「夢」

松山靖史
株式会社しょうざん 代表取締役社長

金閣寺の北に位置するしょうざんの四季は多彩な変化を見せてくれています。特に春の新緑と花木、秋の紅葉はぜひ見ていただきたい景色です。戦後、この場所は全くの荒れ地で、ゴミ捨て場、養豚、養鶏場、マンガン鉱発掘のため、一日中ダイナマイトの音が鳴り止まない場所でした。
川を挟んで隣接する二つの広大な場所に、2人の夢想家が現れました。1人は私の父である松山政雄、もう1人は浅野義一。2人の目標は今まで誰も手掛けたことのない新しい庭園を造ることでした。松山は、今まで庭園に用いることのなかった北山大台杉を多く使い、紀州石との組み合わせを図りました。一方、浅野は奈良の飛鳥遺跡を想像させる巨石を驚くほど用い、壮大な庭園を造ろうとしました。2人の共通点はともに西陣の織屋でありましたが、残念ながら2人とも庭園の完成を見ることなくこの世を去りました。
ともに庭園造りに情熱を注いだ2人の死後、数十年がたった今日、その場所に三つの世界的有名リゾートホテルが建ち、形を変えて2人の夢が完成したことは奇跡のような出来事です。いま私どもは2人の人一倍の情熱、執念、創造力に心から敬服、感謝すると同時に、困難な時こそ人一倍の努力、勇気、夢を持ち続け立ち向かっていく冒険者であれと2人が示唆してくれていると思っています。