賛同企業代表者 文化人 対談シリーズ
経済面コラム

新たな暮らしの実践へ

Practice of new life

- 2022元日 文化人メッセージ -

都倉俊一

古都京都そして関西の地から
日本の文化芸術を発信

都倉俊一
文化庁長官
作曲家・編曲家・プロデューサー

2021年4月に文化庁長官に就任し、まず取り組んだのはコロナ禍の中で文化芸術活動をいかに継続していくかということでした。一昨年からの新型コロナウイルスの感染拡大の中で、多くの方々が大変な苦労をされています。文化芸術活動をされている方々のご苦労も言葉に尽くせないものがあります。
こうした窮状に対して、文化庁では20年度と21年度の補正予算でこれまでにない大きな規模のコロナ対策の予算を確保し、アーティストの活動や地域の伝統文化の継承などを支えています。文化芸術を花に例えると、花は肥料だけでは枯れてしまう。やはり水と太陽が必要です。同様に、文化芸術には表現の場がなければなりません。このことにも、一日も早くという思いで努力をしてきました。
コロナ禍による文化芸術への影響は深刻ですが、こうした状況の中で新しい取り組みも生まれてきました。例えば公演のオンライン配信やウェブ上での観覧などです。文化庁でも21年8月に「バーチャル日本博」というオンライン上のプラットフォームを立ち上げました。この1年間でこうした手法もどんどん工夫され、浸透してきました。コロナ禍を契機として新たな可能性が広がり、文化芸術分野での一つの大きなツールになると思っています。
一方で、この間、文化芸術に対する思い、あるいは人間と人間が触れ合って温かみを感じるということのありがたさを多くの方々が感じたのではないかと思います。いずれこのパンデミック(世界的大流行)を克服した暁には、今までたまっていたエネルギーが一気に噴き出して、この文化芸術活動がさらに勢いを増して、花開くのではないかと期待しています。
文化庁は、23年春、京都において業務を開始します。京都をはじめ関西の皆さまが一体となって、機運を盛り上げていただいていることに感謝しています。伝統的な文化が蓄積した京都に文化庁が移転する意義は、千年にわたり日本文化の中心であった古都京都そして関西の地から日本の文化芸術を発信できることであると考えています。
私は文化庁長官に就任して以来、日本は、世界に冠たる文化立国にならないといけないと強く訴えています。京都・関西の地域の皆さんと連携して、全国、全世界に長い歴史と伝統を持つ日本の素晴らしい文化芸術を発信していきたいと考えています。皆さまの温かいご支援とご協力をお願いします。

◉とくら・しゅんいち
東京都生まれ。4歳からバイオリンを始め、小学校、高校を過ごしたドイツで音楽教育を受ける。学習院大在学中に作曲家としてデビュー。ピンクレディーや山口百恵らに楽曲を提供。「日本レコード大賞」「日本歌謡大賞」など主要な音楽賞を受賞。ヒット曲は1100曲を超え、レコード売上枚数は6千万枚以上。2018年文化功労者顕彰。21年4月第23代文化庁長官に就任。