賛同企業代表者 文化人 対談シリーズ
経済面コラム 未来を思い描く

思い描く、未来へ

drawing the future of tomorrow

- 2020元日 賛同企業代表者メッセージ -

入澤 崇

「おかげさま」

入澤 崇
龍谷大学 学長

昨年、本学の創立記念週間のテーマを学生諸君が「おかげさま」と掲げました。いま、昔ほどには「おかげさま」という言葉は聞こえてきません。感謝の言葉「おかげさま」を掘り出してくれた学生諸君に頼もしさを感じたものです。
司馬遼太郎氏が『街道をゆく』の中で、この「おかげさま」という言い方を広めたのは近江商人であったと言われています。伊藤忠、丸紅、髙島屋といった会社のルーツは近江商人であることはよく知られていますが、近江商人の多くは浄土真宗のご門徒の方々でした。
「おかげさま」の「かげ」とは見えないものという意味であろうかと思います。目に見えない阿弥陀如来のはたらき、さらには自分の在り方を仏さまの光に照らすならば、目に見えない無数の縁に支えられていることが了解されます。「お元気ですか」と問われて、「おかげさまで」と応える。誰それのおかげと限定して明示しないところに先人の叡智が秘められているようです。
私たちの日常を省みれば、目の前の事柄に振り回されて、目に見えないはたらきに対する感謝の心がなかなか持てていないような気がします。
自他ともに心豊かに過ごせる未来へ。まずは、「おかげさまで、なんとか新たな年を無事に迎えられました」と、感謝の気持ちで正月を過ごすこととしたいと思います。

龍谷大学

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