賛同企業代表者 文化人 対談シリーズ
経済面コラム 未来を思い描く

経済面コラム
【次世代へのメッセージ】

Column Things to inherit to the future

田原和也

次代へとつなぐ「文化」との接点

田原和也
株式会社髙島屋京都店 執行役員店長

髙島屋創業の地・京都は「文化のまち」であり、その文化が「日々の生活の中に深く溶け込んでいるまち」だと思います。この長い歴史の中で守られ、進化してきた伝統・生活文化をしっかりと継承し、次代につないでいくことが、街の中心地の大きな館で商いをさせていただいている百貨店の重要な役割だと考えます。
そのような思いの中で、来る12月12日からは、歌舞伎発祥の地と言われる京都四条にふさわしい「十三代目市川團十郎白猿 襲名記念 市川海老蔵展」を、年明け1月4日からは「没後220年 京都の若冲とゆかりの寺 −いのちの輝き−」展を、7階グランドホールで開催し、その魅力をお伝えしてまいります。
私たちが子どもの頃、屋上遊園地やお子さまランチを目当てに百貨店に連れて行ってもらい、さまざまな文化に触れる機会がありました。次代を担う子どもたちにも、「思い出」につながる楽しみをきっかけに、文化との接点を持っていただきたく、1階正面玄関に本物の「メリーゴーラウンド」を設置し、12月11日より25日まで、無料でお乗りいただけるイベントを開催いたします。ぜひ、ご家族でお楽しみいただければ幸いです。

畑 正高

五感のバランスを大切に

畑 正高
株式会社松栄堂 代表取締役社長

産業革命は、18世紀から19世紀にかけて社会構造の変革を大きく進めました。この時代の当事者たちに、革命の時代を生きているという自覚があったでしょうか。19世紀の学者が近代の幕開けとして名付け、歴史になったのだと思います。
ならば、私たちの時代を後世の人たちは何と名付けるのでしょう。情報化社会と言われて久しくなります。今やWi-Fiやバーチャルは当たり前。AIやIoT(モノのインターネット)が日常を大きく変革しつつあります。しかし、デジタル世界に扱える情報は視聴覚情報だけではないでしょうか。光と音が波として伝達されることから、電気信号に置き換えることが可能となり、また光の三原色の発見で色彩の再現もデジタル世界に可能となったのです。豊かな情報化社会は、私は、「視聴覚革命」と称されると考えています。
私たちの人間性は、五感による豊かな感性や表現を享受しているのではないでしょうか。その五感の中で、味覚・触覚・嗅覚の三つは、物質的な出合いによってのみ得られる情報です。実に原始的なままなのです。情報化社会がもたらした歪みに気付き、五感のバランスの再構築が求められているのです。

伊東知康

生活者に寄り添い、応援する企業へ

伊東知康
株式会社ワコール 代表取締役 社長執行役員

11月1日、会社創立70周年を迎えました。「世の女性に美しくなってもらうことで広く社会に寄与する」ことは、創立以来、受け継がれてきたわが社の目標であり、ミッションであります。
少子高齢化やデジタル技術の普及など、社会環境は大きく変化し続けています。女性に関しても、働く人が増え、生き方やライフスタイルも多様化しています。
ワコールはそのような一人一人に寄り添うことで、生き生きとした人生を送ってもらえるように応援することが、世の女性に美しくなってもらうことにつながると考えております。
このような環境下で、事業の持続的な成長と収益力の向上を達成するためには、事業そのものが、変化する社会や、そこに生きる生活者に対して、価値を提供できているかが重要です。
当社は今後も、一人一人のお客さまと「深く、広く、長く」お付き合いできる環境づくりを強化し、新しい価値の創造と、その価値を適切に伝える提案を、継続してまいります。

河内 誠

「未来の大人たちに」

河内 誠
株式会社ロマンライフ 代表取締役社長

幼い頃、公園でやんちゃをしていると、「こら!そんなんしたらあかん」と叱ってくれる大人がいました。近所付き合いという地域のコミュニティーで子どもの成長を見守ってくれていたのです。
時代が流れ、核家族化やマンション等集合住宅の増加などの環境変化により、今となっては昔の光景になりました。そんな今だからこそ弊社は、京都に育てていただいた企業として子どもたちをサポートしていきたいと考えております。
マールブランシュは、地域貢献の一環として洋菓子を通じて子どもたちの夢を応援したいという思いから2010(平成22)年に「ちびっ子夢プロジェクト」を立ち上げました。その一つのイベント、年2回開催するケーキ・デザインコンペティション「ちびっ子パティシエ」では、一等賞の作品をケーキにして北山本店で販売し、その参加費や売上金を京都府立植物園や京都市動物園に寄付しています。
地域に育てていただいて大人になった今、次世代に感動のバトンをリレーできるプロジェクトを考え続けることが、子どもの頃のご恩返しだと思うのです。

村田大介

ものづくりへの夢

村田大介
村田機械株式会社 代表取締役社長

「脱工業化社会」という言葉が唱えられたのは、半世紀以上も前のことです。今日、消費者の関心はモノからコトへと移っています。どんどん生産するだけのものづくりは、今後重要性を失っていくでしょう。その一方で、必要な時、必要な所に、必要なモノがなければどうにもならない問題はたくさんあります。資源エネルギーや環境をはじめ、SDGs(持続可能な開発目標)に掲げられたテーマの多くも、究極的には物質的なモノの問題です。モノの問題はモノでしか解決できません。進化した工業化社会を支える製造業は、今後も重要であり続けることでしょう。
ムラテック・村田機械グループは、幅広い分野のものづくりの現場に、省エネで環境負荷の少ない、安全な自動化・省力化の技術で貢献してきました。50年前の製造や物流の現場と今日のそれとの間には、お客さまと共に歩んできた技術開発の道が刻まれています。50年後の未来には、今から想像できないような進化が起きているかもしれません。「つねに新しい技術を創造する」という私たちの企業理念には、モノの問題を解決するという使命感と共に、そうした未来への夢が込められているのです。

入澤 崇治

自省利他 よき社会人となるために

入澤 崇
龍谷大学 学長

自分は果たしてこのままでいいのか。自分の考えは間違っているのではないか。自分に欠けているものは何なのか。このように自分自身を省みること(自省)で自己変革へ、さらには創造的な生き方へとつながっていきます。当たり前のことですが、人間は一人では生きていけません。自分という存在は他者との関係性から成り立っているのであり、他者との関係性を重んじることで温もりのある暮らしが成り立ちます。他者への思いやりを発動すること(利他)が人生の質を高めていきます。
便利な世の中になっても、生きづらさは克服できるものではありません。自分さえよければいいという自己利益追求型の生き方は大量の不平不満を生み出してしまうのです。いま世界を見渡せば、排他的な考えがまん延し、国家や地域間で紛争が起きています。その結果、多くの子どもの未来が奪われ、貧困や飢餓がさらに追い打ちをかけています。経済格差や温暖化など、地球的視野で現代社会を見つめるならば、あまりに多くの深刻な課題があることに気付きます。一人ひとりが人間の持つ「自己中心性」を省みない限り、課題は解決しそうにありません。

山内成治

5Gでケータイだけではない会社へ

山内成治
株式会社NTTドコモ 京都支店長

ラグビーW杯では日本代表チームに勇気と感動をもらいました。このW杯開催に合わせ、ドコモは次世代ネットワーク「5G」のプレサービスを開始し、2020年春の商用化に向け「高速大容量・低遅延・多数接続」の特徴を発揮できるようさまざまな取り組みを行っています。例えば、フィールドに立っているかのような臨場感を味わうマルチアングル視聴でのスポーツ観戦などの新たな価値創出や、建設機械の遠隔制御や遠隔高度医療による社会課題解決など、5Gの提供と幅広いパートナーさまとの協創により貢献していきます。
ドコモといえばケータイの会社と思われる方がほとんどだと思います。生活インフラとして「あたりまえ」になっているケータイだからこそ、安心かつ高品質の通信を確保することを一番の使命としていますが、農業や水産・酪農などの一次産業×AI・IoT(モノのインターネット)や、「dポイント・d払い」によるキャッシュレスの推進など、ケータイ会社からの「変革」に取り組んでいます。
5Gで、この「変革」をさらに加速していき、より豊かな未来の実現に向けて、新しい「あたりまえ」を創造していきます。

小谷眞由美

ロボットを通して豊かな社会を

小谷眞由美
株式会社ユーシン精機 代表取締役社長

1973年、当社は各種自動機を設計・製造する会社として設立されました。78年より射出成形品を成形機の金型から取り出すロボットのメーカーとして、常に新しい視点で開発に取り組み、業界の常識を塗り替えてきました。
2017年に開発したハイエンド取り出しロボット「FRA」の特徴の一つは、工場をインテリジェント化し、スマートフォンなどで確認できる「見える化」を実現するIoT(モノのインターネット)システム「INTU LINE」です。取り出しロボットを設置したその日から、誰でもすぐに利用できる「簡単・手軽さ」を追求しました。
私たちの身の回りの至る所で使われている日用品、家電製品、情報機器、自動車用部品、医療器具等の製造現場で当社のロボットが活躍しています。当社のロボットを使用いただくことで、世界中の成形工場において人を危険な仕事から解放し、より創造的な仕事をしていただきたい。省エネルギーで生産性の高いものづくりの実現をサポートし、お客さまに喜んでいただきたい。この姿勢が、より豊かな社会づくりに貢献できると信じて、これからも新しい価値の創造に挑戦してまいります。

宮口高義

見直されるべき地域コミュニティー

宮口高義
株式会社ヤナセ洛北支店 支店長

昨今、「何十年に一度の」と言われるような甚大な自然災害が毎年のように日本各地を襲っています。いまさらながら、日本中で高齢者の一人住まいがいかに多いかということに気付かされます。国立社会保障・人口問題研究所の調べでは2040年には10年と比べ、全ての都道府県で人口が減少、市区町村別では約7割の自治体で2割以上人口が減り、年少者や働き手が減る一方、65歳以上の高齢者の割合が大きく上昇するとされています。
今後、重要となるのは「地域コミュニティー」であると考えられます。以前の日本はしっかりとしたご近所付き合いがありましたが、現在では核家族化が進み、夫婦共働きも当たり前となり、隣近所とのお付き合いもままならず、同じマンションに住んでいても顔も知らないことも珍しくありません。そんな中、京都では市内に約5000体以上のお地蔵さまが祭られ、8月の地蔵盆には地域が協力して盛大にお供えをし、子どもたちを見守る風習が根付いています。
増加する高齢者の一人住まいを救済する意味も込め、今一度「地域コミュニティー」を見直す時が来ているのではないでしょうか。

粂田佳幸

「三つ葉のクローバー」の意味

粂田佳幸
彌榮自動車株式会社 取締役社長

日本でまだ自動車が珍しかった大正初期に、ハイヤーを走らせた京都人のベンチャー精神がヤサカの原点です。社名の「彌榮(やさか)」は、縁起の良い大和(やまと)言葉で「益々(ますます)栄える(いやさか)」を意味します。
当社は日本の伝統文化が息づく京都で育まれてきました。おかげさまで、タクシーや観光バスの車体デザインは京都に映える風景の一部となっています。私たちはお客さまを目的地までお送りすることを「お供する」と表現します。お客さまとの立ち位置を大切にする京都ならではの、きめ細やかな「おもてなし」の気持ちを表す言葉です。
時代は移り、車社会は目覚ましい進化を遂げていますが、人が人をもてなす「心」は昔も今も変わりません。「やっぱり、ヤサカさん」とお声掛けいただくたびに、私たちは一期一会の積み重ねの大切さを実感します。
シンボルマークの「三つ葉のクローバー」は、創業以来、私たちが大切にしている「安全」「快適」「信頼」の三つの心を意味しています。先人の志と創意工夫の気風溢れる京都で育まれてきた精神を、時代を超えた未来へのキーワードとして大切にしていきたいと思います。

佐竹力總

伝統的な美しい食文化をこれからも

佐竹力總
株式会社美濃吉 代表取締役社長

2013年12月、「和食:日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。これを機に、世界に誇る日本の食文化について一人一人が考え、その大切さを再認識するきっかけになるようにとの願いから、「和食の日」は制定されました。11月24日になったのは、「11(いい)、24(日本食)」という語呂合わせからです。
今、世界では企業も今までの拡大一辺倒の営利追求ではなくSDGs(持続可能な開発目標)への配慮が重要課題に挙げられる時代です。たとえば飲食業界の大量の食品廃棄も問題となり、環境への配慮が求められています。そのような厳しい目が注がれる中、和食店では300種にも及ぶ包丁を巧みに使い分け、発酵やだしなど伝統の知恵を生かし、健康に良い「一汁三菜」の和食を提供、「素材を使い切る食文化」「もったいない精神」が世界のSDGsに役立つと期待されています。「美濃吉」は代々受け継いできた、このような「四季折々の素材を使い切る食文化」「もったいないの精神」、それに「自然の恵みに対する感謝の心(畏敬の念)」、「ごちそうさま」と手を合わせる伝統的な美しい本物の食文化をこれからも提供してまいります。

玉置敏浩

「経年優化」の京都の街づくり

玉置敏浩
三井不動産株式会社 京都支店長

一般的に建物や設備など人がつくり出したものは時の経過とともに「経年劣化」していきます。しかし京都は街に暮らす人々の知恵と意志が加わることで、千年以上の歴史を刻んできました。三井不動産も「残しながら、蘇らせながら、創っていく」という理念を掲げ、都市の伝統を受け継ぎ、再生させながら、変化する時代に求められる新しい都市機能を創造しています。とりわけ京都の街づくりにはハード・ソフト両面で中間領域を豊かにすることが重要だと考えています。ハード面は私的領域である建物と公的領域である道路の中間領域である歩道と建物低層部の設え。歩く人の視点からみたヒューマンスケールな街並み・景観が豊かであることが京都の街の活気を支えています。ソフト面では自治体レベルと家族・企業レベルの中間領域である地域コミュニティー。京都においても中世以降、町衆のコミュニティーが文化と暮らしの基盤を支えてきました。
三井不動産グループは今後もパブリックとプライペートを繋(つな)ぐ中間領域の充実に知恵を絞りながら、「経年優化」する京都の街づくりに貢献していきます。

松島正昭

クルマを軸に伝統工芸をつなぐ

松島正昭
株式会社マツシマホールディングス 代表取締役社長

伝統工芸とカーライフの融合を行うブランド「Kiwakoto(キワコト)」を立ち上げ、西陣織や蒔絵といった京都らしい技術と技法でクルマを自分好みの仕様にオーダーするクラフトカーサービスと、国宝級の建築物や高級品に使われる伝統工芸技術を用いて、サングラスケース、車載用の花器、ミニ茶釜の入った野点(のだて)セットなど、ラグジュアリーなカーライフを演出するオリジナル商品を展開してきました。
京都で65年間にわたり自動車販売を手掛け、現在では国内外の10ブランドを取り扱っている弊社がKiwakotoを始めたのは、クルマを自分だけの特別な空間にし、クルマで移動していること自体を楽しんでいただきたいという思いからでした。この事業を続けてきて心に残っているのが、伝統工芸士の方からの「モノを深めることはできても、発信することはできないので、期待しています」との言葉です。技術はあるけれど情報発信が不得意な職人さんと、日本文化に興味を持つ世界中の人たちをつなぎ、技術を次世代につなげていくというのは意義のあることです。クルマを軸として、京都から日本中に、世界中に、京都の良きものを発信していきたいと思います。

壁瀬宥雅

天上天下 唯我独尊

壁瀬宥雅
総本山醍醐寺 執行長

ブッダの伝説にある「天上天下(てんじょうてんげ) 唯我独尊(ゆいがどくそん)」という言葉を、私は「世の中に、自分という存在はたった一人しかいない。だからこそ尊いのだ」と理解しています。
自分はただ一人の自分であって、全く同じ人間はこの世の中にはいません。それにもかかわらず、私たちは社会のいろいろな尺度や情報で、あの人は「善人だ」とか、「悪人だ」とか、人のある一面だけを見て、単純に色分けしていませんか。人の人格を分析するとき、そこには心の優しさ、金銭感覚、仕事への意欲、家族への愛情、信仰心、得意分野、福祉への取り組みなど無数の要素が含まれます。無数の要素の長・短がその人がどういう人格であり、どういう行動をとるかを決定するわけです。
仏教では、人間は「本来清浄」と説かれています。生を受けた時、全く白紙の状態の私たちは、時と共にさまざまな色へと変色していきます。「よき色」もあれば「悪しき色」もある。仮に「悪しき色」に染まった心もその根本は「清浄なる白色である」と教えます。
人間は不完全なものですが、共に「真っ白な心を持った、ただ一人の自分」であることに誇りを持ち、ブッダの言葉を深くかみしめていただきたいと思います。

本多和夫

「伝えるべきもの」

本多和夫
平安神宮 宮司

本日は京都の誕生日です。桓武天皇は延暦13(794)年10月22日に長岡京から京都にお遷(うつ)りになり、平安京と定められました。そこから千有余年にわたり、京都はわが国の国都として栄えてきました。
平安神宮創建と遷都1100年を奉祝する祭りとして、明治28(1895)年に時代祭が創始されました。約2千人もの時代風俗行列が錦秋の都大路を彩ります。時代祭は、京都の誕生日を祝う市民祭でもあります。
令和元年10月22日は、皇居宮殿において即位礼正殿の儀が行われます。わが国に連綿と伝わる伝統を目の当たりにするまたとない機会となるでしょう。本年に限り時代祭当日は本殿祭のみ、時代風俗行列の巡行は26日に繰り下げ、御大礼をお祝いします。
先人から紡がれてきた伝統を次世代に継承していくことは、大変重要なことです。一度途絶えた伝統を元に戻すには、途方もない努力が必要となります。しかし、決して「かたち」だけを伝えてはなりません。そこに宿る「こころ」を伝えることこそ、真の伝統継承に他ならないと思います。平安神宮創建、時代祭創始とその維持発展は、都の地位を明け渡してもなお、誇りを忘れない京都町衆の心意気の象徴であるからです。

滝沢政志

こころ和める、もうひとつの京都

滝沢政志
グランドプリンスホテル京都 総支配人

1986年に村野藤吾氏の設計によりオープンした当ホテルは、昨年度に2度目のリニューアルを行い、自然に溶け込む外観のデザインはそのままに、より落ち着いた「和」を感じていただける設えの内装といたしました。
「こころ和める、もうひとつの京都“京都洛北・宝ヶ池”」をコンセプトに、恵まれた自然環境を生かしたゆとりの空間で、先人から受け継いだ京都の自然と文化を次世代に引き継いでいくため、地域の皆さまにお力添えをいただきながら、和作法の研修や洛北エリアの勉強会などを実施しております。また、多様化するニーズに対応するため、女性ホテリエたちによる社内プロジェクトを発足し、新たな目線によるサービスの改革に取り組み始めるとともに、LGBTQ観光に特化した国際組織 IGLTA(国際ゲイ・レズビアン旅行協会)への加盟など、ダイバーシティーへの取り組みも行っております。
「でかける人を、ほほえむ人へ」をスローガンとする西武グループの一員として、いつ訪れても、こころ和める時間を過ごしていただける、観光のお客さまだけではなく、地域の皆さまにも愛されるホテルになるよう、これからも努力してまいります。

田中典彦

「心を耕す」

田中典彦
佛教大学 学長

実りの秋。沢山の立派な実りを得るために、相当の手入れをしなければなりません。その第一は土を耕すことです。土をしっかり耕すことで果を得ることから、「幸」(土をひっくり返して)の字が成り立っているそうです。善い行為の種子を蒔(ま)いて功徳(くどく)の収穫を得る田地(でんち)という意味で、仏教では心は福田(ふくでん)と言われます。ブッダは自らを「自身を耕す者」とし「この耕作を行ったならば、あらゆる苦悩から解き放たれる」と教えています。それは行為(修行)によって心を耕すことです。
人間だけが心一つで、食べたいもの、飲みたいもの、行きたいところ、したいことを決められると言われます。この四つでほぼ私たちの人生ということになり、私たちは自分の心一つで人生を築いてゆける価値ある存在と言えます。思いが言葉となり、言葉が思考をもたらせ、思考がアイデアを産み、アイデアが実行されてこそ実りをもたらせるのです。AI化、地球温暖化が進み、争いの絶えない世界の中で人間の新たな生き方を模索し、勇猛に実行してゆくことが大切です。今こそ、「転識得智(てんじきとくち)」(学んだ知識を生きる力へ転換する智慧)を発揮することが重要です。

村田恒夫

エレクトロニクスが実現する未来

村田恒夫
株式会社村田製作所 代表取締役会長兼社長

村田製作所は1944(昭和19)年に創業し、本年は75周年の節目を迎えます。創業者の村田昭は四条大宮に「村田製作所」の看板を掲げ、家業である清水焼の窯業技術を基に陶磁器の新しい可能性を追求しました。1949年には京都大学の田中哲郎先生にご指導いただき、「産学連携」の取り組みの中でチタン酸バリウム磁器コンデンサーの量産に成功しました。京都の地で多くの人々に支えられたことが会社の発展の大きな礎となり、現在の成長につながっていることに感謝しています。
経営理念として「社是」を定め、従業員全体で共有し、日々の仕事に取り組んでいます。「技術を錬磨し 独自の製品を供給して文化の発展に貢献する」という思いは、「ムラタのモノづくり」の原動力となり、エレクトロニクスの進化に貢献してきました。私たちの目的は豊かな暮らしの実現に貢献していくことにあります。自分たちのあるべき姿を「Innovator in Electronics」という言葉で表し、イノベーションを先導することに情熱を注いできました。
これからも、社是に込められた思いを大切にしながら未来に貢献する挑戦を続けてまいります。

森島朋三

多様性こそが大学の価値

森島朋三
学校法人立命館 理事長

グローバル化や人工知能が進化の時代を迎え、いま、あらためて既成の価値観や社会システム、そして「人間」とは何かが問われています。大学や教育には、「教養とは何か」「知性とは何か」の解を見い出す真摯(しんし)な営みが求められていると考えるべきでしょう。
立命館は、国際系学部の設置や立命館アジア太平洋大学(APU)の開学を通じてグローバル教育を世に問うてきました。それが目指したものは、留学生数や英語教育の充実などにとどまらない、世界に通用する多様性、そして多様な価値観の「ぶつかり」のための場の創出でした。今春新たに「グローバル教養学部」を開設し、世界有数の研究大学であるオーストラリア国立大学と立命館大学の二つの学位を得る日本初の共同学士課程を実現しました。この学部がさらなるグローバル化を牽引(けんいん)することになります。
京都は1200年の歴史の中で、世界の多様な文化を積極的に受容してきた知的創造都市です。大学はもっと京都に学ぶべきであり、都市と大学の融合、真のオープンユニバーシティーを目指すべきであると思います。この気概をもって、今後も邁進(まいしん)してまいります。

加藤俊治

「Smart Work」で新たな価値提供を

加藤俊治
富士ゼロックス京都株式会社 代表取締役社長

技術革新とグローバル化で競争が激化する中、企業が持続的に成長していくためには、業務の効率化とともに多様な人材を生かし、個性や創造性を発揮できる「働きがい」のある環境の提供が求められています。
そのために私たちは「コミュニケーションの革新」の提供を通じて、創造性を発揮する働き方の実現を目指しています。例えば、複合機を通じて情報をクラウドとシームレスに繋(つな)げることやゼロックス独自の先進テクノロジー、AIなどから価値ある情報を抽出・活用することにより、従来の「働き方改革」を超えたイノベーション創出に貢献したいと考えています。
当社は本年12月で創立40周年を迎えます。「森の中で二股の道があり、一方は踏みならされた、もう一方は誰も通った跡がなかった。私は後者を選んだ。それが大きな違いをもたらした」(R・フロスト『行かなかった道』より)。私たちはこのフロンティア精神をゼロックススピリットとして会社設立当初より大切にしています。
改めてこの精神を心に刻み、富士ゼロックスが提供する"Smart Work Innovation"により、地域のお客さまとともに本質的な働き方変革を推進して行きます。

榊田隆之

「お節介焼き」

榊田隆之
京都信用金庫 理事長

新たな社会課題が生まれている現在、金融機関は企業の金融・財務面だけを見ていれば良い時代ではなくなっています。金融支援は重要ですが、根本的な企業再生につながるわけではありません。
大切なのは、事業拡大や技術革新、人や組織の活性化など、企業をもっと強くする本業への支援です。これが地域金融機関の大きな役割へと変化してきたのです。企業のビジネスモデルそのものを強くし、あるいは転換させ、時代に即した価値を経営者と金融機関が一緒になってつくっていくことが求められるようになってきました。
ただ、「言うは易く行うは難し」です。その能力が金融機関にあるかどうかが問われており、私たちは従来と全く違った仕事のやり方に挑戦しています。企業の方々と京都信用金庫の職員が一緒に、さまざまな課題の解決に取り組むプロジェクト方式の仕事を始めました。現在、400を超えるプロジェクトが同時に進行しています。孤独な経営者のそばにいて、元気と勇気を与えることも地域金融機関の役割です。
当金庫は、職員一人一人が「お節介焼き」であることを目指します。

神居文彰

対話と受容、 恥じらいと慎み

神居文彰
平等院 住職

三番目の選択というのがあった。一つ目は何も施さない。二つ目は当初材に限りになく近づけた天然材料。三つ目は化学的合成樹脂を接着剤として使う。文化財修理の用材についてである。文化財は単なるモノではない。オーセンティシティ(真正性)と可逆性と当初部分の保全を前提とし、実験と議論を繰り返しながら慎重に施していく。三番目は異なる素材を間に挟むという最終的な手段でもある。これらはかつての人間関係に存在していた課程と類似する。
インターネットの呟きは、自分の顔を見せることなく言いっぱなしで、対話も成立せず、刺激的な言葉で人間関係を壊していく。凶暴ともいえる煽(あお)りやマウンティングは、意に沿わない相手を回復不能な状態にまでおとしめる。アンガーマネージメント以前に他者への寛容性と理解を全体性によって押しつぶす。思いやりがおもてなしに繋(つな)がる前提のはずが、「おもてなし」が経済用語に列挙されて久しい。こうしたことを恥ずかしいと感じ自身を省みる慎みをもった人間を大人というと教わってきた。小人社会に世界全体が覆われモノすら護れないようで怖い。
人は、結びつき方を探し続けていくのだ。

藤井秀也

人々の豊かな暮らしを実現

藤井秀也
株式会社日立製作所 京都支店長

近年、デジタル技術の進展が産業や社会インフラの再構築を促し、世界中で大きな変化をもたらしています。日立は、人工知能(AI)やビッグデータ分析といったデジタル技術(IT)に加え、制御・運用技術、それらを実現するプロダクトを1社で有する世界でもまれな企業です。この強みを最大限に生かし、より付加価値の高い社会インフラを構築するソリューションを提供することで、社会価値・環境価値・経済価値を実現するのが日立の社会イノベーション事業です。2015年に「SDGs(持続可能な開発目標)」が国連で採択され、さまざまな課題の解決に向けた取り組みが世界各地で始まっています。
日立は創業以来、「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」という企業理念の下、時代とともに変化する社会の課題解決に取り組んでまいりましたが、この思いは「社会イノベーション事業の推進によってSDGsの実現をめざす」という考え方に通じています。
日立はこれからも社会イノベーション事業を推進し、お客さまやパートナーとの協創を通じて、人々の「Quality of Life」の向上とSDGsの実現に向け邁進してまいります。

清水卓智

素直な心になりましょう

清水卓智
株式会社PHP研究所 社長

「素直な心になりましょう。素直な心はあなたを強く正しく聡明にいたします」
弊誌『PHP』に毎号掲げられているこの言葉は、弊社創設者・松下幸之助が、折に触れて述べてきたものです。幸之助は素直な心こそ、お互い人間として最も好ましい生き方をもたらすものではないか、と考えていました。
素直な心というと、人に逆らわず、従順であると思われがちです。しかし、幸之助がいう素直な心とは、私心なく曇りのない心、とらわれずに、物事をあるがままに見ようとする心を指しました。
もしもお互いが素直な心になれば、していいこと、してはならないことの区別も明らかとなり、また正邪の判別も誤ることなく、あらゆる物事に関して適時適切な判断ができる、幸之助は自らもその修養に徹していました。
こうした考え方の根底には、現実には多くの人間が、感情や私心、私欲にとらわれ、時には争ったりして、みすみす自らの発展の道を閉ざしている。その現実に対する、幸之助の忸怩(じくじ)たる思いがあったからかもしれません。幸之助の思いを次代へ、弊社は素直な心の大切さをこれからも訴えていきたいと思います。

岩井一路

「観光・感交・感幸」

岩井一路
株式会社ハトヤ観光 代表取締役社長

古きを慈しみ新しさを生かす京の精神に学び、おかげさまでハトヤ観光は、本年度70周年を迎えます。
ものづくりと精神文化の街である京都は、前回の東京オリンピック開催・東海道新幹線の開通以降、急激に交流人口が増加し、現在では日本を代表する観光都市となりました。しかし近年、訪日外国人の急増などによるオーバーツーリズムが叫ばれ、市民との不調和が大きな問題となっています。観光産業に従事する者として何ができるのかを考えていかなければなりません。一方、人口減少社会において、訪日外国人約26人分の観光消費額(1人当たり6万4千円)が、市民1人当たりの年間消費額に相当する事実は、訪日外国人が新たな消費者であるとともに、重要な納税者でもあることを示しています。
このような状況下、ハトヤ観光では「しつらえ・もてなし」など京の精神を高め、すべての人が幸せを感じられる「感交・感幸」を目指していければと考えています。ラグビーワールドカップを皮切りに、今後、世界的なスポーツの祭典が日本で次々と開催されます。文化と平和の祭典でもあるスポーツイベントを大いに盛り上げていけるよう精進してまいります。

ロバート・ヘイマー

新時代へ

ロバート・ヘイマー
ハイアット リージェンシー 京都 総支配人

2019年も残すところ4カ月となりました。皆さまとともに、記念すべきオリンピックイヤーでもある2020年をよい流れで迎えられることを願っております。
京都はますます観光地としての人気を高めています。桜や紅葉の季節、一年を通じて行われる祭事など、魅力溢れる京都には、遠方からも幅広い層のお客さまがお越しになります。直近では、ラグビーワールドカップが開催予定ですが、試合の前後には多くのファンが京都を訪れ、日本全体が活性化するでしょう。全てのチームの健闘とラグビーワールドカップの成功を祈りたいと思います。
2020年を迎えるにあたり、ハイアットリージェンシー京都では、「新時代へ」というテーマを掲げ、ビジネス戦略を練り、業務計画を立て始めております。令和の時代に相応しいホテルとなれるよう力を尽くしてまいります。そして、「思いやりの心で相手の“最高”を導き出す」というミッションを胸に、京都が誇るべき本物のおもてなしをお届けする存在であり続けること、そして地元京都の皆さまに愛されるホテルであり続けることができるように、より一層精進してまいります。

戸張彰人

持続可能な未来に向けて

戸張彰人
野村證券株式会社 京都支店 支店長

「温故知新」という言葉がありますが、これからの時代に求められるのは、いたずらな「温故」ではなく、明日のための「知新」への意欲を湧き立て、未来を切り開いていくことである、と強く感じている次第です。
「花を見て美しいと思い、音楽をきいて楽しくなり、スポーツに腹からの喜びを感じる。天然の人間にならねばならぬ。この真、善、美の情操の世界に住むことが、本然の人間に立ち返ることであり、私どもの最高の判断力をもたらす根元をなすものである」
これは、野村證券5代目社長の北裏喜一郎が社員に宛てたメッセージであり、昭和から平成、そして令和へ、脈々と語り継がれ、今も大切にされているものです。世情を表すキーワードに、不透明・不確実、混迷・混沌といった言葉が平然と並ぶ昨今故に、改めてこのメッセージが示唆するところをよく考え、大切なものを見失うことなく、新しい時代における企業・ビジネスのあり方などを見いだしていきたいと思います。今日の私たちの決断が次世代のためになることを目指しながら、持続可能な未来に向けて、さまざまな機会を創造してまいります。

新谷秀一

オンリーワンを目指す

新谷秀一
学校法人二本松学院 京都美術工芸大学 理事長

激しく変動する現代社会。その中で生き残れるものは「世界にひとつ」、つまりオンリーワンなるものです。オンリーワンを目指すためには、時代の変化を敏感に捉える感性と柔軟な発想力、確かな技術が必要です。あなたの想像を超える刺激がいっぱいの本学で、想定外のサプライズとの出合いを楽しんでください。そして、伝統と先端技術が融合する「京都」の地で、有形無形の文化や歴史から刺激を受けながら学び、成長してください。
本学は建築やインテリア、そして、幅広い美術工芸分野の創造性やスキルを身に付ける実学の大学です。他大学では卒業後にしか取得できない二級建築士、木造建築士やインテリアプランナーなどの在学中の資格取得実績を着実に重ね、最年少となる20歳の二級建築士も本学から続々と誕生しています。2020年4月に開設の大学院では、個性豊かな研究の実践と在学中の一級建築士試験合格を目指します。
これらの資格は卒業後のあなたのキャリアに大きな付加価値を与えてくれます。オンリーワンの大学で、自分の将来の夢を実現するための財産を手にしていただくことを心から願っています。

吉野孝士

京都の変化と共存社会

吉野孝士
日本たばこ産業株式会社 北関西支社長

京都の街には昔から多くの観光客の方が訪れていますが、ここ数年、カメラを片手に観光する外国の方を多く目にするようになりました。京都には歴史ある町並みや由緒ある神社仏閣が多く存在し、昔ながらの日本文化を感じることができる街です。一方で、京都の街には無線LANや外国語での観光案内標識などがしっかりと整備されており、外国の方が安心して訪れることができる街でもあります。よく「京都はよそ者を受け入れない」と言われますが、今の京都の街中には訪れる人への気遣いや多様性を受け入れ共存したいという思いを感じます。
JTのグループミッションの中には「多様性に価値を認め」というフレーズがあります。私たちJTは、分煙やマナー啓発、新しいスタイルのたばこ製品への取り組みなどで、吸われる方も吸われない方も、快適で、共存できる社会を実現したいと考えております。たばこを取り巻く環境は日々変化しておりますが、京都の街がそうあるように、私たちJTも多様性を受け入れ共存するという思いを忘れず、吸う方、吸われない方の双方が心地よい社会の実現のために活動し続けていきます。

髙坂節三

AIに負けない文章読解能力を

髙坂節三
公益財団法人日本漢字能力検定協会代表理事 会長兼理事長

日本漢字能力検定協会が、日本人の漢字能力を測定する技能検定を始めてから、今年で44年になる。この間の延べ受検者数は4500万人を超えている。漢字はその一字一字が長い歴史と多彩な意味や読みを持つが、日本語の漢字仮名交じり文の中でさまざまな熟語に使われ、日本語の意味・内容を広げ、深めてきているので、漢字検定の学習が日本人の知識を増やし、思想を深めるのに一定の役割を果たしてきたと思う。
さらに当協会では、「漢字を勉強した後、何をすればよいか」などのご意見を頂戴していたこともあり、2013年秋から「文章読解・作成能力検定」を実施してきたが、最近その重要性を裏付ける文章に出合った。人工知能の「東ロボ君」で東大合格を目指して開発をされてきた新井紀子さんが『AI vs.教科書が読めない子どもたち』の著書の中で、「日本の中高生の多くは、中学校の教科書の文章を正確に理解できない。多くの仕事がAIに代替される将来、読解力のない人間は失業するしかない」と結論付け、自らは人間にしかできない読解力強化のための国語教育に集中したいとの意向を示しておられる。

前川重信

独自性を追求し持続的な成長を

前川重信
日本新薬株式会社 代表取締役社長

日本新薬は、医薬品および機能食品事業を通じて高品質で特長のある製品を社会に提供することで、人々の健康と豊かな生活創りに貢献しています。独自性があり、社会から信頼され、評価される組織、すなわち「ヘルスケア分野で存在意義のある会社」を目指すべき企業の姿として掲げています。その実現に向けた行動指針として「チャレンジ」「スピード」「インベスティゲーション」「スマイル」を掲げ、社員一人一人が高い倫理観とスピード感を持ち、目標達成に向けて行動することでステークホルダーとの信頼関係を構築し、誠実な企業活動を推進しています。
当社は、いまだ治療法が確立していない難病や希少疾患の治療剤の開発にも積極的に注力しています。ここ京都から、全世界の病気に苦しむ患者さんやそのご家族の希望の光となる新薬を、1日も早くお届けできるよう今後も果敢にチャレンジしていきます。また、当社が製品を展開するヘルスケア分野での貢献だけでなく、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みをさらに充実し、SDGs(持続可能な開発目標)で掲げられた目標を達成していくことで、社会に貢献していきたいと考えています。

小畑英明

京都モデルこそ、変革期の生き方

小畑英明
日新電機株式会社 代表取締役会長

京都は、高質な文化が多様な人材を集め、人材が産業を興し、産業が生み出す富が文化を磨くという循環の中で1200年を越えて成長してきました。この過程では、最初に文化を支える工芸などの小規模な事業の集積がおこり、そこから大手が育ちイノベーションやグローバル化をリードしていくという中小と大手の連関が成長をけん引してきました。また、京都の企業は規模よりも長寿であることに価値を見いだしてきました。長く事業を続けることが社会により大きく貢献する道であること、そして長寿であるためにはイノベーションが不可欠で、そのことが結果として成長をもたらすことを長い歴史の中から学んできたのです。
高質な文化を核にして多様な人材が新しい技術や産業を創出し、中小も大手も共に長寿を目指して変革を続けるという京都の生き方は、少子高齢化を乗り越え、新しい産業や社会構造をつくっていくモデルになるのではないでしょうか。新しい産業の創造が求められている今、京都自らが京都モデルを力強く実践するとともに、その生き方を広く国内外に発信していくことが大事だと思います。

鈴木順也

変化=進化

鈴木順也
NISSHA株式会社 代表取締役社長

当社は変化することによって、進化し成長してきた。この考え方は90年前の創業から今日まで、そして未来に向けても変わらない。当社は昭和の時代には高級印刷の会社として広く知られたが、既にその時期に未来のために新たなコア技術の導入に熱心であった。平成の時代にそれらの技術が開花して世界に販路が拡大、さらに企業買収も駆使した結果、グローバル企業となった。近年は精密部品の会社として認知されている。令和の時代、対象市場と製品は一層多様化に向かう。医療で使われる高機能な資材、モビリティー社会を想定した機能部品、脱プラスチックなどの社会課題に対応する素材の加工を手掛ける。いずれも、畑違いに見えるかもしれないが、決してそうではない。コア技術を応用できる市場分野を積極的に探索した結果だ。企業を取り巻く市場環境やお客さまニーズは常に変化する。私たちは、自らの能力をリニューアルあるいは追加しながら変化に適応しなければならない。そして、場合によっては事業を乗り換えることが必要である。変化の際には失敗や苦労はつきものだが、それを恐れて立ち止まれば成長から遠ざかる。その危機感こそが、仕事の原動力である。

武田一平

お客さまに感動いただける創造業

武田一平
ニチコン株式会社 代表取締役会長

ニチコンは1950(昭和25)年、コンデンサーを手掛ける電子部品メーカーとしてスタートし、その後、回路製品を手掛け、電気を蓄え効率的に使う技術を磨いてきました。この技術を生かして2012年には、世界で初めて電気自動車(EV)から電気を取り出し、家庭へ給電する「V2Hシステム」を開発し、「EVは走る蓄電池」という新たな価値を提案しました。当社の可搬型給電器“パワー・ムーバー”は昨年、台風21号の影響で停電が続いた地域に、燃料電池自動車「MIRAI」から、給湯器の点火、洗濯機への給電、スマートフォンの充電などを行いました。さらにEVの基幹部品であるフィルムコンデンサーも増産体制を整え、高まるEV需要に対応していきます。加えて、FIT(固定価格買い取り制度)期間終了を迎え注目される家庭用蓄電システムでも国内累計販売台数ナンバーワンです。この他にも、がんの革新的な治療法として注目されている粒子線治療に向けた「医療用加速器電源」でも高いシェアを有しています。
ニチコンは蓄電のエキスパートとして、お客さまに喜ばれ、感動いただける新しい価値(コト)づくりを通してご期待に応える企業であり続けたいと考えています。

若菜真丈

「京都 日本画新展」を通した取り組み

若菜真丈
西日本旅客鉄道株式会社 執行役員近畿統括本部京都支社長

JR西日本では、日本画を志す若い人材の活動を奨励し、京都の文化の発展に寄与することを目指して、2008年度から「京都 日本画新展」を実施しています。また本年は、「梅小路京都西駅」開業に合わせ、「京都 日本画新展」に出品歴のある画家100人が嵯峨野線沿線の自然や歴史的建造物などを描いた作品を二条城において展示する特別企画も行いました。
京都は、古い文化遺産と美しい自然景観のある千年の都ですが、その魅力の源泉は、長い年月をかけて芸術や工芸、また都市としての生活様式を蓄積してきた「文化」にあると考えています。まもなく、世界の博物館の専門家が集うICOM京都大会が開催されます。2021年度末に文化庁の京都への全面的な移転、また23年度に、日本初の公立の絵画専門学校として創設された京都市立芸術大学が、JR京都駅東部へ移転します。
JR西日本は、京都の奥深い魅力の源泉である文化発信を「京都 日本画新展」などを通じて、文化と観光の連携に取り組むとともに、観光地までのスムーズなアクセスを目指す「観光しやすい京都」の実現に努めてまいります。

大野 敬

地域に寄り添い、愛される企業に

大野 敬
西日本電信電話株式会社 京都支店長

AIやIoTを含む情報通信技術は日々急速に発展し、経済社会における適用領域が広がりつつあります。一方で、世の中には「少子化・高齢化への対処」、「人口減少対策と地域活性化への取り組み」、「グローバル社会への対応」など、さまざまな社会的課題も存在しています。
NTT西日本は「ソーシャルICTパイオニア」として、こうした課題に対し、情報通信など新たな技術を用い、先頭に立って解決に導いていくことをめざしています。同時にそれぞれの地域が抱える課題に対し、解決策を講じ、地域を活性化し元気にしていくビタミンのような存在になりたいと考えています。私たちが有する設備やネットワーク、最先端の技術などを用い、地域活性化への貢献をしてまいりたいと思います。
また、これまで「京都・まち美化大作戦」や「京都マラソンの給水ボランティア」などの活動に多くの社員が参加させていただいたり、一部施設を地域の皆さまに開放し、展示やサークル活動にご利用いただいています。こうした活動も継続しながら、地域の皆さまに寄り添い、愛される企業をめざしてまいります。

中澤 勇

河原町から京都の街づくりに貢献

中澤 勇
株式会社中澤ホールディングス 代表取締役社長

1970(昭和45)年11月、当時の最新デザイナーズブランドをそろえた商業施設をオープンし、約48年間河原町で運営してまいりました。店名の「BAL」はフランス語で舞踏会を意味し、「パーティのようにいろいろな人が集う場所」という思いが込められています。
2015年のリニューアルオープンを機に、アパレルだけでなく、家具・雑貨・食品なども取りそろえ、ミドル・シルバー世代と、その子ども、孫世代の、親子3代で一緒に楽しめる空間づくり、新しい発見のある商業施設を目指し、常に時代の半歩先を行く、上質なライフスタイルのご提案をしております。
京都は世界でも屈指の国際観光都市であり、ますますその注目度は高まっています。その環境下にあって、京都の中心部では新たなショップの出店が続き、街の景色が大きく様変わりしていますが、その中でも河原町は今なお京都らしさを訴求しうるエリアが隣接しています。その河原町を再整備・活性化させることは、街の価値を高めることに直結します。BALは、次代のトレンド発信地として、そして河原町のランドマークとして、これからの京都の街づくりに貢献していきたいと思います。

岡田博和

4分の1歩先を行く

岡田博和
TOWA株式会社 代表取締役社長

TOWAは4月に創業40周年を迎えました。節目を無事迎えることができ、皆さまには厚くお礼申し上げます。
TOWAはこれまで半導体製造装置メーカーとして画期的な製品・技術を多く生み出してまいりました。その原動力となりましたのが「クォーター・リード」の理念です。これは、お客さまのニーズを正確にくみ取りつつ、早すぎることなくお客さまが求めるタイミングで新技術製品を提供するという考え方です。この考え方は脈々と受け継がれており、現在は不良品を作らない装置の開発や金型の洗浄時間を大幅に短縮する技術の開発に取り組んでおります。
近年は環境への配慮など新たな要素もますます企業に求められるようになってきておりますが、TOWAはここでもこの理念に基づき、いち早く中古機再生事業を強化しており、環境面に配慮した経営を実践しております。また、半導体以外の分野では、医療用機器をクリーンルーム内で一貫生産できる国内でも数少ない設備を整えて生産しており、健康面でも社会に貢献しております。
TOWAは今後も、社会・お客さまのニーズの少し先を行く製品・技術を開発してまいります。

千 宗室

受け継がれる茶の湯の心

千 宗室
裏千家家元

裏千家は、千利休の孫にあたる千家三代元伯(げんぱく)宗旦の四男仙叟(せんそう)宗室が今日庵として道統を継いだことに始まります。
茶道は美術工芸や建築、造園、禅、料理、香、花、書など幅広い分野からなり、日本を代表する伝統文化と言われます。利休居士は茶の湯の精神を「和敬清寂(わけいせいじゃく)」の語で示しました。爾来(じらい)450年、各時代に生きる人々はその精神を守りつつ、それぞれの「今」にかなう茶の湯の姿を模索してまいりました。
例えば、裏千家十一代玄々斎は、1872(明治5)年の第1回京都博覧会において海外からの来訪者をもてなすために「点茶盤(てんちゃばん)」を考案しました。椅子とテーブル式の「立礼(りゅうれい)」というこのスタイルは、今では広く一般に親しまれています。
2014(平成25)年より、宗家では170年ぶりに重要文化財指定の裏千家茶室群全域の大修復を行っています。先人から受け継いだ伝統を大切にしながら、未来へと受け渡していくための営みを続けていく。学校茶道の推進をはじめ、若い茶の湯者の育成や伝統文化に関心の高い中高年層へのアプローチなど、これからも時代に即した茶の湯を実践してまいります。

白波瀬 誠

豊かな地域社会の発展に向けて

白波瀬 誠
京都中央信用金庫 理事長

今年も中信杯全京都学童軟式野球選手権大会が始まりました。小さな小学生たちが、白球を一生懸命追いかけ、ファインプレーで仲間と抱き合って喜びを分かち合う。そんなほほ笑ましい姿を見るたびに、すがすがしい気持ちになります。
さて、当金庫は今年、国連が提唱する「持続可能な開発目標(SDGs)」に賛同し、事業活動を通じてSDGsの達成に尽力することを宣言しました。
「社会的公共機関として地域社会の発展に寄与するとともに、経営の健全性を確保する」。これは、当金庫の社是の一節です。社是は1980年、金庫創立40周年の節目に制定され、この精神にのっとり産業の育成や芸術文化の継承など、日々の事業活動を通じ地域の活性化に努めてまいりました。社是制定から40年を経過した今、その受け継がれた精神は、まさにSDGsの目指す理念にも合致するものと考えております。
おかげをもちまして、当金庫は来年創立80周年を迎えます。今回のSDGs宣言を機に、改めて地域社会の発展と明日を担う子どもたちが健やかで心豊かに育む社会を築くお手伝いができればと思っております。

齋藤 茂

未来映画の世界はもうすぐ現実に

齋藤 茂
株式会社トーセ 代表取締役会長

移動体通信の進化は留まるところを知らず、いよいよ産業革命と言われるほどの進化が5Gの普及によって現実のものになります。自動運転やクラウドゲーム、遠隔操作、IoTなどの進化は5Gがなければ出来ないことです。これにより今までにないサービスや楽しみが生まれたり、多くの命が救われたり、日常生活に大きな影響を及ぼします。一方で、モノを持たなくなってシェアリングエコノミーなどが普及することにより、新たに生まれてくる産業や衰退する産業が出てきます。
われわれの業界は、自動運転などにより人々の「余暇時間」が増えることに期待をしていますし、その時間は幸運にもエンタメ業界の成長にプラスに働くと私は考えています。もちろん、今までになかった楽しみ方や生活様式も生まれてくるので、われわれもさまざまな技術革新やアイデアを生む努力をしなければ生き残れません。そのことから社員に頭を使うことを常々啓発しています。アイデアは無限でAI(人工知能)もいまだ追いつけない領域であるからです。
ひと昔前に見ていた未来映画の世界がもうすぐ現実のものとなるのです。その世界を皆さまと一緒に楽しみたいと思っています。

小倉 勇

知恵と工夫で新しい未来を創造

小倉 勇
株式会社たけびし 代表取締役社長

たけびしは1926(大正15)年の創業以来、京都・滋賀地区を主力地盤に、三菱電機製品を中心とした産業用電機・電子機器を取り扱う技術商社として、多くのお客さまに支えられながら今日の経営基盤を築いてまいりました。
そして現在、当社は中期ビジョン「T-Link1000」を掲げ、2022年度連結売上高1千億円を目指し「労働力不足に対応したロボットビジネス」などの成長分野への取り組みに注力するとともに、当社の強みとする「つなぎの技術力」を生かしたオリジナル製品の販売を通じて「AI・IoT関連ビジネス」の拡大にも注力しております。
また、地域社会の発展に貢献できる企業でありたいとの思いから、このたび、京都市と「西京極総合運動公園 陸上競技場兼球技場」のネーミングライツ契約を締結いたしました。8月1日より「たけびしスタジアム京都」となる当該施設が多くの皆さまに広く認知され、より親しまれる場として活用されることを願っております。
当社はこれからも、時代とともに変わり続けるお客さまのご要望に真摯(しんし)に耳を傾け、知恵を絞り、工夫を凝らして新しい未来を創造してまいります。

瀧井傳一

「現在(いま)をたがやし、未来(ゆめ)をはぐくむ」

瀧井傳一
タキイ種苗株式会社 代表取締役社長

私たちが毎日食する野菜や癒やしを与えてくれる美しい花。タキイ種苗はその源である種を扱うことを生業(なりわい)としています。
当社は1835(天保5)年に京都で産声を上げ、「タネから始まる無限の創造性を活かし、世界の人々にとって新しい期待と感動にあふれる、健康的で豊かな生活の実現に寄与する」という会社のミッションの下、農園芸界の発展に寄与すべく種苗業に取り組んでおります。
ご承知の通り、種は工場でできるものではなく、自然と向き合いながら地道な作業を積み重ねることでしか作ることができません。猛暑や豪雨など世界的に異常気象が問題となり、世界人口の増加に伴い農業を取り巻く環境が大きく変化する中、日本国内のみならず世界の人々や社会の要望に応えるべく夢のある優良品種を創造するとともに、その種を安定的に供給し続けることが当社の社会的責任です。
さまざまな分野で技術が進歩し、食生活や栄養補給の方法が多様化する中でも、豊かな食文化と潤いのある生活の実現のために、豊富な遺伝資源と確かな技術、そして農業への深い愛情をもって、これからもタキイは種苗業に邁進(まいしん)してまいります。

斎藤英男

創業者精神の継承

斎藤英男
大和ハウス工業株式会社 京都支社 支社長

今年で創業64周年を迎えた大和ハウス工業には、創業者である石橋信夫から託された「社会に役立つ事業を続けて、創業100周年に売上高10兆円の企業グループになる」という大きな夢があります。
その夢の実現に向けて私どもが大切にしているのが「創業者精神の継承」です。会社には従業員とその家族をはじめ、協力会社や取引先などを含め数多くの人たちの生活を守っていく責務がある。会社は社会の公器だという考えです。
そんな創業者精神を継承していく上で最も大切なことは「人財の育成」に他なりません。そのためには業務に関わる知識や技術、技能の習得はもちろん大切ですが、それとともに人間力の向上に向けた取り組みが欠かせないといえます。
お互いの心を開いた対話を重ね、分かり合うことで信頼関係を構築する。それを積み重ね、若い「人財」を育成し、社員一丸となって「世の中に貢献できること」をさらに生み出していきます。これからも大和ハウス工業は創業者精神を大切にしながら夢の実現に向かって邁進(まいしん)してまいります。

林 惠子

情熱の継承

林 惠子
京都ブライトンホテル 総支配人

5月26日、「上京ではぐくまれたおもてなし文化」と題して、京都御所西文化サロンを開催しました。武者小路千家若宗匠と上七軒の尚鈴さんをゲストに、 有斐斎弘道館濱崎館長をコーディネーターにお迎えして、北野天満宮さんについて語っていただきました。
現在、全国で行われている「献茶祭」。秀吉の時代に北野天満宮で行われた北野大茶湯に由来するものですが、今のような形で行われるようになったのは1878(明治11)年、北野天満宮が最初とのこと。その他にもそれぞれの伝統や文化が神社仏閣と意味のある結び付きを経て、時代に沿って共存共栄してきたことにあらためて感銘を受けました。新しく生まれたものがそこに在り続けることは稀有(けう)なことですが、存在に命を吹き込み続けるのはその時代を生きる人々の情熱に他ならないと思います。京都こそ、各時代に生きた人々の、「情熱の継承」によって在り続けているのではないでしょうか。
当ホテルは今年31年目。多くのお客さまのご期待にお応えするために、そして、いつの日か、京都ブライトンホテルが京都の一部になれることを夢見て、「ブライトンマインド」という名の「情熱」を継承してまいります。

北川公彦

楽しく継承する、京都の思い

北川公彦
株式会社大丸松坂屋百貨店 執行役員 大丸京都店長

平成が終わり、「令和」が幕を開けました。「令和」には“穏やかな素晴らしい年”という意味が込められているそうです。
「令和」の名にふさわしい時代をつくるために、“伝承”と“進化”が重要な切り口だと思っています。守らないといけないことをしっかり認識し、次世代へと“伝承”していく。さらに、時代に合わせて両世代で“進化”させることで、継続が実現されると考えます。
そこで弊店では、未来を支える子どもたちに“伝承”する取り組みを二つ行っています。一つ目が、“伝承の紹介”として、弊店のキャラクターであるデッチーくんが、企業や文化施設、学校に訪問し、思いやこだわり、取り組みの風景をブログにてお伝えしています。二つ目が、“伝承の場”として、小学生以下のお子さまを対象に、親子で楽しく学ぶ「だいまるきょうとっこがくえん」を開校。京都の歳時記・文化に関したものや、芸術・職業体験など、さまざまな授業やイベントを行っています。
くしくも今年は、京都で日本初の小学校(番組小学校)が生まれて150年。弊店の取り組みが“みらい”への伝承の一助となれば幸いです。

中山永次郎

暮らしの灯り

中山永次郎
ANAクラウンプラザホテル京都 代表取締役社長

子どものころ、せいぜい小学校低学年のころだったでしょうか。近所のお兄ちゃんたちの遊びに一所懸命に参加していたころです。夕暮れになると、誰かが、「もう、帰らないと、お母ちゃんに叱られる」と言い出すと、皆われに返ってクモの子を散らすように、一斉に散会していたことを思い出します。
あっという間に日が暮れて、夕飯に遅れまいと家路を急いでいると、すでに暗がりになった帰り道、あちこちから家々の灯(あか)りが見えます。灯りを頼りにすると、かえって、一人が心細くて里心を覚えたものです。そういう、まちの灯りがありました。帰りを待つ暮らしの灯りというか、家族の生活や夕飯の匂いが濃厚にありました。いまや、まちの情景は一変しました。しゃれたマンションが建ち並び、一階は、ブティックやレストラン、バーがあるおかげで、ウインドーやネオンサインが常夜灯になっています。
子どもたちの行く、これからの未来に、必ず常夜灯があろうとは思えません。あの暗がりの中を、家々の灯り、暮らしの灯りを頼りに、ときにまわり道になっても、ゆっくりと未来を歩いてみることも大切なことだと思うのです。

久保貴義

人生100年時代の幸せをアシスト

久保貴義
積水ハウス株式会社 京都支店長

来年創業60周年を迎える積水ハウスは、「『わが家』を世界⼀幸せな場所にする」というビジョンの下、2020年春に向けて新プロジェクト「プラットフォームハウス構想」に取り組んでいます。「プラットフォームハウス」とは、住まい手のデータに基づくサービス開発・提案を通じて「健康」「つながり」「学び」といった無形資産を生み続けて、人生100年時代の幸せをアシストする家です。例えば「健康」では、脳卒中・心筋梗塞などの急性疾患や転倒・転落などの家庭内事故が発生した場合に異常を検知、自動通知を受けた窓口から安否を確認し、必要に応じて救急通報して早期治療に結び付けます。また、住まい手の呼吸や心拍数といった生体データを取得し、疾病の予兆を読み取る可能性を高めることができる家として健康をアシストします。さらに予防の面でも、住まい手の生体データと住環境データを連動させて、温度、湿度、照明などをコントロールし、快適で心地よい幸せな生活をサポートします。
長い人生を幸せへと導いてくれる住まい。その実現に向け、私たちは愚直に取り組み続け、社会的価値を創造してまいります。

増山晃章

「日本の心」

増山晃章
星和電機株式会社 代表取締役社長

戦後教育を受けたわれわれは、日本が世界最古の国であるということをあまり知らない。中国やエジプトは数千年の歴史というがそれは地域の文明であって、中華人民共和国は建国70年、エジプトはイギリスから独立して97年の若い国である。アメリカは240年余り、フランスの建国は1789年である。日本はというと古事記や日本書紀に、初代である神武天皇が即位した紀元前660年が建国と記されている。聖徳太子が十七条の憲法を作ったのが西暦604年、それですら1400年以上前のことなのである。
建国以来、終戦後のアメリカによる一時的な占領はあったものの日本という国は滅ぼされず生き延びてきた。その長い歴史の中で培われてきた精神文化がある。それは森羅万象すべてのものに感謝し、人を大切にして生きるという「おかげさま」の心である。それはやがて「おもてなし」の心となり、その食やサービスは世界の人々を魅了し、職人のこだわりは高品質の製品を生み出している。「自分さえ良ければいい」という昨今の世の中、自国第一や拝金主義の対極にある日本の心を忘れてはならない。人は支え合い生きなければやがて滅びてしまうのである。

佐々木喜一

全ての人が「自分越え」を目指して

佐々木喜一
成基コミュニティグループ 代表 兼 CEO

少子高齢化が加速し、「人生100年時代」と言われる中、一億総活躍社会の実現に向けて、一人一人が「より以上=自分越え」を目指していくことが求められています。
あらゆる世代の、あらゆる環境にいる人の志やモチベーションを高め、学ぶ機会や場を提供していくこと。そのことが今、社会から求められている弊社の姿であると考えています。
その中で、弊社自身も自分越えをしていかなくてはなりません。弊社は創立以来、有為な国際人の育成という理念の下、社会の課題を解決することを目指してきました。その考えはまさに「SDGs(持続可能な開発目標)」に通じるものであると思います。より高く、大きな視点に立ち、人づくりを通して、社会貢献のための具体的な活動、行動を起こしていくことをお約束します。
2020年には大学入試制度改革がスタートし、また東京オリンピックが開催されます。受験生やアスリートだけではなく、日本の全ての人、組織が「自分越え」を実現していくことができるよう、私たちもさまざまな事業を展開していきます。ご期待ください。

阿久津勝己

京都の未来をお客さまとともに

阿久津勝己
キリンビール株式会社 京滋支社 支社長

キリングループはコーポレートスローガン「よろこびがつなぐ世界へ」の下、お客さまや社会とともに、将来にわたり持続的に存続・発展するため、「健康」「地域・社会コミュニティー」「環境」の三つの社会的課題の解決に重点的に取り組んでいます。キリンビール京滋支社も、商品・サービスを通して京都のお客さまに寄り添った営業活動にチャレンジしています。
例として、今年創始1150年を迎える祇園祭。弊社は基幹ブランド「一番搾り」の「祇園祭デザイン缶・瓶」発売を通じて、先人の思いを新しい世代へつなぐ伝統文化支援に長年にわたり取り組んでいます。また、原料には亀岡産のビール大麦と与謝野産のホップを使用させていただくことで、ビール造りを通して地域経済の活性化に継続して寄与していきたいと考えております。
京都は世界中のお客さまを魅了してやまない都市です。キリングループは、これからも世界中のお客さまに嬉しい驚きや発見をもたらす「世界最高品質の飲みもの体験」を通して、企業の社会的責任を果たすとともに、京都の発展に貢献していきたいと考えています。

松山靖史

冒険と本能

松山靖史
株式会社しょうざん 代表取締役社長

私は「冒険と本能」という言葉が好きです。今年76才になりますが、この言葉を聞くと、なにかワクワク、ゾクゾクし、どこかに行きたいという衝動に駆られます。
近年、海外から来られる若い方々が、安宿に泊まったり、野宿している姿を見ると、何か私自身が失った自由の風を感じ、うらやましく思います。
若い時は、現在と比べ旅行書は数少なく、唯一手に入ったのは『ヨーロッパ(1日5ドル)の旅』という本でした。当時1ドル360円でしたから、宿泊・食事も含めて1800円で1日過ごすというその本を夢中で読みあさりました。20代からこれまで、ただ行きたいという一心で、下調べもせずに海外の見ず知らずの土地によく出掛けました。知らない土地でもナビを使わず、迷うことなく目的地に行けるのは、若い時に培った本能が今でもまだ生きているからだと思っています。
今はスキーに夢中になっています。ばかと言われようが、人に迷惑を掛けず何かに挑戦し、自由でやんちゃな、愉快な人生を歩みたいと思ってます。
今こそ、クラーク博士ではないですが「高齢者よ大志を抱け」です。

松井 雄

人に寄り添うのは、 人

松井 雄
株式会社公益社 代表取締役社長

終活、エンディングノート、家族葬…。今、人生の終わり方を早くから考える方が増えています。時代の変化に触れていると思うのです。これほどまでに「死について考えること」が身近になった時代はあっただろうかと。
人の生き方が多様化しています。だからこそ、その終わり方も多様化していて当然です。人生の節目の一つ、結婚式もさまざまな形式が生まれています。私たちの業界にこんな話があります。「結婚式の流行が、20年後にお葬式にやってくる」。ますます、お葬式の形式は変わるでしょう。そのとき、公益社に何ができるのか?どんな価値をお届けできるのか?試行錯誤の真っただ中ですが、その中心が「人」であることは揺らぎません。
公益社には、さまざまな人間がいます。お客さまのご葬儀で、自分の親を重ね、思わず涙する者がいる。プロは泣くべきではない、と自らを律する者もいる。どちらが正しいのか。いえ、どちらも正しいのだと思います。いちばん大切なのは、一人一人の社員が一人の人間として、ご葬儀に、お客さまに向き合うことですから。人に寄り添うのは、人しかいない。その心を忘れずに、次世代を歩んでいければと存じます。

森口浩紀

地球を舞台にあらゆる交流を創造

森口浩紀
株式会社JTB 京都支店長

「感動のそばに、いつも。Perfect moments, always」。JTB全社員が、胸に刻んでいるブランドスローガンです。「お客さまに感動を提供するため、近しい存在であり続けること」「お客さまが感動で満ち足りたとき、その傍らには私たちがいること」を約束したものであり、私たち自身がお客さまと向き合う全ての瞬間に、真摯に全力を注ぐという意思を込めています。そして、私たちJTBの事業ドメインは「交流創造事業」であり、それはJTBならではのソリューションの提供により、地球を舞台にあらゆる交流を創造し、お客さまの感動・共感を呼び起こすことを目指しています。
素晴らしい歴史と文化、伝統、そしてイノベーションの街「京都」において、私たちは100年の歴史の中で培った「人と人」「人と場所」「人とコト」を結び付ける力を発揮し、自治体や学校、企業の方々と共に地域の魅力を育み、新たな文化とビジネスの創出を通じて、地域や社会の課題解決に向けて尽力していきたいと考えています。
これからも、交流創造事業へのあくなき挑戦により、国際文化観光都市京都のさらなる発展、豊かな社会の実現に貢献してまいります。

湊 和則

変化を恐れずチャレンジする

湊 和則
株式会社ジェイアール西日本ホテル開発 代表取締役社長

発展し続けている国際観光都市京都へお越しになる観光客は、訪日外国人を中心に今後も増えていく見通しです。
こうした環境下で、「ホテルグランヴィア京都」に加え、新たに京都駅八条口に宿泊主体型ホテルである「ホテルヴィスキオ京都 by GRANVIA」を開業しました。これまで「ホテルグランヴィア京都」の運営で培ってきたノウハウを生かし、洗練された品質と先進的で機能的なサービスの提供により、内外の観光やビジネスユースなど幅広いニーズに応えていきたいと考えています。
「平成」から「令和」へ新しい時代を迎え、当社を取り巻く環境はかつて経験したことがないほど急速に変化しています。世界中から来られるお客さまの多様なニーズに応えていけるよう、多言語への対応やIT技術を積極的に活用したスピーディーで利便性の高いサービスの提供に取り組むとともに、徹底した「顧客起点」でおもてなしの品質を高めてまいります。
これからも広く内外のお客さまに選んでいただき続けるホテルとなるために、変化を恐れずチャレンジしていきたいと思います。

瀬良知也

「キセツをタカラモノに。」

瀬良知也
株式会社ジェイアール西日本伊勢丹 代表取締役社長

ジェイアール京都伊勢丹は2017年に開業20周年を迎え、それを機に「世界最高のグローカルストア」を目指すことを宣言しました。地元京都でその感性と価値(ローカル)を見つめ、京都が認める世界基準の価値(グローバル)を取り入れた、新しい店づくりに挑戦していくという宣言です。
現在、来春の全面開業を目指し、2〜5階の大規模リニューアルを段階的に進めています。この中で、京都の感性に根差しながら、今日的で豊かな暮らし方を発見する場(コンセプトショップ)として「TEBACO(テバコ)」をお披露目する予定です。京都の感性を掘り下げると、 “季節の移ろいに呼吸を合わせて、自分らしさを取り入れながら、今の暮らしを楽しみ尽くす感性”と言い表せるかもしれません。「キセツをタカラモノに。」というテーマの下、ちょっと秘密にしたくなる、奥深いものが詰められている「玉手箱」を開けたときのような感覚を体験していただくショップを目指していきます。京都の美意識や暮らし方の由来をよりどころとしながら、楽しみ方に必要なモノ・コトを衣食住にわたって取りそろえ、京都の新しい感性と価値を発信してまいります。

垣内永次

創業から変わらぬ社会発展の思い

垣内永次
株式会社SCREENホールディングス 取締役社長(CEO)

SCREENのルーツは、1868(明治元)年に京都で創業した「石田旭山印刷所」にあります。“現状に甘んじず、常に思考を巡らせ、新しい事業や製品の創造に果敢に挑む”創業の精神「思考展開」は、私たちのDNAとして継承され、印刷からエレクトロニクス、エネルギー、ライフサイエンスなどへとグローバルに活躍の場を拡げる製造装置メーカーとして成長を続けています。
当社グループには、「未来共有」「人間形成」「技術追究」という企業理念があり、この実践が当社の社会的責任(CSR)を果たすことになると考えます。環境負荷低減に貢献する製品・サービスの提供や、従業員が生き生きと活動できる環境づくりと人材育成プログラムの充実、実効性のあるガバナンス体制の構築など、ESG(環境・社会・ガバナンス)の課題に積極的に取り組んでいます。また、2016年には「国連グローバル・コンパクト」に署名し、国連が定める「持続可能な開発目標(SDGs)」の実現に向けて活動しているのも、企業理念に通じています。私たちはこれからも、あらゆるステークホルダーからの信頼と期待に応え、サステナブルな社会の実現を目指してまいります。

上田勝康

総合的に健康を支える

上田勝康
株式会社三笑堂 代表取締役会長

今年、創業90周年を迎えた三笑堂は、「医療を通じて社会に貢献する」をテーマに、京都本社を中心に関西一円に支店・営業所を設け、各地区で地域密着型の事業を展開している総合医療商社です。
当社が扱う製品は医療機器・福祉用具・ジェネリック医薬品・研究機器など、皆さまの健康を総合的にサポートできることが最大の強みです。介護ロボットのご提案や、IoT技術を基盤とした医療VR(仮想現実)システムなど、新しい技術に積極的に対応し、超高齢化社会に向けて、業界を牽引(けんいん)していければと考えております。
人の命・尊厳に直結する責任ある使命を胸に、日々スピードと誠意を持つとともに、「真ん中に笑顔がある会社」の社名の下、人との繋(つな)がりを大切にし皆さまに笑顔になっていただけるよう、社員一丸となって邁進(まいしん)してまいります。
一人一人が皆さまに、「笑顔」で届ける安全で安心なサービスを提供し続けるために、社員の教育・研修にさまざまな取り組みで力を注ぎ、後世にこの企業文化を継承していきます。

木下宗昭

新たな価値創造を京都から

木下宗昭
佐川印刷株式会社 代表取締役会長

5月1日より、元号が「令和」と改められました。新元号は日本最古の歌集「万葉集」梅花の序文の引用であることはご存じの通りです。この万葉集が編纂(へんさん)された頃、現存する印刷物では世界最古といわれる「百万塔陀羅尼」の制作が日本でスタートいたしております。
以来、印刷の技術は「遠くへ想いを伝える」「広く情報を伝える」手段としてさまざまな革新を経て進化してきました。平成の時代にはデジタル技術が印刷をはじめ社会を大きく、ダイナミックに発展させました。
令和2年、東京オリンピックの年に佐川印刷は創業50年の節目を迎えます。技術の進化、社会の変革はますます加速していきます。その中で私どもは培ってきた印刷のノウハウを生かして、データベースの構築やWEBへの展開、さらには物流資材の調達やRFID(電波による個体識別)の技術開発、軟包材、パッケージ事業など従来のビジネスの枠を超えた新たな価値創造を推進し続けます。
歴史的文化と先取の気風溢れる京都から世界へ。新たな技術開発とコミュニケーション文化の発展に向けて、佐川印刷はチャレンジを続けてまいります。

松田 武

グローバルマインドを身に付ける

松田 武
京都外国語大学・京都外国語短期大学 学長

グローバル化による世界の一体化と多様化が進み、その結果、地域格差が同時に進む中で、地球規模の課題に各国が一致協力して取り組むことの重要性が高まっています。この課題を解決するにあたり最も必要なこと、それはグローバルマインドを身に付けていることではないでしょうか。顧みれば、本学は創立以来70年余り、これらの課題に対応すべく語学の教育だけでなく、その国の歴史・文化なども学び理解することにより、グローバルマインドを備えた人材の育成を行ってまいりましたし、これからも続けてまいります。
こうした社会背景を踏まえ、2018年4月に社会科学系の国際貢献学部を開設いたしました。高度な外国語運用力を身に付けるとともに、グローバル社会で活躍するにふさわしい高い見識、幅広い視野並びに長期的な洞察に基づいて意思決定と行動ができる能力を身に付けた人材を育成します。また、20年4月にはロシア語学科を開設(設置届出中)。国連公用語の一つであるロシア語は、世界中に約3億人の話者を持つグローバルな言語です。日本とロシア語圏の国々との架け橋となる優秀な人材を輩出し、わが国のグローバル化のさらなる発展に寄与します。

大垣守弘

継続は力なり

大垣守弘
株式会社大垣書店 代表取締役社長

京都は100年以上の「長寿企業」が国内で最も多い1023社(500年以上3社含む)以上ある世界でも例を見ない都市です。それらの企業に共通しているのは変化しながら継続しているということです。
一方で100年以上変化することなく伝統を守り続けるという継続の形もあります。どちらもひとかたならぬ「努力」と「勇気」、そしてなによりも「知恵」が必要になります。3月にオープンした京都経済センターはその一つ「知恵」が融合し新たな価値を生み出す「交流と融合」の場として誕生しました。弊社はその京都経済センターの1階に「京都本店」をオープンしました。これまでにない新しい形での本との出会いを提供する場を目指しています。また、昨年の「本の日」(11月1日)の制定も書店業界の継続のために投じた変化の一石であると自負しております。全国の書店に足を運んでいただくことを目的に、書店の魅力を伝えるきっかけになるようにと、今年もさまざまなキャンペーン活動を計画しています。それぞれ、けっして楽な道だとは考えていません。それでも、長きにわたって「大垣書店が京都にあってよかった」と感じていただけるよう、これからも変化しながら継続してまいります。

加藤好文

渋沢翁のチャレンジ精神

加藤好文
京阪ホールディングス株式会社 代表取締役社長

2024年度にも導入される新紙幣。その新たな肖像に、「日本資本主義の父」渋沢栄一翁が採用されることになりました。渋沢翁は数多くの企業を設立しましたが、当社も1906年、渋沢翁を創立委員長として産声を上げました。「民間資本による京阪間の鉄道敷設」すなわち当社設立のため、渋沢翁は3度にわたり挑戦し、実現させた歴史があります。そして、私は社長就任以来、「安全とチャレンジ」と「バッターボックスに立つこと」を常に唱え続けてきました。
京都では今年12月、京阪グループの新たな「チャレンジ」である複合商業施設「GOOD NATURE STATION」が四条河原町に誕生します。これは単に「買う・食べる・泊まる・体感する」施設ではありません。今後はより「感性」が大切な時代。京阪として新しい生活スタイルを提案できる事業をやりたい。そして、次世代に残る柱となる事業を展開したい。新しい「価値観」を京都から発信していこう。そういった思いを形にした、新しい「チャレンジ」なのです。
「社会に必要なものならば、どんなことがあってもやりとげる」。渋沢翁の創業時の精神に恥じぬよう、京阪グループはチャレンジを続けてまいります。

伊藤敏彦

確かな技術力・人間力で未来に貢献

伊藤敏彦
株式会社きんでん京都支店 常務執行役員支店長

歴史と伝統・文化が息づくまち京都に支店を開設し、来年で75周年を迎えます。この間、総合設備エンジニアリング企業として、社会インフラを支え地域社会に貢献すべく、皆さまと共に歩ませていただき衷心より御礼申し上げます。
今後も歴史ある地域の一員として、新しいものと古いものの融合、そして変革へとつながるイノベーション力、伝統・文化芸術を世界へ発信するブランド力など奥深い魅力に満ちた京都の発展に貢献してまいります。
「平成」から「令和」の新時代を迎え、ますます社会構造の変化や技術革新が進み、その変革のスピードが加速しています。その中で、当社はこの地において、「私たちは優れた設備とサービスを創造し、社会のインフラを支え明るく豊かな未来の実現に貢献します」という企業理念の下、微力ではありますが、 使命感と確かな技術力・人間力により、素晴らしく希望のある社会の実現に向けて貢献していきたいと考えております。
そして、人と人との絆を大切にしながら、人づくり・ものづくり・まちづくりを通して、安心と安全の地域創生に参画してまいります。

続木 創

生活文化の息づく街づくりを

続木 創
株式会社進々堂 代表取締役社長

2008年の世界料理オリンピック応援ツアーで訪れたドイツの小都市エアフルトでの思い出。町を散策していると、小さな教会の入り口にコンサートのポスターが。地元の大学生たちの古楽アンサンブルらしい。プログラムに大好きなシュッツの曲があったので入ってみることにした。演奏が始まって息をのんだ。低くチューニングされたピリオド楽器の柔らかい響きに乗って、背の高いカウンターテナーが体と不似合いな繊細なファルセットで歌い、ノンビブラートの澄んだソプラノが高い天井に響き渡る。「うわっ、本物だ!」。客席では普段着姿の近所の人たちが演奏に耳を凝らす。若き芸術家たちへの温かいまなざし、会場にあふれる音楽への愛。その時間を共有できた喜びが心を満たし、エアフルトの街が大好きになった。
やはり旅の一番の醍醐味(だいごみ)はその地に住む人々が育んできた生活文化の豊かさに触れること。京都も私たちの暮らしぶりそのものが最大の魅力と言われるような街でありたいと思う。進々堂も「京都の人たちはこんなにおいしいパンを毎日食べてるんだ!」と、遠来のお客さまがうらやましく思い、京都の街を好きになってくださるよう頑張ります。

北尾和彦

「和」の意味するところ

北尾和彦
京都薬品工業株式会社 代表取締役社長

皇太子殿下が天皇陛下に御即位され「令和」の新しい時代が始まりました。日本の国是とも言うべき「和」、また当社の社是「和親協力 誠実報恩」にもある「和」の文字が新元号に入っていることを大変うれしく思っています。
「和」は聖徳太子の十七条憲法第一条に「和を以て貴しとなす」とありますが、第二条は「篤く三宝を敬え」と続きます。和するということは簡単なようで、なかなか難しいので、聖徳太子は和するには三宝を敬い、自分自身の誠と謙虚さと他人に対する敬いの心を持つことが必要だと諭されています。また「和」は、「Harmonize(調和)」であり、「Conform(同化)」ではありません。付和雷同でなく、各々(おのおの)が自分というものをしっかり持って自立的な人間になることが大切です。
新薬の研究開発においてアイデアの発想には個が輝き、個が他の個性を生かすことが重要です。そしてアイデアが創出されたら、それを開発して新薬にしていくには、多くの人々や他の企業と協力していくことが必要です。「個が輝く協調」により、新薬を創製し、病気で苦しむ患者さんの命を救うことで社会に報恩したいという願いが私どもの社是に込められています。

福永法弘

誰もが輝ける働き方を目指して

福永法弘
株式会社京都ホテル 代表取締役社長

1888年に創業した当ホテルは昨年度が創業130周年にあたり、さまざまな記念事業を行いましたが、おかげさまで多くの皆さまに支えられて終えることができました。あらためて感謝を申し上げます。
さて、新緑の瑞々(みずみず)しさの中で新元号の幕開けとなりました。「令和」の典拠である万葉集には、約4500首に及ぶさまざまな詠み人の歌が集められていますが、それぞれの個性が輝く様子は、各個人が持ち味を発揮できることを目指す現代の働き方に通ずるところを感じます。
当社の働き方に関する取り組みの一部をご紹介すると、2017年に「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」行動宣言に賛同し、女性社外取締役の招聘(しょうへい)、配偶者出産に係る休暇や育児・介護休暇、時短勤務制度の拡充、育児休暇中や社内託児所利用時の支援、女性活躍推進チームによる商品企画開発を行ってまいりました。こうした取り組みにより社員それぞれが輝ける環境を整えて、より良いホテルづくりにつなげたいと考えております。
今後、国際的なイベントが続きますが、京都に育まれたホテルとして、豊かな時間をご提供できるよう努めてまいります。

西川八一行

すべては生活者のために

西川八一行
西川株式会社 代表取締役社長

今年2月1日、西川産業株式会社(東京西川)、西川リビング株式会社、株式会社京都西川の3社が統合し、西川株式会社として新たなスタートを切りました。もともと3社は一つの会社であり、太平洋戦争をきっかけに別法人となりましたが、3社がまた一つになって同じ方向を見て進むべきだろうという思いから今回の統合に至りました。3社の長年の経験、知見、強みを統合し発展させ、より強く成長していきたいと考えています。
私どもが掲げる目標の一つに、IoTを活用したサービスの推進があります。『ねむりの相談所』では、コイン型の活動量計や寝室環境を測るセンサーの貸し出しによって、睡眠の可視化を行っていますが、近いうちに寝具そのものにセンサーを実装するなどし、寝具のIoT化をより発展させたいと計画しています。こうしたモニタリングが可能になると、医療や介護にまで繋(つな)げていくことができる社会に貢献できるでしょう。また、世界進出にもいっそう力を入れていきます。睡眠の先進国である日本の、睡眠先進企業である西川を世界へ。今後も良質な寝具とともに、「睡眠」を啓発してまいります。

大倉治彦

御代の御用に達し続けて

大倉治彦
月桂冠株式会社 代表取締役社長

月桂冠大倉記念館に、大倉家の本宅前で大正期に撮影されたモノクロ写真を展示している。シルクハットに燕尾(えんび)服、11代目大倉恒吉の颯爽(さっそう)とした姿が見える。1915(大正4)年、天皇陛下御即位の大礼に際して、御用酒を大八車に載せ、京都御所への納入に出発した時のものである。恒吉は、業界初の「研究所」を創設、飛躍的な品質の向上を成し遂げた。19年発行の『大禮(たいれい)記録』(内閣書記官室記録課)には、大饗宴(きょうえん)用の清酒として「月桂冠」含む4銘柄が記されており、中でも「月桂冠ハ、京都府下ニ於テ醸造シ、頃(ちかご)ロ灘地方ノ産ヲ凌駕(りょうが)セムトスル勢アルヲ以テ、大饗第一日ノ玉饌(ぎょくせん)及三次ノ賜宴ニ用ヒ」とある。27年(昭和2)年には「宮内省御用達」として取り上げられることとなった。「御用達」制度は54年に廃止されたが、品質向上とともに、実直、勤勉に業を営んできたことで、平成、そして令和へと時代を超えて、私どもは、御代の御用に達し続けている。
天皇陛下のご即位により祝賀ムードに包まれる中、高級酒の需要も高まっている。元号が改まった今、わが国伝統の日本酒で祝杯を挙げる、このよき伝統を後世に伝えていきたい。

奥村浩二

サステナブル経営への取り組み

奥村浩二
東急ホテルズ 執行役員関西地区統括 兼 京都東急ホテル 総支配人

先般、京都市が「全国市区・サステナブル度・SDGs先進度調査」において、総合順位一位として紹介されました。これは私たち京都市民にとって誇りでありうれしい限りです。弊社が属します東急電鉄を中核とする東急グループも以前から企業市民として、その社会的責任の重要性を認識し、グループ全体でコンプライアンスに取り組むとともに、事業を通じた社会課題解決や社会貢献活動を継続するなど、サステナブル経営を積極的に推進しています。
一例として、東急ホテルズは環境保全活動として2001年よりお客さまのご厚意による「グリーンコイン」制度を実施しており、環境保全活動の基金として国際NGOである公益財団法人オイスカに提供し、地球緑化活動である「子供の森」計画を支援してまいりました。現在も「東急ホテルズ・グリーンコインの森」活動として継続しております。その他の取り組みとしては低炭素・循環型ホテルの運営やプラスチック製ストローの廃止などの取り組みも順次進めており、今後もホテル事業を通じて社会的責任を果たすとともに、持続可能な社会の実現に少しでも貢献できればと考えております。

瀬川大秀

次世代への文化支援

瀬川大秀
総本山仁和寺 51世門跡

仁和寺の創建は仁和4(888)年。創建から1130年以上を越え、現在は真言宗御室派の総本山としても知られています。
寺院は法流を伝える場であり、文化を伝える場でもありました。江戸時代、仁和寺周辺には野々村仁清が開窯(かいよう)した御室焼、裏山には成就山御室八十八カ所霊場が開設されました。特に後者は当時の弘法大師信仰をよく表しており、現在も信仰・健康・観光の場として、親しまれています。
仁和寺では、伝統と文化の継承のためには実際に文化に触れていただくことが大事と考え、昨年10月に行われた金堂裏堂特別内拝の際には、次世代への文化支援として、高校生以下の拝観料を無料としました。今春から霊宝館においても同様の取り組みを行っています。小さな頃から伝統や文化に触れる機会をつくることで、日本が培ってきたものがいかに大事であるかを学ぶ良い機会になることを願っています。
変化する社会の中で、仁和寺だからこそ変わらないもの、変えてはならないものがあり、反面新たに取り入れていくべきことも多いと思います。こういった時代に即した柔軟な対応が、1130年以上も続いている理由の一つではないでしょうか。

古田基行

人と自然と響きあう

古田基行
サントリー酒類株式会社 京都支社 支社長

今年は弊社創立120周年に加え、京都ブルワリー(長岡京市)が竣工50周年を迎えます。この節目を迎えるにあたり、あらためて長らくのご愛顧に厚く御礼申し上げます。
弊社の事業は自然の恵みによって支えられており、中でも「水」は事業展開にとって最も大切な資源です。全国4カ所にある弊社ビール工場は、良質な地下天然水が確保できるエリアにのみ存在しており、ここまでビール事業の展開を進めてこられたのも京都の豊かな自然の恵みのたまものだと考えています。
近年では若い方々のビール離れによる市場の低迷が叫ばれていますが、これはビール嫌いが増えたのではなく、スマートフォン・SNSといった便利なツールの普及による「face to face」のコミュニケーション不足が原因の一つだともいわれています。お酒は本来、人と人とを結びつける潤滑油。適正な飲酒はコミュニケーションを円滑にするツールであり、暮らしを豊かにします。
京都の豊かな自然への何よりの恩返しだと信じて、今後もお酒を通じて、京都に集うお客さまが笑顔になるシーンを提供してまいります。

日比野英子

強みを生かす人材育成

日比野英子
京都橘大学 学長

人工知能(AI)やあらゆるものがインターネットにつながるIoT(Internet of Things)が社会生活のインフラになる時代が近いと言われ、AI人材・IT人材育成が喫緊の課題となっています。
京都橘大学では、2021年度に情報理工学部(仮称)・経営学部(仮称)・経済学部(仮称)を開設し、高度な情報社会Society5.0で活躍する人材を育成する計画です。産業界のニーズに応えるだけでなく、持続可能な経済発展と社会的課題の解決が両立する人間中心の社会の実現へ向け貢献したいと考えています。
一方、AIには置き換えられない仕事として、接客や対人援助職(医療や教育)などの対人的なサービスがあります。これらの仕事には、人間にのみ備わっている非認知的能力(好奇心・親密性・自己制御・独創性など)が不可欠です。
京都橘大学は企業や行政、医療、教育などの分野へ対人的な職業の人材を多く輩出してきました。これからも、一人一人の学生の個性を強みとして社会に要請されている人材に育成し、学生の自己実現と人々の健康と幸福を支援する大学でありたいと願っています。

内田 隆

産地と京都をつなぐ「和の精神」

内田 隆
京都青果合同株式会社 代表取締役社長

午前6時、カランカランと響き渡る鐘の音とともに、せり人の声が一斉にこだまする京都市中央卸売市場...。
青果卸売業を営む京果の社員たちは毎朝、仲卸の方々と向き合い、京野菜を始め全国各地から届けられる生鮮野菜・果物の取引を行っています。
昨年のように台風や豪雨、地震などの災害が続いても、いつもと変わらず街中の店頭に野菜や果物が並ぶのは、産地の方々のご努力はもちろんのこと、「卸売市場」という仕組みとそこで働く「人」の力があってのことだと考えております。丹精込めて育てられた青果を産地の方々が京都市場に出荷していただくためには、私ども卸売業者への信頼が何よりも大切です。
今年4月21日で創業71周年を迎える京果では、「和」を社是とし、社員に対し家庭の和・社内の和・グループの和・お客さまとの和・社会の和を大切にするよう言い続けています。来るべきAI時代にあっても、創業からの「和の精神」に変わりはありません。現在、施設整備が進められている京都市中央卸売市場が、平成から令和の時代に変わっても日本の食文化を支え続ける存在であるよう、社員一丸となって邁進(まいしん)してまいります。

福井正憲

ロボットと共に楽しい茶会を

福井正憲
株式会社福寿園 代表取締役会長

AI(人工知能)とIoTの発展により、大きく地球社会の価値観が変化していますが、今後、人体の一部を人工的な部品に取り換える時代にもなっていくと思います。すでに人工心臓や人工関節などは、大きな意味では「ロボット化」と言えるのではないでしょうか。ロボット技術の発達により、身体の欠陥が機械で補完されるようになり、ロボットと人間の間の生命体がどんどん生まれてくるでしょう。極論ですが、「ロボット化」何%というロボットと人間の中間の存在が生まれてくると思います。そういった存在と人間、ロボットとが共存する世界が次世代にやってくると思います。
現在、法律によって生まれた法人格が存在しますが、そういった新たな存在の人格をどう法的に認めるのかの議論も必要になってくるでしょう。従来の国や民族で国境を考える時代ではなく、ロボット人間時代のルールを「100%人間」が早急に決め、おいしい宇治茶の茶会をロボットと共に楽しみたいものです。人体をよりよい部品に取り換えたロボット人間により、理想の社会が生まれるのかもしれません。ロボットとの戦争で、この美しい京都が、地球が汚されないことを望みたいものです。

柿野欽吾

令和時代も「産業 学び勤はく」

柿野欽吾
学校法人京都産業大学 理事長

いよいよ御代替わりが間近に迫り、元号も「平成」から「令和」へと変わります。
学校法人京都産業大学は、「将来の社会を担って立つ人材の育成」という「建学の精神」を掲げ、昭和から平成にかけての50年余の短期間に、京都産業大学に加えて、附属中学校・高等学校、すみれ幼稚園を擁する総合学園に成長・発展しました。
いま、日本は、IoTやAI(人工知能)、「Society5.0」、「5G」など新技術が急速に進展し、持続可能な社会や多文化共生、人生100年といった時代を迎えて、新たな生活スタイルや働き方、企業モデルが登場するなど、社会が大きく変わろうとしています。
本学学歌の一節にある「産業(むすびわざ) 学(まな)び勤(いそ)はく」の「産業」には、「むすぶ」とともに、「産み出す」の意が込められています。2030(令和12)年の大学像を策定した『神山(こうやま)STYLE2030』のスローガン「むすんで、うみだす。」の下、学問と社会・企業・自然だけでなく、人と人、知識と実践などを「むすぶ」ことによって、令和時代に雄飛する次世代の人材を輩出すべく、京都産業大学をはじめ附属中学校・高等学校、すみれ幼稚園では、引き続き新たな歴史を切り拓(ひら)いていきます。

土井伸宏

不断の努力で次世代を創る

土井伸宏
株式会社京都銀行 頭取

京都銀行は、1941(昭和16)年、京都府内4行が合併し、「丹和銀行」として第一歩を踏み出しました。現在は広域型地方銀行として、近畿2府3県を中心に174カ店を有していますが、創業当時、京都市内に店舗は無く、「ゼロからのスタート」でした。
この間の歴史は困難の連続でしたが、「地域社会の繁栄に奉仕する」という経営理念に基づき、常に新たな挑戦へ果敢に取り組んでまいりました。戦中・戦後に設立された、今は世界を代表する数々の企業の成長に貢献することができたのは、その一つです。創業以来、脈々と続けてきたこの創業・成長支援の取り組みは、現在、ファンドの設立や産・学・公連携のスキームを立ち上げるなど時代に即した形へ変容を遂げ、ますます活発化しております。
持続可能な社会に向けた取り組みが脚光を浴びる現在ですが、特効薬があるわけではありません。創業理念に基づく、変革を恐れない不断の努力こそがそのような社会を生みだすものと考えております。いつの時代も、京都銀行は、より良い総合金融サービスの提供を通じて「真に役に立つ銀行」であり続けることを目指してまいります。

福山隆夫

「伝統・文化」は革新の連続

福山隆夫
京都駅ビル開発株式会社 代表取締役社長

いよいよ文化庁が2021年度中に京都へ本格的に移転することになりました。そのことにより京都における文化・芸術に関わる役割がさらに増すことになるとともに、長い歴史の中で蓄積された京都の持つ文化・芸術の資源を活用した新たな価値の創造の取り組みを強めていく必要があります。
京都は「伝統・文化」が空気のように存在する町です。「文化」というものは長い年月の中で先人たちがその時代の感覚を加え、より良いものを生み出そうと努力を重ねた結果、現代へと継承されたものではないでしょうか。そして、それら継承されたものを、今を生きる私たちの感性と感覚を加えて次の時代へと繋(つな)ぐことが、新しい「伝統・文化」となるものだと考えます。
より良いものを生み出すためには、「変えてはいけないもの」と「変えるべきもの」を見極めた上で、時代に即した形で「進化・革新」し続けていかなければなりません。「伝統・文化」は革新の連続であり、大切なものを守り伝えるためには変化を恐れず次の時代へ繋(つな)いでいける活動を展開できるよう精進したいと考えます。

谷本秀夫

チャレンジ精神で未来をつくる

谷本秀夫
京セラ株式会社 代表取締役社長

京セラは今から60年前の1959(昭和34)年、資金も信用も実績もない小さな町工場から出発しました。頼れるものはファインセラミックスの技術と信じ合える28人の仲間たちであり、以来、人の心をベースとする全員参加経営を実践し、誰もやらないことに積極的に挑戦し続け、事業を多角化することにより、今日まで成長してまいりました。
現在、IoTの進展をはじめ、人工知能(AI)、ロボティクス、次世代移動通信「5G」といった技術革新が加速し、産業や社会構造が大きく変化しています。新たな技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れてイノベーションを創出し、一人一人のニーズに合わせる形で社会的課題を解決していく「Society 5.0」は、もうすぐそこに来ています。
私たちは、いま一度、創業の精神に立ち返り、情報通信、自動車関連、環境・エネルギー、医療・ヘルスケアの重点市場を中心に、チャレンジし続けてまいります。そして、人類、社会の進歩発展に貢献するという経営理念の実現に向け、さまざまな社会課題を技術や事業活動を通じて解決することにより、豊かな社会と未来の創造に貢献してまいります。

橘重十九

菅公の「誠の道」に学ぶ

橘重十九
北野天満宮 宮司

「心だに誠の道にかなひなば 祈らずとても神や守らむ」。学問の神をはじめ芸能や厄除の神などさまざまな信仰で全国に1万2千社も祀(まつ)られている「天神さん」の御祭神・菅原道真公(菅公)の御歌で、至誠の神としても信仰されていることを端的に示す御歌です。
「誠実に生きてさえいれば祈る必要はない」と間違った解釈をする人がいますが、神に誓って真っさらな気持ちで生きることは容易ではありません。孔子でさえ「誠の道」を究めるのに70年かかったといわれ、凡庸な私たちは神に祈って加護を求めねばならないのです。菅公は生涯通じて「誠の道」を求めて生きた人でした。その精神の根本には、自然界至るところに神々を感じて信じ、畏敬と感謝、畏怖の念で接してきた縄文以来の日本人の心が宿っていると思います。それは、「文道大祖 風月本主」と崇(あが)められ、残されている多くの優れた詩歌でも示されるところです。
昨今は誠実さのかけらも感じられない出来事が起きている欺瞞(ぎまん)に満ちた世の中です。千百年も昔、菅公が求めてやまなかった「誠の道」を今こそ学ばなけれならない時だと思います。

柿本新也

文化外交

柿本新也
柿本商事株式会社 代表取締役社長

2013年9月、オリンピック・パラリンピック開催地が東京に決定した瞬間、「文化外交」の戦略が安倍首相の頭の中を驚くべき速度で駆け巡ったに違いない。そして、それは15年10月、故津川雅彦氏を座長に据えた第1回「日本の美」総合プロジェクト懇談会で始まった。その時すでに「日本博」という提案が津川氏からなされている。
2018年7月からパリを中心にフランス全土で開催された「ジャポニスム2018」は、8カ月に及び、縄文土器から現代アートまで取り入れた大規模な複合型文化芸術イベントとなった。
初音ミクの欧州初コンサートが4千人以上の観客を集め、髪の色と同じエメラルドグリーンのペンライトをふりかざす姿がテレビで放映されたのを見て、バーチャルシンガーを創ったのも人間だが、それは近未来の私たちの姿を映しているようにさえ思えた。
今年は「ジャポニスム2019」が米国と東南アジアで予定され、来年に日本全土で開催される「日本博」は、2025年の大阪万博まで続く。文化バブルの様相を呈しているこの饗宴(きょうえん)は、経済力・軍事力にも優る新たな時代の大きな武器なのかもしれない。

山田義仁

企業理念を発展の原動力に

山田義仁
オムロン株式会社 代表取締役社長 CEO

オムロンは、世の中が変化する時に生まれる社会的課題の解決に、世に先駆けて挑戦してきました。そして、工場の自動化や自動改札システム、ヘルスケアなど、数々の製品やソリューションを生み出し、成長してきました。
オムロンにおける挑戦に向けた力の源泉は企業理念です。企業理念の中で謳(うた)っている社憲、「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」 私たちは企業理念、そして社憲の精神を自身の存在意義として、社員一人一人が日々の仕事の中で実践することで、よりよい社会を実現するための技術や商品を生み出し続けています。
社会的課題がより複雑化する現在、企業に求められる価値は、利益の創出はもちろん、よりよい社会の実現に向けた貢献へと変化しつつあり、環境・社会・ガバナンス(ESG)の要素がますます重要になってきています。オムロンでは、企業理念の実践に取り組むことがESGに対する期待に応えるとともに、社会的課題を解決する原動力になると捉えています。
オムロンはこれからも企業理念の実践による、新たな社会的課題の解決に挑戦し続けてまいります。

木越康

慈悲の心 −寄りそう知性−

木越康
大谷大学 学長

「一人して七子あらん。七子の中に〈一子〉病に遇えば、父母の心、平等ならざるに非(あ)ざれども、然(しか)るに病子において心すなわち偏(ひとえ)に重し(『涅槃経』より)」
慈悲の心とは何かを説くブッダの言葉です。すべての子を平等に慈しむのは、親としては当然でしょう。しかしそのうちの1人が病となれば、慈しみの心は、自然にその子に傾きます。苦しむ子、最も助けを必要とするものの所に、親の心は向けられます。それであってこそ「親」であり、そうでなければ「親」と呼ぶこともできません。
現代、そして未来には、厳しい競争・競合の社会が待っています。「総活躍」が求められる一方で、現実には強者は勝り、弱者は隅に追いやられる心配もあります。そのような社会にあってもブッダの教えは、弱い者、助けを求める者にこそ心を傾けるべきだと諭します。それが本当の意味で、「七子」のすべてを守ることなのだと教えます。
ますます進むグローバリズムでは、他者や他国との競合はいっそう激しくなるでしょう。人間の社会に、慈悲の心がともしびのように輝いて、決して吹き消されないことが切に願われます。

松尾一哉

災害に活躍、自立分散型エネルギー

松尾一哉
大阪ガス株式会社 理事 京滋地区総支配人

環境変化にどう対応するかが問われる企業にとって、時代を生き抜くためのキーワードの一つが「レジリエンス(反転成長力)」です。
昨年、関西をはじめ日本列島の各地で地震、豪雨、台風、高潮などの大規模な自然災害が相次ぎました。エネルギー事業者として、被災地域の一日も早い復旧、復興に全力を尽くすことはもとより、お客さまの“暮らし”と“産業”を支える責任の重さを改めて痛感しました。そして昨年、不測の事態にレジリエンスを発揮したのが自立発電機能付きガス設備でした。 特に家庭用燃料電池コージェネレーションシステム「エネファームtypeS」は、停電時にも電気と熱を供給し続けました。700Wの発電量ですが、ガス機器やテレビの電源、スマホの充電などに活用され、お客さまからもご満足の声を頂戴しました。また、医療施設や宿泊施設、工場などでも、大型のコージェネレーションや自立発電機能付きガスヒーポンが持ち前の威力を発揮しました。
今後も大規模な自然災害が警戒される中、レジリエンスの観点から、同設備の重要性は一層高まっていくと考えています。

大塚直樹

国際都市「京都」から世界へ発信

大塚直樹
アサヒビール株式会社 京滋統括支社 支社長

アサヒビールは、アサヒグループの新たな理念「Asahi Group Philosophy」の下、「期待を超えるおいしさ、 楽しい生活文化の創造」を目指して、「お客様の最高の満足のために お酒ならではの価値と魅力を創造し続ける」という長期ビジョンを掲げ取り組んでいます。
日本初の辛口ビールとして1987年発売以来、ご愛飲いただいているスーパードライでは現在、中長期のブランドスローガンを「THE JAPAN BRAND」と設定し、最高品質の提供と飲用機会の拡大を見据えた取り組みを強化しています。
京都は世界中からさまざまな人々が集まる都市であり、世界と日本をつなぐ「結節点」です。国際都市「京都」から世界へ発信していくことで、日本国内で体感いただいた品質から、帰国後に母国で「日本品質」を求めていただくという“帰国後消費”につなげ、経済の好循環に寄与していきたいと考えています。
「期待を超えるおいしさ、楽しい生活文化の創造」を目指し、アサヒビールでは、これからも基幹ブランドの強化と新需要の創造により、酒類市場全体の活性化に取り組んでまいります。

栗和田榮一

人々の“想い”をつなぎ続けるために

栗和田榮一
SGホールディングス株式会社 代表取締役会長

いまも昔も変わらず伝統をつなぐ街、京都。私たちSGホールディングスグループはここ京都で創業して60余年、物流事業を通じてお客さまの大切な荷物を運び、想いをつなぐお手伝いをしてまいりました。
近年、物流は生産や流通を支え、人々の生活を豊かにするために欠かせない社会インフラと捉えていただくようになりました。この物流という社会インフラを安全に、ゆるぎなく提供し続けることが、私たちの使命であると強く感じています。
当グループでは今後も社会インフラとしての使命を果たし続けるために、「安全」「環境」「人材」の三つを最重要課題に定めました。安全・安心な交通社会を実現すること、環境に配慮した事業を推進すること、従業員にいきいきと働き続けてもらうこと。どれ一つ欠けても、信頼される企業として持続的に成長していくことは難しいでしょう。
これからも皆さまに必要とされる存在であり続けたい。伝統を次の世代につないでいるこの創業の地、京都とともに、私たちは進化しつづけてまいります。

上原大作

答えは人と人のつながりの中に

上原大作
上原成商事株式会社 代表取締役社長

当社は前身の肥料商を出発点とし、1943(昭和18)年にセメントなどの建設資材や石油類の販売を目的とする上原成介商店を興して以降、今日まで人々の生活や産業の源となる商品を扱う会社として地域の皆さまと共に歩みを進めてまいりました。
当社は現場重視の社風で、日々お客さまと接する中で真に必要とされているかを自問自答しながら、自分たちにしか提供できない商品やサービスを追求し続けております。
その答えはいつもお客さまから教えていただいてまいりました。もちろん待っていて教えていただけるものではなく、そこには常に感謝を持ってお客さまに寄り添う姿があり、親身のお付き合いの中から、答えを共有させていただけているのだと思っております。
こうしたつながりによって、当社は時代の変化や景気の浮き沈みに左右されることなく地道に成長し続ける企業としての基盤を固めてまいりました。これからもぶれることなく、つながりあえる「人財」の育成こそが究極の社会貢献であると信じ、「上原成にしか出来ないことを上原成らしく」をテーマに、エキサイティングな活動を展開してまいります。

喜田眞司

社員を大切にする経営

喜田眞司
株式会社石田大成社 代表取締役社長

当社は、2016年に創業100年目を迎えた総合情報サービス企業です。祖業の印刷から技術書編集・作成やWeb構築、多言語翻訳、販売促進まであらゆる情報サービスを一貫体制で提供しています。昨年度には経営体制を一新し、呼称として使ってきた「ITP」をブランド名に制定。Ideas・Technology・Peopleをキーワードに京都発の100年企業として伝統を継承し、時代の変化に即した社会的使命を果たすための努力を日々重ねています。
「Ideas・Technology」は、私たちが多様な分野に業務拡大を進める際の原動力です。昨年には「ITP未来研究所」を設立し、人工知能(AI)など最新技術を応用した次世代の新ビジネスのビジョンづくりに取り組んでいます。また「People」には、すべてのステークホルダーに親しまれ、愛される企業を目指すという決意を込めています。なかでも私たちが重視するのが「社員を大切にする経営」です。頑張れば報われる人事制度と賃金体系、充実した福利厚生制度の下で、今後も「売上高営業利益率10%台」の高収益経営を継続していけるように、社員一人一人が持てる能力を発揮できる組織づくりを目指してまいります。

田中恆清

日々最善を尽くし、今を生きる

田中恆清
石清水八幡宮 宮司

神道には「中今(なかいま)」という言葉があります。この言葉は、自らの命を先人達より連綿と受け継がれてきた大切な命として神々に感謝し、「今」を精一杯に生きることを意味しています。
昨今は、自他の命をどうしようと自分の勝手であるという悪しき個人主義の考えが流布していますが、皆さまに知っていただきたいことは、自分の命も、他人の命も、ご先祖より継承されてきたかけがえのない命であるということです。
「中今」の心は、過去・現在・未来を意識しなければ、生起しない心でもあります。古来、日本人は頂いた自らの命に常に感謝し、今この瞬間を懸命に生き抜き、後世に伝えたい心を文化として形に残し、連綿と継承してきた民族であります。
現代社会は、未曽有の自然災害や痛ましい事件、事故などで多くの大切な命が失われてしまう時代でもあります。
このような時代であるからこそ悠久の歴史と伝統を誇る京都の地から、日本人の道徳でもある「中今」の心を発信し、今を懸命に生きることの大切さを次世代に伝えていっていただきたいと願っております。