日本人の忘れもの 京都、こころここに

おきざりにしてしまったものがある。いま、日本が、世界が気づきはじめた。『こころ ここに』京都が育んだ文化という「ものさし」が時代に左右されない豊かさを示す。

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京都発「日本人の忘れもの」キャンペーンプロジェクト

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第41回4月15日掲載
漢字と国字
独自性・多様性の豊かさ示す
日本語守り世界へ文化発信を

おいけ・かずお

財団法人 国際高等研究所所長
尾池 和夫 さん

1963年京都大学卒、同大学理学研究科長、副学長、第24代総長などを歴任。著書に「中国の地震予知」(NHKブックス)、「新版活動期に入った地震列島」、「日本列島の巨大地震」(岩波科学ライブラリー)など。

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動物や植物や
気象に多く見られる国字

 長い年月の中で、複雑な表現を可能とする言語に仕上げられた日本語を、私たちは毎日なにげなく使う。日本人は、漢字を大切にすると同時に、国字をたくさん産み出した。漢字は世界でもっとも文字数の多い文字体系で、今でもその数は増え続けているという。

 国字は、漢字をまねた漢字体の文字である。峠(とうげ)、畑(はたけ)、辻(つじ)などの文字が古くから使われ、膵(すい)、瓩(きろぐらむ)、鞄(かばん)などは比較的新しく生まれた。国字がたくさん活用される書物に歳時記がある。動物や植物の名前にとくに多く見られる。これは日本の自然が多様であるということによる。鱚(きす)、鰯(いわし)、鱈(たら)、鰤(ぶり)、鯰(なまず)、鰰(はたはた)、鮹(たこ)と、たくさん魚偏の国字がある。鰰は鱩とも書く。雷が鳴るころたくさん捕れる魚である。

 中でも鯰は、私の少年時代からのニックネームなので親しく付き合っている。ナマズは中国では鮎と書く。退蔵院の国宝として知られる瓢鮎図には瓢箪(ひょうたん)と鯰が描かれている。他にも例えば樟(くす)と楠(くす)のように、同じものを中国と日本で異なる文字で表記する例は多い。凪(なぎ)、凧(たこ)、颪(おろし)、凩(こがらし)なども国字で、日本列島の気象現象をよく表している。

日本の特徴示す活断層からの峠 発酵文化からの糀

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 国字で私が注目する文字の例を二つあげると、峠(とうげ)と糀(こうじ)である。峠は日本列島の地形の特徴をよく表す文字である。日本列島では、細かい地質分布と活断層運動などによる細かい地形によって、峠がたくさん生まれるのである。例えば、京都府には、老ノ坂、白鳥、滝尻、念仏、真壁、板戸、吉坂、比治山、大内、三原、天引などの峠がある。修行僧が花(樒(しきみ)のこと)を折って越えたという鯖街道の花折(はなおり)峠は、花折断層という活断層の名としても知られている。

 麦の麹(こうじ)は漢字で、米の糀は国字である。甘酒は夏の季語である。糀で作られた甘酒は必須アミノ酸、ビタミン、葉酸を含み、点滴の液とほぼ同じ成分であり、夏ばてを防ぐ飲み物として知られる。完全にノンアルコールだから幼児にも飲ませられる。糀は、味噌(みそ)、日本酒、味醂(みりん)など、日本の味に欠かせない重要な発酵文化である。

どの学術の世界も書き表せる漢字仮名交じり文

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 日本語は漢字仮名交じり文で、どんな学術の世界であっても、書き表すことができる。しかも見ただけで意味が理解できる。グローバル化というのは国境を取り払う視点の概念であるが、国際化というのは自国の文化を意識しつつ、文化の多様性を尊重して共存を重視する視点の概念である。日本の文化を世界に発信して行くためにも、日本語の文字をしっかりと守り育てていかなければならないと思う。

<日本の暦>

土 用

 土用と聞くと、まずウナギを食べる「丑の日」を思い浮かべます。それは夏の土用です。

 土用は旧暦にある雑節の一つで、本来は春夏秋冬と、1年に4回あります。陰陽五行説に基づき「土の気が盛んになる」期間とされ、一つの季節が終わりを迎える約18日間を指します。ことしの「春の土用」の入りが4月16日に当たります。

 各季節とも、土用の期間が開けると、それぞれ立夏、立秋、立冬、立春が待っています。ことしの立夏は5月5日。「寒い、温かい」と言っている間に、もう夏です。

 夏のウナギに限らず、春秋冬の土用でも、何かおいしい物を食べる日があると楽しいでしょうね。

<リレーメッセージ>

女優 星 由里子さん

■今 思う事

 私が映画デビューさせて頂いた折、京都の撮影所で時代劇の銀幕を華やかに飾っておられた大スター、長谷川一夫さん、山田五十鈴さんたちは私にとってはすごく眩(まぶ)しい存在でした。いつか私もと思いながら…。時代の流れは早くこの時代の素晴らしい映画も残念ですが少し忘れられて来ています。

 話は変わりますが私の義母は京都生まれの93歳です。この折の映画はよく見ていたそうです。時代が移り映画よりテレビ、パソコン、携帯電話が主流の昨今でも有料放送の時代劇映画は毎日見ています。家庭でも仏様の事、お料理の事、掃除洗濯の事、ご近所様とのお付き合い、朝起きる時、夜寝る時、それぞれに昔ながらの流儀を今の時代に合わせながら毎日を過ごしているように見えます。良い事は引き継ぎ、新しい事にも挑戦し自分が少しでも納得出来るようにしているようです。

 私も日々義母の良い教えを受け入れ自分の人生に生かそうと奮闘しています。豊かな人生とは古き良き習慣を守りながら自分に合う新しいものを吸収し後のために少しでも残せればと、今思っています。


(次回のリレーメッセージは、医療法人財団康生会武田病院名誉院長の武田道子さんです)

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