賛同企業代表者 文化人 特集・未来へ受け継ぐ
経済面コラム

経済面コラム
【未来との約束2025】
~京都の未来企業・団体~

小野隆啓

「DEI」の
公平性を考える

小野隆啓
京都外国語大学・京都外国語短期大学 学長

近年、「DEI」という言葉を見かけられることがないでしょうか。「D」は「多様性(Diversity)」、「E」は「公平性(Equity)」、「I」は「包括性(Inclusion)」を指します。企業経営においては、単に指示に従うだけでなく、社員一人一人の個性を生かすことが重要とされています。
ここで「公平性(Equity)」について考えてみましょう。「平等性(Equality)」という言葉を思い浮かべるかもしれませんが、両者は異なるものです。平等性は、個々の違いを考慮せず、全員に同じ条件を提供する概念です。一方、公平性は、一人一人の状況に応じた支援を行う考え方です。例えば、異なる身長の3人が2mの壁の前に立っているとします。全員に同じ高さの台を渡すと、背の高い人は壁の向こうが見えますが、中くらいの背の高さの人はギリギリで壁の向こう側が見えないかもしれません。そして、背の低い人は見えません。これが「平等性」です。一方、「公平性」に基づくと、それぞれの身長に応じた台を提供し、全員が壁の向こうを見えるようになります。
社会においては、単なる平等だけでなく、個々の違いを考慮した「公平性」も必要なのです。

橘 重十九

情報化社会と
菅公の教え

橘 重十九
北野天満宮 宮司

困った時代になってきたと思っています。ネット社会の話です。真偽定かでない情報が拡散し多方面に影響を与えているからです。故意に流された虚偽の情報が世の中を動かすならば、恐ろしい時代といえます。ネットの発達は生活を便利にし、その恩恵は大きいといえます。しかし、その恩恵と引き換えに私たちから思考する心を奪っているような気がしてなりません。
菅原道真公(菅公)は、「和魂漢才」の精神を示された人です。外国の進んだ文明を取り入れることは歓迎だが、日本人の魂を失ってはならないとの教えです。怒濤(どとう)のごとく中国・唐から入ってくる先進文明への対応に苦慮される1100年前の学者・政治家の姿がそこにあります。やみくもに取り入れれば日本人の魂や心が失われることを危惧されたのです。ネットの世界では、偽物が横行しています。その情報が正しいのかどうか、一人一人の識見がより求められる時代といえます。菅公精神の根幹は「誠の心」であり、物事の本質を踏み外さない生き方です。その教えや精神は、このような時代こそ肝要であり、未来を担う若人に受け継ぐ大切な考えだと思っています。

若菜真丈

京都駅ビル開発の
挑戦

若菜真丈
京都駅ビル開発株式会社 代表取締役社長

京都駅ビルは2027年の30周年を目前にし、今年をさらなる飛躍の年と位置付けています。
社会環境が急速に変化する中ではありますが、大阪・関西万博が開催され、京都の文化を世界に発信するまたとない機会に、京都の旅の玄関口として、これまで以上に文化・芸術の発信拠点としての役割を強化し、持続可能な未来を見据えた取り組みを推進してまいります。
京都駅ビル、それは、あらゆるものの交差点でもあります。今年は、さまざまな「つなげる」をテーマに、行政、神社仏閣、企業や団体、学生、地域の皆さまと連携し、伝統とテクノロジーが融合する新たな文化の形を生み出します。さらにはスポーツと伝統文化のコラボレーション、未来のアーティストが活躍できる場を創出し、京都駅ビルを舞台に多様な文化の魅力をより多くの方々に届けてまいります。
京都駅ビル開発は、これからも地域とのつながりを深め、京都を訪れる全ての人々が京都の魅力を感じ、心に残る体験を持ち帰っていただけるよう、未来への約束を果たしてまいります。

立木康之

「ステキな大人が増える
未来をつくる」

立木康之
株式会社京進 代表取締役社長

2025年、京進グループは創業50周年を迎えます。長きにわたり皆さまからいただいた信頼とご愛顧に深く感謝いたします。50年前に学習塾としてスタートした当社グループは、時代の変化やニーズとともに、学習塾事業のみならず保育、介護、日本語教育や海外での語学学校、キャリア支援といった人の一生に関わる事業を展開し、成長してまいりました。
当社グループのグループビジョンは「ステキな大人が増える未来をつくる」です。2000年より取り組み始めた「経営品質向上プログラム」では、これまでに「関西経営品質賞」優秀賞と「京都経営品質賞」優秀賞を受賞してまいりましたが、それに加え24年には日本語教育事業部において「関西経営品質賞」ブロンズをいただくことができました。
国際化が進む現代において、日本語教育や外国人との共生も社会的に大きな課題となっております。日本の良さを未来に引き継ぎ、より良い社会をつくるため、「ステキな大人が増える未来をつくる」企業として、人の一生に寄り添い、社会に貢献できる企業を目指してまいります。

金子直樹

「三方良し」の精神で
世界へ

金子直樹
オーシャン貿易株式会社 代表取締役社長

2025年は自由貿易の時代の終わりになるのでしょうか。「タリフマン(関税男)」を自称する米大統領の復権により、保護主義が世界を覆いはじめています。自国第一の身勝手な関税政策と見る向きもあり、世界経済に深刻な影響を及ぼしかねません。
生鮮食品や花卉(かき)類の輸出入に特化した商社のわが社にとって、こうした国際情勢が商機を左右します。刻一刻と状況が変わる中、知恵を絞って新しいビジネスの「種」をまき、優れた商品を見いだして調達するのが貿易ビジネスの醍醐味(だいごみ)と言えます。
商談のため、昨年も南米や欧州をはじめ多くの国々を訪ねました。行く先々で国際社会の分断や物価高騰、気候変動などが経済や人々の暮らしに影を落としていることを実感しました。歴史観も宗教観も違い、文化や暮らしの在り方も異なる海外の人々とビジネスを通して互いにコミュニケーションを深めていくことも私たち商社パーソンの使命です。小さな力かもしれませんが、「三方良し」(売り手良し、買い手良し、世間良し)の精神で、地道に交流を積み重ねていくことが世界の平和と安定につながると確信しています。

大垣守弘

バトンタッチは
始まっている

大垣守弘
大垣書店グループ 代表取締役

「地域に必要とされる書店であり続けよう」これが弊社の社是です。「必要とされる」とは具体的な項目ではなく、時代や店舗の立地によってその内容も変わってきます。
私たちはその見えざる要望に応えようと日々努力を続けています。最近では「KYOTOZINE」という京都のタウン誌を作り始めました。ネットに最新の情報があふれる時代だからこそ、なかなか目にすることのない京都での取り組みや思想を広く知ってもらうこと、将来的にそれが京都の財産となり次世代の学びの糧になること、高品質な内容やデザインにより本そのものの楽しみを増やすことなどが狙いです。最終的にはそうしたメディアとリアル書店を通じて、京都での暮らしが豊かで元気になるのが理想です。
移り変わりの激しい時代だからこそ、私たちはリアルな場所・物を通じて流行やマーケティングだけでは捉えきれない本質的な価値を見つけ出し、育てることで次世代がより活躍できる環境を整えていかなければなりません。書店も消費的に本を売る以上のことをしなければならない時代です。それを楽しみながら新しい書店を作っていきたいと思います。

市野周平

世界で一番
ワクワクするビール会社へ

市野周平
アサヒビール株式会社 近畿圏京滋支社 支社長

アサヒビールは、今年も既存市場の活性化と現在着手しつつある新価値の創造で100年後も愛され続ける「未来のビール会社」になるために、挑戦してまいります。五つの重点領域として①ビール強化②High-Value(高付加価値商材)③スマートドリンキング④業務用市場⑤ニッカウヰスキーは変わらず、特にビール強化を推進します。
原点に立ち返り、お客さまが一番「うまい」と思うビールとは何かということを徹底的に調査し「冷え」に着目し、「スーパードライ」の「辛口」のうまさをさらに引き立てることに注力します。2026年の酒税改正の機会や、27年の発売40周年に向けてキンキンに冷えた「スーパードライ」のおいしさを伝えることに取り組みます。
また4月15日には7年ぶりのスタンダードビールの新商品として、苦みにこだわった「アサヒ ザ・ビタリスト」を発売し、ビール好きのお客さまに新たな選択肢をご提案します。スマートドリンキングの分野においても、ノンアルコール商品も続々と投入し、飲める人も飲めない人も楽しめる社会の実現を目指してまいります。「もっともっと、面白くなる。アサヒビール」にぜひご期待ください。

篠田 潤

景観に美を添える、
人生の器

篠田 潤
アーキテクチャーリンクライフ(ALL)株式会社 代表取締役

Architecture(建築) Link(つなぐ) Life(人生・生活・命)。「お客さまの人生や命と建築をつなぐことが私たちの使命」という思いを込めた社名です。住宅は家族の暮らしを育む人生の器であり、街並みの一部として存在しています。住むほどに愛着が増し、暮らしが豊かに熟成されますように。景観に美しさを添え、京都の街並みになじみますように。そんな願いが私たちの家づくりの軸になっています。
完全に自由なスタイルで設計し、自社で現場の管理を行い、保証やアフターメンテナンスまで責任を持つのがALLの家づくりです。本物の素材にこだわり、伝統的な美に現代的な感性を加え、職人の技を駆使して、こだわりの詰まった住宅を建築しています。営業スタッフはおらず、広告宣伝もあまり行わない、少数精鋭の会社です。だからこそ無駄な経費を削り、建物にコストを投入して、適正価格で上質な住宅を提供できると自負しています。
これまで150組を超えるお客さま、そしてスタッフや職人たちと共に物語を紡いできました。それら全てが私たちの誇りであり財産です。これからも研さんを重ね、新たな物語を生み出していきたいと思います。

田中恆清

堅忍不抜の心で、
危機を乗り越える

田中恆清
石清水八幡宮 宮司

昨年は世界各地で数多の自然災害、終わらない戦争や紛争、未曽有の凶悪事件が多発し、われわれはその度に心を痛めてきました。国内だけでも、豪雨災害や地震が頻発し、8月には初めて発表された南海トラフ地震臨時情報によって、新幹線をはじめとする基幹交通網にも影響を与え、改めて大地震災害に対する恐怖を、国民全員が身をもって体感し、防災意識がより高まった1年でもありました。
そしてわれわれが乗り越えなければならない危機は自然災害以外にも国内外で山積しております。経済面では止まらない物価高が家計を圧迫し、また外交面では他国からの領海、領空侵犯への対応など、数え上げればきりがなく、まさに本年も内憂外患の1年となるやも知れません。
古来日本人はあらゆる災害や国難から、何度打ちのめされても忍耐強く、粘り強く耐え抜き、皆で力を合わせ、歴史的な復興を何度も遂げてきた民族であります。本年は戦後80年の節目の年であります。今こそ日本人に受け継がれてきた何事にも諦めない堅忍不抜の精神を思い起こして、この時代を共に乗り越え、輝かしい未来に向けて活動していく秋でありましょう。