矜持と責任

大垣守弘
株式会社大垣書店 代表取締役社長

昨今提唱されている持続可能な社会とは、未来の世代がより過ごしやすくなるために、現在の世代も満足しつつ発展させることのできる社会といわれています。そのような社会の実現のために欠かせないものの一つが過去の歴史を知ることだと思います。先人たちの知恵・考察・活動を知らずして、将来や現代のことを考えることはできません。
過去の歴史を知る方法はさまざまにありますが、私どもは書籍ほどこれをよく伝えてくれているものはないと考えます。後世に広く伝えたいという熱い思いが、言葉や図版で次の時代に残していく出版の技術を生んだのではないでしょうか。
京都は出版文化発祥の地といわれます。いまさら声高に持続可能な社会と叫ばずとも、京都の人々は古くから出版という活動をもって、すでに持続可能な社会を築いていたのだと思うと、京都の人間として、また書店の人間として誇りに思うと同時に、強い責任を感じます。
大垣書店はこの誇りと責任を大切にし、新しい形の書店の提案や、子どもたちが本に触れる機会を増やすこと、また出版活動そのものにも力を入れ、これまで以上に地域へ還元する取り組みに挑んでいます。京都に育てていただいた書店・企業として、その矜持を忘れることなく責任を果たしてまいります。