小さなありがとう

上原晋作
上原成商事株式会社 代表取締役社長

冬のある日、一通の封書が届きました。封筒には「感謝」の文字。そして手紙には「店長さまへ。先日は灯油を持ち帰る際に親切にしていただきありがとうございました。早速主人に報告しましたところ『至らぬ嫁がお世話になりました、よろしく伝えてください』そう言っているように感じました」としたためられていました。
どういうことなのかと思い、その店長に尋ねますと、彼は言いました。「手紙の差出人はご近所の女性で、いつもはご主人が自転車で灯油を買いに来られていたのですが、この春に亡くなられたそうです。それで今冬は奥さまが自転車でご来店されましたので、荷台に灯油缶を載せるのをお手伝いしたところ大変喜んでいただき、『ありがとう、仏壇に報告しておくね』とおっしゃったんです。当たり前のことをしただけなのに手紙まで頂けるとは思いませんでした」と。その時の彼の表情は照れくさそうでしたが、少し誇らしげにも見えました。
会社を経営しておりますと何かと迷い悩むことばかりですが、このようなエピソードに触れますと、一瞬で迷いの霧が晴れて前に進む勇気が湧いてきます。そしてまたすてきな出来事に1人でも多くの社員が出会えるよう応援していくことこそが、世の中から必要とされる会社の役割だと思います。
当社の小さなありがとうの物語がこれからも続いていくことを願います。