賛同企業代表者 文化人 対談シリーズ
経済面コラム

新たな暮らしの実践へ

Practice of new life

- 2022元日 賛同企業代表者メッセージ -

中野博美

「とめる・さする・ほめる」

中野博美
京都きづ川病院 理事長

医師として避けることのできない経験の一つに患者さまの死がある。病気の根治を求めるとき、死は敗北だ。しかし死は誰にでも訪れる。東洋医学の思想では生・老・病・死を一連のものとして扱うことが医療の役目であるとされる。長寿を求めるとき、医療は死に際しても貢献できることを考えなければならない。
私どもは経験則として死が避けられない人にしてあげたい考えを持っている。死にゆく人には「とめる・さする・ほめる」の三つのことをしてあげたい。「とめる」は痛みを止めること。生命が終わるのに痛みだけが残存しているのはやりきれない。ぜひ痛みは止めてあげたい。「さする」は体をさすること。動かなくなった体をさすってもらうと気持ちがいい。「ほめる」は絶望の人には精神的にも何かをしてあげたい。この場合励ましてはいけない。状況改善の見込みのないとき、励ましは何の意味も持たない。この場合褒めるといい。誰しも人生の晴れの場があったはず。それを思い出せるように褒める。
痛みを止めるのは医療の役目。現代医療は鎮痛には効果的。さするのは家族の役目。最後は家族が寄り添いさする。褒めるのは友人の役目。親友が格好よかった場面を褒める。「あの時君は輝いていたね」と。今後も「とめる・さする・ほめる」を機会があればしてあげたい。そして自分の場合もぜひそうしてほしい。

京都きづ川病院

京都府城陽市平川西六反26-1
Tel.0774-54-1111 
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