翼を育む
大垣守弘
株式会社大垣書店 代表取締役会長
指先一つで答えが見つかるスマートフォンは、私たちの生活を劇的に変えました。しかし、便利な情報に即座に触れられる一方で、自ら考え、悩み、未知の世界を空想する「創造力の余白」が失われつつあることに、私たちは強い危機感を抱いています。
世界に目を向ければ、ウクライナで続く戦争や中東情勢の緊張など、不安定な国際情勢が日々報じられています。分断や対立が深まる時代だからこそ、他者の立場を想像し、異なる価値観に思いを巡らせる力が、これまで以上に求められているのです。
効率が優先される現代、読書や芸術鑑賞は決して最短ルートではありません。しかし、行間に流れる空気を感じ、絵画や音楽から人の感情を追体験する時間は、スマートフォンの画面からは得られない「心の深耕」をもたらします。未来を担う子どもたちへ、私たちは何を手渡すことができるのか。それは、正解のない問いに向き合い、自らの感性で物語を紡ぎ出す力です。書店とは、本を売る場所である以前に、人が想像力と出合う場所です。これからも、本や芸術との出合いを通して、創造力の翼を育む場を社会に届け続けてまいります。

AI時代における
人間の知力
橘 重十九
北野天満宮 宮司
情報化社会においてAI(人工知能)の発達は、私たちの生活を飛躍的に便利にさせています。テレビでも、AIによる自動音声でニュースが読み上げられるのですから驚くばかりです。このまま技術が進めばAIは人間の知能を上回るのだから「全判断はAI任せでいい」と言う人までおり「では人間とは何?」と、首をかしげざるを得ません。
先日、本紙で食文化の将来を考えるセミナーが京都で開かれたとのニュースに接しました。職人不足によってAI導入は広がっており、食を作る職人のあり方が変わることに心配があるのです。「AIは、職人とほぼ遜色ないものを作れるが、言葉で書かれていない職人の技能を人間のように学ぶことは難しい」とあり、AIと職人の協業が提起され「人間が自ら考え、意思決定することがさらに大切」とした結論に、わが意を得たような気がしました。
人間の心には、相手を気遣ったり勝ち負けだけではないさまざまな思いがこもっています。AIを活用しながらも、決断はやはり人間であり、その決断する心の基準となるものは、菅公(菅原道真公)の精神にも通じる物事の本質を踏み外さない「誠の心」であると思います。

「京都の未来企業」
としての責任
山﨑雅司
三井不動産株式会社 京都支店 支店長
歴史と文化が息づく千年の都・京都においては「残しながら、蘇(よみがえ)らせながら、創っていく」という当社の街づくりコンセプトの体現こそが重要だと考えます。町家や歴史的景観に配慮した開発を徹底するとともに、地域事業者や大学との連携による新産業創出の支援、交流拠点の整備など、着実に進めていくことが肝要です。あわせて、観光都市・京都が直面するオーバーツーリズムの課題にも真摯(しんし)に向き合う必要があります。滞在の質を高める施設整備やエリアマネジメントの推進、地域との対話を通じ観光と市民生活のバランスを図り、持続可能なにぎわいを創出することが重要です。
これらの取り組みを、オフィスビル事業、レジデンス事業、ホテル事業、商業施設事業、物流事業、ライフサイエンス事業など、当社の全事業領域で可能な限り実践し、京都ならではの価値の高いプロジェクトを進めていきたいと考えています。多様な人々が学び、働き、住い、集い、挑戦できる場を創出し、伝統の継承と革新の両立を通じて将来世代に誇れる都市基盤を築くこと。それが「京都の未来企業」としての私たちの責任だと考えています。

交易通じ、
世界の人々と相互理解を
金子直樹
オーシャン貿易株式会社 代表取締役社長
世界は今、衝撃的な出来事で揺れ動いています。トランプ米大統領はベネズエラへの軍事攻撃に続き、イスラエルと共にイラン攻撃に踏み切りました。生鮮食品や花卉(かき)類の輸出入を主軸に据える貿易商社にとって、緊迫度を増す国際情勢は事業展開に大きく影響します。多難な時代ゆえ、為替相場の動向や各国政策の変化への柔軟な対応とリスクヘッジが欠かせません。
ただ昨今の円安基調は、海外からみると日本産の物品が買いやすく、優れた国産食材を世界各地に届ける好機です。日本食ニーズは高まっており、輸出事業はまだまだ伸びるとみています。東南アジア市場をさらに強化し、他地域での事業展開も急ぎます。単に輸出するだけでなく、奥深い和食文化の魅力を世界へ発信したいと考えています。
歴史観も宗教観も違い、文化や暮らしも異なる海外の人々と心を通わせ価値観を分かち合えることこそ、貿易ビジネスの真の醍醐味(だいごみ)です。世界中においしいもの、美しいものを届けることを使命に、交易を通じて相互理解を深めていくことが世界の平和と安定につながると確信しています。

お菓子屋さんは
お世話好き
七代 津田佐兵衞
株式会社井筒八ッ橋本舗 代表取締役会長
まだ子どもだった頃、私が住む嵯峨野地域は町内会活動が活発で、運動会や映画会、地蔵盆などが行われ、地域住民の交流も盛んでした。今でも、京都の多くの町内では、そんなお付き合いが続いています。各町内には、必ずと言っていいほどお菓子屋さんがあり、そのかいわいの方々の結婚、出産、葬儀、法事などに必要なお菓子を用意するお世話をされてきました。お菓子屋さんは住民の潤滑油としても機能し、さまざまなお世話をする役目もあったのです。これは、京都の文化、習慣が守られ、受け継がれてゆく根っこを支える大切な役割を持っていると言えるでしょう。
今、スーパー、コンビニの時代となり、町のお菓子屋さんの役割も変化しつつあります。それでも、お正月にはお餅をつき、お彼岸にはおはぎ、6月には「みな月」など季節に応じた対応を続けていらっしゃいます。そのような町のお菓子屋さんが、菓子業界のルーツとなり、名産菓子、名物菓子として育ってきたものが京都のお土産菓子ともなっています。
私はこれからもおいしくて、人を幸せにできるお菓子づくりに励んでまいります。

常若の心の
継承
田中恆清
石清水八幡宮 宮司
昨年は国家の重儀であります第63回神宮(伊勢神宮)式年遷宮の始まる奉祝の年でありました。遷宮の最初の祭祀(さいし)であります山口祭と木本(このもと)祭が5月2日に神宮にて斎行され、また翌月3日には長野県にて御杣始(みそまはじめ)祭が古式にのっとり、厳粛かつ盛大に斎行されました。
式年遷宮の歴史は古代にまでさかのぼり、平安時代の法令集「延喜式」にも「凡(およ)そ大神宮は二十年に一度、正殿・宝殿および外幣殿を造り替えよ」と記され、第1回式年遷宮が690年(持統天皇4年)に斎行されて以来、日本国の一大事業として今日に至るまで行われてきたのであります。
伝統ある神宮式年遷宮に内包されている神道の心こそが、常若(とこわか)と呼ばれる心であります。それは、全てのものを常に若く清らかな状態に保ち、物ごとを一カ所で止めず、心もよどませずに、永遠に循環させていく心の持ちようであります。
常若の心とは、まさに日本の四季折々の自然の循環の体現でもあり、神々の御心そのものでもあります。
自然に宿る神々と共に美しく生きる常若の心を後世へと伝えていくことが、誇りある「日本人の心」の継承でありましょう。

