未来との約束
- 2026元日 賛同企業代表者メッセージ -

「深山木」へのまなざし
安藤 徹
龍谷大学 学長
「源氏物語」紅葉賀巻に、光源氏が頭中将と青海波を舞う場面があります。源氏の舞は見る者全てを感涙させます。一方、頭中将は「花のかたはらの深山木」と評されます。物語の中で、彼は源氏のライバルたり得る唯一の人です。それでも、「花」のような源氏と立ち並ぶと、山奥に生える木に過ぎないというのです。花もなく見栄えのしない、しかも奥深い山に行かなければ気づかれることさえないのが、「深山木」です。
人々は、源氏の美麗さに目を奪われ、頭中将が目に入らなかったのです。見えているのに意識されず、あるいは見ないことで見えなくなったのです。いかにも残酷な頭中将の描き方です。しかし、このような形であれ、「深山木」の存在を見逃さずに語るのが、「源氏物語」なのです。
一人一人の尊厳が守られた光り輝く社会を実現する鍵の一つは、「不可視化」に抗することです。見えない/見ようとしない課題にまで届くまなざしをいかに育むか。私たちは、過去からも未来からも問われています。
龍谷大学
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