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タイトル
6.長く付き合っていく疾患
こころとからだとアート
芸術療法士・心理療法士
金崎 裕美 氏

芸術療法士・心理療法士 金崎 裕美 氏

■ 言葉にできないことを表現

 アートセラピー(芸術療法)とは、芸術でさまざまな自己表現をする心理療法です。絵を描く、音を奏でる、歌を歌う、ダンスをする、詩や散文を書くなど、表現を通じて心の葛藤や意思を整理していきます。私たちは主に言葉を使ってコミュニケーションを取りますが、自分の気持ちをうまく伝えられなかったり、相手によって言葉の捉え方が異なることもあります。精神障害や知的障害、うつ病や認知症など、病気により言語表現が苦手な人や、医学的な病名がなくても自分を表現することが苦手な人もいます。アートセラピーでは、そのような自分の内側を目に見えるものに表現(視覚化)することで、自分に対する理解と心の平穏を維持できるようにお手伝いします。決して作品の上手・下手や芸術性の高さを評価するものではありません。すべての年齢層の人に対して身体的、精神的、感情的な健康を改善するものです。

■ 活動内容をより分かりやすく

 私は絵画講師を経て大学で心理学を学びながら、2009年にアートセラピーなどの活動を行う任意団体「りんく・りんく京都」を設立し、今年の10月から「こころとからだとアート」と名称を改めました。これまでよりもっと敷居を低くして、アートセラピーとリハビリテーションアートの2本立てで行えるよう活動内容を準備中です。アートセラピーでは誰もが気軽に訪れて軽く話ができるような場所づくりをし、アートを介したセラピーを行っていきます。一方、リハビリテーションアートではより医療に即したアートセラピーを行っていきます。私は医療従事者でもある観点から、神経心理検査や認知機能検査などを行い、その後のリハビリ方針を決めます。治療が必要な場合は、病院の紹介もしていきます。私は絵画専門なので使った色や絵の構図などから分析し、相談者の苦しさやもどかしさは何を求めているのか、アドバイスも交えてお話しします。

■ 相談しやすい環境を

 「りんく・りんく京都」での活動時に、うつ病で閉じこもっていた方の支援をしていたことがあります。2年ほど通われて心の切り替えがうまくできるようになりました。本人でも異変が分かりにくく、家族も気付きにくい、医師でも精神的な病は分かりにくいこともあります。この方はお姉さんの紹介で来られましたが、中には世間体を気にして精神面の疾患であることを隠したいと思う方も多いでしょう。だからこそ入り口として入りやすいアートセラピーのような場が必要だと感じます。今後も言葉にできない自分の気持ちを何らかの形で表現し、相手に通じたという喜びを得ることで心のメンテナンスをするための手伝いをしていきたいと思っています。https://www.kokoro-karada-art.com/

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