思い描く、未来へ
drawing the future of tomorrow
- 2020元日 文化人メッセージ -
夢や目標を持つことの素晴らしさ
一生懸命努力する楽しさ
柳本あまね
車いすバスケットボール選手
物心がつくころから両下肢機能障害を抱えていた私は、幼少期、自信が持てずネガティブな性格でした。できないことが多いのは仕方ないことなのに、一つ一つを人と比べ、悔しくて泣いたり落ち込んだりする毎日。でも体を動かすことだけは大好きでした。さまざまなスポーツに取り組む中で、小学校6年生の時に車いすバスケットボールに出合い、初めて全力で取り組む楽しさを知りました。車いすバスケの存在を教えてくれたのは、小さいころから私の成長をずっと見守り続けてくれたリハビリの先生でした。
「ハンディキャップを持っているのは自分だけじゃない。この世界には私と同じように障害を抱えている人がいる、むしろ私よりも障害が重い人たちもいる。みんな味方だ」といつしか思えるようになり、前向きな性格になることができました。
私の病気は原因不明、治療法も不明です。いまだに謎だらけで治ることはありません。でも世界中には私と同じように原因不明の病気で治療法も分からず苦しんでいる人たちがたくさんいます。誰も病気のせいで苦しまない世の中になってほしいという思いから、病気や障害を抱えていても、自分のやりたいことをしてもいい、そして、みんなに輝く権利はある、ということを車いすバスケを通じて日々発信しています。医療はチームワークが大切との話を聞いたことがありますが、それは車いすバスケのチームに置き換えても同じです。重い障害者でも対等に試合に出られるようにルールが設けられており、さまざまな障害の度合いを持つチーム全員がお互いをサポートしながらプレーをしていきます。これは医療、車いすバスケだけにあてはまることではなく、人と人とのつながりの中で形成されている社会全体にもいえることだと思います。五体満足であっても悩み苦しんでいる人はたくさんいるでしょう。私にできることは少ないかもしれませんが、夢や希望を持つことは誰にでもできるはず。自分なんて…という思いは持たなくていいし、してはいけないことなどないと思っています。今後も夢や目標を持つことの素晴らしさ、それに向かって一生懸命努力する楽しさを伝えていきたいです。
いよいよ迫った「東京2020」。必ず日本代表として出場し、チーム目標である銅メダルを獲得し、輝いている自分の姿を見せたい。今まで支えてくれた家族や周りの人たちへの恩返しをしたい。そのためにもあと7カ月、さらに練習に励み大会に臨みます。
◉やなぎもと・あまね
1998年京都府生まれ。同志社女子大3年生。2歳4カ月の時に原因不明の病気で両下肢機能障害となり、3歳から車いす生活。小学校5年生の時に車いすバスケットボールと出合い、高校1年生の時に初めて日本代表選手に選出。現在は強化指定選手として、今年開催される2020年東京パラリンピックに日本代表選手として出場するために日々練習に励んでいる。