賛同企業代表者 文化人 特集・未来へ受け継ぐ
経済面コラム

未来との約束

- 2026元日 賛同企業代表者メッセージ -

藤本淨彦

深い河は静かに流れる
―文化力ということ

藤本淨彦
浄土宗大本山 金戒光明寺 第76世法主

比叡の山々を背景としながら、吉田山から真如堂の三重塔を右手に見て、さらに奥へと抜け紫雲山へと続く小道には、会津藩士を弔う墓地から有名無名の菩提を丁寧に供養するさまざまな墓碑群があり、その頂に文殊菩薩を安置する三重塔が悠久の時とともに遠く京の家並みを静かに見守っている。足元へと目を移すと重なる石段の下に金戒光明寺の伽藍がどっしりと迎えてくれる安堵感が漂う。―その時に、すなわち、長い歴史によって醸成された一つ一つの積み重ねが自然に注がれるゆえに、何かしら心が育てられている自らの思いに包まれる時に、私は京都の文化力を得る。文化は力をはらんでいる。それは、大いなる何かを自然の道理に任せ切る自己に気づく営みを与える力、自らの心の置き所へ導く力である。60年前に大学院生であった頃、指導教授が「これからはいろいろな領域で経済的価値観が全てを左右する社会になるだろうことを危惧している」と折々に語っていたことを、筆者は思い出す。現今の世情は、まさにそのような現象をさらけ出しているようだ。
歴史とそこで産み出された文化、言うところの「長い歴史によって醸成された一つ一つの積み重ねが自然に注がれる自己」を忘れたならば、つまり、文化力を失うと、浅く慌ただしく流れ目先の損得に翻弄され漂う現実にしか目が注がれない生き方が跋扈する人間社会に陥りそうだ。

浄土宗大本山 金戒光明寺

京都市左京区黒谷町121
Tel.075-771-2204 
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