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経済面コラム

日々の暮らしに「善」を追求し、自らの意志で生きる時代へ

- 2024元日 文化人メッセージ -

佐藤晋太郎

地方こそ重視すべき
若者世代の価値観

佐藤晋太郎
京丹波町政策アドバイザー

霞が関では、地域に目を向けた経済産業政策は多くない。むしろ都市部に経済を集約していく方が全体効率的であり、地域活性化は情緒的で部分最適に過ぎないという印象を持たれやすい。私自身、そうした感覚はあったが、クールジャパン政策に携わったことで考えを大きく変えた。
各地の自然環境や歴史文化といった地域性には、他がまねできない「唯一無二の本物」としての価値がある。競合と身を削り合う低価格競争ではなく、高付加価値を追求できる希少資源だ。そこに地域という部分最適と国という全体最適を両立できる道を見いだしてから、地域経済学を学び、希望して地域系の政策に携わってきた。現在、知見のインプット側からアウトプット側になるべく奮闘中だ。
状況は厳しい。戦後1割台だった国内の東京圏人口比率は今や3割に上り、毎年10万人規模の転入超過だ。人口移動はゼロサム(一方の利益と他方の損失が等しい)だという意見もあるが、教育、福祉、インフラなどの維持には一定の人口が必要で、下回れば地域は保てない。私には、生まれ故郷の陸前高田が津波に流された苦い記憶があるが、過疎化はそれよりもはるかにゆっくりと、しかし圧倒的に大きなスケールで、地域の価値を消し去っていく。
光明もある。転入者の多さで見落とされがちだが、実は東京圏からの転出者も毎年40万人規模で存在する。その7割は30代以下であり、地方ながら転入超過が続く市町村は、そうした若者世代の流入に支えられている。また、リモートワークや兼業・副業などにより人々の活動範囲が広がっており、その実践割合も若者世代が最も高い。定住人口も関係人口も、若者世代がその主役であり、SDGs(持続可能な開発目標)に代表される彼らの価値観を、地方こそ重視しなければならない。
京丹波町では昨年、官民の若手で議論を行い、自然との共生やウェルビーイング(心身の健康や幸福)、オープンマインドといった地域の特長を「GREEN」に重ね「GO! GREEN GREEN」という掛け声の下で町内外にアクションを呼び掛けることを決めた。いきおい、若者を中心とした推進組織の設立、季節に応じたマルシェの開催、ファンクラブやブランド認証の設定、地域活動参加へのポイント付与など、新しい取り組みが官民から次々と生まれている。町内外から参画や応援の声も寄せられはじめ、山間の町が、今活気とやる気に満ちている。大事なのはこれからだ。進む中で壁や失敗も多くあると思う。ただ、若いチームにとっては、大した問題ではない。

◉さとう・しんたろう
1990年岩手県生まれ鹿児島県育ち。2013年に経済産業省へ入省。再生可能エネルギー導入拡大、クールジャパン分野での海外展開支援などを経験した後、米国コーネル大地域経済学修士修了。コロナ禍の人材地方移転や中小企業の事業継続支援に従事し、現在は石川県庁へ出向中。無報酬兼業にて、京丹波町の政策アドバイザーを務める。