賛同企業代表者 文化人 対談シリーズ
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- 2019元日 賛同企業代表者メッセージ -

髙坂節三

日本文化と
漢字仮名交じり文

髙坂節三
公益財団法人日本漢字能力検定協会代表理事 会長兼理事長

京都・清水寺で森清範貫主の揮毫により発表している「今年の漢字」は昨年で24年目を迎えましたが、例年その漢字が選ばれた理由をみると、その一字が実にさまざまな意味に解釈されていることが分かり、あらためて表意文字である漢字がいかに広く、深い意味を、そして長い歴史を持つかに感じ入ります。
これは、中国の各時代の発音をまねた音読みに、日本独自の解釈として、その字義に繋がる和語のいろんな意味を充てる訓読みの発明がその主因でしょう。「かな」が使われ始めると、平安朝の文学は数々の和歌集や日記、随筆、そして世界最古の長編小説「源氏物語」の誕生など、一気に隆盛をみせます。ここから「漢字仮名交じり文」が文体の主流となり、日本文化の発展に大きく寄与しました。
明治時代に入ると、西洋由来の新概念などを漢字の熟語に置き換えることに注力し、「科学」「自由」「哲学」「社会」など、見事な和製漢語を生み出しましたが、その多くは逆輸入されて中国社会でも定着しています。昨今、新しい外来語の多くは、その正確な意味を吟味せず、音をそのままカタカナで表示したり、アルファベットの頭文字を並べて表現したりする風潮が見られますが、いま一度、先人が苦労して切り開いてきた「漢字仮名交じり文」の良さを再認識すべき時代を迎えていると考えています。

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