未来に向かっては
上着を取れ

松尾一哉
大阪ガス株式会社 理事 京滋地区総支配人

「創業と守成、いずれが難きや」と申しますが、京都の企業ほど双方を両立させている所はありません。地域に根ざした企業は持続可能な成長に向け、伝統を重視しつつ、その中から新しいものを創造しています。伝統と創造の好循環こそが、京都の「成熟社会の豊かさ」を生み出す源泉ではないでしょうか。
大阪ガスも創業113年の伝統を持つ会社です。「伝統」は英語で“tradition”ですが、その語源には「古きを越えて次に繋げる」という意味もあります。つまり、伝統を受け継ぐということは、古いものをただ守り続けるだけでなく、そこに新しい価値を加え、次の世代へと手渡していく能動的な行為にほかなりません。
当社の歴代トップは、次代を担う若い世代に対して、こう呼び掛けてきました。「過去に対しては帽子を取れ、そして、未来に向かっては上着を取れ」と。すなわち、先人のたゆまぬ努力には、帽子を取って深い感謝と敬意を表す。一方で、これからの未来に向かっては、自ら上着を脱いで積極果敢に立ち向かえ。この言葉にも、「守成・創新」の意が込められています。
若い人の前には、無限の可能性を持った新しいフィールドが広がっています。上着を取り、腕まくりをして元気よく飛び込んでいってほしいと思います。