賛同企業代表者 文化人 特集・未来へ受け継ぐ
経済面コラム

文化がつくる未来

- 2025元日 賛同企業代表者メッセージ -

吉川左紀子

伝統行事と大学教育

吉川左紀子
京都芸術大学 学長

東山の粟田神社で10月に行われる「夜渡り神事」の大燈呂を本学の学生たちが制作するようになって17年になる。毎年、希望した数十人の学生で制作チームが結成され、粟田地域の歴史やお祭りの由来などを学び、燈呂のデザイン案を考え、地元の方たちによる委員会での決定を経て制作に取りかかる。高さ4メートル近い大燈呂の制作には細かい技術が必要なので、完成までにかなりの時間がかかり、新入生にとっては難易度の高いプロジェクトである。時には創意工夫が試されるような苦労も経験するが、このプロジェクトには毎年多くの学生が手を挙げ、2年次、3年次と続けて参加する学生も多い。秋の巡行にはこれまで燈呂制作に参加した卒業生たちが各地から粟田に集まり、山車の引き手として加わるのも恒例になっている。
京都の伝統行事に当事者として参加し、継承の一翼を担うことは学生にとってかけがえのない経験である。京都は若い人の人口比が高い都市なので、大学教育の中にこうしたプロジェクトを積極的に組み込むことは、古くから続く伝統行事を未来につなぐことにも貢献するだろう。見上げるような燈呂が電線に触れないように、軒先に当たらないようにと細心の注意で山車を引く学生たちとともに地元の商店街や住宅地を巡りながら、そんなことを考えた。

京都芸術大学

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