「日本人の忘れもの」

湯淺圭一
ジーク株式会社 代表取締役社長

明治維新から150年が過ぎました。維新による近代化は世界でも例を見ないものでした。これは江戸時代から受け継がれてきた多くのものがあったからだと思います。当時の新政府は、中央集権の国づくりをはじめとする文明開化や殖産興業政策を進めると同時に、国民皆学のスローガンの下、学校教育にも力を注ぎました。教育を振興し経済を発展させ国力を付けたのです。
それまで、江戸時代の鎖国政策により、日本は世界的な産業革命から大きく後れを取っていました。しかし当時でも寺子屋などが普及し、多くの子どもが学校に通い、読み書きそろばんといわれる基本的な学力を身に付けていたことは、広く知られています。貧しい町民の子どもですら文字が読め、幕末の頃の識字率は何と7〜9割に達し、世界でも類を見ないほど高かったといわれています。貧しくとも高い倫理観や気高い精神に、来日した外国人も驚いていたそうです。そのことが明治維新にも大きく関わっていたように思います。
元来、日本人は勤勉で実直な性格を持っていました。武家社会の中枢を担っていた武士道の精神と礼節を重んじる思想が、その土壌を醸し出し、近代国家の発展に寄与してきたのだと思います。この頃の気高い精神を忘れることなく受け継いでいくことが大事かと思います。