賛同企業代表者 文化人 特集・未来へ受け継ぐ
経済面コラム

文化がつくる未来

- 2025元日 賛同企業代表者メッセージ -

中野博美

サイン帳

中野博美
京都きづ川病院 理事長

東京・赤坂の衆議院議員宿舎の西隣辺りに「重箱」といううなぎ屋がある。1790年頃の創業らしい。店構えは、赤坂のど真ん中だというのに平屋の造りである。部屋は掘りごたつになっていて居心地が良い。どの部屋にも上品な床の間がしつらえてある。床には小さなついたてが置いてあって昭和20年代の小説家や画家のサインが記されている。私が分かる範囲でも、志賀直哉、谷崎潤一郎、武者小路実篤、安井曾太郎、梅原龍三郎と読める。他の部屋も見ると、どうも志賀直哉が彼らの中心的な存在だったようだ。常連客が志賀を中心に親睦を図っていたと考える。
京都のある表具師の方にこのついたての写真を見せた。「おお、そうそうたる方々がいらしていたのですね。ん、これは!」と言葉を詰まらせた。「京都では安井曾太郎と梅原龍三郎は大変に仲が悪く、向こうの門に相手が見えただけできびすを返すほどだったと聞いています。しかしこれを見ると同じ部屋で食事をしていたのでしょうか」。「じゃあ一度行きましょう」と彼と一緒に店へ行ってみた。もちろん食事をした後、お店の方にいろいろ見せてもらってから彼いわく「他の部屋も見ると、二人は何度も同席をしていたのですね!驚きです」。さて仲が悪かったのか、はたまた良きライバルだったのか、東京にて京都の歴史の機微を味わった。

京都きづ川病院

京都府城陽市平川西六反26-1
Tel.0774-54-1111 
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