賛同企業代表者 文化人 対談シリーズ
経済面コラム

経済面コラム
【未来との約束2022】

Promise for the future

戸島耕二

「増田理念」

戸島耕二
株式会社増田医科器械 代表取締役会長兼社長

当社の「心」である「増田理念」は、一、「個と全体の調和」と二、「人間共和の会社組織の構築」と三、「安心・安全の医療への貢献」である。「一」は社員個人の幸福と会社の発展が連動する企業を目指す。「二」は多様性を認め、相手の立場を尊重する、麗しい人間関係、ヒューマンネットワークに基づく会社組織を構築する。「三」は医療従事者は安心・安全な医療を担う、共同体・同志である。
増田理念を具現化するためにわれわれは三つのことに取り組んでいる。一つ目は、500人を超える全社員のうち約1割を占める非正規社員の正社員化である。2019年から開始し半数が正社員になった。二つ目は、60歳で定年を迎えたシニアの活性化だ。年齢だけで処遇を決める制度を廃止した。当社のシニアは生き生きしている。三つ目は、コロナ禍で品薄になった医療従事者の防護服やマスクや他の医療器の確保だ。医療従事者と一体になってコロナ禍を乗り越えたいとの思いに駆り立てられた。数千万円規模の寄付もしたが、品薄の医療機器を必死で供給し続けた。思いがけず多くの感謝の言葉を頂いた。安心・安全の医療に一層貢献したい。

佐々木喜一

世界に「波風を興す」存在として

佐々木喜一
成基コミュニティグループ 代表 兼 CEO

今、日本は少子高齢化や新しい産業への対応ができず国際競争力が衰退し、1人当たり名目GDPが27位(2021年度)になるなど、世界での地位が低下しています。また最近の世界情勢や経済の悪化などの問題を前に、将来への不安が広がる不安定な社会の中で、今こそ日本人一人一人の「志」が必要です。世のため、人のため、未来のための礎となる「志」を持つことが、これからの日本の「背骨」となり、日本を、世界を支えていくことになるはずです。
私たちは創業以来60年間、一貫して「志共育」を実践してきました。その集大成として、子どもたちの「志宣言シート」を3万5千枚集め、葛飾北斎の「富嶽三十六景」をモザイクアートで作るというギネス世界記録に挑戦しています。子どもたちの志で世界を変革する「波風=ビッグウェーブ」を興(おこ)す。それが世界を変え平和をもたらす力となる。そんなメッセージを込めています。
戦後、奇跡の復活を遂げた日本。今こそ、その底力を発揮することができる「人財」の輩出が必要です。このことを私たちの使命と考え、これからも邁進(まいしん)してまいります。ご期待ください。

神居文彰

なぜ鳳凰は向かい合うのか

神居文彰
平等院 住職

ずっと話したいと思っていた。
一対の鳳凰(ほうおう)を口辺に置く「鳳柱斝(ほうちゅうか)」には2羽ともこちら側、外を向くものがある。古代饗宴(きょうえん)で使用された酒器である。一方、屋根の上では口で棟をかまないと安定しない鯱(しゃち)と違い、足を使って立つことのできる神獣は鳳凰を含め頂上から外を向くものが多く存在する。近代でさえ第3期歌舞伎座の鳳凰は外向きであった。
1884(明治17)年『大日本美術新報』10号には、鳳凰堂調査の結果、現在はさびで動かないが台座から四方に自由に旋回する装置であったと記され、1911(明治44)年発表の写真では鳳凰堂屋根に対して直角東向きに立つ姿が写っている。
常識を外す視点は初恋のように想定外で意地悪。
それでも向かい合っていると安心する。そもそも顔を合わせないと対話に信ぴょう性がない。反目であっても安らぎであっても向かい合えるのは歓(よろこ)びに違いない。視線を外す時だって遊び心。一対で初めて鳳凰となる姿に、生命の本源を知る。
向き合って、フィルターを介さない会話が、イケズにドキドキと私たちを生長(せいちょう)させていく。

佐竹力總

日本食から和食へ、そして京料理へ

佐竹力總
株式会社美濃吉 代表取締役会長

今、海外では日本食ブーム。海外にある日本食レストランは15.9万店(2021年9月、外務省調べ)となり、この8年間で実に2.8倍に増加しました。
しかし、海外に旅行で訪れると、これが日本食かと失望された方も多いと思います。海外での日本食とは、懐石料理やすしからカレー、ハンバーグ、ラーメン、ギョーザまで幅広く捉えられており、経営者の95%が現地人という現実があるためです。
13年に「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されて以来、「和食=WASHOKU」、「一汁三菜(米飯、味噌汁、お新香、主菜、副菜)」が浸透し、そして先般、「京料理」を国の登録無形文化財に登録するよう答申されました。今回、京料理は「料理」そのものだけではなく、深い趣をたたえる「室礼」、おもてなしの心による「接遇」の三位一体によって文化的価値があると位置づけられました。京料理店(料亭)は日本文化の凝縮空間、「食と伝統のテーマパーク」と言えるでしょう。登録が実現すると、京料理の継承活動などに文化庁から補助金が交付される見込みで、今後、京料理業界の継承・発展に大きく期待が持てます。

入澤 崇

「心の余白」

入澤 崇
龍谷大学 学長

映画も録画された授業も、倍速で見る学生が増えているとの声が聞こえてきます。手っ取り早く“スジ”を知り、最速で内容を把握したい。その気持ちは分かります。でも、時間の効率化は失うものも大きいということを知っておくべきです。
失うもの、その最たるものは「心の余白」でしょう。余白は人の考え、移ろいゆく景色、風の匂いなどを受け入れます。余白が少なくなってくると「自分勝手」が膨らみます。短絡的な思考や行動につながる危険性が大いにあります。早く結果を手にしたい。その思いはなかなか取り外しにくいものです。しかし、「もっと早く」は自分自身をせきたて、いつしか自分をカラカラ回るハムスターのような存在に仕立てていくやもしれません。
余白―優れた日本画のいくつかは実に余白をうまく使っていることに気付きます。主役の木々や小鳥を余白が際立たせているのです。そこではゆったりした時間が流れています。今、学生はバイトや趣味に忙しい。しかし、描き出したい未来の自分を成り立たせるのは余白であると知るならば、授業の向き合い方や映画や書籍の味わい方も変わってくるはずです。

園田修三

未来に向けてチャレンジ

園田修三
福田金属箔粉工業株式会社 代表取締役社長

福田金属箔粉工業は、1700年に創業し、主に仏壇、仏具、びょうぶや各種装飾に用いられる金銀の箔と粉を取り扱っていました。明治時代には工業化にかじを切り、現在は、自動車、エレクトロニクス、情報機器、塗料、医薬品、建材などの幅広い業界に対して、銅、ニッケル、アルミなど各種非鉄金属の箔と粉を提供しています。
弊社には1775年に2代目当主福田練石が著した家訓書が残されており、その精神は「身の程をわきまえた事業展開をすること」であるとしています。「身の程をわきまえる」というと、現代ではネガティブな印象を持たれることもありますが、弊社では、「常に変化する事業環境にあって、金属の箔と粉の専門家『メタルスタイリスト』として、自社の強みと弱みをよく理解すること」であると捉え、「福田金属だからこそ」という事業には、失敗を恐れず積極的にチャレンジを続けてきました。最近では、さらなる発展が期待される金属積層造形(金属3Dプリンター)用金属粉末「FAMシリーズ」の新製品(銅合金粉)を発表しました。弊社はこれからも、未来に向けてチャレンジを続けていきます。

河内 誠

お客さまと共に創る未来!

河内 誠
株式会社ロマンライフ 代表取締役社長

マールブランシュの会員カード「ジョイフルバトン」はおかげさまで20万人超のお客さまにご利用いただいております。ここまで歩んで来られましたのも、ひとえに皆さまのご支援の賜物と心より感謝申し上げます。
初夏には会員さま限定イベント「茶の菓ツアー」を開催しました。宇治でのお茶摘みや工場見学の後、山科「ロマンの森」にてお茶テイスティングやランチとスイーツを楽しんでいただきました。参加された方から「茶農家・茶問屋・パティシエそれぞれの立場からこだわりが聞けて良かった。また販売員の方がツアーに同行し、終始笑顔で話しかけてくれたので、とても楽しい時間を過ごせました」など、数々の喜びの声を頂戴し、これまで以上に社員の士気が上がりました。
これからもロマンライフのイベントにてジョイフルバトン会員さまと交流を深め、お客さまの真の潜在欲求をくみ取り実現することを喜びとし、よりおいしく楽しい未来をお客さまと共に創り上げていきたいと考えております。今後の弊社の企画が皆さまのさらなる笑顔につながりますよう、そして心躍る喜びを形にしてお届けできるよう、誠心誠意努めてまいります。

橋本和良

Enjoy Garden Life

橋本和良
株式会社 傳來工房 代表取締役社長

「自然から遠ざかれば遠ざかるほど、人間は病気に近づく」これは古代ギリシャの医者、ヒポクラテスの言葉です。
地球温暖化による異常気象に見舞われ、世界中で大災害が頻発しています。CO2(二酸化炭素)削減のため、住宅は省エネで済むよう高断熱・高気密の住宅が主流になりつつあります。その結果光熱費を抑えながら、冬暖かく夏涼しい住環境を実現することができました。しかし快適な家の中にばかりいると免疫力がどんどん落ちていきます。インターネットの普及が進み、在宅勤務をする人が増え、コロナ禍により、その傾向はさらに強まっています。
傳來工房は平安時代初期に創業し、鋳造技術を中核にして神社仏閣や近代建築に大型の意匠金物を納めてまいりました。長年培った技術を生かし、約20年前より住宅のガーデンエクステリア製品のメーカーとして「Dea’s Garden」ブランドを立ち上げました。快適な家の中にばかりいるのでなく、少しでも自然に近づき、庭に出て楽しく過ごせるような製品を提供しています。
これからも「健やかで和らぎのライフスタイルの提案」を通じて、人々の健康に寄与していく所存です。

野口義文

ノーベル賞の秋、立命館の決意!

野口義文
立命館大学 副学長

「近い将来、ノーベル賞受賞者を立命館大学から出したい」、私は真剣に考えています。
あまり知られてはいないかもしれませんが、さまざまな指標でみると、本学の研究力は随分向上してきました。1995年、日本の大学で初めて産学官連携の窓口であるリエゾンオフィスを開設、それが大きな転機となりました。
以来、研究推進や産学官連携活動に邁進(まいしん)してきた熱意と行動力だけが取りえの私が、今年の4月副学長に就任、まさに青天の霹靂(へきれき)とはこのことです。事務職員からは初めてです。大変な重責ですが、学園ビジョンである「次世代研究大学」をけん引していく覚悟です。次世代に誇る研究水準が高い大学を目指すのですから、思い切った手も打ちました。それが「立命館先進アカデミー」という構想です。立命館大学には、素晴らしい研究者がたくさんいるのですが、その中でもよりすぐりの研究者にさらなる高みを目指してもらうための制度です。
最後に、立命館大学は2025年には創立125周年を迎えます。次世代研究大学の実現のみならず、ノーベル賞受賞者を輩出し、喜びの秋を迎えることが、私の夢であり、立命館の決意です。

粂田佳幸

地域モビリティーの新たな価値創造

粂田佳幸
彌榮自動車株式会社 取締役社長

祇園祭の山鉾巡行、五山の送り火に続いて、錦秋を彩る時代祭の行列巡行が3年ぶりに実施されます。本来の意義に立ち戻り、伝統を継承していく取り組みが実践されています。SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みなどでもまさに実感することですが、京都の企業としてのコロナの後を見据えた活動は、今まで連綿と受け継がれてきたものの中に、新しい価値を見いだすことに他なりません。
当社は直近の「第20回京都・観光文化検定試験(京都検定)」の企業団体戦「G-1グランプリ」で第2位を受賞しました。高得点を獲得する社員たちの学びを極める力とその多様なキャリアにはいつも驚かされます。将来活躍が期待される新卒社員から京都ならではの仕事に手応えを感じる中途入社の若手・中堅社員、他業種で精勤され早期退職や定年をきっかけに入社し元気に活躍する社員まで、さまざまな社員が共に切磋琢磨することで、先人から受け継いできた仕事の中から新しい価値が創造されます。創業以来、社員一人一人が伸び伸びと良い仕事ができる社風を大切にしてきました。個性豊かな人材の獲得こそが、新たな伝統を創造するための鍵であると考えています。

玉置敏浩

観光と文化が融合した未来へ向けて

玉置敏浩
三井不動産株式会社 京都支店 支店長

2年半に及ぶコロナ禍で京都の観光産業は壊滅的な打撃を受けましたが、感染症はいずれ克服され、国内外からの多くの観光客が再び京都を訪れるでしょう。
しかし、コロナ前のように旅行者がスマホ片手にSNS(会員制交流サイト)の情報を頼りに名所旧跡を訪問するだけで、地域の生活文化や伝統産業などに触れる機会がなければ、旅行者の増加は観光公害になってしまいます。コロナ後の旅行者が京都の伝統文化を体験し、その価値が国内外に再認識されれば、需要減少や人口減少で存続の危機にある伝統産業が再興することや、京都の伝統行事にクラウドファンディングなどを通して世界から資金を集めることも期待できます。そして体験型旅行は、宿泊施設がその機会を提供すべきと考えます。
2020年11月に開業した「HOTEL THE MITSUI KYOTO」をはじめ、三井不動産グループのホテルではアフターコロナ時代の進化した観光産業を切り開くべく、国内外からの旅行者に京都ならではの伝統文化を体験していただけるよう、地域コミュニティーと連携し多様なアクティビティーを準備しています。観光と文化が融合したサステナブルな観光産業を目指して。

伊藤真宏

法然上人の生きざまに倣う

伊藤真宏
佛教大学 学長

佛教大学の設立母体である浄土宗を開かれた法然上人は、東山吉水の地から、ただ念仏を唱えることだけで救われるという教えを世に広められた。それは1175(承安5)年の春のこととされ、間もなく850年の節目を迎える。
法然上人は仏教のすべてを学び研究し尽くされた。伝記には「すべての経典を何度も読んだ」「あらゆる宗派の解説書で見ていないものはない」と書かれ、「学問は自分の力で最初に発見することが大切である。先生から伝え習うのは簡単なことだ」との言葉には、私たち学問に携わるものにとって忘れてはならない姿がある。仏教を学び尽くしてたどり着かれた新知見を社会に広め、人々を救済されたことで、法然上人は揺るぎない存在となられた。その教えが伝承され、850年維持されたことは稀有(けう)のことにほかならない。
解明できたことを次世代に受け渡しつつさらに研鑽(けんさん)を重ね、次代を担う人々のために学びの機会を提供することは大学の重要な役割である。850年前のように予測不能な時代だからこそ、法然上人の生きざまに倣い、佛教大学は教育の質の向上と新たな学びの場の提供に力を注ぎ、未来へ向かって歩んでいきたい。

山口 渉

より個性を発揮できる社会へ

山口 渉
富士フイルムビジネスイノベーションジャパン株式会社 京都支社 支社長

近年DX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、それぞれのライフスタイルに応じた多様な働き方ができる社会へ変貌を遂げつつあります。その中で、私たちは今まで以上にテクノロジーを使いこなし、人間らしい個性・創造性を発揮することを求められています。また、昨今の厳しい環境の下で企業が生き抜いていくには、時代に応じて柔軟に変化できる対応力が重要です。
私たち富士フイルムビジネスイノベーションジャパンは、「Bridge For Innovation」をスローガンとし、「ドキュメント」を中心としたコミュニケーションの向上を通して、オフィスだけでなくさまざまな場面に応じたお客さまの仕事のプロセスを改善し、事業成長につなげていきたいと思っています。
コミュニケーション手段は紙からデジタルへ移行しつつありますが、人と人がつながり、未来へ知恵を伝えるその役割は不変です。
京都には伝統や地域社会とのつながりを大切に守りながら、革新を続けてきた企業が数多くあります。
私たちはこれからもお客さまに学びながら、共に挑戦し続けたいと考えています。

福井正憲

二兎を追う「京の茶文化」

福井正憲
株式会社福寿園 代表取締役会長

「京の茶文化」は、物心一体の、地球上で他に例を見ない素晴らしいものです。京の茶文化に世界の人々は憧れています。われわれ茶に携わるものは、この茶文化を世界の人々に届ける使命があります。これからは京の茶文化の発展のために、リアルな世界と、バーチャルな世界で二兎を追う企業文化が必要です。
京の茶文化は、800年前に明恵上人が高山寺に茶の種を植えられたことに始まります。そして、京の王朝文化に支えられながら、450年前、千利休によって道の世界へと導かれたのです。
衣の和装、食の懐石、住の茶室、心と型の茶道、そして世界に冠たる宇治茶によって京の茶文化が形成されてきました。衣食住が精神文化の世界にまで昇華された、素晴らしいこの茶文化を、世界そして、次の世代に広めるために、リアルな茶の世界からバーチャルな茶の世界、また、バーチャルな茶の世界からリアルな茶の世界へと、世界の人々と共に二兎を追い、発展させたい、これこそ、京の茶企業の使命だと思います。
バーチャル世界で富士山の頂上での茶会を楽しみ、京の茶室でリアルな茶会を楽しんでほしいものです。

岸田 聡

サステナブルな社会の実現

岸田 聡
株式会社日立製作所 京都支店長

パンデミック(世界的大流行)が長期化する中で、生活スタイル・ワークスタイルの変容とともに、地政学的リスクや資源価格高騰、世界的なインフレの加速などが続いています。
この厳しい環境の中でも、日立は、強みである「IT×OT(運用・制御技術)×プロダクト」や「Lumada」の活用を通じて、脱炭素をはじめとしたさまざまな社会課題を解決する「社会イノベーション事業」を展開し、電力・交通や金融・公共、産業・都市分野などのお客さま、そして社会への貢献を続けてきました。
ニューノーマル(新常態)な世の中に向けて、誰もが快適で、活躍でき、安心して健やかに暮らせる社会、そして地球を守る社会と経済の発展の両立を実現しなければなりません。1910年の創業以来の企業理念「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」の下、私たちは「デジタル」「グリーン」「イノベーション」を通じて社会イノベーション事業と日立を成長させ、さらに社会と個人のよりよい未来の実現に貢献します。今後もデータとテクノロジーでサステナブル(持続可能)な社会を実現し、人々の幸せを支えていきます。

西原高三

真に豊かな社会の創造に貢献する

西原高三
野村證券株式会社 京都支店 支店長

「インフレの波」「デフレからの脱却」。日本を取り巻く環境は、約30年ぶりの大きな変革期を迎えています。日本が長期間のデフレを経験している間、海外ではインフレが当たり前の時代が続いていました。足元では、例えばラーメンは日本の平均855円に対し米国は2,558円、魚定食は日本の平均935円に対し米国は3,408円となっており、物価の内外格差が飛躍的に進行しています(2022年7月当社調査時点)。
しばらく忘れていた、あるいは、経験したことがない、物価上昇の時代において、どのように豊かな将来を築いていくのか。野村證券は、「金融資本市場を通じて、真に豊かな社会の創造に貢献する」という企業理念の下、一人一人の豊かな未来づくりに貢献してまいりたいと考えています。
今年は、祇園祭において待ち望んでいた山鉾巡行が3年ぶりに実施され、鷹(たか)山が196年ぶりに復活し、明るい話題となりました。「常に一歩前進することを心がけよ。停止は退歩を意味する」。創業者野村徳七翁が残した言葉があります。前に向かって進む京都文化のように、「お客さまに選ばれる金融サービスグループ」を目指し、前進してまいります。

瀬川大秀

永久に伝えん

瀬川大秀
総本山仁和寺 51世門跡

仁和寺の御詠歌に「朝もやに利他の御(み)心仰ぎつつ、仁和の祈り永久に伝えん」とあります。これは、朝もやの中で宇多法皇が人々の幸せを願われた「利他」の御心をわが心として未来へ伝えたいとの誓いを歌ったものです。仁和寺は、888(仁和4)年に第59代宇多天皇により開山、ご自身も譲位の後、落飾(出家)され法皇となり、さらには仁和寺内に念誦(ねんじゅ)堂である円堂を建立されます。建立の折の願文に「我(われ)は仏子になり善を修して、普(あまね)く利他を行ず」とあり、法皇の利他の御心をうかがうことができ、以来仁和寺では「自利利他」の教えが脈々と継承されています。
時は流れる水のごとくとどまることはなく、大自然の全てを含みながら、粛々と未来に流れています。私たちもその流れの中にありますが、移りゆく星霜(せいそう)の中で先人たちが残してきた大切な「心の分野」を守り伝える使命があります。新しい生活様式が示される中「自利利他」の本質について考えると、この言葉自体が、時代が変わろうとも変わらないもの、永久に伝える約束であることに改めて気付かされました。よって皆さまと共に人生を歩む「心の支え杖(つえ)」として後世に伝えてまいりたいと思います。

田中 明

京都のまちで「Rethink」

田中 明
日本たばこ産業株式会社 京都支社 支社長

JTグループはお客さまを中心として株主、従業員、社会の4者に対する責任を高い次元でバランスよく果たし、4者の満足度を高めていく「4Sモデル」の追求を経営理念として掲げており、これによる中長期の持続的な利益成長を実現していくことを目指しております。現在、産業や社会構造を含む環境の変化は激しさを増しており、事業活動を通じ、社会の発展に貢献していくことが、今後の成長にますます必要不可欠になると考えています。
京都支社では「Rethink」をキーワードに、「大学のまち」「学生のまち」である京都で未来を担う学生さんの社会課題への取り組みを応援するため、「The Future of KYOTO AWARD」の立ち上げに参画しました。本事業を通じ、これまでにない考え方でSDGs(持続可能な開発目標)や持続可能なまちづくり、京都の伝統文化の継承など、「地域×大学・学生×企業」による取り組みが京都のまちに広がり、新たな社会が創造されていくことを期待しております。
このような取り組みを地域のパートナーの皆さまと共に行っていくことで、JTが地域の一員として認められるよう、精進してまいりたいと思います。

田中信也

今日と未来をつなぐ

田中信也
日本生命保険相互会社 京都支社長

日本生命は、1889年に大阪で創業し、今年で133年目を迎えます。そして、創業の翌年である90年に全国で初めての支社をここ京都に開設し、現在に至ります。
「懸命に生きるすべての人々を全力で支える」
これが、創業時から変わらない日本生命の使命です。
この使命を果たすために、お客さまにずっと安心いただくこと、お客さまに「加入して心から良かった」と感じていただくことが大切だと考えています。
そのために基本とすべきことは、「お客さまとつながり続けること」です。デジタル時代にふさわしく、これまで当社が大切にしてきた「Face-to-Face」によるご案内活動に、LINE(ライン)やメール、オンライン面談などを加え、サービスを進化させ続けています。
どんな時代にあっても、お客さまと深く強くつながり、全力で支え続けてまいります。

松下芳弘

「日新一新」で次の100年へ

松下芳弘
日新電機株式会社 代表取締役社長

当社は1917年に京都で誕生し、育まれ、そして1世紀を越えて事業を継続しています。当社の事業精神を経営者、 社員、株主、地域社会が共有し、企業の社会的責任を果たすことが持続可能な企業の要素であると考えます。
SDGs(持続可能な開発目標)を中核に据えた中長期計画「VISION2025」では、「持続可能な地球環境とあらゆる人々が活躍する社会の実現のために、次の100年も永続するいい会社をつくる」ことを目指しています。「いい会社」とは、社員を大切にする、お客さま、社会に必要とされる、取引先さまに信頼される、そして株主の期待に応える会社です。
電力機器による電力の品質向上・安定供給や、環境配慮製品の拡大、再生可能エネルギー・分散型エネルギー対応などの地球温暖化対策で社会に貢献し、また半導体・フラットパネルディスプレー向けイオン注入装置などの独自技術で、人々の暮らしや産業の発展に役立つ、価値・未来を創造する会社を目指します。
「変える・変わる」という意味を込めた「日新一新(にっしんいっしん)」の合言葉の下、次の100年に向けて、v挑戦を続けます。

小野隆啓

グローバリゼーションに必要な人材

小野隆啓
京都外国語大学・京都外国語短期大学 学長

本学は、明るい豊かな未来を築き上げていくのに必要とされる「戦士」を作り出し、世に送り出す教育機関です。英語ではKyoto University of Foreign StudiesでありForeign Languagesではないのです。本学は単に外国語を教えるだけの大学ではなく、言語はもとより「外国の諸事情」を教え、世界の政治、経済、文化、歴史などの深い知識と理解を持った人材を育成する教育機関なのです。
このことは現在でいう「グローバリゼーション」に必要不可欠なものなのです。この語は1990年代以降用いられるようになり、経済面では80年代後半の金融ビッグバン、政治面では社会主義圏の解体、テクノロジーではIT革命、情報通信技術の発展から始まり、世界経済の相互依存という形が形成されたのです。
このような現代の視点を持ち、多言語、複言語による「世界事情」の理解を獲得した人材が、言語による、飽きない、疲れない、投げ出さない意思疎通能力を有した人物であり、グローバル社会をけん引する「戦士」となれるのです。本学はそのような人材の育成を心掛けているのです。

鈴木順也

変化に富む未来に挑む

鈴木順也
NISSHA株式会社 代表取締役社長

「未来との約束」というテーマと企業行動の関連性について考えるとき、企業の「価値創造プロセス」で概念的に整理できる。企業は長期的・持続的な利益創出と社会課題解決の両立を使命とする主体であるため、思考はおのずと未来に向かう。その未来がどの時点かはさておき、想定したゴールへの到達方法が戦略だ。一般に価値創造プロセスは、インプット(自社の経営資源や行動特性)がアウトプット(経済価値や社会価値)へと転換する戦略の循環的パターンを説明する。その転換の部分が企業によってユニークであり、未来に向けてどのように価値を創出するかのストーリーが分かる。ここで問題となるのが、未来は想定以上に変化に富むことだ。多くの場合、未来は思った通りにならない。私たちは知恵と情報を総動員し、インプットや転換パターンを修正しながら前進し、アウトプットの精度を合わせ込む必要があろう。理路整然とした戦略計画と同様に、環境変化に対し「出たとこ勝負」的な突破力も重要だ。当社の価値創造プロセスが示す社員の行動特性の最上位に「変化により成長する力」が記されるゆえんは、ここにある。

武田一平

「創造業」として社会に貢献

武田一平
ニチコン株式会社 代表取締役会長

当社の本社ビル(烏丸御池角)では、2004年から自社開発の蓄電型太陽光発電システムで給電し、空調や室内の照明、ビルのライトアップなどに使用しています。工場では、太陽光で発電した電力を電気自動車(EV)の充放電や生産設備への給電に効率的に使う、自社製の「DC(直流)リンク型公共・産業用蓄電システム」を設置し、CO2(二酸化炭素)削減に取り組み、停電時のBCP(事業継続計画)対策にも備えています。各家庭においては、世界に先駆けて開発した「V2H(Vehicle to Home)システム」で、EVから家への給電と、家でEVの倍速充電を可能にしました。さらに「トライブリッド蓄電システム」は、太陽電池と蓄電池、EV・PHV(プラグインハイブリッド車)の内蔵電池の三つを高効率に制御する「家産家消」モデルで、太陽光発電で車を走らせるだけでなく、停電時はおうちまるごとバックアップします。
当社の経営理念は「価値ある製品を創造し、明るい未来社会づくりに貢献する」です。単なるモノづくりでなく社会を明るくするコトづくりで社会的課題の解決に寄与し、企業としての社会的責任を果たすべく、全員で誠心誠意「考働」してまいります。

重田敦史

「つなぐ」その先に「ひらく」

重田敦史
西日本電信電話株式会社 京都支店長

京都で通信事業が開始されたのは1872(明治5)年、電話サービスの開始は1896(明治29)年ですが、それから100年以上の年月を経て、今や情報通信は幅広い分野で活用される社会インフラとなっています。私たちは、このインフラを構築・維持し続けてきました。
この「つなぐ」という使命はますます重みを増しており、培った知見・スキルとマインドを今後とも継承しつつ進化させ、未来に向けてもその使命を果たしてまいる所存です。
また、デジタル技術の進歩などにより、ICT(情報通信技術)は、少し前までは想像もできなかったさまざまなことを実現しており、さらに日々発展し続けています。私たちは通信インフラの構築・維持にとどまらず、これを社会課題の解決に生かすべく、技術を磨き、さまざまなパートナーの方々と「共創」することで、幅広い分野での課題解決にチャレンジしてまいります。
こうした伝統の継承と新たな挑戦の両立は、京都の歴史の中で繰り返されてきたことであり、私たちもその一員として歴史・文化に学び、継承と挑戦を大切にしていくことで、京都の未来の発展に貢献したいと思います。

岡田博和

唯一無二の企業を目指して

岡田博和
TOWA株式会社 代表取締役社長

当社は創業以来、40年以上にわたり、半導体モールディング(樹脂封止)装置のリーディングカンパニーとして、半導体産業の発展と世界最先端ソリューションの創造に情熱を注いでまいりました。
近年、持続可能な社会の実現を目指したSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みが注目される中、第5世代(5G)移動通信システムやIoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)などの技術の進展が、こうした社会課題の解決に向けた様々なイノベーションを生み出しており、これらの技術を支える半導体の重要性はますます高まっております。
TOWAはこれからも、リーディングカンパニーとして、半導体パッケージングプロセスにイノベーションをもたらし、技術の進展に寄与するとともに、より効率的な生産プロセスをお客さまへ提供・ギャランティー(保証)する新たなビジネスを創出し、業界において唯一無二の企業を目指してまいります。
これまでに培ってきたモノづくりへの熱い思い、技術水準向上へのあくなき挑戦をTOWAのDNAとして伝承し、これからも社会と企業が共に成長できる高い付加価値を生み出すことで、企業価値を向上し、社会の発展に貢献してまいります。

土井健資

古き良きものを学び、夢を描く

土井健資
株式会社土井志ば漬本舗 代表取締役社長

社長就任とともに決めた経営理念は、「温故一新」。これは、必ず、古き良きものの中から新しいものづくりを成し遂げるという理念です。創業以来守り続けてきた「志ば漬」の歴史は121年。今では「志ば漬」をはじめ、30種類を超えるお漬物の製造を手掛けています。
伝統の技を生かした味わいを広く伝えたく、炊きたてご飯と共に数々のお漬物をビュッフェスタイルで食べられるお店「竈(かまど)炊き立てごはん𡈽井」を考案し出店。お店では漬物由来の「漬ける技」を生かし、サワラやサケ、「京のもち豚」などを西京漬けにアレンジして提供しています。今後は、この総菜の作り方や魅力を分かりやすくお伝えしご家庭でも味わっていただけるよう努めてまいります。また、「志ば漬」のもととなる自家栽培の「ちりめん赤紫蘇(しそ)」のジュースやゆずジュース、洋菓子とコラボしたシフォンケーキや「志ば漬」とラズベリーを合わせたチーズケーキなどの商品化を通じ、いつの時代もライフスタイルやニーズに合わせた提案を心掛けています。
弊社はこれからも、柔軟に幅広い世代を対象に、本物志向で由来や技を生かしたものづくりに果敢に挑戦してまいります。

小倉 勇

「京都発 最強の技術商社」を目指して

小倉 勇
株式会社たけびし 代表取締役社長

当社は1926年の創業以来、京滋地区を主力地盤に、三菱電機製品を中心とした産業用電機・電子機器を取り扱う技術商社として多くのお客さまに支えられ、今日の経営基盤を築いてきました。
現在、当社は東南アジア事業強化として、海外8カ国22拠点を中心に、マレーシアでのFA(工場自動化)機器ビジネスの拡大や、成長市場であるインドでのEV(電気自動車)関連の需要獲得に取り組んでいます。また為替の円安基調を背景に、製造業の国内回帰に対応した自動化提案や、デバイス製品の輸出ビジネスなど、社会的変化を捉えたビジネス拡大を図っております。
持続可能な社会の実現に向けては、2030年度までにCO2(二酸化炭素)排出量の実質ゼロ達成を目指すとともに、CO2排出量可視化ソフトウエアや削減ソリューションの新規ビジネス創出に取り組んでおります。また風力発電事業への参入を計画し、電力の自家消費も推進いたします。
古都に宿る伝統と革新の精神を携え、私たちは、これからも「京都発 最強の技術商社」を目指し、時代とともに変わるお客さまの“お困りごと”に、最適なソリューションを提供してまいります。

白波瀬 誠

地域と共に未来へ歩む

白波瀬 誠
京都中央信用金庫 理事長

文化庁の業務開始に向けて移転準備が進められている京都。伝統文化と共に発展する街づくりが脈々と受け継がれてきた京都の役割がより一層重要になります。
これまでも京都は、そこに住む人々による不断の努力の結果、幾多の困難を乗り越えながら、世界中の人々を魅了する伝統文化が息づく観光都市へと成長してきました。また、世界の気候変動対策の進展に寄与した「京都議定書」採択の地であり、環境面でも世界の注目を集める都市である「京都」。この地を地盤とする信用金庫として、当金庫も積極的に環境保全活動を行うとともに、近年では、京都市との「SDGs及びレジリエント・シティの推進に関する連携協定」締結、同市が掲げる「2050京からCO2ゼロ条例」の理念への賛同、さらに、脱炭素社会への移行・持続可能な地域社会の実現に貢献していくため信用金庫業界初となる「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言」への賛同を表明しました。
これからも、地域金融機関としてお客さまや地域への支援を通じてSDGs(持続可能な開発目標)達成に向け持続可能な社会の実現を目指しながら、地域と共に未来へ歩んでまいります。

瀧井傳一

「なくてはならない会社」として

瀧井傳一
タキイ種苗株式会社 代表取締役社長

毎日口にする野菜や、暮らしを彩る花。私どもは、その種子を生産・供給し、「タネから始まる無限の創造性を活かし、世界の人々にとって新しい期待と感動にあふれる、健康的で豊かな生活の実現に寄与する」をミッションに掲げています。創業以来、京都で種苗業に邁進(まいしん)し、国内はじめ世界180カ国以上で当社の種が使われています。
新しい種=品種の開発は、10年先の未来を見据え、伝統的な育種技術と最先端の分子生物学を融合して取り組みます。食と農のスタイルが変わろうとも、自然と向き合い、高品質な種を安定的に生産し続けることは、種メーカーとしての社会的使命だと自負しています。さらにこれからは、野菜や花といった生命を育むことの楽しさや喜び、健康的で調和のとれた暮らしから得られる充実感、そうしたことを人々が共に分かち合うライフスタイルや価値観を発信することで、新たな暮らしに寄り添い、貢献していきたいと考えています。
不確実な時代と言われる今、確かな技術、農業への情熱と深い愛情と共に、真に豊かで持続可能な社会の実現に向かって、「なくてはならない会社」としての役割を全うすべく未来志向で前進してまいります。

古田基行

水と生きる

古田基行
サントリー株式会社 京都支社 支社長

サントリーグループの事業は酒類、清涼飲料、健康食品をはじめとした幅広い分野に広がるとともに、海外にも大きく展開し、グローバル食品酒類総合企業としての成長を続けています。また、創業の精神である「利益三分主義」の下、芸術・文化活動による感動や喜びの創造に加えて、美しい自然を次世代につなぎ、水源涵養(かんよう)機能の向上と生物多様性の保全を目標に2003年から開始した「天然水の森」活動や、次世代環境教育「水育」は日本国内にとどまらず、アメリカ、ヨーロッパ、アジアでも実施しています。
サントリーグループの事業は、自然環境との共生なくして成り立ちません。お客さまに水と自然の恵みをお届けする企業として、地球にとって貴重な自然を守り、次世代につないでいくという決意を込めて、「水と生きる」をサントリーグループと社会との約束と定めています。これからも、サントリーグループが「水理念」に掲げている、水循環への理解、節水・再利用・浄化、水資源保全、地域社会との共生などの活動をグループ全体で推進し、水のサステナビリティーの実現に努めてまいります。

畑 正高

久蔵不朽

畑 正高
株式会社松栄堂 代表取締役

私の家がなりわいとしてきた香は、仏教と共に伝来し、現代の日常生活でも愛用していただいています。その長い歴史の中で、人々は香の不思議な力を見いだしてきました。その一つが、天然の沈香木(じんこうぼく)が持つ「久蔵不朽(きゅうぞうふきゅう)」という価値です。
東南アジアの熱帯雨林に産する、樹脂が固結した樹木片である沈香木は、熱を加えると力強く芳香を発します。各個体が天然の素材であることから、大きさに関わらずその香りに個性が備わっています。その繊細な違いを比較鑑賞することが大変興味深く、「聞香」という芸道文化を育んできました。
沈香木は、湿気を嫌いますが、環境さえ整えていれば、長い年月を経てもその品質は変わることなく伝えることができます。「久しく蔵(ぞう)していても朽ちることがない」とはこのことです。わが国には、歴史上の誰かが香木を吟味し、香りを鑑賞して命名したものが数多く伝わっています。後水尾天皇が名付けられた「少年の春」や、東福門院の「青葉」を今たくと、400年の時を経て同じ香りを鑑賞でき、当時の美意識が今に伝わります。同じように、私たちの美意識も、香木の手を借りて伝えることができるのです。天然の香木を慈しむ心を継承することができれば。

林 惠子

何より大切な「安心感」

林 惠子
京都ブライトンホテル 総支配人

京都ブライトンホテルは、1988年7月11日、上京の地に誕生しはや34年を迎えました。日頃のご愛顧に心より感謝申し上げます。行動制限も緩和され、最近はお客さま同士の語らう笑顔を拝見できるようになりました。「ここは安心だから思い切って来たよ」というお声を頂くこともあります。そのたびに「安心感」の根拠はなんだろうと、考えています。
これからの季節は特に、感染症だけでなく災害へのリスクも高まります。安全担保のための設備や備蓄は当然ですが、訓練は法令で決められたものだけでなく、消火訓練を年10回、救命講習を年7回、夜間有事訓練は毎月。地震訓練は従業員に想定を伝えずに実施し、シミュレーションを繰り返しています。その結果、有事の際に慌てず行動できるという自信を得たスタッフが、館内至る所で「不安要素はないか」と全方向に気を配って立っている。そこで初めてお客さまが「安心感」を感じてくださるのではないか、と思います。
「安心感」は、機能的なものだけでは得られない、日々の積み重ねから生まれる信頼の証。今も未来においても何より重要な、ホテルの情緒的価値として、高めてまいります。

坂東 希

「生きる歓びを、未来の景色に。」

坂東 希
大和ハウス工業株式会社 京都支社 支社長

弊社の創業者・石橋信夫は、サスティナブルな社会に必要とされる企業として、「社会課題の解決に大きな貢献を果たしたい」という強い意志のもと、「2055年の創業100周年に売上高10兆円の企業グループ」という夢を私たちに託しました。
そしてこのたび、大和ハウスグループ創業100周年に向け、創業者精神を継承し、これからの当社グループの羅針盤となる“将来の夢”を策定いたしました。
「生きる歓びを分かち合える世界の実現に向けて、再生と循環の社会インフラと生活文化を創造する。」
この“将来の夢”は「2055年に私たちが創り出したい社会」と「大和ハウスグループの果たすべき役割」を示しています。今、私たちが描く“将来の夢”は、人々の「生きる」が地球と豊かに調和し、一人一人が自分らしく、お互いが認め合い、生かし合い、輝き合う世界の実現です。私たちは、「人・街・暮らしの価値共創グループ」として、あらゆる人々と心をつなぎ、自然と共生する街づくりと、幸福で活力にあふれた生き方の創造を通じて、未来の景色を開いていきます。

廣江敏朗

世界を変える力

廣江敏朗
株式会社SCREENホールディングス 取締役社長(CEO)

SCREENグループは、1943年に京都で誕生した開発型企業です。現状に甘んじず、コア技術をベースに、常に思考を巡らせ新しい事業や製品の創造に果敢に挑む「思考展開」を創業の精神とし事業を展開してきました。
近年、長引く新型コロナウイルスの影響や地政学的リスクの高まり、地球温暖化による気候変動の影響など、世界の常識や価値観が大きく変わり、われわれの目の前に幾つもの社会課題が顕在化しました。これらの社会的変化や、顕在化した課題を解決するには、DX(デジタルトランスフォーメーション)とGX(グリーントランスフォーメーション)を実現するための技術的な進化が不可欠です。私たちは、半導体をはじめとするエレクトロニクスによる技術の進化により、デバイスの高速化と省電力化に尽力するとともに、脱炭素社会や少子高齢化社会のQOL(生活の質)向上に向けた取り組みにも注力しながら、社会課題の解決を目指します。
企業理念である「未来共有」「人間形成」「技術追究」の下、持続可能な豊かな未来の実現を目指し、これからも事業を通じて新たなソリューション(解決策)を生み出し社会に貢献していきます。

宮嵜久朗

心理的つながりが生きるエネルギー

宮嵜久朗
株式会社大丸松坂屋百貨店 執行役員 京都店長

山鉾巡行が実施されることも決まり、本年の祇園祭はコロナ禍から京都の街が立ち直っていく象徴的なものになると思います。振り返ると新型コロナウイルス感染症の蔓延(まんえん)から2年半、私どもは多くのことを経験しました。まず新型コロナウイルス感染症は物理的な人と人とのつながりを絶ちました。対面によるコミュニケーションがなりわいである私どもにとって衝撃的な出来事でした。しかし次々に押し寄せる感染の波に対する公衆衛生・医療現場をはじめ皆さまの献身的な対応を知るたびに、多くのことを我慢してでも、この感染症を克服しなければならないというエネルギーが湧いてきました。
徐々にではありますがかつてのにぎわいを取り戻しつつある今、実は物理的なつながりよりも心理的なつながりの方が強いのだと、そして地域の皆さまとの心理的つながりにこそ、私どもは支えられていると思っています。
四条高倉に京都店を構えて、10月で110年を迎えます。これまでの感謝と未来への約束として、「京都の街づくりに役立つ」ご提案をしたいと考えています。そして「より良い暮らしのエネルギーを補給できる場所」となれるようたゆまぬ努力をしてまいります。

松井 雄

送り方の多様性

松井 雄
株式会社公益社 代表取締役社長

私たちは、個人の尊厳を守り多様な個性を尊重することを大切にしております。
お客さまは、年齢、性別、国籍、信仰、経歴などについてさまざまです。私たちは、お客さまの個々の違いを受容し、唯一無二のお誂(あつら)えができるのか。創業以来、弊社の先人は承るそれぞれのご要望に応じ、その実現に情熱を注いでまいりました。
私たちは、やり直しができない一度限りの大切なご用命をお受けします。だからこそ、日頃より感性、知識、技術を高め創造力を養いお客さまに寄り添ったサービスの実現に注力しております。
近年、送り方、弔い方が多様化しています。デジタル技術の進化により遠隔での参列も容易となり、離れた場所だから、と参列を諦められたことも解消されました。また、電子マネーの流通により、お香典の届け方にも多様性が見られます。今後はますます個性に則した送り方、弔い方が求められるでしょう。そして送る側、弔う側の心の在りようはいつの時代も深く尊いことに変わりはないと思います。
私たちは、これからも皆さまの気持ちに寄り添った唯一無二の式典が実現できるよう、お葬式の多様性について熟慮し、研鑽(けんさん)を重ねてまいります。

大原昭人

より良い住環境づくりに貢献

大原昭人
積水ハウス株式会社 京都支店 支店長

60年の歴史と累積建築戸数世界一を誇る顧客基盤をもとに、「住」を基軸としたグローバル企業を目指す積水ハウスグループには、社会的使命を胸に長い時間軸の中で新しい価値、企業の未来像を語り続ける責務があると考えています。
「わが家を世界一幸せな場所にする」という理念を基軸にお客さまがそれぞれに望む暮らしを、自由設計と先進の技術による、快適で安心・安全な住まいで実現しています。時代の流れとともに変化し続けるニーズに対し、お客さま一人一人にとって何が大切なのか? 技術の追求のみならず、「健康」「つながり」「学び」もキーワードにお客さまの「幸せ住まい」、世界の「幸せ住まい」の実現に向かって知恵を絞り、「世界一幸せな場所」をお届けしてまいります。そしてさまざまな研究開発から設計施工・アフターメンテナンス、リフォームまで、一貫して高い品質、サービスを自社グループで提供し、お客さまをサポートさせていただく所存です。
現在に至るまで培ったノウハウを生かし、戸建て住宅や賃貸住宅、マンションをはじめ、都市開発や国際事業など、より良い住環境に貢献する事業を今後も行っていきます。

赤野孝一

世代を超えて

赤野孝一
学校法人聖母女学院 理事長

6月は次年度に向けての学校説明会の時期です。説明会の日にある男性が本部に来られ、私宛に名刺を預けて帰られました。名刺のお名前は小学校で担任した懐かしい教え子のA君でした。連絡先にお電話をすると、わが子が就学時期になり母校の説明会に参加したとのこと。ありがたくうれしいお電話でした。
A君を担任していた時、お母さまに、本学を選んだ動機をお尋ねしたことがありました。中学校の教師だったA君のお母さまはこんなお話をしてくださいました。「私が担当していた書道の授業で、みんなが丸めてゴミ箱に突っ込んだ墨だらけの半紙を、授業後に1枚ずつしわを伸ばし、きちんとそろえて持ってきてくれる一人の生徒さんがいました。『まだもう1回練習に使えます。私が通っていた学校でそう習いました』と満面の笑顔で。彼女の母校が京都聖母学院だったのです。当時独身だった私は、子どもが産まれたらぜひ入学させたいと思ったのです」。
お母さまのその思いで入学、卒業していったA君が、親となってまた本学にわが子を託そうとしてくれている…。大きな喜びとともに、人を育てる大きな責任を痛感しています。

阿久津勝己

お客さまに商品の魅力を伝え続ける

阿久津勝己
キリンビール株式会社 京滋支社 支社長

私たちは「酒類メーカーとしての責任」を果たすことを前提に「健康」「コミュニティー」「環境」という、これら三つの社会課題に取り組み、心豊かな社会を実現し、お客さまの幸せな未来に貢献することで、「世界のCSV(共有価値の創造)先進企業になる」ことを目指しております。
グループの中核企業であるキリンビールは「商品の魅力を本気で伝え、持続的にお客さまに愛される」ために、全社員一丸となって日々業務に邁進(まいしん)しております。一人でも多くのお客さまの笑顔に貢献できるように、「一番搾り」「スプリングバレー 豊潤〈496〉」「本麒麟」他それぞれの「ブランドを磨き」続けてまいります。
弊社は、疫病退散を祈り、未来へつなげる「祇園祭」の伝統の継承と発展のため、京都新聞主催の文化キャンペーン「時を超えて・祇園祭」を長年ご支援させていただいております。
今年は3年ぶりに山鉾巡行が開催される予定と聞いております。祇園祭をきっかけに「ビール・お酒」を通じた人と人がつながるコミュニケーションの場が早く京都に戻ってくることを心から願っております。

木越 渉

「同朋社会」の実現に向かって

木越 渉
真宗大谷派 宗務総長

浄土真宗を開かれた親鸞聖人は、「煩悩成就のわれら」という言葉で、煩悩から逃れられない人間存在の姿を言い当てておられます。煩悩とは、自分を中心とした物差しで物事を捉え、常に自己を優先して生きようとする心の姿です。煩悩を持つ故に、人は傷つけ合い、大切な人との別れや自らの生老病死に苦悩や悲しみを抱きます。
しかしながら、親鸞聖人の「われら」という眼差しは、「私もあなたも同じ、逃れがたい煩悩から生じる苦悩と悲しみを抱えた存在である」という他者への「共感」であり、この共感の中からこそ、悲喜を共にする本当の人間関係、「同朋」という世界が開かれてくるということを示されています。
真宗大谷派(東本願寺)は、「同朋社会の実現」を教団存立の意義として掲げています。それは、多くの人々が「不安」と「孤独」を心の内に抱える時代状況の中にあって、意見や立場、環境の違いを超えた「われら」と言える共感の大地を見いだすこと、「差異(ちがい)を認める世界の発見」を願うものです。いのちあるすべての存在が互いに響き合える社会の実現を目指し、取り組んでまいります。

山本靖則

「人と地球の健康への願い」の実現

山本靖則
株式会社島津製作所 代表取締役社長

島津製作所は1875年に京都木屋町二条で創業して以来、「科学技術で社会に貢献する」を社是に、分析・計測、医用、航空、産業機器などの分野で、人と地球の健康への願いを実現することに取り組んできました。
現在は、新型コロナウイルス感染症や気候変動に加え、ロシアのウクライナ侵攻など幾多の試練を受け、社会の抱える課題も人の価値観も大きく変化しています。これから先の地球や社会が、どう変わってゆくのかは不透明ですが、命の尊さと健康への願い、大切な地球を守ることへの願いは今も昔も変わりません。
人が一人でできることには限りがありますが、力を合わせれば驚くようなことができます。およそ人が創り出した全ての物は、誰かの夢から始まり、それを実現したいと思う人たちの熱意と努力で完成しました。私たちは、「御好次第(おこのみしだい)で何でも製造します」という創業者の思いを受け継ぎ、当社が長年培ってきた科学技術を生かし、人と地球の健康につながる人々の夢の実現を目指して社会の皆さんと共に歩み続けたいと考えています。

土手克己

事業の本質的価値が問われる時代

土手克己
株式会社三笑堂 代表取締役会長

新型コロナウイルスの影響により、社会全体の意識が変わり、新しい生活様式が求められています。また、SDGs(持続可能な開発目標)や、ESG(環境・社会・企業統治)など、企業の存在意義・経営姿勢の在り方、事業の本質的価値が問われる時代になりました。
急速に少子高齢化が進む中、2025年までにいわゆる「団塊の世代」が全て75歳以上となり、超高齢社会を迎えます。こうした中で、医療や介護が必要な状態となっても、できる限り住み慣れた地域で安心して生活を継続し、その地域で人生の最期を迎えることができる環境を整備していくことが、われわれの使命です。
使命を果たすために重要なのは創業精神である「三方良し」だと考えます。この精神を、一企業人としてではなく、一人の人間として体現することが、本当の意味での社会の持続的な発展、幸福につながると考えております。
新型コロナウイルスによって浮き彫りとなった社会課題や、医療・介護を取り巻く環境の変化を踏まえ、三笑堂として超高齢社会にどのように向き合っていくのか、われわれの社会的使命を果たすべく、日々、目の前の業務に取り組んでまいります。

木下宗昭

企業成長と環境保全を高度に両立

木下宗昭
佐川印刷株式会社 代表取締役会長

コロナ禍やウクライナ問題の影響で、印刷業においても、紙やインキの調達価格の上昇など、取り巻く環境は厳しさを増しております。しかしそういった中でも、弊社は未来に向けて健全に成長を続けながら、お客さまのご要望にお応えできる企業となるべく、社員一同力を合わせて取り組んでおります。
弊社は印刷物を中心にさまざまな手段でお客さまの情報発信をお手伝いさせていただいております。シールや帳票類から、カタログなどの冊子、大ロットのチラシ、さらにウェブ関連や動画制作、システムの開発など、手掛ける商材は多岐にわたります。
それを支えるのが、日野・厚木をはじめとする印刷工場や軟包材工場、パッケージ工場です。これらの工場はSDGs(持続可能な開発目標)の観点から持続可能な社会のために、水性フレキソ印刷など環境負荷の少ない生産手法を取り入れています。これからも企業成長と環境保全を高度に両立し、京都の未来につながるような事業を展開し、「望まれることの、一歩先へ」を合言葉に、どんどん新しいことに挑戦してまいります。

小堀泰巖

一日作(な)さざれば 一日食らわず

小堀泰巖
大本山建仁寺 管長

禅宗では「坐禅」を組み、自分自身ととことんまで向き合うことで自己の人間性を磨きます。そうして練り上げた境涯というものを、掃除、洗濯、炊事から、草引き、畑仕事、庭木の剪定(せんてい)に至るまで、日常生活の中で実践としてカタチにしていく。これすなわち、古来変わらず今もわれわれが続けている禅の生き方であります。
建仁寺の修行道場には、先々代の竹田益州老師の書かれた「一日不作一日不食」という扁額(へんがく)が伝わっております。この語はおよそ千二百年前、中国の唐の時代に生きた名僧・百丈懐海(ひゃくじょうえかい)禅師の言葉で、「その日の務めを果たさずに、腹を満たす食事を受けることはできない」という禅者の謙虚な自戒の心を説いています。
一日の務めを終えて、汗を流し、疲れを癒す。原点に立ち返れば、修行道場の生活も、社会の中で仕事という役割を担い生きる生活も、その根本は同じで、自己の人間性を実践する場です。
一生懸命に利他の心で務めを果たすなら、それはやがて世のため、人のためになります。百丈禅師に学び、「よし、今日はよくやった」と、そう納得できる一日を積み重ねていきたいものです。

大倉治彦

京都で学ぶことの意義

大倉治彦
月桂冠株式会社 代表取締役社長

産業や経済、情報伝達手段が高度化した現代にあっても、京都は独自の伝統文化を色濃く体現している稀有(けう)な都市といえます。京都には各分野の目利きの方や、厳しい目で物を選ぶ消費者が多くおられます。その中で鍛えられたことにより、日本中どこでも通用する素晴らしい商品が生み出されるようになりました。
商いの中身を見ても独特です。京都の経営者の皆さまとのお付き合いで気付くのは、物事を非常に長い目で見る習慣があり、短期的な利益よりも、むしろ謙虚に堅実に商いを継続するという意志が身に付いていることです。また、ライバル同士でも仲が良く、お互いに情報交換し合って何でも気楽にしゃべり合う、しかし半面で、その親しい関係を安易に商売に結び付けないことが伺えます。商売ではあくまでも品質や価格の吟味が前提という厳しい目があるからです。
縁あって京都で学ぶ学生さんは、学校で教えられる知識にとどまらず、長い時間をかけて凝縮された知恵に学べる最高の環境に身を置いているといえます。伝統の知恵に学びつつ、新たな知恵を積み重ね、潤いのある未来を築いていきたいものです。

北尾和彦

悠久の都で未来を開く

北尾和彦
京都薬品工業株式会社 代表取締役社長

当社は終戦直後の1946(昭和21)年の創業以来、76年間にわたって「和親協力 誠実報恩」の社是の下、新薬の創製に邁進(まいしん)してきました。
新薬の創製には探索研究から非臨床試験、そして臨床試験に及ぶ10年以上の歳月と、500〜1千億という多額の費用がかかる一方で、成功確率は2万2407分の1と大変低く、大きなリスクを伴います。それでも当社が夢を追い続けるのは、患者さんに希望を与えたいという一心からです。
以前、ある難病の患者さんのご家族から「たとえ新薬ができなくても、それに挑戦し、研究しているだけで希望が湧いてきます」というお話を伺いました。難病に苦しむ患者さんは多くおられ、いまだ治療薬のない疾病は多くあります。新薬を創るのには大変な努力と困難を伴いますが、皆さんの健康を担う製薬企業の一員として「山椒(さんしょう)は小粒でもピリッと辛い」をモットーに、一人でも多くの患者さんに夢と希望を与えられるよう、当社は悠久の都・京都で日夜、新薬の研究開発に励んでいます。

奥村浩二

ウェルビーイングな会社へ

奥村浩二
株式会社京都東急ホテル 専務取締役総支配人

おかげさまで本年、東急グループは100周年を、京都東急ホテルは40周年を迎えます。節目の年に元白川小跡地に「THE HOTEL HIGASHIYAMA by Kyoto Tokyu Hotel」を新規オープンさせていただきます。長年支えてくださる京都の皆さまに改めて感謝を申し上げます。
そして今年は、コロナ禍で学んだ事を生かし、サスティナブルな社会、会社、人づくりを進め東急グループの次の未来に向けての新たな出発点としたいと考えています。まず、持続可能な社会づくりに欠かせないSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みを引き続き積極的に推進してまいります。次に会社・人づくりのキーワードとして「ウェルビーイング」に注目しています。直訳すると「健康」「幸福」となりますが、WHO(世界保健機関)憲章の前文で、「健康とは、肉体的にも精神的にも、そして社会的にもすべてが満たされた状態にあること」と定義されており、ウェルビーイングの概念とはまさにこれです。コロナ禍により働き方の多様化が進み、人材が定着する環境づくり、働き方改革の推進が待ったなしの今、未来に向けてこの概念を会社・人づくりのために取り入れたいと考えています。

髙倉通孝

希望ある社会づくりを目指して

髙倉通孝
京都生活協同組合 専務理事

「頼もしき隣人たらん」。京都生協の創立時に初代理事長が呼び掛けたこの言葉を「理念」として今も大切にしています。私たちは、頼もしき隣人であるため、未来の暮らしへ希望が持てるような、環境や人に配慮した「エシカル消費」やCO2(二酸化炭素)排出削減といった、SDGs(持続可能な開発目標)に取り組んでいます。
中でも、地球温暖化や海洋ごみの原因となっている、プラスチック問題について、サービスで使用するプラスチック量を削減することを目標にしています。使い捨て容器・包装の使用量を、2030年までに25%(18年度比)削減する目標を掲げています。商品やカタログを入れる袋のリサイクル回収率向上や、レジ袋の有料配布を、25年には取りやめることができるような働きかけを強めています。今も、京都生協をご利用いただく組合員の協力があり、お買い物袋の持参率が94%であること、昨年行った鴨川でのクリーン活動など、事業者も利用者も一体となって、未来へ向けた活動を進めています。
これからもSDGsを自分ごととして捉えるきっかけをお届けし、それぞれが大きく貢献できる、希望ある社会づくりを目指してまいります。

榊田隆之

京都信用金庫らしさを大切に!

榊田隆之
京都信用金庫 理事長

「おせっかいバンカー」として、お客さまの暮らしやご事業の課題解決に「親身」になって向き合うこと。京都信用金庫が今最も大切にすべきことはこのことだと私は思います。お客さまに対して親身に接するためには、職員一人一人が心にゆとりを持って仕事に向き合うことが大切です。お客さまに対してはもちろん、職員同士もお互いをリスペクトし合い、常に周りへの「感謝」の気持ちを忘れないこと。そういった温かい職場の雰囲気が「京信らしさ」であり、お客さまに対する心からのおもてなしにつながるものだと思います。
いま世界は、「自分だけ良ければよい」社会から、「人にやさしい、地球にやさしい」“ソーシャルな”社会への転換期にあります。ソーシャルな地域社会の実現に向け、われわれは「コミュニティ・バンク」として、信念を持ってリーダーシップを発揮していきたいと考えています。豊かなコミュニティーとは?ソーシャルなコミュニティーとは?人にやさしいコミュニティーとは?いずれも人と人とのコミュニケーションによって支えられている、とてもヒューマンな社会のことだと思います。そんな人間臭いことにこだわることが「京都信用金庫らしさ」だと思っています。

黒坂 光

4月は出会いのとき

黒坂 光
京都産業大学 学長

「4月になれば、彼女がやってくる。小川が水をたたえて流れる頃に」。愁いを帯びた声でポール・サイモンは、若者の春の出会いと夏の別れを歌う。4月は出会いのときだ。
4月になれば、木々が芽吹く。わが家のトキワマンサクやブラシの木も、待ち切れぬように春の日差しを求めて、やがて一斉に開花する。すると、花の蜜を求めてミツバチや小鳥も空を舞う。生き物が躍動する。
春の前には寒くて、暗く長い冬がある。しかし冬に植物は、深く広く土の中に根を張り、あらん限りの養分を吸収して準備に抜かりない。春になればエネルギーを得て、束縛から解き放たれたかのように活動を始める。
4月になれば、新入生がやってくる。知識の蓄えも心の準備も済ませた新入生は、好奇心に眼を輝かせて、エネルギーを得て開花するのを待っている。京都産業大学は文系理系のすべての入学生を上賀茂のキャンパスに迎え入れる。春には桜が咲き誇り、夏には青葉、秋には紅葉が映え、冬には雪が時折舞い散る美しいキャンパスが学生を育む。学生は大学で、さまざまな学びと出会いを経験して成長していく。

吉川左紀子

建学の理念と30年の歳月

吉川左紀子
京都芸術大学 学長

京都芸術大学は、2021年に創立30周年を迎えた。1200年以上の歴史を持つ京都での30年は、ほんの一瞬のような短い時間かもしれない。しかし、未来の予測が困難なこの時代に、芸術・文化の探求による世界平和への貢献、「芸術立国」を建学理念として30年間一歩一歩、歩み続けてきた大学の未来を、今改めて考えている。
日本中が人と人との交流を制限し、楽しい行事や企画を取りやめることが多くなった時も、本学ではできるだけ普段の教育活動を継続するための工夫を重ねた。名物授業の「マンデイプロジェクト」では20基の美しい「ねぶた」が制作され、キャンパスの夏祭りでは、学生たちの企画でお化け屋敷を作り、皆で「怖い体験」を楽しんだ。なぜコロナ禍の中でこうした取り組みが継続できたのか。「芸術立国」という強い志を秘めた建学の精神が、30年という時間の中で教職員の間に浸透し、閉塞的な日常の中でも皆が同じ方向に向かって力を合わせることができたのではないか、というのが私の仮説である。
見慣れた「芸術立国」の碑を改めて見つめ直し、芸術大学の未来とその社会貢献を考える日々である。

中野博美

ハンディキャップを包含する社会

中野博美
京都きづ川病院 理事長

「スペシャルオリンピックス」をご存じだろうか。知的障害のある人々がスポーツを通じて社会参加をしようというものだ。
私が小学生の時、クラスに知的障害のある同級生がいた。まだ「戦後の」という表現が使われていた頃、知的障害者の存在を理解するのは小学生には難しいものであった。ある時彼が失禁をしたんじゃないかと授業中騒ぎになった。担任の先生の一言は厳しかった。「何だその騒ぎ方は!君たちはどうして◯◯君の様子がおかしいので見てやってほしいと言えないのか!」。小学生には衝撃の叱責(しっせき)であった。
昭和末期、通勤途中に知的障害のある子どもを連れてバス停に立つお母さんをよく見かけた。子どもはいつも母親の体をたたいていた。お母さんは負担なのだろうなと考えていた。当時は分からなかったが、インクルージョン(包摂)の考え方が整いつつある今なら分かる。あのお母さんは、子どもが障害の個性に応じて元気にしていることがうれしかったのだ。
どのハンディであれ障害がある人たちを包含するのが社会だ。社会や社会人は、全てのハンディキャップに対して下支えする責任を持たなくてはならない。

立木貞昭

日本の美徳を世界に広げる

立木貞昭
株式会社京進 代表取締役会長

自分を成長させるため、世のため人のために貢献するために、京進グループでは、小中学生、高校生および留学生には「リーチング手帳」で、社員は、独自のアプリでリーチング(自立型人間育成プログラム)に取り組んでいます。クレド(信条)や目標は自分で作り、そのため毎日すべきことを決め、その結果をルーティンチェック表に○×を付ける。気が付いたことや反省も含めて書く欄もある。継続は力なり、毎日続けることは修行していることと同じです。これは人が育つ仕組みです。また、こだわっていることの一例ですが、上司や教師から先に挨拶をします。先に挨拶ができる人が人間として立派である。この考え方は、謙虚な人をつくる。生徒にも、この謙虚な生き方を、考え方を、伝えていきたいです。
礼儀正しく、丁寧で、謙虚な性格は、日本人の最高の美徳です。この最高の美徳を京進グループで実行し、世界に広げたいです。日本人だけでなく、海外から日本に来ている留学生や海外の学生、外国人従業員などに、リーチングを通してこの考え方を広げ、ゆくゆくは、争いの無い世界平和に貢献できればと思っています。

橘 重十九

菅公が育てた唯一の飛梅を未来へ

橘 重十九
北野天満宮 宮司

今春、大変うれしい出来事がありました。御本殿前に植わる飛梅(とびうめ)の苗木が組織培養にて世界で初めて開花したのです。
飛梅は、御祭神の菅公が自邸(紅梅殿)の庭で育てた紅梅が、左遷の折に主である菅公を慕い九州へ飛来したとの信仰に由来します。当宮所蔵の国宝「北野天神縁起絵巻」にも紅梅殿で梅に別れを告げる菅公が詠んだ歌と共に美しい紅梅が描かれています。当宮の飛梅は千有余年の時を経た今もなお、菅公の御心が宿る信仰の御神木として代々受け継がれているのです。
昨今、人と同じく梅にもウイルスが蔓延(まんえん)しており、当宮では古木となった飛梅の行く末を案じておりました。飛梅を守るため、御縁のある住友林業と共に、組織培養という新たな技術を用い、その遺伝子を残す取り組みを行い、その苗木が本年世界で初めて花をつけたのです。菅公の御心宿る信仰の飛梅を未来につなぐ一筋の光が見えた瞬間でありました。
苗木が開花して5日後、御神前の飛梅も可憐(かれん)な紅梅を咲かせました。その飛梅に向かい一心に手を合わせる参拝者の姿を見た時、信仰の尊さを感じ、胸に熱いものが込み上げた次第であります。

川村明緒

女性の活躍とヘルスケア

川村明緒
医療法人仁愛会 川村産婦人科 副院長

下鴨の地に先々代が産婦人科を開業して今年で70年目を迎える。
女性の生涯はホルモンの変動とともに変化し、特に月経痛や月経前の情緒不安定(イライラ・抑うつ)、倦怠感、 眠気などに困っている女性は多い。
経済産業省のデータによると、月経随伴症状による労働損失は4911億円と試算されている。働く女性の健康推進に関する実態調査が行われ、女性の健康課題の対処に困ったと回答したのは、女性従業員の約5割、また管理者の約4割にのぼった。最近はホルモン製剤の種類も増え、月経をコントロールできるようになってきた。ただし、こういった知識は男性や管理職だけでなく、女性にもまだ十分に周知されていないのも事実である。
「女性ヘルスケア」の概念は、思春期から老年期までの全てのライフステージにおいて女性特有の悩みをケアすることである。当院でも出産を含めて、女性のトータルヘルスケアを目指している。今後女性の活躍はますます期待されるであろう。そういう今こそ、企業と協力して「女性ヘルスケア」への啓発に向けて努力していきたい。

柿本新也

わが社のアイデンティティー

柿本新也
柿本商事株式会社 代表取締役会長

寺町通はその名の通りお寺が多かった御所の東側の通りです。要法寺が弊社の所在地にあったのですが、現在は東山三条に大きなお寺として引っ越ししています。1716年、現在の寺町二条上ルの当地で竹屋長兵衛が興した竹屋をはじめ、御所の一筋南側に竹屋町通という名前が示す通り、周辺には竹屋が多かったようです。
1845年、弊社は竹屋から諸国和紙問屋に企業転換いたしました。文化文政時代を経て、文化は上方から江戸に移った時代で、瓦版・引札(チラシ)・浮世絵など、紙を必要とする時代でした。その後明治維新を経て渋沢栄一が製紙業を始め、弊社も和紙から洋紙・板紙へ業態を変化させていきました。
IT革命や今後起こるAI(人工知能)が人間を超えるシンギュラリティー、そしてAI革命によって紙の使用量は激減していきます。10年以上前に弊社はそのことを予測し、現在紙マテリアル事業は残したまま、リテラシービジネス、「SUPER LOCALISM(スーパーローカリズム)」をコンセプトにしたメディアビジネスなど幅を広げ、今後ますます複合事業形態を実行していきます。弊社は、その時代の変化とともにアイデンティティーを重視していく会社です。

栗和田榮一

多様性を基盤に付加価値を生む

栗和田榮一
SGホールディングス株式会社 代表取締役会長兼社長

新型コロナウイルス感染症は変異株の出現によりいまだ予断を許さない状況であることに加え、ロシアのウクライナ侵攻による国際的な影響から、日本の経済や社会生活の先行きは一層見通しにくい状況にあります。また、各種産業や社会生活におけるデジタル化の進展、脱炭素社会への移行、働き方の多様化など、私たちを取り巻く社会情勢は目まぐるしい変化の中にあります。
このような現代社会において、変化の兆しを感じ取り、柔軟に対応していくためには、多様な経験や資質、感性を持つ人材が集い、力を発揮できる組織づくりが大切だと考えてきました。例えば、当社グループはかつて男性従業員中心の組織体制でしたが、女性従業員が増え、活躍できる組織を標榜(ひょうぼう)し、制度や体制の整備を進めてきました。これからの社会では、性別や世代はもとより、異なる価値感や資質、経験を持つ人材が知恵を出し合い、お客さまと社会・環境に価値をもたらすイノベーティブ(革新的)な組織づくりが重要です。
佐川急便の創業以来大切にしてきた「飛脚の精神(こころ)」を原動力に、既存の枠を超えた新たな発想で、新たな付加価値を提供してまいります。

大垣守弘

地域に読者がいる限り

大垣守弘
大垣書店グループ 代表取締役

地域に愛され続けた書店がやむなき事情で廃業されると、その地域の読者はどこに本を求められるのか。私たちは、そのような思いから、できる限り、書店の空白地域を作らないよう、書店の後を引き継いでおります。またインターネットを通じての書籍の販売にも尽力しています。
思えば、情報や知識はいわゆる「データ」で取得できる時代です。端末があれば、紙に印刷されたものなどは必要がないという考え方もあるでしょう。しかし実際は、書店のない地域に出店すると喜ばれ、インターネットによる書籍の受注は着実に増えています。
活字媒体の行く末を心配する議論は冷めることがありません。それでも現実は文字を読んで、それを自身の血肉とされている方がどれほど多いことか。
望まれる1冊の本と巡り合えた読者の幸せは、その1冊をお届けできたわれわれの幸せでもあります。読書は、そのいっとき、他人の知識を利用して考える行為とも言われます。さまざまな考え方に触れ、自分自身を高めようとする読者がいる限り、私たちは飽くことなく書物をお届けしてまいります。

米田多智夫

持続可能な社会の実現

米田多智夫
オーシャン貿易株式会社 代表取締役社長

当社は1973年に創業、今年で50周年を迎えます。京都市に本社を構え、主な事業として世界40数カ国との間で、水産物、青果、花きなどの輸出入を行っております。50周年を無事迎えることができたのも、創業以来一貫して自然界の原理原則に学び、世の中のルールや道徳を順守してきた結果だと考えています。その一つが企業理念である「三方よし」です。「売り手よし・買い手よし・世間よし」の精神であり、当社に関わるすべての人々のさらなる繁栄と幸せを目指しています。そして、持続可能な社会の実現もわれわれが当然対応すべき責務です。経済成長に伴い、水産物への需要が世界中で急速に高まる中、何世代先までも安心・安全な魚を食べられるよう、自然環境と社会に配慮した養殖サーモンをお届けしております。2030年までのSDGs(持続可能な開発目標)達成に向けて、加工過程の食品ロス削減や輸送時のCO2(二酸化炭素)削減などの取り組みも始めました。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻で、混迷を深める国際情勢ですが、不確実性の高い時代だからこそ、強い信念を持って知恵を絞り、果敢に挑戦すれば道は必ず開けるものと確信しています。

西山雄一郎

豊かなライフスタイルを提案

西山雄一郎
アサヒビール株式会社 京滋統括支社長

本年のアサヒビールは「主力ブランドの価値向上とスマートドリンキングの推進」を事業方針に掲げ、お客さま一人一人にとっての豊かなライフスタイルを提案します。
主力ブランド「スーパードライ」は、1987年の発売以来36年目で初めてフルリニューアルします。特長である「辛口」のコンセプトはそのままに、初めて中味の処方を変更しキレのよさは維持しながら、飲みごたえを向上させました。缶体に味の特長を視覚的に分かりやすく表現した「辛口カーブ」をデザインし、新しくなった辛口のうまさを訴求します。また、「マルエフ」の愛称にて飲食店で愛され続けてきた「アサヒ生ビール」の缶を昨年復活して発売しました。「スーパードライ」に次ぐ第二の柱として取り組みを強化し、業務用と家庭用を連動させてぬくもりのある世界観やまろやかなうま味のある味わいを訴求することで、多様なお客さまのニーズにお応えしていきます。
さらに「持続可能な社会」の達成を目指し「スマートドリンキング(飲み方の多様性)」を推進していくことで、酒類業界の健全な発展にも取り組んでいきます。

上原晋作

未来へ挑戦する会社

上原晋作
上原成商事株式会社 代表取締役社長

「これで~いいのだ~」というフレーズを聞くとあの有名アニメのパパの顔が思い浮かびます。
当社の理念「お客さまにとって必要な上原成」を実践するには、変化し続けるお客さまニーズへの対応が求められ、私たちは常に変革に挑戦し進化していかなければなりません。私たちはこれからも変わることなく建設資材、石油、液化ガスの販売を通じて社会への貢献を続けてまいりますが、その方法や進め方については、絶えず「これでいいのか?」と自問自答を繰り返していくことが大切です。過去の成功体験にしがみつき「これでいいのだ!」と油断した時から企業の進化は止まってしまい、あのパパになってしまうのかもしれません。
今の満足を実現しているのが過去の努力であるならば、明日の満足を実現するのは今日の努力、その先の満足を実現していくのはこれからの努力。果たして私たちは前例を踏襲するばかりの時代遅れになってはいないでしょうか。あの昭和の名作アニメは、常に進化への挑戦をし続けていくことの大切さを私たちに伝えてくれているのだと思います。
「これでいいわけがない、 変革に挑戦し続けるのだ!」

篠田 潤

お客さまと共に物語を紡ぐ家づくり

篠田 潤
アーキテクチャーリンクライフ(ALL)株式会社 代表取締役

私たちはお客さまと向き合いながら、本物の素材にこだわり、伝統的な美に現代的な感性を加え、職人の技を駆使して、本格的な注文住宅を設計し建築する小さな会社です。完全に自由なスタイルで自社設計し、自社で現場の管理を行い、アフターメンテナンスまで責任をもって対応しています。事務所を開設して今年で20年目を迎え、これまで139件のご依頼をお請けしてきました。家づくりには一つとして同じものはなく、それぞれに物語があります。振り返れば、たくさんのお施主さまや社員のみんな、職人たちと共に時間をかけて紡いできたその物語こそが誇りであり財産だと思うようになりました。
Architecture(建築) Link(つなぐ) Life(人生・生活・命)という社名の通り、お客さまの人生や暮らしと住宅建築をつなぐのが私たちの使命だと考えています。自然を感じ、美を発見し、住むほどに愛着の増す「人生の器」としての住宅をつくりたい。そして街並みの中で何十年も美しく、景観の一部として愛され続ける建築にしたい。そんな軸を貫きながら、新しい素材や技術を柔軟に取り入れ、これからも豊かな物語を紡いでいきたいと思っています。

田中恆清

「神ながらの道」を実践

田中恆清
石清水八幡宮 宮司

私たち神職が神典と仰ぐ日本最古の書物でもある『古事記』中巻の応神天皇の段には、「能(よ)くこそ神習はめ」という言葉が記されています。その意味は「現世のことはよく神々の御(み)心を見習うべきである」という意味であります。
私たちが生きているこの世は、ややもすれば苦労を避けて楽な方向にかじを切りがちであります。そのような一時的な損得の感情や自分さえ良ければよいという考え方で判断し行動するのではなく、少しでも神々の御心に近づけるように努力を怠らず、浄(きよ)く明るく正しく直(なお)く誠の心をもって、日々つつましやかな生活を行っていくことが、すなわち「神ながらの道」の実践であります。
神道の心は、自己中心的な悪しき個人主義ではなく、他者を思いやる優しさや人とのつながりを大切にする気持ちであり、それが神々の御心にかなう「神ながらの道」の心として古(いにしえ)より継承されてきました。
新型コロナウイルス感染症の蔓延(まんえん)もはや2年が過ぎ、困難な時代はいまだ続いております。今こそ「神ながらの道」を実践し、未来へと心をつなぎ、皆で力を合わせてこの難局に立ち向かう時でありましょう。