賛同企業代表者 文化人 特集・未来へ受け継ぐ
経済面コラム

文化がつくる未来

- 2025元日 賛同企業代表者メッセージ -

伊藤真宏

ありがとう

伊藤真宏
佛教大学 学長

今年もお正月を迎えられることに感謝しながら、改めて「ありがとう」という言葉について考えてみた。その語源は「有り難し」であり、「そのように有ることが難しいこと」、つまり、目の前の現実を極めてまれなことと理解することにある。どれだけ難しいかの例えが経典に説かれている。「仏説譬喩(ひゆ)経」に「盲亀浮木(もうきふぼく)」という説話があり、目の不自由な亀が、100年に一度水面に浮かび上がる時、漂う浮木の穴に首が入ってしまうのと同じくらいまれなこととされる。浄土宗を開かれた法然上人も「登山状」の中でこの例えを使用され、「人として生まれる縁は有り難い、ありえないようなことが起きるのである」と示されている。
私たちが人として生を受けることは極めてまれなことであり、その上で成長して現在に至るには、無数の「おかげ」によって育まれていることに思いを寄せる必要がある。そのような奇跡的なつながりの上に命の営みが成り立っていることを考えるとき、自然と「ありがとう」の言葉を口にすることができる。法然上人がお念仏の教えを発信されてから850年が経過した。その歴史の上に現在の佛教大学もあり、この奇跡とも言える有り難さを改めてかみしめている。仏教精神を建学の理念とする本学は、いま自分自身がここにあることに感謝し、心から「ありがとう」と言える、そんな学生を送り出せる大学であり続けたい。

佛教大学

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