日本人の忘れもの 知恵会議  ~未来を拓く京都の集い~

少子化対策は 日本の魅力を高めること

齋藤 茂
株式会社トーセ 代表取締役社長
齋藤 茂

これからの日本にとって、大変重要な問題の一つに少子化があります。現状の出生率が続くと、日本の人口は2050年ごろには1億人を下回り、2070年ごろには終戦直後と同じ約7,200万人になることが予想されています。世界を見ると、経済成長が著しい国の多くは、人口が増加傾向にあり、出生率の低い国でも移民政策を充実させることで成長しています。
弊社のようなコンテンツ業界では、カナダが魅力的な移民優遇政策を行っており、東南アジアからの優秀な人材が流入しています。最近、東南アジアに出張した際、現地の方から日本の産業や技術に魅力を感じなくなったという話を聞きました。日本人にとって、移民政策に抵抗があるのは理解できますが、日本に魅力があるうちに移民政策を考えなければ、優秀な人材をセレクトするつもりが、気が付けば、お願いしても日本へ来てくれない状況になりかねないと感じました。
また、ゆとり教育の弊害も問題です。元来、人間は競争しながら一生懸命頑張るものですが、ゆとり教育は打たれ弱い人間を数多く生んでしまいました。
これからは日本の良きアイデンティティーを見直し、海外の方が居住地としての魅力を感じるくらい素晴らしい国にしなければなりません。
手遅れにならないうちに。

株式会社 トーセ
京都市下京区東洞院通四条下ル/Tel.075-342-2525
http://www.tose.co.jp/

京都の 会社としての思い

武田一平
ニチコン株式会社 代表取締役会長
武田一平

歴史、伝統、文化、芸術などの継承や創造において、他都市の追随を許さない京都で、当社は今年創立64周年を迎えます。電機・電子部品メーカーとして世界の市場へ打って出るにあたり、さまざまな局面で京都のブランド力に後押ししていただきました。
モノ作りのなかにあっても不易流行の精神は生きています。時が経っても変えないもの、時代や環境とともに変化しなければならないものがあります。苛烈なグローバル競争下で、私たちはキラリと光る存在となるために、独自の価値を創造し、提供し続けなければなりません。 そのためには飽くなきイノベーションが必要で、会社の標語に『Can Do! ─すぐに、期待以上のこと。』を掲げています。これは京都の人々に脈々と育まれてきた心意気に通じるものと思っています。
そして、もう一つの社内のキーワードは『考働』です。これからは従来の電子部品に加え、当社の技術を結集したエネルギー、環境、医療機器の分野でも価値ある製品を創造し、明るい未来社会づくりに貢献していきたいと思っています。

ニチコン株式会社
京都市中京区烏丸通御池上る/Tel.075-231-8461
http://www.nichicon.co.jp/

未来のために 今できること

小林和之
日本たばこ産業株式会社 京都支店長
小林和之

早いもので東日本大震災が発生して早3年が過ぎようとしています。とりわけこの災害は、日本中を震撼(しんかん)させた出来事ですが、反面そこから多くのことを学んだと思っています。
その中でも電力の供給方法について多くの意見が集まり、故にさまざまな活動が地域で巻き起こっています。
京都市においては、2012年度から「市民協働発電」を実施されており、当社は、この事業の担い手である一般社団法人びっくりエコ発電所のお手伝いをさせていただいております。そのPRを兼ねて「未来のために今できること」をお話します。
電力を作り出すことは、市民がそう簡単にできることではありませんが、この団体は、関心を持った市民から出資を募り、学校等の教育施設の屋根へ太陽光発電設備を設置し運営しています。そして、そこから得られたノウハウや売電収入は、全て環境教育等に充当していく方針で、その中でも学校へ設置する意義をお聞きしたところ、「次代の担い手である学生たちへエネルギーや環境を理解してもらうキッカケをつくりたい。また、学校は、避難場所に指定されているケースが多く、災害時には発電した電力が利用でき災害に強い街になる」と話されていました。1月中旬からは出資募集も始まると聞いております。
皆さまの「今できること」のキッカケとなり、そして、共に未来のために!

日本たばこ産業株式会社
京都支店=京都市下京区中堂寺粟田町91 京都リサーチパーク6F/Tel.075-315-0031
http://www.jti.co.jp/

和服にこめられた 日本文化を未来へつなぐ

由本敏次
株式会社パールトーン 代表取締役社長
由本敏次

「安心きもの」をスローガンに、きものの撥水(はっすい)加工やメンテナンスを業務とする株式会社パールトーンは、“きもの”という商品を提供する企業ではなく、きものに込められた思い出や歴史、あるいは和装でこそ実感も実現もできる所作や振る舞い、和文化のすばらしさをお客さまと共有する企業だと考えています。それぞれのお客さまのきものへの思いや家族の絆、家の歴史までもお預かりして美しく甦(よみがえ)らせることで、懐かしさや優しさ、心の豊かさを実感していただくことが業務の目的だと考えています。したがって、弊社が最も大切にしていることは心の絆。お客さまとの信頼関係です。

「日本人の忘れもの」とは何か? それは季節感であったり、神仏への信仰心であったり、人の絆やおもてなし、調和の心などそれぞれの答えがあるはずですが、日本の民族衣装たる「きもの」にはそのどれもが含まれていますので、きものの普及こそが日本人の精神と日本文化の見直し、そして日本人の誇りへとつながっていくと信じています。
そんな思いから昨年度は、学校での和装教育の実現を目指して文部科学大臣へ要望書を提出し、中学家庭科での和装の授業が実現。中学生たちがやがて習得するであろう知識や技術、そして精神こそが日本のアイデンティティーといっても過言ではありません。

株式会社 パールトーン
京都市右京区西院西中水町22/Tel.075-312-1121
http://www.pearltone.com/

華麗なる京都文化を 世界の人々へ

福井正憲
株式会社福寿園 代表取締役会長
福井正憲

日本が世界に誇れるのは、京都源流の王朝文化であり、また、その栄華を極めた人々が辿り着いた、侘・寂の世界です。
王朝文化に慣れ親しみ、より磨かれたセンスが生かされている侘(わび)・寂(さび)の世界だから、世界の人々に感動を与えるのです。さらに、茶の心によって磨かれた文化だから世界の人々が憧れるのです。
この素晴らしい京都文化の華麗で繊細な技術と知恵が、京都の先端産業に生かされ、他に類を見ないハイセンスでハイテクな技術が養われたのです。
先端産業にハイセンス、ハイテクが生かされているのと同様に、本来の伝統産業にも、技そのものが生み出す商品が、世界の人々に愛され求められるようにすることが大切です。世界の人々がその良さは分かっていても、それを求めようとしないのは、その人たちの人生や生活との接点が見つかっていないからです。
そのためには、伝統の技を世界の人々に、憧れ求めてもらえるようなコーディネーターや目利きの育成が不可欠です。その人たちが真に京都文化を理解し、愛し、素晴らしい京都の文化のコーディネーターとして、また伝道者として大きく貢献してくれることを期待しています。
今年こそ、茶の心で、茶を飲み、心爽やかに、世界の人々が求め、愛用される京都文化へと変身するスタートの年になって欲しいものです。

株式会社 福寿園
京都府木津川市山城町上狛東作り道11/Tel.0774-86-3901
http://www.fukujuen.com/

過去の知恵を 未来に伝える

浜田英敏
富士ゼロックス京都株式会社 代表取締役
浜田英敏

地元に密着した社会・文化貢献活動として「古文書の複製・復元」を始めてすでに6年目になります。これは弊社の本業の得意技術である複写技術、いわゆるコピーの技術を用いて古文書を本物により近く復元する活動です。きっかけは、京都の商家の方からの代々伝わる文書のコピーの依頼でした。200年以上前の文書なので原本が痛まないように細心の注意を払い、また文書が作られた当時の状態に極力近づけようと、和紙を用い紐綴(ひもと)じで仕上げました。この複製したものを依頼主の方が活用されるのを拝見し、古文書が生き返ったと感じました。
京都に限らず、寺社仏閣の宝物殿や書庫といわれるところには大量の文書が保存されています。また一般の商家でも家訓やその店に伝わる製造技法などが記載された文書が存在します。しかしながらこれら文書は、それ自体が重要なことゆえ、厳重に管理され保管されていることがほとんどです。これらには先人の知恵が詰まっており、より多くの人が時には手に触れるなどの幅広い活用をしてこそ、その価値も生きると信じています。
これまでに「時を超えたコミュニケーション」として、すでに100件以上の複製・復元のお手伝いをさせていただいています。過去の日本人の知恵を現代で活用することで、現代の知恵とともに過去の知恵を未来へ伝えることができると信じています。

富士ゼロックス京都株式会社
京都市中京区三条通烏丸西入御倉町85-1 烏丸ビル7F/Tel.075-255-3091
http://www.fujixerox.co.jp/ktx/