賛同企業代表者 文化人 対談シリーズ
経済面コラム 未来を思い描く

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〜次世代のメッセージ〜

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- 2019元日 文化人メッセージ -

アグネス・パトコー

日本人の季節感、
使い捨てない文化を次世代に

アグネス・パトコー
京都外国語大学 外国語学部講師

ハンガリーの大学で日本語を学び始めた頃、現代の言葉もまだ分からない最初から、原文で古典に親しんだ。『竹取物語』はコメディーなのだろうか。お姫様に求愛する男性たちが、無理難題に四苦八苦しながら対応する場面の連続は、とても面白い。
『源氏物語』『枕草子』などの古典には、現代にも通じるテーマが多い。喧嘩、嫉妬、恋愛、浮気、噂などで、いつの時代でも誰もが経験するものだ。古典の登場人物の心は、現在に生きる私たちと変わらない。古典文化、歴史、芸術と日常生活を意識すれば、私たちの人生がより豊かになるでしょう。
明治維新後の19世紀後半、訪日したハンガリーの外交官や学者が感想を残している。週刊新聞『日曜新聞』掲載の訪日見聞記を分析し、2012年にハンガリーで修士論文をまとめた。新聞には「自然と街並みが調和している」との好意的な感想がしばしば登場する。
京都には、今もそのような風景が残り、紅葉や桜が身近に楽しめる。ただし、実際には京都市内の自然は減っており、東京や大阪など大都市はさらに少ない。コンクリートビルが目立ち、季節感が失われてしまった。その結果、京都でも花見などで限定的にしか季節を味わえない現代人が増えている。
「季語」を操れるほど季節と自然の移り変わりを大切にした時代もあったが、現在、それを理解し、使える人がどれぐらいいるだろう。和歌は詠めなくても、季語は忘れてはいけない重要な文化の一つだと思う。季語を使う機会が少なくなった原因は、自然から離れたことだけではない。
自然から離れ、自然を破壊していることに気付かない人も多い。コンビニに行けば、必要なものが何でも買える便利な日本だ。食べ終わったらコンビニ弁当箱と割り箸を捨てる。飲み終えたペットボトルを捨てる。土産を買った時は、すでに綺麗に包まれているものも、さらに別のビニール袋に入れ、もう一つ相手に渡す時用のビニール袋も付けてもらう。
一方、日本の土産屋さんには、繰り返し使える弁当箱と箸、マイボトルや風呂敷が並んでいる。外国人観光客には、使い捨て一辺倒ではない日本のこのような素晴らしい文化をぜひ知ってもらいたい。
「私はプラスチック袋やペットボトルでいい」と考えるのでは、何か忘れていませんか。古くから伝えられてきた文化を振り返り、良いところを取り戻せば、次の世代にも豊かな自然に恵まれた暮らしを伝えることができるだろう。

◉アグネス・パトコー
ハンガリー出身。エトヴェシュ・ロラーンド大にて英語教育や日本語について学ぶ。在学中、2010年に交換留学生として来日。13年に再び来日し、講師として大学で指導を行うように。16年より京都外国語大へ。幼い頃からハンガリー民族舞踊を習っていた。専門は自律学習、LanguageExchange。