思い描く、未来
- 2026元日 文化人メッセージ -

好きなものを突き詰める経験が
クリエイターの力になる
大溝範子
ゲーム開発者
長年、ゲーム制作に携わってきた経験を元に、大学でゲーム制作を教えています。留学生も多いキャンパスには、国籍や言語の壁を感じないほど自由で国際色豊かな空気が流れています。ゲームという共通言語が人と人をつなぐ大きな力になっているのを、日々実感しています。
この地に世界中から学生が集まるのには理由があります。京都には大手ゲーム企業があり、日本のゲーム文化に憧れて来日する若者も多くいます。ゲームやアニメを入口に、日本文化や歴史そのものに興味を抱く海外の開発者も増え、日本を舞台にした作品も世界中で人気を集めています。
京都精華大デザイン学科を卒業後、東京で会社員やフリーのクリエイターとしてゲーム制作に当たってきました。ゲームを作ることはすごく楽しい。しかし、過度な効率化や、すぐに結果を求められることで息苦しさを感じることもありました。
京都の母校で学生に教えるようになり、まず驚いたのは東京と京都の都市の時間の流れの違いでした。京都には、人の心を満たすゆったりした時の流れがあります。じっくり物事に取り組むにはいい場所です。京都には個性を容認してくれる懐の深さもある。街はコンパクトで、気軽に人が集まりやすく、自然と面白いことが生まれる土壌もある。この街の包容力は新しい作品を生み出す力を与えてくれると感じています。
ゲーム業界は、今後さらに大きな変化の時代を迎えます。AI(人工知能)がユーザーの好みに合わせてコンテンツを自動生成する未来はそう遠くない。 収益モデルも変化し、産業としての規模はさらに拡大していくはずです。一方で、個人の趣味や手作りの魅力が詰まった小さなゲームを愛する人々も確実に増えていると感じています。
「ゲームは遊ぶより、作る方がずっと面白い」。私の授業では、まずこの話から始めます。授業では学生に驚かされることも多い。ゲームに対する熱量はすごいし、特に日本人は発想力や遊び心が豊かで人の気持ちを受け取る力も強い。そういった部分がもっと生かされるようになるといいと思います。
学生には、社会に出る前に一度、自分の「好き」だけを頼りに全力で作品を作り上げる経験をしてほしいと思って接しています。好きなものを突き詰める力は、将来どんな現場でも必ず生きてくると思うから。たとえ失敗しても、自ら選び、考え抜いて完成させる経験は、クリエイターとしての力になると信じています。
◉おおみぞ・のりこ
1964年京都市生まれ。京都精華大デジタルクリエイションコース教授。京都精華大美術学部デザイン学科卒業後ゲームメーカー「セガ」に入社、アーケードゲームを多数開発。その後、家庭用ゲーム「ブリンクス」「ブルードラゴン」「ラストストーリー」などの制作や、スマホのゲームアプリ開発でデザイン全般を担当。大学ではゲーム制作の授業とキャリア指導に力を入れる。


