賛同企業代表者 文化人 対談シリーズ
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- 2019元日 文化人メッセージ -

坂田好弘

変えていく絶好機
ラグビーを通じて世界に友達を

坂田好弘
関西ラグビー協会 会長

33歳で引退するまでのラグビーの現役選手時代、正月は全国大会の季節だった。洛北高と同志社大、社会人チームの近鉄。いずれもそうだ。洛北高1年では膳所高との定期戦で左ひじを負傷して出られなかったが、チームは3年間、全国大会に進んだ。花園ではなく、兵庫県西宮市の競技場が会場だった。お節料理は、旅館でチームの仲間と一緒に食べるものだった。
現在の大会のように、保護者や女子生徒が応援に駆けつけることはなかった。洛北高では北野高、天理高などとの定期戦が大切で、全国大会だからと勝利至上主義には陥らなかった。大学3年であごの骨を折っただけで大きなけがはなく、楽しい選手生活を送れたと思う。
大学選手権では国立競技場に約6万人を集めるなど、サッカーよりも人気があった。日本ラグビー協会は、今より財政的なゆとりがあっただろう。一方、サッカー協会は外部からの人材を登用するなどして組織改革を続け、プロ化や2002年日韓ワールドカップ(W杯)などを具体化させた。
サッカーに学ぶべきは学ぼう。私が会長を務める関西ラグビー協会は、J1浦和での社長経験者を書記長に招いた。今年9月には、いよいよラグビーW杯が日本で開かれる。大きなチャンスだ。ラグビーが社会全体を巻き込み、大きく変えていく絶好機だと考える。
京都では試合こそ予定されていないが、ラグビーの伝統校がいくつもあり、下鴨神社には聖地もある。1910(明治43)年、旧制三高生が慶應義塾の学生からラグビーを教えられた「関西第一蹴の地」だ。2017年に再興された雑太社には、同年に京都迎賓館で催されたW杯抽選会前後に世界中からラグビー関係者が訪れるようになった。
訪日するサポーターは、約40万人と予想される。京都でもラガーシャツ姿の観光客が大勢見られるだろう。日本では、海外のラグビー観戦文化を体験する機会がほとんどなかった。ラガーシャツの彼らに声を掛けてほしい。試合のない京都だからこそ、観戦チケット持参で、社寺仏閣に無料か割引で入場できる優遇もほしい。京都観光が第一目的での訪日客とは異なる層に京都を知ってもらえるうえ、私たちが足元を見直せば、忘れていた文化、歴史を考える機会にもなる。
京都人としてのもてなしを成功させ、新たなリピーターを獲得しよう。ラグビーを通じて世界に友達を。こんなすばらしいことはないと思う。

◉さかた・よしひろ
1942年、大阪府生まれ。下鴨中、洛北高、同志社大を経て近鉄でプレー。ニュージーランドに留学し、俊敏に相手をかわすプレーから「空飛ぶウイング」と絶賛され「世界のサカタ」として名をはせた。日本代表キャップ16。引退後は大阪体育大監督を36年間務めた。2012年に日本人初の世界殿堂入り。関西協会長、日本協会副会長。