賛同企業代表者 文化人 対談シリーズ
経済面コラム 未来を思い描く

未来へ受け継ぐ
〜次世代のメッセージ〜

inherit to the future

- 2019元日 賛同企業代表者メッセージ -

入澤 崇

自らを省み
「まごころ」の復権を

入澤 崇
龍谷大学 学長

日本人の忘れものとして「まごころ」を挙げたいと思います。昨今は「まごころ」という言葉も、テレビの
CM以外では滅多に聞くことがありません。辞書によれば、「まごころ」とは「他人のために尽くそうという純粋な気持ち」とあります。この「まごころ」はかつての日本のそこかしこでみられた、相互扶助的な共同体で育まれたものです。助け合い支え合うというのはかけがえのない日本人の美質でした。
かつて近江商人は、「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」を共同体から飛び出して社会に浸透させました。「世間よし」の発想は「まごころ」から出るものであり、近江商人は「まごころ哲学」ともいうべき確固たる理念に基づく商業行動をしたのです。
現代社会は猛スピードで「便利さ」「快適さ」を手に入れました。科学技術の発展は目を見張るものがあります。しかし一方で、人間が持つ利己心をとめどなく拡大させてしまいました。「まごころ」はいつの間にか後退していったのです。科学技術のせいではありません。われら人間のせいです。
貧困、飢餓、紛争、人権侵害、環境破壊などの問題はいずれも人間が引き起こしたものです。「私たちは果たしてこのままでよいのか」と自らのありようを省みることが急務です。そこからです。「まごころ」の復権は。

龍谷大学

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