賛同企業代表者 文化人 対談シリーズ
経済面コラム

次世代へ、美しい日本を

Beautiful Japan. To the next generation

- 2021元日 文化人メッセージ -

李杰玲

京都に橋を架ける漢詩

李 杰玲
国際日本文化研究センター
外来研究員

私は国際日本文化研究センターで滞在研究をするため、京都に1年以上住む機会に恵まれた。京都に来るのはこれが2度目である。実は、私は10年以上前から京都に来ることを心から望んでいたのだ。
2009年、上海で博士課程を履修した。当時の指導教授、曹旭先生は若いころ、京大で3年間滞在研究をされたことがあった。曹先生は授業の際、しばしば京都の出来事を思い出し、京都で作った漢詩文を私たち学生に感情を込めて朗読してくださった。そして、食べ物から京大のゼミまで、いろいろな話をしてくださった。京都には中国文学と文化に関する古典籍が数え切れないほど多くあることも語ってくれた。テキストの解析より、京都の話と漢詩文の方が学生には人気があった。
先生の話を聞いて、私は京都の町をゆっくり歩いてみたいと心から願うようになった。
曹先生の漢詩には、鴨川を詠んだものがある。私は鴨川を通るたびに、その詩を思い出した。そして、私も「鴨川」という漢詩を作った。

鴨川白鷺喜清風
京闕青糸挽暁夢
幾度遥看遠山小
異郷故里両相逢

鴨川の白鷺 清風を喜ぶ
京闕の青糸 暁夢を挽く
幾度か遥かに看る 遠山の小なるを
異郷故里両つ相逢す

よく実地調査で赤山禅院へ出掛ける。花の舞公園前からバスに乗り、桂駅で阪急電車に乗り換え京都河原町駅へ。鴨川を渡り、祇園四条駅から京阪電車、叡山電車を乗り継ぎ、修学院駅で降りる。15分ほど歩くと赤山禅院に着く。赤山禅院の祭神、赤山大明神は、慈覚大師円仁(794~864)が天台教学を求めて遣唐使船で唐に渡り、再度日本に戻った行程を守護した泰山府君である。
昨年10月5日、赤山禅院で行われた泰山府君縁日講を見学するため、朝9時ごろ家を出た。祈祷は午後2時から始まる。京都河原町駅に着いた時、まだ時間は早かった。先斗町通を抜けて、鴨川のほとりに出て、川沿いの散歩道をゆっくり歩いた。対岸で散歩している人々を見て、千年前もこのように人が歩いていたのかと夢想した。時間がまるで川の水のように流れていた。「ああ、これが鴨川だ」。私は感嘆した。
日本と中国の文化交流は千年以上続いている。その交流の歴史は(私が見た)鴨川の水と同じだと思う。古今の人々の力が合わさり、日中の交流は絶えず流れていくと信じている。

◉り・けつれい
1982年中国広西チワン族自治区生まれ。2012年上海師範大博士課程修了、文学博士号取得。広東第二師範大専任教員、蘇州大博士研究員および泰山大泰山研究院特別招聘研究員を経て、19年9月より国際日本文化研究センター外国人研究員に着任、20年9月より現職。海南師範大副教授。著書に「富士山漢詩研究」(黄山書社)などがある。