文化がつくる未来
- 2025元日 文化人メッセージ -
100歳までの人生を想像する
関田静香
経済学者
皆さん年始は何をして過ごしていますか?私が研究しているテーマは「金融リテラシー」なのですが、そんな研究をしている私自身も子どもができるまで「家計管理」や「将来設計」をそれほど真剣にはしていませんでした。
家計管理というと思い出すのは家計簿だと思いますが、家計簿が付けられるようになったのは江戸時代からだそうです。その頃、将来に向けての資金計画も立てられていたのかというと明確な資料があるわけではないので分かりません。ですが、江戸時代の人々の寿命は30歳くらいだそうですから、計画を立てていた人はそれほど多くなかったのではないかと思います。
しかし今は人生100年時代。多くの人々が計画を立てているに違いないと思い、あるアンケート調査の結果を見てみると、老後のために資金計画を立てている人は全体の約36%に過ぎないことが分かりました。私も計画を立てていなかったので、ライフイベント表やキャッシュフロー表、バランスシートなどを作成しようと意気込みました。しかし、収支の把握から資産運用の方法、保険などを一つ一つ丁寧に考えようとすると思った以上に大変で…しかも計画を立てようと思ったタイミングが、未就学児が家に二人いるような時で、子どもが泣いたりわめいたりする中で落ち着いて情報収集も冷静な判断もできそうにありませんでした。しかし既存の研究では、計画を立てている人ほど資産保有額が高いという結果が得られており、ある程度の見通しを立てておくことは重要なのではないかと思います。
そこで、ファイナンシャル・プランナー(FP)に助けてもらうことにしました。寿命100歳と仮定して、FPと一緒に考えながら、収入、支出、資産、負債のシミュレーションをしました。100歳までの人生を想像することになりますので、お金をどのように運用し使うかはもちろん、これから起きるかもしれない、家族や周りの方々とのさまざまな出来事について、自分がどのように思い行動するかを考える良いきっかけになりました。
そうして立てた計画の進捗状況を、年末年始に毎年チェックしています。それにしても、毎年100歳以上の方々が増えている現状を考えると、寿命120歳と仮定した方が良かったのかもしれないなぁと思うのですが、それを考えるのは子どもたちがもう少し手を離れてから、もうちょっと先にしたいと思います。
【参考】J:FLEC(ジェイ・フレック)と検索するとお金に関するさまざまな情報を入手できて便利です。
◉せきた・しずか
1978年鹿児島県生まれ。2001年長崎大経済学部卒。07年大阪大大学院経済学研究科政策・ビジネス専攻博士後期課程修了。博士(応用経済学)。日本学術振興会特別研究員、大阪大社会経済研究所特任研究員を経て、現在、京都産業大経済学部准教授。金融リテラシー、金融教育について実証研究を行っている。