賛同企業代表者 文化人 対談シリーズ
経済面コラム

経済面コラム
 

Promise for the future

杉田啓三

先人たちの思いを未来に託す

杉田啓三
株式会社ミネルヴァ書房 代表取締役社長

活字離れとか出版不況と言われて久しい。老いも若きもスマホが手離せない。IT機器を使っての情報入手はいまや常識。だから1日の読書時間が「ゼロ」という学生がいても不思議ではない。
でも、私は「紙の本」にこだわりたい。そう思って20年前、創業55周年の記念出版として「ミネルヴァ日本評伝選」という、新しい大型企画を立ち上げた。古代から現代まで歴史上の人物を250人取り上げてスタートした。幸い多くの読者に支えられて現在ではその数も500人を超え、今年の9月で245巻を刊行するまでになった。
このシリーズは、人物を通してみた「わが列島の歴史」である。こんな日本人がいたのか?初めて出会う数多の先人たちの優れた業績や意外な素顔を知り、驚きを禁じ得ない読者も多い。
読者層は中高年が中心だが、若い人たちもぜひ手に取っていただきたい。この重厚で読みでのある「評伝選」を通して、過去に生きた人々の知られざる言行と未来に生きる知恵などを学び取ろうと思う。手前みそながら、学校の教科書からは得られない「日本人のすごさ」にきっと目を輝かすことになるだろう。

松下芳弘

「日新一新」で価値・未来を創造

松下芳弘
日新電機株式会社 代表取締役社長

日新電機は1917年に京都の地で誕生し、1世紀を超えて事業を継続しています。当社の事業精神を経営者、社員、地域社会が共有し、企業の社会的責任を果たすことが持続可能な企業の要素であると考えます。
SDGs(持続可能な開発目標)を中核に据え2021年4月に始動した中長期計画「VISION2025」では、「持続可能な地球環境とあらゆる人々が活躍する社会の実現のために、次の100年も永続するいい会社をつくる」ことを目指しています。「いい会社」とは、社員を大切にする、お客さま・社会に必要とされる、取引先さまに信頼される、そして株主の期待に応える会社です。同計画では、環境配慮製品の拡大や分散型エネルギー・再生可能エネルギーへの対応、DX(デジタルトランスフォーメーション)の活用展開、EV(電気自動車)や新興国での事業拡大の六つの成長戦略を推進するとともに、事業体質のさらなる強化に取り組んでいます。
当社グループは「変える・変わる」という意味を込めた「日新一新(にっしんいっしん)」の合言葉の下、価値・未来を創造する会社を目指して挑戦し続けていきます。

武田一平

電力の「家産家消」で社会課題解決

武田一平
ニチコン株式会社 代表取締役会長

電気代高騰が暮らしに大きな影響を与えています。再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)の終了もあり、家の太陽光パネルで作り出した電気は「家産家消」する時代だと私たちは考えています。さらに、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」に向けた動きが加速し、EV(電気自動車)の普及も拡大しています。
ニチコンでは、太陽光発電を無駄なく有効活用できる製品を市場に展開してきました。世界初のV2H(Vehicle to Home)システムや、当社独自の技術である「トライブリッド蓄電システム」は、太陽光で発電した電気を家庭だけでなくEVにも活用できます。
私たちは「価値ある製品を創造し、明るい未来社会づくりに貢献する」という経営理念を掲げています。自らを製造業ではなく、「創造業」であると認識しており、単なるモノづくりではなく、社会のさまざまな課題を解決できる「コトづくり」が真の使命と考えています。社長が交代し、新たな経営体制がスタートしたニチコンでは、これからも日々の暮らしから社会課題の解決に至るまで、幅広くサステナブル(持続可能)な社会の実現に貢献してまいります。

鈴木順也

最新を使いこなせ

鈴木順也
NISSHA株式会社 代表取締役社長

生成AI(人工知能)の活用についての議論が急展開している。当社は機密情報の漏洩(ろうえい)や偽情報による混乱などのリスクに注意を払いながら、利用していく方針を定めた。
今年5月、グローバル展開する当社のグループ会社の経営層を招集し国際会議を開催した。予定したテーマでプレゼンやパネルで議論を重ねた。言語はもちろん英語。普段から会社間の協力は活発だが、コロナ禍を経て4年ぶりにリーダーたちが一堂に会すると結束はパワフルだ。私の出番は初日で、議論の土台となる問題を提起。普段は台本の棒読みどころか作成もしないが、前夜にいたずら心が芽生え、生成AIにプレゼンの導入部分を草稿させた。複数回の学習を経てAIが提示した原稿を読み始めると、会場は異変に気づき困惑が広がった。語り口や言葉遣いが全く「私」ではないのだ。やがて「それ」が創った文章だと告げ原稿を放り投げると、会場は笑いに包まれ安堵(あんど)となった。しかし、私は生成AIの否定論者ではない。初級にも劣る試みだったが、学習させる過程を楽しんだ。毎年このコラムでご好評いただく私の原稿は、いずれ「それ」に書かせているかもしれない。

重田敦史

「未来へつなぎ、ひらく」

重田敦史
西日本電信電話株式会社 京都支店長

「『つなぐ』その先に『ひらく』 新しい世界のトビラを」。
これは、将来にわたって企業・組織と社員が共有する私たちの存在意義として、弊社が一昨年定めたパーパスです。
私たちは、100年以上にわたって「つなぐ」という使命を担ってまいりました。今や通信は重要な社会インフラの一つとなっており、その使命はますます重くなっています。災害の激甚化など昨今の環境変化にあっては、この重要な役割を果たし続けることも容易ではありませんが、培ったマインドとノウハウを継承し、これからも京都の基盤を支えてまいります。
同時に、電話時代のような「つなぐ」という役割だけでなく、デジタル技術の発展等により、ICT(情報通信技術)はさまざまな分野で新たな価値創造を可能にしています。私たちも技術を磨くとともに、多様なプレイヤーと共創することで、さまざまな課題解決のお役に立てるよう努力してまいります。先の見えない時代ではありますが、だからこそ、この地の歴史に学び、伝統を継承しつつ、その上にチャレンジを重ねていくことで、京都のさらなる発展に貢献していきたいと思います。

吉野充宏

111年目の役割

吉野充宏
第一生命保険株式会社 京都総合支社長

よく生命保険事業は「晴れた日に傘を売る仕事」に例えられます。晴れ(健康)の日に傘(備え)の必要性は感じないかもしれませんが、降水確率90%ならどうでしょうか?
傘を「要らない(IRANAI)」という方は予報を「知らない(SIRANAI)」だけかもしれません。健康やお金に関する情報提供サービスの「S」やリスクに対するソリューションの「S」を付加価値として提供できれば「知らなかった」と気づきが生まれ、行動を促すきっかけを創り出せます。これが私ども生命保険会社の役割です。
そこで必要となるのが「信頼」 「感受性」 「根拠」の三つです。「信頼」できない人の話には耳を傾けていただけません。「感受性」がなければお客さま一人一人の思いを汲み取れず、自分事化できません。また、「根拠」がなければ納得できないので、どう備えればよいか判断できません。
今年は第一生命京都開設111年目の年。この三つを一番高い水準に磨きそろえていきますので、ぜひ当社の「生涯設計プラン」のコンサルティングを体験ください。安心と希望にあふれた未来創造のお手伝いをいたします。

岡田博和

企業文化伝承による未来への挑戦

岡田博和
TOWA株式会社 代表取締役社長

当社は創業以来、40年以上にわたり、半導体モールディング(樹脂封止)装置を開発・製造しております。当社独自の成形手法であるコンプレッション技術など、業界にさまざまな技術革新を起こし、モールディング装置の世界トップシェア企業として、半導体産業の発展に貢献してまいりました。
近年、AI(人工知能)やEV(電気自動車)などの社会に不可欠となる新たな技術の進展により半導体の高機能化が進み、半導体後工程に要求される技術難易度が高まることで、モールディング装置の重要性もますます高まっています。今後も、業界のリーディングカンパニーとして、TOWAがこれまでに培ってきたモノづくりへの熱い思いや技術水準向上へのあくなき挑戦心を未来へと伝承し、絶えずイノベーションを起こし、ソリューション提案を続けることで社会の発展に貢献してまいります。また、人は会社にとってかけがえのない財産と考え、社員一人一人の健康と働きがいを第一とし、多様な価値観を持つ社員それぞれがやりがいを感じ笑顔で働ける会社を目指して、人財育成や健康経営の推進に取り組んでまいります。

土井健資

志は世界へ

土井健資
株式会社土井志ば漬本舗 代表取締役社長

新型コロナが感染症法上の5類となり社会情勢が大きく変化し、京都は国内旅行者とインバウンドであふれている。中国が規制緩和となれば、オーバーツーリズムの状態となることでしょう。一方で、2025年の大阪関西万博が追い風となり、関西経済は潤うといわれている。
観光関連事業者は人手不足の中で、この追い風をものにして、伝統の味や技を生かして未来へと商いを守っていけるのだろうか。まさに、生き残りをかけた正念場が近づいている。すでに培われた伝統の味、「ほんもの」である「志ば漬」や京漬物を外国人に食してもらえるものづくりが急務であると考えている。
多様な食文化を受け入れながらも、京都の文化や伝統の技、味をその中に入れ込んでいく難しさを感じている。ただ、発酵、乳酸菌など外国人の好むキーワードは、漬物の中にあるのも確かである。古き良きものから、新しき良きものへ、ピンチと思わずチャンスだと捉えてこそ、京都人。永年受け継がれてきた京都名産しば漬けが日本名産しば漬けとして世界に広がるよう、日々研鑽(さん)を重ねて、夢を形に、形を現実にしていこうと決意し、今日も工場に並ぶ樽(たる)を眺めている。

川中光敎

今、そして未来へ伝えること

川中光敎
浄土宗 宗務総長

2001年元旦、浄土宗は「浄土宗二十一世紀劈頭(へきとう)宣言(愚者の自覚を・家庭にみ仏の光を・社会に慈しみを・世界に共生を)」を世界に向け発信しました。しかし今世紀になっても戦乱や疫病や災害が続き、世界は混迷を極めた情勢が続いています。このような時代だからこそ、わが身が生きていること自体の奇跡、生きていることへの感動と歓喜、そして本当の優しさや慈しみを伝える必要があります。
宗祖法然上人(1133–1212)が開いた浄土宗は、阿弥陀様の「誰一人として漏らすことなく必ず救う」という平等の大慈悲のもと、「この世界に生きるあらゆる人々が、阿弥陀様の聖なるお名前を唱えることで、必ず極楽世界に往生する」という教えです。
浄土宗はこの教えの下、21世紀、そして未来を生きる全人類に向けて、「劈頭宣言を自身の生涯の誓いとして、たとえ不安や孤独や絶望の中にあっても、『この私が、そしてすべての人々が極楽世界に往生する』という祈りの中、共に手をつないで、明るく・正しく・仲良く生きていくことが、人間として理想的な生き方である」と伝え続けていきます。

岡垣浩志

「進取の精神」で進化と変革を推進

岡垣浩志
株式会社たけびし 代表取締役社長

本年6月28日付で代表取締役社長に就任しました。新たな体制の下、さらなる企業価値の向上に取り組んでまいりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
今年度より、当社は2026年度に向けた新中期ビジョン「T-Link 1369 〜Road to 100th〜」をスタートいたしました。前中期ビジョンで築き上げてきた成長戦略を進化させるとともに、既存の枠組みを越えた変革に挑戦し、デジタル変革(DX)・自動化・再生可能エネルギー関連等、成長市場における事業拡大を推進いたします。そして、資本効率の向上と、持続可能な社会の実現を目指す「サスティナビリティ経営」に取り組み、社会の変化に適応しながら持続的に成長できる企業を目指してまいります。
当社は創業以来、主力の三菱電機製品と多くのパートナー製品に加え、当社オリジナル製品やシステム開発の提供を通じて、多様なお客さまのニーズにお応えする「つなぎの技術力」を培ってまいりました。これからも、幅広い事業分野で多様な課題解決を実行する「京都発 最強のトータルソリューション商社」として、「進取の精神」で挑戦を続けてまいります。

武田道子

夏が来れば思い出す

武田道子
武田病院グループ 副理事長

長く続いたコロナ禍の情勢も、ようやく次のステージに進んだのを実感します。京都駅のあたりを歩いておりますと、外国へ来たように感じることもあります。観光都市として大勢の方々をお迎えし平和な日々が戻ってきておりますが、世界には戦火におびえる人々も多くおられます。
私にとりまして、夏が来れば思い出すものがあります。それは小学6年生の8月、松山で出合った空襲です。
夜半ごろからB29がどんどんやってまいりました。焼夷(しょうい)弾が雨あられと降ってくる中、私たちは必死で走って逃げました。途中、一緒に逃げていた方が直撃されて倒れました。それでも走り続け、川の中へ飛び込み、石橋の下に身を寄せて夜が明けるのを待ちました。翌朝、松山の市内は焼け野原になっており、ところどころ細く煙が立ち上っていた光景は忘れることができません。
戦後、不自由な学生時代を過ごしましたが、医師免許を取得してから65年。今も現役で仕事ができているのは幸せなことでございます。
世界で争いがなくなる日が来ることを信じ、皆が互いに「思いやりの心」を持っていただきたいと切に願っております。

瀧井傳一

一粒の種で守る、創る。

瀧井傳一
タキイ種苗株式会社 代表取締役社長

毎日口にする野菜や、暮らしに彩りと癒やしを与えてくれる花。私たちは、その源であり農業生産の出発点となる種子を開発・供給しています。1835年の創業以来、京都の地で種苗業に邁進し、地域と共に発展を遂げ、現在180カ国以上で当社の種が使用されています。
当社のミッションは、「タネから始まる無限の創造性を活かし、世界の人々にとって新しい期待と感動にあふれる、健康的で豊かな生活の実現に寄与する」こと。10年先の未来で人々が何を求め、何に価値を感じるのかを想像し、伝統的な育種技術と最先端の分子生物学の両輪で、唯一無二の新品種を創造します。
地球環境をはじめ世界情勢が日々刻々と変化し、人々の価値観や生活様式、食と農業の形態や課題が多様化する一方で、健康とおいしさを求め、安らぎや喜びに心動かされることは、時を経ても変わることはありません。時代に応じた「喜び」を提供すること、どの時代にも「当たり前が当たり前にある安心」を絶やさないこと―。
私たちは、確かな技術と自然への愛情と共に、これからも一粒の種からその社会的使命を全うしてまいります。

坂東 希

「ミライマチ宣言」

坂東 希
大和ハウス工業株式会社 京都支店 支店長

昨年、大和ハウスグループは創業100周年を迎える2055年にどんな未来を創り出したいのかを考え、「生きる歓(よろこ)びを分かち合える世界の実現に向けて、再生と循環の社会インフラと生活文化を創造する」という「将来の夢」を掲げました。
将来の夢(パーパス)は、地域共生活動においても同様に、未来を見据えた軸のある活動への進化が求められています。そのため、地域共生活動が次のステージへと新たな一歩を踏み出すために、未来ビジョン「ミライマチ宣言」を事業所全員で考え、策定することとなりました。
ここ京都において策定したミライマチ宣言は「あいでつながる伝統と創造のマチ京都」。
AI(人工知能)の進化に代表されるように急激に変化していく社会の中でも、「ふれあい」や「であい」を大切にして、人と人、人と街、人と自然がつながっていく。そして、伝統を重んじながらも常に新しいものを生み出していくマチでありたいという思いを込めています。その実現に向けて、地域の皆さまと共に未来に向けて一歩ずつ前進してまいります。

山崎敏子

出会い・つなぐ場所へ

山崎敏子
株式会社大丸松坂屋百貨店 執行役員 大丸京都店長

大丸は、1717年の創業以来「先義後利」(義を先にして利を後にするものは栄える)を社是とし、商売を続けてまいりました。その長い歴史の間には大きな転換期がさまざまにあり、そのたびに地域の皆さまに支えられ、乗り越え、四条高倉に京都店を構えて111年を迎えることができております。そして、今、まさに時代は大きな転換期を迎えています。
地球環境に対する危機感の高まりに始まり、新型コロナウイルスの世界的流行を経て、物質的豊かさを追い求めた時代から、心の時代へ。この転換期において、大丸京都店は社是「先義後利」に立ち返り、地域社会の中で、この京都という街において、百貨店が担うべき役割を再確認していきたいと考えます。地域の文化、伝統、産業を日本中・世界中に発信する、価値ある本物を提供する、そうしたコンテンツやモノが持つストーリーと人々が出会う場となる、人と人をつなぐ場となる。そのような店舗となり、京都の街に、皆さまの暮らしの幸せに役立てるよう、これからも努力を続けてまいります。

白波瀬 誠

地域の未来を創造

白波瀬 誠
京都中央信用金庫 理事長

日本全体で人口減少が進む中、京都市の人口減少率は全国的にみてほぼ中位の状況です。コロナ禍で減少していた外国人留学生も昨年は大幅に増え、市の施策もあり流入人口は増加傾向にあります。住みたい街、働きたい街を目指す取り組みは、地域の未来につながるよう続けていかなくてはなりません。京都には30を超える大学があり、また日本を代表する大企業や高い技術を持った中小企業が多々あります。京都で学んだ学生が、地元企業に就職し活躍できる環境が整えば、地域の活性化につながる好循環が生まれます。
今年も当金庫は京都府との共催で「京都ジョブ博」を開催しました。求職者に京都企業の魅力を発信する機会を提供し、中小企業の人材確保の課題解決と、サステナブル(持続可能)な地域社会の発展に今まで以上に貢献してまいります。他にも、課題解決に資するビジネスマッチング、M&A(企業の合併・買収)による事業承継・成長支援、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進等、さまざまなソリューションを提供し、地元企業の持続的な成長をサポートすることで、夢を持って働き続けられる社会を目指してまいります。

小野隆啓

生成AIの「未来との約束」

小野隆啓
京都外国語大学・京都外国語短期大学 学長

技術革新はいつも、あるとき突然そこに現れる。生成AI(Generative Artificial Intelligence)という名の新しい技術が現れ、驚異的な速さで社会に波及し、自らをもさらなる次の段階に押し上げる。「チャットGPT」の最新版は今年5月12日に発表されたもので、「GPT-4」をベースにしている。
この生成AIの登場は、社会に強烈な影響を及ぼし、既存の社会体系を刷新することは疑う余地のないものである。SF映画「スター・ウォーズ」や「スター・トレック」に出てくる流暢(りゅうちょう)に人間の言語を話す機械が、一見するとすでに完成したかのような気持ちにさせられる。
われわれは、その危険性と、同時に有用性を議論し、使用にあたっては広く注意が必要であることは言うまでもない。しかし、だからといって利用、使用しないわけにはいかない。文明の発達は、この地球上で唯一、言語を持つ生命体であるわれわれ人間のみが可能とするものであり、避けて通れない。「未来との約束」として、われわれはその道筋を的確に定めなければならないものである。

廣江敏朗

「人と技術をつなぎ、未来をひらく」

廣江敏朗
株式会社SCREENホールディングス 取締役社長(CEO)

SCREENグループは、1868(明治元)年に京都で創業した石版印刷業の石田旭山印刷所をルーツとし、1943年に写真製版用ガラススクリーンの研究部門が独立する形で誕生しました。創業以来の印刷事業を発展させるとともに、半導体やディスプレーをはじめとするエレクトロニクス分野へと事業を拡大することで、グローバルトップシェアを有する製品を数多く手掛ける企業へと成長することができました。
われわれは今年創業155年、設立80周年を迎えます。この節目の年に「企業理念」を見直し「存在意義」を明確にしました。新たな存在意義「人と技術をつなぎ、未来をひらく」には、われわれに関わるあらゆる「人」や「技術」を、世代を超え、自在につなげることで、社会課題解決のためのソリューションを生み出し、持続可能な未来への扉を開くという思いを込めています。
これからもイノベーションを起こし生み出したソリューションを世界中のお客さまに提供することで、持続可能で豊かな未来の実現を目指していくことが、私たちの「未来との約束」です。

木越 渉

「お東さん広場」のにぎわいに期待

木越 渉
真宗大谷派 宗務総長

京都市内の中心を南北にまっすぐ走る烏丸通ですが、烏丸七条から北側、東本願寺前で道が一部東側に迂回(うかい)していることをご存じでしょうか。明治時代に京都市電が敷設される際、東本願寺への参拝者の安全に配慮いただいたものですが、それによって生じたスペースは、東本願寺所有の緑地帯として長らく置かれてきました。
今春、京都市初の市民緑地として、その緑地帯部分が市によって整備され、東本願寺前市民緑地(愛称「お東さん広場」)としてオープンしました。東本願寺では、本年3月25日から4月29日にかけて、「宗祖親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃法要」という50年に一度の大法要をお勤めしましたが、前日の3月24日に「お東さん広場」のオープニングセレモニーが行われ、以降さまざまなイベントが開催されており、地域に住まう方、これまで訪れたことのない方など、多くの方でにぎわっています。
元来お寺は広く社会に開かれた場であり、またそうあり続けねばならないと考えています。「お東さん広場」をご縁として、これまで以上に多くの方に仏法が届くことを期待しています。

畑 正高

体温を感じる商いを

畑 正高
株式会社松栄堂 代表取締役

昨今、核家族という言葉では説明できないほど生活の単位が小さくなり、特に都市部では社会生活はあまりにもシンプルになっていないでしょうか。
大家族が基本だった頃には、日常的な世代間の交流が経験値や知恵の継承を可能にしていました。人々は生い立ちの過程で多くの知恵を継承していたと思います。それがデジタル化とコロナ禍とで、加速度を得て変わりつつあります。
例えば固定電話は、かける方にも答える方にも基本があり、家庭内でおのずと教えられたものでした。こうして多くの経験値や知恵が伝達されることで、社会は一定のレベルに維持されてきたのではないでしょうか。家庭生活や地域社会がその文化力を失い、学校教育にその責を求めようとして限界にも気付きつつあります。
今、会社生活の重要性が問われ、企業文化は、世代間で価値の継承を育む最後の砦(とりで)になるのではないかと考えています。会社生活は、一人一人を社会の一員として育む機会と責任を担っているのです。週40時間の中で関わり合いましょう。世代間の違いを認め尊重し合って力を合わせ、体温を感じる商いをさせていただきたいと願っています。

川村明緒

「女性ヘルスケア」を社会に届ける

川村明緒
川村産婦人科 副院長

現代女性の多くは、年代に関わらず心と体の不調を抱えていても対処が分からず、つい我慢してしまっています。それは女性特有の症状が治療・予防できるという情報が届いていないからです。
女性の健康課題が、社会に与える影響は小さくありません。経済産業省の発表では、月経随伴症状による1年間の労働損失は4911億円にも上るとされています。最近は薬剤の種類も増え、ライフスタイルに合わせて治療を選択できます。しかし、こういった知識は男性や管理職だけではなく、女性にもまだ十分に周知されていません。
この4月から子宮頸(けい)がんの9価ワクチンが承認され、中高生は無料で接種可能です。従来の4価ワクチンよりも予防率は高く、適切な時期に接種すれば約9割の子宮頸がんを予防できます。こういった事実もまだ情報が必要な人に行き届いていません。
当院では「女性ヘルスケア」外来を設け、出産はもとより、それぞれの専門医が全ての女性を支えるかかりつけ医を目指しています。今後は必要な情報が社会に届くように、地域社会や企業と連携、協力して、女性ヘルスケアの啓発に取り組んでいきたいと思っています。

田島勝也

必要とされる会社を目指して

田島勝也
キリンビール株式会社 京滋支社 支社長

当社は、1907年の創業以来「お客様本位」「品質本位」の基本姿勢に基づき、いつの時代も新しい価値を提供するさまざまなチャレンジを行ってきました。多様性を力に変えて「挑戦」することで新しい価値を創造していくことが私たちの目指す姿です。ブランド力を高め人材を磨き、人と人がつながる喜びをお届けすることで、京都・滋賀のお客さまと「絆」を育み深めていきたいと考えております。
「キリン一番搾り生ビール」「本麒麟(ほんきりん)」「キリン 氷結」などお客さまにご支持いただける商品を創造し続けるとともに「スプリングバレー 豊潤〈496〉」「スプリングバレー シルクエール〈白〉」を中心にクラフトビールのおいしさ・楽しさを感じていただけるシーンを提供することで「ビール文化の魅力化・創造」を推進してまいります。さまざまなシーンでキリン商品を飲んでいただき、お客さまが笑顔になってくださることが私どもの最大の喜びであり誇りです。
社会と共有できる価値創造「CSV(Creating Shared Value)」を実践することにより、社会課題の解決と持続的成長を実現し、お客さまから必要とされる会社、信頼される企業となるよう取り組んでまいります。

山本靖則

イノベーティブカンパニーを目指す

山本靖則
株式会社島津製作所 代表取締役社長

島津製作所は1875年に京都木屋町二条で創業し、今年で148年目を迎えました。「科学技術で社会に貢献する」を社是に、分析・計測、医用、産業機器、航空などの分野で、経営理念に基づき「『人と地球の健康』への願いを実現する」ために、さまざまな製品・技術の開発に力を入れてきました。
今年4月からは、策定した新中期経営計画の下「世界のパートナーと共に社会課題を解決するイノベーティブカンパニー」を目指して企業活動を進めています。特に「ヘルスケア」「グリーン」「マテリアル」「インダストリー」という四つの領域で、自社の技術開発力を強化し、多くの大学や企業のパートナーと共同して社会実装力を強化することで、人の健康・地球の健康・安全安心な社会の実現に貢献したいと考えています。
2025年に迎える創業150周年に向けて、従来の「社会課題解決のために『製品』をお届けするハード提供企業」から「お客様の必要な『データ』をお届けするトータルソリューション提供企業」への変貌を遂げ、社会に貢献する事業活動をより一層推進してまいります。

古田基行

「人間の生命の輝き」を目指して

古田基行
サントリー株式会社 京都支社 支社長

サントリーグループは酒類、清涼飲料、健康食品をはじめとした幅広い事業を展開しています。こうした全ての事業の目的(Our Purpose)は、「人と自然と響きあい、豊かな生活文化を創造し、『人間の生命(いのち)の輝き』をめざす」ことにあります。私たちは「水」をはじめとした自然の恵みをさまざまなものづくりに生かします。酒類を例にとれば、「サントリー〈天然水のビール工場〉京都」や「山崎ウイスキー蒸溜所」は、地元の自然の恵みを通じて生み出した各種製品を皆さまの元へとお届けしています。その自然の恵みをもたらしてくれる自然環境を保護するために、「天然水の森」などの水源涵養(かんよう)活動や、バリューチェーン全体で温室効果ガスの排出ゼロに向けた努力を行っています。
「豊かな生活文化」の実現に向けては、「芸術・文化・学術」「スポーツ」「社会福祉」の分野での取り組みを継続するとともに、「次世代育成」「震災復興支援」「チャレンジド・スポーツ」など時代を見据えた活動を多岐にわたり展開しています。今後も「人間の生命の輝き」を目指し、日々の「考動」を積み重ねてまいります。

木下宗昭

企業活動は環境保全とともに

木下宗昭
佐川印刷株式会社 代表取締役会長

さまざまな商品の価格上昇はご家庭でも実感しておられるかと思いますが、その要因は原材料やエネルギーといったコストが上昇したことであり、これは印刷会社をはじめ、多くの企業の経営に大きな影響を及ぼしています。
厳しい状況下ではございますが、当社はこれまで以上に、生産効率と品質の向上に努め、お客さまのご要望に対応してまいります。お客さまのご要望にお応えしつつ、従業員の生活を守るために会社を成長させ、さらに環境保全という重要な課題にも力を入れる健全な企業経営を目指しています。
そこで、当社は工場屋根スペースを利用してPPA(電力購入契約)モデルの太陽光発電を開始いたしました。再生可能エネルギーである太陽光を利用して、それぞれの工場で使用する電力を補っています。また、これからも水性フレキソ印刷や無溶剤ラミネート加工など、環境に優しい生産工程を導入していくことで、省エネルギーや環境負荷の軽減を実現いたします。環境保全への取り組みは企業にとっても消費者にとっても避けては通れない課題であり、当社も「望まれることの、一歩先へ」を合言葉に、新しいことに挑戦してまいります。

松井 雄

より良い働き方の実践

松井 雄
株式会社公益社 代表取締役社長

日本の社会保障は2022年に「高齢者1人を現役世代2人が支える」状況となり、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口によると、65年には「高齢者1人を現役世代1人が支える」と推計されております。また日本の人口は、近年の動態と同程度で推移する場合、2050年の出生数は52万人に減少、死亡数は160万人に増加し、総人口は9800万人程度に減少するとされています。人口減少を防ぎ、未来の新しい社会を創造するために「次の世代」をいかに育むのか。子育てや介護を担う現役世代を中心とした次世代の社会づくりに目を向け、私たちは取り組まなければならないと思います。
弊社は、これまであらゆる方々に寄り添い、次の一歩を踏み出せるよう私たちができるさまざまな協力や支援を行ってまいりました。次世代を育む現役世代を支援するために、まずは従業員の子育てや介護などそれぞれの事情に寄り添うことが大切です。これからも、育児休暇の取得、フレックス勤務の実施、事情により退職した方の再雇用制度など、従業員とその家族が心身ともに健康で活動できるように、より良い働き方の実践に努め新しい社会の創造につなげてまいります。

赤野孝一

決意を新たに

赤野孝一
学校法人聖母女学院 理事長

本日、学校法人聖母女学院は創立100周年を迎えました。今日までお支えいただきました全ての皆さまに心から御礼を申し上げます。
本学院は、はるばるフランスより来日したヌヴェール愛徳修道会の7人のシスターによって創立されました。ある同窓会で「聖母の学校で心に残る行事は?」という話題で盛り上がった時です。90歳代の方が「何もありませんでした。何も」と一言。会場は一瞬、静まりかえりました。「私たちの学校生活は戦争一色でした。来る日も来る日も勤労奉仕。行事で楽しかった思い出など一つもなかったのです。けれども…シスターや先生方の厳しくも温かかった言葉ははっきりと覚えています」この卒業生が今なお足を運んでくださることにこそ、本学創立の原点があります。
混迷を極める今の時代に何より必要なのは、「あなたは神様に愛されています!」という真理を、厳しくも温かい教育を通して子どもたちに伝え続けることです。真に平和な世界を築くことに積極的に貢献できる人を育てる学園としてさらなる高みを目指していきます。そして100周年を機に決意を新たに未来に向かって躍進してまいります。

辻 嘉明

ひとを育て、未来につなぐ

辻 嘉明
株式会社きんでん 常務執行役員 京都支店長

6月、希望と不安と共に今春入社した新入社員は研修中か、あるいは研修を終えて配属の時期でしょう。きんでんの新入社員研修の期間は長く、総合職で1年間、施工技術職では2年間です。さまざまな業務習得の中では総合職も男女共に施工現場でペンチも握ります。
当社には半世紀以上の歴史を持つ教育訓練の一大拠点「きんでん学園」があります。研修施設、実技訓練設備、体育館、宿舎があり、新入社員を主とした実践的教育をしています。また全社員を対象に技術・技能の習得だけでなく、「人は財産」の経営理念に基づき「心・技・体」三位一体の全人教育を行っています。
私たちが創る「モノ」は、建設現場で人の手で一つ一つ作り上げます。そこでは多分野の連携が必要で、「成し遂げる」強い思いを持ち、知恵と技術を結集して、唯一の「モノ」を仕上げ、人々の期待に応えています。私たちは、総合設備エンジニアリング企業として電気・空調衛生・情報通信などの設備設計・施工・エンジニアリングの幅広い技術力と開発力、力強い実行力を持つ人材を育て、お客さまのインフラを支える使命を未来につなぎます。

北尾和彦

会社は自分の夢を実現する場

北尾和彦
京都薬品工業株式会社 代表取締役会長

京都は、伝統文化や歴史遺産にあふれ、大学などの研究機関が多く、研究指向型の製薬会社にふさわしい都市です。
新薬の創製には、探索研究から動物で行う非臨床試験、そしてヒトで行う臨床試験に及ぶ10年以上の歳月と、500〜1千億という多額の費用がかかる一方で、成功確率は2万2407分の1と大変低く、大きなリスクを伴います。それでも当社が夢を追い続けるのは、患者さんに希望を与えたいという一心からです。病気で苦しむ患者さんに1日でも早くお薬を届け、社会からいただいたご恩に報いることが、創業以来変わらぬ当社の使命です。
人間は一人では成長できないので、会社を「自分の夢を実現する場」と考えて自分自身を成長させなければなりません。社員一人一人が主体性を持って「私は京都薬品の社員である」から「私が京都薬品である」に心を転換し、無限の可能性を信じて取り組むことで、優良医薬品を途切れることなく患者さんにお届けしています。「和親協力・誠実報恩」の社是の下、当社は「山椒は小粒でもピリッと辛い」をモットーに、悠久の都・京都で新薬創製に挑戦し続けてまいります。

奥村浩二

東急ホテルズのDX

奥村浩二
株式会社京都東急ホテル 専務取締役

ここ数年、日本でもデジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉が頻繁に使われるようになってきました。弊社はDXとは「社会やビジネスマーケットに大きな影響や変革をもたらすもの」と理解しており、中でも近年特に大きな変革をもたらしたのは、スマートフォンの普及ではないかと考えています。そのスマホというデバイスを使って弊社が手掛けているDXについてご紹介させていただきます。
まずは既存の東急ホテルズ公式アプリをアップデートして、ホテルの客室キーの機能をスマホアプリに持たせ、事前清算・チェックイン/アウトもアプリでできるようにしました。いまや当たり前になってきた、レストランでお客さまのスマホからメニューのオーダーができる機能の実装やセルフチェックイン端末も導入しています。
スマホ以外ではRPA(ロボティックプロセスオートメーション)ツールのソフトウェアによりPC上で行う業務の自動化を進めてPC作業時間を大幅に短縮できました。これらによって捻出された時間はお客さまのために使うことができます。今後もDXに注力して顧客体験価値の向上により顧客満足度アップを目指してまいります。

中野博美

人口減少する地域社会とヘルスケア

中野博美
京都きづ川病院 理事長

始まりは24年前の老人保健施設開設でした。医療法人「啓信会」は地域の要請を受け1985年、城陽市に京都きづ川病院を開設して以来医療事業を行なってきましたが、90年代に地域社会は低成長となり、人口減少へと変化しました。環境の変化に戸惑いながらも事業の最適化を模索し始め、まず老人保健施設を開設しました。
99年当時の城陽市の人口動態は、ベッドタウンとして栄えた昭和の時代の人口集中世代が、地域の高齢化率をあっという間に全国平均に押し上げ、さらに追い越す勢いでありました。要介護高齢者だけではなく治療後すぐに自宅へと帰れない高齢者も増加し、病気の治療には医療と介護の連携が欠かせなくなり、急性期医療、回復期医療、慢性期医療、在宅医療から介護ケアへと流れを持った一体的なヘルスケアシステムが必要となりました。当時はまだ地域医療構想という概念はありませんでしたが、われわれは城陽市を中心とした地域に対して過不足のない医療と介護提供体制の構築を目指したのです。いま国では医療と介護の連携がうたわれていますが、分けてはいけません、一体的に運用すべきだと考えています。

志村雅之

若手の登用

志村雅之
京都鰹節株式会社 代表取締役会長

商家に生まれ、家業を継いで約40年間、トップとして経営に邁進(まいしん)してまいりました。私見ですが、中小企業のトップ就任は、遅くとも30歳代後半までがベストだと思います。それは①若さ②事業展開する時間的余裕がある③挫折しても再チャレンジ可能、という理由からです。
最近、多くの経験・体験をしている人がビジネス界でかなりの成果と成功を収めていることに気づきました。時代がアナログからデジタルに移行する中、年功序列に代わり実力主義が導入されました。若手を登用するとその変遷がよく理解できます。私自身は同じ年代の人と関わりが多く同質的な価値観のつながりが強かったのですが、最近はかなり歳の離れた人と触れ合う機会もあります。若い彼らは幼少の頃から学生時代、社会人になるまでに、異質で多岐にわたる経験・体験をたくさん積んでおり、学ぶ点が多々あります。彼らの成長に触れるとうれしくなってきます。さらにリスキリング(再教育)を行うと、社員が自主的に動き、マイクロマネジメント(細かい管理や指示)が不要になっていきます。彼らの成長していく姿に感動すら覚えます。やはり企業は「人を遺(のこ)すこと」が大切だと思います。

畑 忠男

次の世代へ手渡す「安全・安心」

畑 忠男
京都生活協同組合 理事長

京都生協は1964年、物価の高騰などで暮らしに不安が募る中、「お互いに頼もしき隣人となりましょう」との呼び掛けで誕生しました。
創立以来、助け合いの組織として、食の安全・安心の追求、誰もが安心して暮らせる地域社会の実現に向けて取り組んできました。
そして、食や暮らしの「安全・安心」は今日のスタンダードになりました。持続可能な社会が求められる今、食や暮らしだけでなく、人への優しさや寄り添う心、人とのつながり、そして地球に対する「安全・安心」がこれからのスタンダードになると確信しています。
次の世代、そしてさらに次の世代へ「安全・安心」な食や暮らし、地球環境を手渡していけるように、関係する全ての人々と力を合わせ、新たな希望をつくります。
3年に及ぶコロナ禍で「つながり」や「助け合い」の大切さが再認識される中、「頼もしき隣人たらん」という理念を大切にし、地域の皆さまの食を中心とした日々の暮らしを応援できる頼もしい存在であり続けたいと考えます。

澤田昌人

「グローバルな大学」を目指します

澤田昌人
京都精華大学 学長

キャンパスを出て、海外や国内の各所で現場を体験し実践的な力を育むプログラムを、本学は多数用意しています。
私自身は、現地調査で国内各地、アフリカの一部を訪れただけですが、そこでの経験は、その後の私の人間観、人生観に大きな影響を与えました。世の中を見る視野も広がり、勉強不足に気付かされることにもなりました。
本学の学生も国内や海外で、多くの経験を通じて人間として成長していくと信じて、キャンパス外の教育を推進しています。
今ではネットを通じて世界の隅々まで訪れた気になることもできます。近い将来スマホを用いて、外国語で会話を楽しむこともできるようになるでしょう。しかし昨今の、現実の生活が充実していることを指す「リア充」という言葉は、同じ場所と時間を共にすることが人間社会の原点であると教えてくれているのではないでしょうか。
私たちは「グローバルな大学」となることを目標にしています。それは学生に地球規模の広がりで経験を積んでもらいたい、ということもあるのですが、それ以前に多様な人々と交流し切磋琢磨して、自らと社会の可能性を追求してほしいと思っているのです。

黒坂 光

未来社会の価値を創造する人材育成

黒坂 光
京都産業大学 学長

私が青少年期を過ごした昭和40年代の大阪。都会といえども通学路の一部は舗装されておらず、道端の雑草が生い茂る土手のフェンス越しに電車が行き交っていた。数年後には道は整備されてショップが立ち並び、電車はその上の高架を走るようになった。地下鉄や高速道路も開通し、万国博覧会も開催された。すべてがセピア色の思い出だが、開発されていく街の様子が鮮明によみがえる。何の疑いもなく、日本は発展し、生活も良くなると信じていた。
現代は大量の物と情報にあふれて、はるかに豊かに便利になったが、それに見合う幸福感よりも将来に対する不安感が勝るように見える。人々は心の安寧に、社会に活力を与える人材を求めているのではないか。建学の精神に「将来の社会を担って立つ人材の育成」を掲げる京都産業大学は、先行きが不透明な今日の社会において、その使命を果たすべく未来社会の価値を創造する人材を育成する。来たるべきデジタル社会「Society 5.0」を見据えて、データサイエンス教育やアントレプレナー(起業家)育成教育などの先進的かつ創造的な教育を行い、成長と幸福を実感できる明るい社会の構築に貢献する。

吉川左紀子

場を温めるアート

吉川左紀子
京都芸術大学 学長

「3密」を避けながら静かに暮らすことを余儀なくされた数年が過ぎ、ようやく美術館や博物館にも自由に出かけられる日常が戻ってきた。本学の先生たちの個展やグループ展も、日本各地の画廊で次々と開催されている。先日、市内の複数の会場で実施された「ARTISTS’ FAIR KYOTO」の会場を歩きながら、改めて、見る人の心をわくわくさせ、元気づける芸術の力を実感した。リアルな場で作品に対峙(たいじ)すると、インターネット上の画像では感じることのできない作品のエネルギーが五感を通して伝わってくる。こうした「主役としてのアート」は、間違いなくこれからの日本人の心を明るくしていくだろう。
一方、私が今、気になるのは脇役のアートの持つ力である。「ホスピタルアート」と呼ばれる分野がある。病院の壁や天井に柔らかい筆致で描かれるホスピタルアートは、ときに死と向き合うことも余儀なくされる患者や医療従事者の日常を彩る優しいアートだ。作品としての注目を望むのではなく、その場の空気を温め、不安な心や疲れた心を癒やすさりげないアート。アートの持つこうした多様な可能性を、学生たちに体感してもらいたいと考えている。

立木康之

ステキな大人が増える未来をつくる

立木康之
株式会社京進 代表取締役社長

「ステキな大人が増える未来をつくる」これは2020年に制定した、グループのビジョンです。当社グループは1975年に学習塾として創業し、現在では、学習塾はもとより保育園、介護施設、日本語学校、英会話学校、専門学校など、500を超える拠点でさまざまなサービスを展開しています。当社グループは「教育」という限定的なイメージを超え、「学び」を土台とした企業グループでありたいと思っています。
人は学ぶことで成長し、成長することで今日よりも明日をより良くすることができます。私たちの提供する「学び」には成績向上や合格といった目に「見える学び」がある一方、「探求する好奇心」、「前向きな心」「他人と良い関係を築く力」など数値では表しにくい、「見えない学び」があります。この「見えない学び」こそが当社グループが大切にする価値であり、これらの価値をさらに広めることで、世の中に「ステキな大人」が増えると信じています。まずは、当社グループの従業員がステキな大人になり、そして、提供するサービスによってお客さまがステキな大人になっていく。そんな世の中をつくっていきたいと願っています。

橘 重十九

「参拝の若者たちに贈ることば」

橘 重十九
北野天満宮 宮司

史跡御土居「もみじ苑」の青葉が目に染みる季節となりました。
年4回発行の当宮社報「天満宮」では、著名な学者・文化人の先生方と対談する欄があり、最後に「参拝の若者に贈ることば」を尋ねています。すると「何か目標を立て、それに向かって日々努力せよ」「日本に住んでいる幸せをかみしめよ」「悪いことがあっても気持ちの持ち方で変えられる」など、経験を基にした素晴らしい言葉が返ってきます。
菅原道真公(菅公)は、冤罪(えんざい)により大宰府に流され亡くなられました。しかしどんな不遇な状況であっても、正直な心で研さんを積み、多くの優れた詩歌も残されました。今や菅公を祀(まつ)る天神さんは全国で1万社を超えます。来年、流通する新1万円札の顔、渋澤栄一翁は、冤罪を仕組んだ藤原時平と菅公を対比し、「今、時平を評価する者はいないが、菅公は文学の神となり、小さな子どもでさえ天満宮の名を知らぬものはいない」として「菅公をもって真の成功者」と書いています。
コロナ禍も落ち着き、間もなく修学旅行生の参拝が始まります。若者の元気な声が待ち遠しいです。

栗和田榮一

異なる感性や視点を持つ人材生かす

栗和田榮一
SGホールディングス株式会社 代表取締役会長兼社長

現在、日本は急速なインフレに突入し、経済・社会活動に大きな影響を及ぼしています。そのような中、猛威を振るった新型コロナウイルス感染症への適応が進み、5月には感染症法の2類相当から5類に変更されます。既に外国人観光客が戻り始め、インバウンド消費が回復傾向に転じるとともに、外食や各種イベントなどの規制撤廃も進んでいます。
地政学リスクをはじめ、経済、社会、環境、技術などが複雑に絡み、目まぐるしく変化する現代において、先を正確に見通すことは非常に困難と言わざるを得ません。既存の視点や考え方だけでは対応できなくなる可能性もあります。だからこそ、女性や若い世代といった、さまざまな感性・視点を持つ人材が存分に能力を発揮し、一層活躍できる組織風土づくりが必要だと考えています。
経済や産業の血液にも例えられる物流は、生産と消費をつなぎ、支える重要な社会インフラです。京都で創業して以来大切にしてきた「飛脚の精神(こころ)」を原動力に、枠にとらわれない発想で、新たな付加価値を生み出し続ける企業を目指してまいります。

大垣守弘

「夢」のある未来とは

大垣守弘
大垣書店グループ 代表取締役

世界では紛争や覇権争いがいまだに続いています。子どもたちが夢を持てる社会・未来とはどのようなものなのでしょうか。
資源は有限であり、命は永遠でないことは自明の理であるにもかかわらず、人間の欲望はとどまるところを知りません。
高齢化社会を目の当たりにし、いよいよリミットが迫っていると感じるのは私だけでしょうか。持続可能な社会を目指すことが叫ばれて久しい今日ですが、その取り組みの加速度を上げていかなければならないでしょう。気候変動やエネルギー問題をはじめ、社会課題が山積する現在、共に知恵を絞り、考え、仲間と一つ一つ解決していくしか前途は開けないと感じています。
「真の幸福とは何か」立場・年齢を超えて答えを出すことは簡単ではありませんが、互いの立場で考える契機を京都から発信し、夢を持てる社会を作っていくことがわれわれの役目であり責任だと感じます。目標の大小にかかわらず、実現したいことを明確に捉え、そのために何をすべきか、何ができるのかを見つけることが大切です。さまざまな学びの機会を逃さず、豊かな夢のある社会を築きたいと願ってやみません。

金子直樹

混迷の世界市場に挑戦する

金子直樹
オーシャン貿易株式会社 代表取締役社長

生鮮食品や花卉(かき)類などの輸出入に特化した商社のわが社は、この春、創業50年を迎えました。創業者の米田多智夫代表取締役会長から、昨春、バトンを受けて社長に就任した私は、この1年間、取引先の多い北欧、東南アジア各国を視察し、商談を重ねてきました。ロシアのウクライナ侵攻をはじめ激動する世界の政治、経済、社会の実情を目の当たりにし、あらためて企業リーダーの1人として、混迷の時代を生き抜き、消費者に安定的に商品を提供する使命を再認識しました。
戦争とコロナ禍の影響もあって、エネルギーをはじめ穀物、食品などの価格が上昇、消費マインドを冷え込ませました。わが社は、主力の一つであるノルウェーサーモンの一部をウクライナで加工していますが、難局を乗り越えて輸入量は前年を上回り、輸出面ではシンガポールに販売拠点を新設、東南アジア最大手のスーパーとの取引を本格化させ、増収増益を維持しました。商社の資産は人材です。性別、国籍を問わず人材を育成し、混迷する世界の市場動向をチェックしながら、商材開拓に果敢に挑戦していきたいと考えています。

上原晋作

叱られて80年

上原晋作
上原成商事株式会社 代表取締役社長

私は常々、「好き」の反対語は「嫌い」ではなく「興味がない」であり、「好き」と「嫌い」は一対で表裏の関係であると思っています。興味がなければそもそも好きも嫌いもありません。
日々の仕事の中では、お客さまからお叱りの言葉を頂戴することがありますが、それは私たちの提供する商品やサービスにご興味をお持ちいただいているからこそであり、そこではニーズの存在が前提となっています。お叱りは、ご興味とニーズをお持ちの方々のご期待に、私たちがきちんとお応えできていないことの表れですから、より良いサービスをご提供するための大事なヒントとして真摯(しんし)に受け止め、ご納得いただけるレベルにまで引き上げる努力をすればよいのです。
お客さまからお叱りの言葉でもって「嫌い」をぶつけていただきながら、当社も今年で創業80年を迎えることができましたが、私たちは決して逃げることなくそれらを「好き」への成長の原資としてまいりました。そしてこれからもお客さまのご期待に沿えるよう常に感謝の気持ちを持ってお叱りを承りたいと思っております。
でも、どうかお手柔らかに。

西山雄一郎

「すべてのお客さまに、最高の明日を」

西山雄一郎
アサヒビール株式会社 理事 京滋統括支社長

本年、アサヒビールは「ビールの魅力向上と新たな価値の創造で“すべてのお客さまに、最高の明日を。”お届けする」ことを事業方針に掲げています。
「マルエフ」の愛称で親しまれる「アサヒ生ビール」では、2月から中瓶と250㍉㍑サイズの缶を通年で発売しラインアップを充実しました。「マルエフ」と「アサヒ生ビール黒生」を1対1で混ぜる「ハーフ&ハーフ」や2対1で混ぜる「ワンサード」といった飲み方提案にも力を入れ、手軽に楽しめる機会を拡大していきます。主力の「スーパードライ」は、本年開催されるラグビーの2023年ワールドカップ(W杯)フランス大会の大会オフィシャルビールです。「スーパードライ」を通してお客さまと“気持ち高まる瞬間”を分かち合っていけたらと考えています。
また、アサヒビールはお酒を飲む人も飲まない人も一緒に楽しめる社会の実現を目指し、飲み方の多様性を尊重する「スマートドリンキング」を推進しています。本年からは「飲めても、飲めなくても、みんな飲みトモ。」を新たなキーメッセージとし、お客さまがもっと自由に楽しくお酒を選択できるような提案を強化していきます。

篠田 潤

人生を育み、景観に美を添える住宅

篠田 潤
アーキテクチャーリンクライフ(ALL)株式会社 代表取締役

Architecture(建築) Link(つなぐ) Life(人生・生活・命)。「お客さまの人生や暮らしと住宅建築をつなぐことが私たちの使命」という思いを込めた社名です。住宅というのは街並みの一部として存在し、家族の暮らしを育む人生の器だと思います。住むほどに愛着が増し、暮らしが豊かに熟成されますように。景観に美しさを添え、京都の街並みになじみますように。そんな願いが私たちの家づくりの軸になっています。
一人一人のお客さまと向き合いながら、完全に自由なスタイルで自社設計し、自社で現場の管理を行い、アフターメンテナンスまで責任を持ってご対応するのが私たちの家づくりです。本物の素材にこだわり、伝統的な美に現代的な感性を加え、職人の技を駆使して、住宅を設計し建築しています。
本能寺会館に事務所を開設して今年で21年目を迎えます。振り返ればたくさんのお施主さまやスタッフ、職人たちと共に、数々の物語を紡いできました。それら全てが私たちの誇りであり財産です。これからも技を磨き、感性を研ぎ澄まし、新たな物語を生み出していきたいと思います。

田中恆清

和の心をもって、世界の平和を祈る

田中恆清
石清水八幡宮 宮司

本年でコロナ禍の生活もはや4年目となりましたが、世界へ目を向ければ、戦争の勃発や自然災害の発生など、心を痛める出来事が数多く起こっています。また国内では、SNS(会員制交流サイト)などでの誹謗(ひぼう)中傷によって、尊い命が失われる事件も毎年起きています。
この困難な時代の中で、神職として何かでき得ることはないかと考え、改めて日本古来の精神でもある他者を思いやり共に協力して生きていく「和の心」の大切さを、世界へ発信していく時であると思うのであります。自然災害が発生した時に、皆で助け合い励まし合う日本人の姿は、まさに「和の心」の実践であり、世界中の人々が称賛し、見習うべき国民であるとして高く評価されています。
他国への侵略や昨今のSNSでの誹謗中傷も、人々の他者への攻撃心、すなわち他者を軽視して、自分さえ良ければそれでよい、という独善的な心に端を発していると思います。
今こそ他者への思いやりや優しさを、神道の精神である「和の心」と共に発信し、世界平和を希求していきたいと強く願っております。