思いを受け継ぎ、
伝え続ける

大倉治彦
月桂冠株式会社 代表取締役社長

当社は1637（寛 永14）年に創業し、 初代から数え14代 目にあたる現当主の 私に至るまで、時代 の荒波を越え連綿 と事業を営んできま した。よく「永年の 事業継続のコツは 何か」と聞かれますが、わが家に家訓はありません。し かし、暗黙知的に代々が受け継いだ思いのようなものは 存在しています。
明治期からの事業拡大に寄与した11代目の恒吉は、 「家の暮らしはできるだけ質素にしなさい」「楽しい安泰 な家庭を作りなさい」「物を大事にしなさい」「嘘のない 仕事をしなさい」「従業員の一生を大切にしなさい」「日 本一の酒を造りなさい」と社員に語ったと、12代目の治 一が述懐していました。続く13代目の敬一の後を私が 継ぎました。その際、思いを受け継ぐだけでなく、将来 には文書による伝達が欠かせないと考え、代々の思い や古老に聞いた逸話、現代の経営に必要な要素を集 約し、基本理念として「QUALITY」「CREATIVITY」 「HUMANITY」の3項目を明文化しました。
先人から続く品質重視の姿勢、新しいことに挑戦し 創造性を発揮する精神、社員一人一人が充実した人 生を送ることなど、会社の基本的な考え方を、折々の機 会に繰り返し社員に伝え浸透させることで、一本筋の通 った経営を実現するとともに、代々が受け継いだ思いを 次世代に伝えていこうと、日々気持ちを新たに、歩みを 進めています。