京都で育まれた創意工夫と
進取の気風
- 粂田佳幸
- 彌榮自動車株式会社 取締役社長
ヤサカは、身近な暮らしの中に日本の伝統文化が息づく京都で育まれてきました。代表作『細雪』や日本の美意識を論じた『陰翳礼讃』などで知られる、文豪・谷崎潤一郎もヤサカを育んでくださった一人で、直筆で「ヤサカ自動車」と記した書簡も残されています。
お客さまにご乗車いただいている状態を、ヤサカでは「お供中」と表現します。車内空間のお客さまと乗務員の絶妙な立ち位置、そしてお送りしている間も車内空間を特に大切にするヤサカの「おもてなし」の神髄を示す言葉です。
未来に向けた取り組みのベースとなる新鋭車両の導入をスタートしました。これまでのタクシーの車体デザインを一新し、さまざまな人とさまざまな状況に優しいユニバーサルデザインの車両を年間100台規模で導入していきます。
ヤサカはこの先端技術を搭載したクルマに、谷崎作品に描かれているような日本の美意識が、暮らしの中に息づく京都において育まれた「おもてなしの心」を乗せて走ります。進化するクルマとおもてなしの心とを一体とする取り組みです。
京都の皆さまに育まれたヤサカだからこそできることに大きな可能性を感じています。先人から受け継いできた社員一人一人の創意工夫と進取の気風こそが、それを成し得る原動力であると確信しています。
- 彌榮自動車株式会社
- 京都市下京区中堂寺櫛笥町1番地/Tel.075-841-6261
http://www.yasaka.jp/
世界に広がる日本料理とは
- 佐竹力總
- 株式会社美濃吉 代表取締役社長
2013年12月に「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されて今年で5年目を迎えます。以来、海外の日本食レストランは4年でほぼ倍増の11万7千店に増加しました。「和食(WASHOKU)」は平安時代からおおよその定義があり、一汁三菜(米飯、味噌汁、お新香、主菜、副菜)とされていますが、海外における「日本食」は、牛丼、ラーメン、カレーなどが中心になっています。
「和食」が無形文化遺産に登録され、和食についての認識は深まりつつありますが、世界を見渡すと不思議な和食、「なんちゃって和食」「中華和食」といったものが増殖しています。
食文化とは、それぞれの国の人々の汗と涙の結晶で、壊すことのできないアイデンティティーですから、「ほんまもん」をそのまま押し付けても失敗することが多く、成功しているのは上手に現地に合わせている店のようです。和食の唯一守るべき定義は、かつおと昆布でとった出汁であり、枝葉はその国、その国で作り上げていってもよいのではないかと現実を見て私も思い至りました。「ほんまもん」を召し上りたい方は、日本に来ていただき、さらに本流を召し上りたい方は、京都に来ていただきたいと思います。美濃吉は、代々伝わる川魚料理、そして基本の「ほんまもん」を大切にし、これからも本物の京料理・おもてなし文化を内外に発信してまいります。
- 株式会社 美濃吉
- 京都市東山区三条通白川橋東入ル3丁目夷町166/Tel.075-751-8881
http://www.minokichi.co.jp
「転識得智」
すべては心ひとつで
- 田中典彦
- 佛教大学 学長
お正月の子どもたちにとっての楽しみは、何といってもお年玉でしょう。伝承では「お年玉」はもともと「お年霊」だったそうです。元日の朝、仏壇や神棚から賜った丸い餅でお雑煮を作るのですが、その餅が、私を一年間生かしてくれる神仏から賜った命だと考えられていたのです。この餅が、神仏から命を託された「年霊(賜)」なのです。霊は丸いものと信じられていたのでしょう。この餅は丸くなくてはなりません。
いつしか転じて「年玉」となりますが、丸いものの意味から「玉」と表現され、やがて餅から円硬貨(円玉)につながっていったのでしょう。毎年新しい霊を与えていただいて、生かされていることを喜び、再確認し、それに報いることができるように生きていきなさいというのです。これが先人たちから教えられた知識なのです。佛教大学は、「転識得智(学んだ知識を 生きる力へ)」を教育指針として共育大学を目指しています。
「一年の計は元旦にあり」と言われます。何かいつもとは違ったように感じられるこの朝、「今年こそは……」と心に決めるのです。それが言葉となり、思考となり、実行されてゆくことによって人生が刻まれてゆくのです。仏教では「一切唯心造(すべては心によってもたらされる)」と教えられています。
- 佛教大学
- 京都市北区紫野北花ノ坊町96/Tel.075-491-2141
http://www.bukkyo-u.ac.jp/
“美”の探求
- 塚本能交
- 株式会社ワコールホールディングス 代表取締役社長
今後数年にわたって、文化庁の全面的な移転や京都経済センターの竣工、また東京オリンピック・パラリンピックの開催などを控えており、日本、そして京都が大きな転換期を迎えております。
当社は京都で創業し、以来「女性の“美”に貢献する」という理念の下、一貫して高品質・高機能の製品づくりを続けてまいりました。一昨年、京都駅八条口に竣工したオフィスビル内にて、スクール、ライブラリー、ギャラリーなどの機能を持った“美”や京都の文化などを多角的に学ぶ施設を設立しました。それらをテーマにした講座や、女性のライフスタイルや興味に沿った書籍も取りそろえております。学びの場の提供や人的交流、京都の情報発信基地の一翼を担えればと思っております。 また、企業理念の浸透を通して培った経験と文化を社会に生かすため、京町家や古民家を活用した宿泊事業を立ち上げました。今春には数店舗を開業し、5年後には京都市内で約50施設の開業を目指しております。京町家や古民家の価値・特性を生かしながら、保全や有効活用につなげ、魅力ある京都の街を次世代へと受け継ぐことも目的としています。
これらの事業を含め、社会に貢献することで、「世の女性に美しくなって貰う」という当社の目標達成を目指し、ひいては生まれ育った京都へ貢献していきたいと考えております。
- 株式会社 ワコールホールディングス
- 京都市南区吉祥院中島町29/Tel.075-682-5111
http://www.wacoalholdings.jp/
共通価値の創造と
社会課題の解決
- 澤村 諭
- ローム株式会社 代表取締役社長
ロームでは創業当時より、「企業目的」に基づき、高品質かつ革新的な製品の提供を通じて、文化の進歩向上に貢献してまいりました。創業から60余年、企業規模や経営環境が大きく変化しましたが、これらの考えは不変であり、ロームのDNAとなり連綿と受け継がれています。そして、製品を通じて社会に貢献するため、省エネルギー、安全、快適、そして小型化をキーワードに革新的な製品を提供してまいりました。その原動力となっているのは、社会に貢献する製品を生み出したいというエンジニアをはじめとする社員の熱い思いです。
近年、企業が社会課題の解決につながる新たな製品やサービスを生み出し、社会と企業の双方に価値をもたらす「CSV(共通価値の創造)」という考え方が広がっています。また、全世界で達成すべき17の目標「SDGs(持続可能な開発目標)」が国連により制定され、複雑で分かりにくい社会課題が明確化されました。 ロームではCSVを「企業目的」そのものであり、ロームの成長につながる重要な概念と考えております。社員一人一人がSDGsを意識し、「企業目的」「経営基本方針」を実践し、社会課題の解決に結び付くCSVを生み出す。そして、持続可能な社会と企業を実現することで、今後もステークホルダーの皆さまの期待に応えられる企業を目指してまいります。
- ローム株式会社
- 京都市右京区西院溝崎町21/Tel.075-311-2121
http://www.rohm.co.jp
新たな価値創造への挑戦
- 森島朋三
- 学校法人立命館 理事長
立命館は、1869年、近代日本の代表的政治家である西園寺公望が、私塾「立命館」を創設したことに始まります。その精神を引き継ぎ、1900年、中川小十郎が私立京都法政学校を開き、建学の精神として「自由と清新」、つまり「フリーダムとイノベーション」を掲げました。
イノベーション(技術革新)につながるアイデアは、「既存の知と、別の既存の知の新しい組み合わせ」によって生まれると、経済学の泰斗ジョセフ・シュンペーターは示しました。大学・学校は、より積極的に社会に自らの価値を問い、新たな価値を生み出す存在であることが求められます。「従来の常識にとらわれず取り組み、新たな常識をも創造する」、それが立命館の建学の精神を現代に引き継ぐ、革新的な取り組みの根幹であるといえます。
本年4月には立命館大学において国際関係学部とアメリカン大学との共同学科、そして「食マネジメント学部」を開設します。さらに来年にはオーストラリア国立大学(世界大学ランキング20位 ※英クアクアレリ・シモンズ世界大学ランキング2017-2018)とのわが国初となる共同学士課程の開設を予定しています。高度かつグローバルな教育・研究こそが、イノベーティブな人材を育み、国際社会への貢献につながると考えています。新たな時代を担う人を育むための取り組みに、今年も誠心誠意、邁進してまいります。
- 学校法人 立命館
- 京都市中京区西ノ京朱雀町1/Tel.075-813-8300
http://www.ritsumei.ac.jp