文化がつくる未来
- 2025元日 文化人メッセージ -
スポーツが創る未来
辻 淺夫
サッカー指導者
古来、京都は文化の中心地であり、スポーツ文化においても重要な役割を果たしてきました。
京都におけるスポーツの歴史的背景を振り返ると、蹴鞠や弓道などの伝統的な身体活動が挙げられます。特に平安時代、宮中で行われていた蹴鞠(けまり)は、技術や礼儀作法を磨く場としても発展しました。そこには京都特有の精神性や美意識が息づいています。
一方、現代の京都では、スポーツが地域活性化の一翼を担っています。例えば、 J1京都サンガFCは地域密着型のプロサッカークラブとして、子どもたちへのサッカー教室や地元住民との交流を通じてスポーツの魅力を広めています。このような活動は、スポーツが地域社会にどのように貢献できるかを示す好例です。
また、京都はスポーツ観光の分野でも注目されています。京都マラソンは国内外から多くのランナーを迎え、名所旧跡を巡るコースが人気を集めています。ランナーたちは走りながら京都の美しい風景を楽しむだけでなく、地域経済にも寄与しています。スポーツ観光は、京都が持つ多様な文化を融合し、新たな可能性を広げています。
では、スポーツが未来社会にどのように貢献できるのでしょうか。
まずは健康で活気ある社会の実現です。そのためには誰もが参加しやすい環境づくりを進めることが欠かせません。
そして環境保護の促進です。京都マラソンでもうたわれているように、スポーツイベントが環境負荷を抑える取り組みを進めることで、地域住民や観光客に持続可能な社会の重要性を訴えかけることができます。
最後に、私が未来に伝えていきたいと思うのは「スポーツを通して世界の平和を」です。スポーツをすることで人々が仲良くなり、住みよい社会になればと考えています。今日の混沌とした世の中だからこそ、そういう力がスポーツにあると信じています。個人として向き合うスポーツには健康の増進、前向きな思考や精神の充実といった良さもありますが、グループ・団体として向き合う場合、みんなで手を取り合ってやっていくことで共同体精神が生まれ、ひいてはそれが世界平和へと導いてくれるのではないでしょうか。
京都におけるさまざまなスポーツへの取り組みを通じて、地域活性化や環境問題解決だけでなく、人々の相互理解を深め、より良い未来に貢献することをスポーツには期待します。
◉つじ・あさお
1945年京都市生まれ。京都外国語大名誉教授。日吉ケ丘高、京都教育大、京都紫光クラブで選手として活躍。京都外大で長く教壇に立ちサッカー部を率いた。90年、98年に英国で指導者研修経験も。府サッカー協会会長を2011年から3期6年務め、競技人口拡大や育成、京都サンガFCの本拠地サンガスタジアム京セラの建設にも尽力。24年、瑞宝中綬章受章。