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経済面コラム

思い描く、未来

- 2026元日 文化人メッセージ -

有森裕子

スポーツにある無限の可能性
マラソンにメッセージを込めて

有森裕子
元マラソン選手

2026年は6月に陸上日本選手権、秋には愛知でアジア大会が開催されます。25年、東京で世界選手権が開かれましたが、その感動や記録が競技を見る基準になります。今年は、観客の目がいい意味で厳しくなります。
その観客に対し、選手は強さやすごさを見せなければなりません。それぞれの選手が夢と目標を描き、どれだけ頑張れるかが大切です。選手は大変だと思いますが、その大変ささえもを楽しんでもらいたいと考えています。
昨年6月、日本陸連の会長に就任しました。世界陸連とアジア陸連の委員も務めており、元アスリートが世界・アジア・日本の三つの組織の委員を兼任するのは、私が初めてです。
私は引退前から「社会に対してスポーツは何ができるのか」ということを大事にして活動していました。スポーツで社会の課題に関わるNPO法人も立ち上げましたし、国連人口基金の親善大使やスペシャルオリンピックスの理事長も務めました。それらを通じて「スポーツには社会を変えられる要素がある」と強く実感しています。日本陸連の会長に立候補したのは、その感覚を競技団体に取り入れたいと思ったからです。
私はマラソン選手だったので、自然とそういう考えを持つようになりました。マラソンは社会と交わることができる競技です。トップの大会でない限り、プロもアマも子どもも大人も障害がある人も、同じスタートラインに並び、同じゴールを目指します。参加者全員が同じ思いを共有できるので、マラソンはメッセージを伝える場として最適なのです。例えばチャリティーマラソン。さまざまなメッセージを持ったマラソンが各地で開催されています。
京都では毎年1月に全国都道府県対抗女子駅伝が開かれます。私は3回補欠を経験した後、大学生でやっと初出場しました。オリンピックでメダリストになった後、第20回大会で補欠時代のエピソードを話す機会があり、「京都での悔しさが、諦めないことの大切さを教えてくれた」という話をしました。すると、目の前の女の子が大泣きしたんです。
女の子は補欠の選手でした。補欠が嫌で競技をやめようと思っていましたが、私の話を聞いて頑張ろうと思い直してくれました。私自身もこれからも諦めずに頑張ろう、と改めて思うことができました。人間はどんなことでも力に変えられます。自分の思い次第なので、可能性を信じて乗り越えていってほしいです。

◉ありもり・ゆうこ
1966年岡山県生まれ。岡山・就実高、日本体育大出。女子マラソンで92年バルセロナ五輪は銀、96年アトランタ五輪は銅メダル獲得。陸上の日本女子初の五輪2大会連続メダリスト。2010年に国際オリンピック委員会(IOC)女性スポーツ賞。23年から世界陸連理事。25年に女性、五輪経験者として初めて日本陸連会長に就任。