世界に誇る食文化
老舗の宝庫「京都」

佐竹力總
株式会社美濃吉 代表取締役会長

2021年8月、中国・中山大の中国家族企業研究センター・李新春所長が来洛。弊社をはじめ、月桂冠さん、福寿園さんなど数社を取材され、著書「日本百年老店」を中国語と日本語で同時出版されました。中国の経済学者が、日本の老舗やファミリー企業の経営に注目する。私自身にも意外なことで、時代の流れを実感させられました。
京都には、「京名物百味会」（菓子・料理など64店で構成）という京の食文化を担う老舗の会があり、弊社も参画しています。この百味会加盟店の特徴は、一にファミリー企業であること。二に主力商品に独自のこだわりがあること。三にすみ分けの商道徳をわきまえていること。そして、いたずらに規模の拡大を目指さないことなどにあります。大手企業の基本的な価値観は「競争と勝利」。対して、私たち老舗・ファミリー企業は「協調と安定」を最優先します。また、大手企業の市場はグローバル。一方、私たちの経営基盤は地域にあり、地域に根付いた文化を支えることを使命としてまいりました。いまSDGs（持続可能な開発目標）が叫ばれていますが、素材を使い切る「もったいない精神」。自然の恵みに感謝する「いただきます」「ごちそうさま」という謙虚さ。この姿勢が地球に迫る食糧危機への歯止めとなります。四季を愛でる心、折々のおもてなし、豊かな食材と卓越した技のハーモニー。日本の食文化こそ世界に誇る、SDGsのお手本ではないでしょうか。