文化がつくる未来
- 2025元日 賛同企業代表者メッセージ -
オーバーツーリズムに
思うこと
澤田昌人
京都精華大学 学長
オーバーツーリズムが問題になっています。京都市内を走るバスや地下鉄の乗り降りなど、生活が徐々に不便になっている感じがします。それでは、外国人観光客を減らすことはこの問題の解決になるのでしょうか。私はそうは思いません。
アフリカの辺境地帯を調査地としていた私は、四輪駆動車を何日も運転して現地に行くのですが、その途中で村々を通過します。めったに自動車が通らない地域では、沿道に子どもたちがたくさん出てきて「オララー」(現地の言葉で「やっほー」という意味)と唱和し手を振ってくれます。有名人になったような気分になり、子どもたちに喜んでもらって誇らしい思いがしたのです。
ある時、子どもたちと親交を深めたいと思い、車を止めて外に出ました。するとさっきまで手を振っていた子どもたちがくもの子を散らすように逃げていくのです。取り残されて恐怖のあまり泣きじゃくっているよちよち歩きの子もいます。お姉さんでしょうか、6歳くらいの子が必死の形相でその子のところに駆け戻り脇に抱えて走り去りました。私は寂しく車に戻りました。
異邦人を時折遠くから見ていると歓迎の心を持てますが、眼前に現れると嫌悪や恐怖を感じることはよくある現象なのだと思います。お客さんに寂しい思いをさせないためにも、私たちが嫌悪にさいなまれないためにも、知恵を絞る必要があると思うのです。
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