思い描く、未来
- 2026元日 文化人メッセージ -

世界長寿サミットでみつけた秘密
内藤裕二
生体免疫栄養学者
京丹後市は、日本でも有数の長寿地域として知られています。私たちはこの地で、住民の皆さんとともに「なぜこのまちはこんなにも元気な高齢者が多いのか」を解き明かす研究を続けてきました。2025年6月には世界の研究者が同市に集結し、「世界長寿サミット」を初開催、4日間の議論を踏まえてサミット宣言を発表し、四つの長寿の秘密を明らかにしました。
最初に見えてきたことは、人と人とのつながり│すなわち「KIZUNA(きずな)」が、健康と幸福に深く関わっているという事実です。実際に、同市で実施した疫学調査では、孤立している高齢者よりも、家族や地域とのつながりを持ち、誰かと一緒に食事をしている人のほうが、身体機能も、認知機能も、そして主観的幸福度も高いということが示されています。多くの家庭が畑を持ち、収穫した野菜類をお隣さんと分け合うことがあります。KIZUNAは、単なる人間関係ではなく「互いを大切に思い合う関係性」や、「必要とされる実感」といった、心理的なつながりも含まれます。京丹後では、地域住民が集まって食事をする「みんなで食べる会」や「食堂活動」が盛んです。こうした活動がKIZUNAを強化し、結果的に身体の健康を守っているのです。
二つ目の秘密は、植物性たんぱく質、食物繊維を中心にした食事です。たんぱく質も「質」を考える時代になっています。海外で実施された30年間の長期試験でも、動物性たんぱく質ではなく、魚由来たんぱく質や大豆など植物性たんぱく質が健康な老化(ヘルシーエイジング)に相関することも明らかになっています。日本人に特に欠乏している栄養素は食物繊維です。世界保健機関(WHO)では1日25グラムの摂取が推奨されていますが、日本人は平均で5グラム不足しています。
三つ目の秘密は、運動や身体活動度を上げることです。運動には、筋肉量の維持だけでなく、血糖や血圧の安定、うつや認知症の予防、さらには腸内環境の改善、また大腸がんや乳がん予防にも有効といった、多方面にわたる効果があります。健康増進のために推奨されることの多いウオーキングですが、その効果を期待するには、より速く歩くことも必要のようです。
四つ目の秘密は、「IKIGAI(生きがい、人生の目的)」です。IKIGAIのない人では死亡率が上がり、心血管病による死亡、機能障害の発症リスク、フレイルリスクなどが明らかに高くなります。この影響は、女性よりも男性で強く、また社会経済的地位の高い個人でより強く認められます。生きがいを持つことが、健康と幸福の向上を促進する可能性があるのです。
◉ないとう・ゆうじ
1983年京都府立医科大卒。2001年米ルイジアナ州立大医学部分子細胞生理学教室客員教授として渡米。帰国後は、08年京都府立医科大大学院医学研究科消化器内科学准教授、15年同附属病院内視鏡・超音波診療部部長、21年から同大学教授。農林水産省農林水産技術会議委員、2025大阪・関西万博大阪パビリオンアドバイザーなどを兼務。


